きまぐれな日々

 いやあ惨憺たる週末の政治報道だった。毎朝血圧を測っているのだが、今朝は特に高く、降圧剤だけでは抑えきれないようだから、血管が切れてもいけないから不本意ながら気持ちを抑えて書こうと思う。

 まず、来日したトランプ新政権の国防大臣ジェームズ・マティスに安倍政権がすり寄ることは予想通りだったが、それを報じるマスコミの報道に怒った。

 朝日新聞(2/4)でさえ「尖閣に安保 ひとまず安堵」などという見出しを掲げるていたらくだったが、NHKの報道など(私は一切見ていないが)推して知るべしだったようだ。下記のTwitterを挙げておく。
https://twitter.com/TrinityNYC/status/827398011399528448

TrinityNYC
@TrinityNYC

昨夜のNHKでは「トランプさんも、こうして満面の笑顔になることがあるんですねぇ~、意外な一面をお持ちの方ですね!」、そして今朝は「狂犬と呼ばれるマチスさんですが、意外にフレンドリーな面もお持ちだとのことですよ!」、ともかくそれでコメント締めくくればいいと思ってるんでは。

22:07 - 2017年2月2日


 ひどいものだ。

 そのマティスの発言。下記は2月5日付朝日新聞に掲載された記事。
http://www.asahi.com/articles/ASK245CVLK24UTFK00K.html

駐留費「日本はお手本」 マティス氏、中国には批判
佐藤武嗣、相原亮
2017年2月5日00時24分

 来日中のマティス米国防長官は4日、稲田朋美防衛相との会談後の記者会見で、中国による南シナ海での活動について「挑戦的な行動を高めている」と批判した。日米は懸念を共有し、南シナ海への関与を強化することでも一致した。日本の在日米軍駐留経費の負担については「見習うべきお手本」と述べ、適切であるとの認識を示した。(後略)

(朝日新聞デジタルより)


 朝日はいわゆる「客観的報道」にとどめているが、NHKや読売や産経などはこのマティス発言に大喜びしたであろうことは確認していないが間違いあるまい。

 昨日(2/5)のTBS『サンデーモーニング』では、保守の寺島実郎が、マティスはオバマ政権時代にも確認したことを改めて確認しただけであり、これがもし「尖閣は日米安保の対象外」なら大きな変化だが「対象」なら現状維持であって何のニュースバリューもないこと、またアメリカは尖閣諸島における日本の施政権は認めているが日本の領有権は認めておらず、もちろん中国の領有権も認めておらず、日中間で解決明日べき事柄であると考えており、それもオバマ政権までと変わっていないことを指摘した。

 また、岸井成格は米軍の駐留費負担について日本がお手本になるべきとのマティス発言に大喜びする保守メディアの報道に呆れてか、「思いやり予算」のことだろ、そんなのは本来金を出してはならないのであって、そんなことで褒められて喜んでたらダメだ、と苦笑いしながら一喝した。

 寺島実郎や岸井成格の発言は、70年代や80年代頃なら常識的な保守派論客の発言として受け入れられた程度の穏健かつ当たり前のものだが、『サンデーモーニング』程度の番組でさえ今の日本ではネトウヨによる「極左番組」扱いが一般の人々にも行き渡りつつあって、「左寄りの番組だなあ」と思う視聴者は少なくないのではないか。

 だが、私の血圧を激しく上昇させたのは、「狂犬」マティスにすり寄る「忠犬」安倍晋三と一億人の不愉快ななかまたちの一件より、むしろ昨日投開票された東京都千代田区知事選をめぐるマスコミ報道だった。

 こんなニュースバリューが高いとは到底思えない地方選の選挙戦を、TBSは先週半ばの『NEWS23』の番組冒頭で長々と時間を費やして報じた、否、「小池百合子対自民党都連」の「小池劇場」の映像を垂れ流した。また、昨日(5日)夜8時ジャストに毎日新聞は号外を発行して小池が推した現職の当選を伝えた。

 この千代田区長選は小池百合子が推した老区長が自公が推した与謝野馨の甥っ子ら対立候補2人にそれぞれ3倍を超える大差をつけて圧勝したが、多選首長が立候補した選挙において必ずなされなければならないはずの、これまでの4期16年の区政の検証など毎日新聞などのマスメディアはほとんど何も報じず、ただひたすら「東京大改革」とやらの是非を問うという「小池百合子目線」で報じて、否、垂れ流していたから、もはや「ジャーナリズムという名前に値しない何か」としかいいようがない。

 少し前には、現在長谷川幸洋の一件で私が批判の矛先を向けている東京新聞が、名物コラムの「こちら特報部」に、小池百合子に対する期待一色かつ小池への批判色が皆無の記事を載せたと聞いた。また、先週号の『週刊金曜日』も、「小池対自民党」の観点で区長選を報じていたとの話も聞いた(東京新聞も週刊金曜日もいずれも実物は目にしていない)。

 こうしたTBS・毎日新聞・東京新聞・週刊金曜日の醜態を見ると、今朝(2/6)の一面から千代田区長選の記事を排除して社会面に掲載した朝日新聞は、最近はリベラル派の間でも評判は最悪だし、私も日々大いに不満を持ってはいるのだが、もしかしたら千代田区長選の号外を出した毎日新聞や、ましてや長谷川幸洋とMXテレビの「ニュース女子」の一件にろくな対応ができない東京新聞などと比較すればまだマシな部類なのではないかと思ってしまう。毎日の東京本社版や東京新聞は、確認していないが千代田区長選の記事を1麺に載せたのではなかろうか。もっとも、朝日も区長選の記事は1面から排除した代わりに、「小池新党 60人超擁立検討」と題した都議選の記事を1面の中ほどに載せているから(1面トップは「トランプ氏 司法に矛先」)五十歩百歩ではある。

 マスコミよりもっと深刻なのは野党であって、民進党都連の松原仁(昨夏の都知事選では一時自公と相乗りして増田寛也に乗ろうとした人間)は小池百合子への全面協力を申し出たが、小池百合子にすげなく拒絶された。

 小池は少し前には、「4島ならぬ4党」として、公明、民進、「かがやけ」(旧みんなの党系。過激な新自由主義者・音喜多駿が中心)、共産の各党の応援を当てにするような軽口を飛ばしていたが、「民進と手を組めば、小池改革は失速する」と指摘した東京新聞論説室の忠告を受け入れてか、民進党への態度を一変させた。まあ小池百合子ならずとも誰だって、民進党にすり寄られては票を減らすだけの逆効果しかないと計算するのは当然だ。

 しかし民進党の醜態は今に始まったものでもない。今回私がもっとも腹を立てたのは、区長選で現職の5選が決まった直後に共産党・小池晃が発した下記のTwitterだった。
https://twitter.com/koike_akira/status/828200072227598337

小池晃
@koike_akira

歴代の自公都政に対する、都民の深い怒りが示されました。
都議選本番へ。
石原、猪瀬、舛添都知事と正面から対決してきた17名の共産党都議団をもっと大きくしなければ!

3:14 - 2017年2月5日


 「石原、猪瀬、舛添都知事と正面から対決してきた17名の共産党都議団」って、「小池都知事」とは正面から対決してないのかよ、と突っ込みたくなった人間は私だけではあるまい。

 東京の共産党は小池晃ならぬ小池百合子一派の「補完勢力」かよ。そう思った。

 なお、東京の共産党に関しては、2003年から2009年までの3度の衆院選で東京11区(板橋区)から立候補したことのある現東京都議・徳留道信が、「いたばし区民タイムス」に寄せた年頭の挨拶で小池百合子を持ち上げまくっていたことも知った。板橋といえば、ナノ純銀除染のトンデモを批判した共産党区議が昨年11月に共産党を除籍された一件があった。当時除籍された松崎参(いたる)区議は小池百合子にすり寄るのではないか、筆坂秀世みたいに「右転落」するのではないか、等の「下衆の勘繰り」を共産党支持者から受けたことがあったが、何のことはない。「右転落」していたのは共産党そのものの方だった。松崎区議は、Twitterで福留道信の挨拶文を批判したことからもわかる通り、小池百合子に対して批判的であり続けている。

 今回の区議選で朝日新聞NHKの出口調査が報じられた。朝日によると、

 小池氏が、政党と関係なく幅広く支持されている状況も浮き彫りとなった。自民支持層の83%、民進支持層の86%、無党派層の85%などが「支持する」と回答。都議選で小池氏の地域政党に勝ってほしいかを聞いたところ、72%が「勝ってほしい」と答えた。

とのこと。またNHKによるとNHKの出口調査によりますと、

石川さんは自民党支持層の60%あまり、民進党支持層の60%あまり、公明党支持層の70%台後半、共産党支持層のおよそ70%の支持を得ています。

とのことだ。

 だから蓮舫や長島昭久や松原仁といった民進党右派(右派以外もだろうが)のみならず、共産党都議の徳留道信や、それどころか小池晃までもが小池百合子にすり寄るのかもしれないが、こんなにはっきりと彼らの末路が見えているのに、小池百合子にすり寄るという最悪の自滅の選択肢をなぜ彼らが自分から選ぶのかさっぱりわからない。

 このままでは、「野党共闘」も「新・新進党」に呑み込まれて(回収されて)一巻の終わりになりかねない。というより現状の延長線上には「一巻の終わり」以外の結果はあり得ない。「新・新進党」は間違いなく改憲政党になるから、安倍晋三最大の野望である改憲は実現してしまうに違いない。

 またぞろ「崩壊の時代」というフレーズを思い浮かべずにはいられない。「崩壊の時代」の大きな特徴として、個人には正気を保っている者もいるが、組織全体がおかしくなることが挙げられると思う。先の戦争中の日本ではあらゆる組織がそうなった。

 民進党はもちろん、共産党までもがそれに当てはまろうとしている。
 ついにアメリカ大統領に就任してしまったトランプの話題に明け暮れた1月が終わろうとしている。

 どうやら「パンドラの箱」が開いてしまったらしい。とんでもない時代が幕を開けたな、というのが偽りのない感想だ。

 この期に及んで、TBSやテレビ朝日など私が日頃視聴するテレビ局のニュース番組は、アメリカ共和党に近い日本人に「トランプは意外と人の話をよく聞く人だ」などと言わせたりして「意外な常識人」「今後現実的な方向に転換する」というイメージを定着させて視聴者を安心させようと躍起だが、トランプの現実の行動がことごとく日本のマスコミの楽観的な予想を覆していっている。

 特に頭が痛いのは安倍晋三だろう。今後間違いなく予想させることの一つが、1990年前後に日本を悩ませた日米貿易摩擦の再現だ。当時、日米構造協議でアメリカに譲歩しまくったことで悪名高い小沢一郎は、下記のようなコメントを発している。なぜか日刊スポーツが先週報じた(共同通信の配信か何かだろうと思うが)。
http://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/1769732.html

小沢氏「経済的な切り口で…」トランプ大統領に言及

 自由党の小沢一郎共同代表は24日の定例会見で、トランプ米大統領について、今後、経済面で、日本に対する「物言い」が増えてくるのではないかという見立てを披露した。

 小沢氏は、「(トランプ氏は)日本でいう経団連的な(組織の)既存のメンバーということではないんでしょ。(会社は)父親の代からだそうだが、自分で、たたき上げで財産をつくった感じの人なんでしょう」と指摘。「それだけに、同じ金持ちであっても、彼自身が既存の政治経済の仕組みや、ルールに対して反発を持っているかもしれない」と述べた。

 その上で「政治的な面で、あまりとっぴなことをすると騒ぎになってしまうから、そうそう大きなことをやるとは思わないが、経済的な面の切り口では、結構なんやかんや、やってくるんじゃないかな」と予測。「日米間でも、安保(などの問題)もあるが、貿易の摩擦が大きな焦点になる可能性があるとすれば、そういうことではないかという気がする」と述べた。

 「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げるトランプ氏は、対日貿易に関し、日本や日本企業を名指しで批判するなど、強硬姿勢を崩していない。23日には、オバマ政権で合意していたTPP協定から「永久に離脱する」とした大統領令にサインした。

(日刊スポーツ 2017年1月24日22時32分)


 小沢が日米構造協議に関わった時のアメリカ大統領は、父親のほうのブッシュだったが、その20年前にはニクソンと佐藤栄作の日米繊維交渉があった。この時にアメリカに大きく譲歩したのは佐藤内閣の通産大臣・田中角栄だった。この時には佐藤栄作得意の「密約」が交わされたが(密約の中身は若泉敬が自殺する前にメモを焼却してしまったらしく、歴史の闇に葬られてしまった)、角栄の前の通産大臣だった宮沢喜一はこれを歯牙にもかけず、アメリカに対して強硬な対応をとってもつれていたところを、後任の通産大臣に就任した田中角栄が思い切った対米譲歩で解決させた。これらはいずれも米共和党政権時代のことだ。これらの歴史的事実を振り返ると、田中角栄や小沢一郎のどこが「自主独立派」の政治家なんだろうかと、「リベラル・左派」諸氏にも好意的に迎えられているらしい孫崎享の議論(私は妄論だとしか思わないが)の確からしさを改めて疑わずにはいられない。

 それはともかく、今後予想されるトランプ政権と安倍晋三政権の交渉は、70年代、90年代に続く、アメリカ共和党政権の(その意味では)伝統的な政策に起因する日米貿易摩擦の難題になることは目に見えている。それは「日米貿易戦争」というべきものになるかもしれない。本音では「自主独立派」(笑)であろう安倍晋三だが、交渉相手のトランプはもちろん、惰性で動く官僚からは対米譲歩の圧力を受けることになる。その一方で産業界からは余計な譲歩をしてくれるなとの圧力を受けることはいうまでもない。安倍晋三にとって、胃腸の不調が続く日々が始まる可能性が高い。前者については、既に朝日新聞が、政府は日米二国間協議を受け入れる方針だと報じている。
http://www.asahi.com/articles/ASK1X5QGQK1XUTFK00C.html

政府、二国間協議受け入れへ 日米首脳会談へ妥協点模索
福間大介、内田晃

 安倍晋三首相は28日深夜(米東部時間28日朝)、トランプ米大統領と電話会談し、2月10日に米ワシントンで初の首脳会談を行うことで合意した。この日、両首脳は約40分間にわたり経済や安全保障全般をめぐって意見交換。電話会談の終了後、首相は来月の首脳会談について「率直な、有意義な意見交換をしたい」と抱負を語った。

 トランプ氏による「二国間外交」重視の姿勢が鮮明になるなか、日本政府は、米国との二国間の通商交渉を受け入れる考えだ。首相は27日の衆院予算委員会で「二国間を絶対に排除するのかと言われたら、そうではない」と述べ、トランプ氏から求められれば日米両政府の通商交渉にも応じる考えを明言。そのうえで「その中でしっかりと軸足を据えて、我が国の国益を守っていく」と強調した。

 安倍政権は環太平洋経済連携協定(TPP)を成長戦略の柱に据えており、米側には引き続きTPPへの理解を求める考えだ。ただ、トランプ氏は就任早々にTPPから「永久離脱」する大統領令に署名。自国に有利な「一対一」の交渉にこだわる発言も繰り返す。このため、日本政府関係者は「首脳会談で『TPPに参加してほしい』と言うだけでは持たない」(政府関係者)と話す。

(朝日新聞デジタル 2017年1月29日01時00分)


 そういえばトランプの就任式の日に、アメリカや欧州の株価が軒並み上がったらしいが、日経平均株価は下げた。この理由として珍説が流布されたので、これを鼻で笑ってしまった。曰く、株価が下がったのはトランプが公共事業の具体的な中身にまで触れなかったためであって、「左傾化」(経済左派化)した日本の投資家が、経済左派的政策である政府支出に関する内容に乏しかったことに失望したのだとかなんとか。こじつけもいいところだろう。もっと単純に、トランプの政策はアメリカの産業界には(短期的な)利益をもたらすが、日本の産業界にはダメージを与えるものであることが明らかになってきたからだろう。

 また、トランプは典型的な白人至上主義の人間であって、ロシアには甘いけれども日本や中国やメキシコには居丈高なのもそのせいだろうとの指摘がある。これはその通りだろう。欧州の株価がトランプの就任式当日に下げなかったのもそのせいだろうと思ってしまった。

 ところで、金曜日の夜にテレビをつけっぱなしで寝てしまったところ、『朝まで生テレビ』が始まり、それで目が覚めて少し音声を聞いていたのだが、森永卓郎が出ていて、彼は子どもの頃アメリカに住んでひどい人種差別を受けたことがあるのでトランプは大嫌いだと言っていた。その後再び寝てしまったので、番組で誰が何を言ったのかを確認するために2ちゃんねるを覗いてみたところ、「森永はアメリカのどこにいたんだよ」とか、うろ覚えだがそんな書き込みがあった。森永がいたのはボストンだ。小学1年生の頃に住んでいた。ボストンはWASP(ホワイト、アングロサクソン、プロテスタント)の根城であって、人種差別がひどいのは有名だ。出張でボストンに行った同僚からも体験談を聞いたが、アメリカは西海岸にしか行ったことがない私は、話に聞くボストンの有色人種差別は本当なんだなあと思ったものだ。

 ただ、その体験談を話してくれた人もそうだったが、自分が白人に差別される側であることが、現に差別を受けてさえピンとこないようだった。今、日本にも少なくない(前回の記事のコメント欄にも見られた)トランプ擁護論者も同じではないか。私には、人種差別論者に迎合する倒錯した趣味だとしか思えないのだが。私は何も人種主義者や民族主義者ではないが、理不尽な人種的偏見をもってかかってくる人間に対する強い反発はある。そんな人種差別論者にまともな政策の持ち合わせがあろうはずはない。現にトランプはグローバル資本主義(この言葉について、「グローバリズム」とするより「グローバル資本主義」と正しく表記すべきだと考えるようになった)に対して敵対的ではあるが、他国がアメリカより強い軍事力を持つことを許さないという軍国主義者であり、国内の経済政策においても、法人税の大幅減税や所得税の累進制の大幅緩和に典型的に見られる通り、大企業や富裕層を優遇し、それでなくても目のくらむほどの格差社会であるアメリカの格差をさらに拡大する政策を掲げている。こんなトンデモ政治家を支持したり擁護したりする人間が後を絶たないことは驚き以外のなにものでもない。

 私は、トマ・ピケティの言う通り、国際主義的な反グローバル資本主義(政治家や政党でいえば、サンダース、コービン、ポデモスなど)にしか希望はないと考えている。「野党共闘」もこの方向に向かうべきだろう。右派民族主義的な自由党や民進党左派には少なからぬ抵抗があるだろうけれど。言葉本来の意味での「ポピュリズム」は認める立場だ。

 トランプを支持したり擁護したりするのは、戦前の社会大衆党的な誤りだと思う。日本でいえば、植草一秀を筆頭とする「小沢信者」に特に目につくが、この傾向が何も「小沢信者」に限らないことは、先週の記事へのコメントからも明らかだ。また世界的にも、エマニュエル・トッドやオリバー・ストーンの例がある。

 また、同じ「反安倍・反自民」であっても、私がしばしば「括弧付きの『リベラル』」と呼ぶ「都会保守」的な人たちの間に多い、東京都知事・小池百合子に期待することもまた誤りだ。小池はグローバル資本主義の推進者に他ならないからだ。小池が愛用している手法であるテレビを味方につけての宣伝は「悪しきポピュリズム」以外のなにものでもない(この点ではトランプとも共通している)。日本の政治勢力でいえば、民進党右派(蓮舫や野田佳彦)が小池百合子への親和性が強い。民進党右派は、本音では「野党共闘」から抜けたがっている。彼らは、公明党や自民党内の反安倍分子(たとえばかつて新進党に所属していた石破茂ら)を味方に引き入れて、「新・新進党」を結成したい野望に充ち満ちているように見える。小池百合子に心惹かれる人たちには、「野党共闘」と「小池百合子との共闘」とは絶対に両立しないという冷厳な事実を直視せよ、と言いたい。

 そんなわけで、今後も反安倍晋三と並んで、反トランプと反小池百合子の記事を当分の間書き続けることになるだろう。
 予想通り、危険極まりない人間がアメリカの大統領に就任した。そう思った。

 日本のエスタブリッシュメントの主流派は、トランプが大統領選に勝った直後から、トランプはいざ大統領になったら現実的な政策をとるだろう、などと根拠のない楽観論を振りまいてきた。それに釣られるように、大統領選の結果が出た当日の日経平均暴落は、翌日の急騰で瞬く間に帳消しになってお釣りまで出て、その後もずっと株高・円安で推移して安倍晋三内閣のさらなる支持率上昇をもたらした。私はトランプの当選をある程度覚悟していたから、大統領選当日の暴落もナンセンスだと思ったし、翌日以降の根拠なき楽観論も馬鹿にしていたので、そんなことで株価が上がるのかと、正気を失った感のあるマーケットに呆気にとられていた。あれだと、いわゆる「ハゲタカ外資」ならずとも、日本の株式市場で労せずして利益を得るトレーダーは多数いるのではないか。理性を感じさせない株価の乱高下は、日本経済が競争力を失いつつあることと表裏一体のように思えてならない。

 トランプは、予想通りTPPからの離脱を表明した。何より「アメリカ」「アメリカ」と連呼し、"Make America great again"と叫んだ。噴飯ものだったのは、自らもエスタブリッシュメント(既得権層)の一員でありながら、「権力をあなた方に取り戻す」と強調したことだ。トランプは、自ら最高権力者でありながら、自分以外のエスタブリッシュメントに対して抜きがたいコンプレックスを持っていて、それに「下から」反発しているかのようだ。

 損なトランプから連想される人間が1人だけいる。そう、安倍晋三だ。トランプも安倍晋三も「下から目線」の独裁者だと思う。

 一昨年(2015年)7月6日付の当ブログの記事「『安保法案』議論、批判側には『知』も『情』も欠けている」に、國分功一郎氏の指摘として、立憲主義による「上」からの権力の制限に安倍晋三が「下から」反発しているという見方を紹介した。これは言えていると私も思った。

 要するに安倍晋三もトランプも、ともに頭は相当に悪いけれども政治家三世(二世)なり実業家二世なりの恵まれた環境でわがまま一杯に振る舞ってきた「お坊ちゃん」だ。それが、「反知性主義」(エリート主義に対する反発)の波にも乗って最高権力者にのし上がった。

 安倍晋三を「4年早いトランプ」と評した『広島瀬戸内新聞ニュース』は、トランプ就任時にも安倍晋三との類似点を下記のように指摘している。
http://hiroseto.exblog.jp/25210591/

(前略)イギリスやドイツ、イタリアでは、大衆運動的な政治運動としてポストモダニズムの崩壊が現れています。
他方、日米では、「30年前の日本(アメリカ)を取り戻す」的な風潮が強まり、そうした中で、古くさく、なおかつ、本人は政界の中ではエリートではない人がウケているという状況になっています。

 総理・総裁と言えば、そうはいっても官僚かジャーナリストか弁護士出身者が多い。
二世議員でも、たとえば、新聞記者くらい経験している場合も多い。
(細川元総理も朝日新聞記者出身です。村山元総理も地方とは言え自治労の書記という形で役人の世界は経験しています。)
要は、行政の経験があるか、筆が立つか、弁が立つか。あるいは、田中角栄のような鬼才か。
そうでなかったとしても、学歴で言えば東京早慶のどれかには該当する場合がほとんどである。

それなしで、国会議員、ましてや総理というのは大変なことです。
そうした中で、安倍総理の経歴は歴代総理の中でも異色と言えるでしょう。

トランプさんも、議員(政治家)経験も軍人経験もゼロ。これまた史上初だそうです。

そういう「非エリート」のお坊ちゃまが持ち上げられる風潮。これが、日米に共通しています。

そして、政策志向も、安倍総理もトランプさんもそっくり。

安倍さんの場合は、1980年代頃を取り戻すイメージ。ずばりいえば、金丸信らが権勢を振るっていた時代を取り戻すイメージです。

トランプさんの場合も、NAFTAが出来る前、それなりにまだアメリカの製造業が残っていた時代を懐かしむ人々の思いの受け皿になったのです。

安倍政権の閣僚や自民党議員の暴言、トランプさんの暴言・失言も、共通して言えることがあります。
30年前だったら、当たり前にされていたような発言。逆に言えば「金丸信から進歩がない」ということです。

金丸信は「ばらばらアンテナ」なんて言ってましたがそれに類することを安倍政権の閣僚もトランプさんも言っているわけです。

ポストモダンへの反発の勢い余って、人権や民主主義が失われるという危機。

(『広島瀬戸内新聞ニュース』2017年1月21日付記事「4年遅れの『安倍晋三』トランプ大統領が就任・・ポストモダンへの反動で『金丸的なるもの』を取り戻そうとする日米」)より)


 いつもながら的確な指摘だと思う。これと比較すると、一時期「小沢信者」たちの間で教祖的に崇拝された(鳩山由紀夫、小沢一郎とともに「政権交代の三種の神器」といった人までいた)植草一秀の「熟読に値するトランプ新大統領就任演説」(2017年1月21日)だの、「日本国民も政治を永田町から取り戻すべきだ」(同1月22日)などは、便所の落書き程度の、鼻で笑うべきクソ文章でしかない。ちなみに、現在では行きがかり上安倍晋三を「アメリカファースト」だとしてこき下ろすしかなくなっている植草は、かつて不遇時代に自費出版した『知られざる真実』にはっきり書いている通り、小泉純一郎には強く反発していたが、紛れもない安倍晋三のシンパだった。その安倍は、一昨年の安保法案可決によって、立憲主義に対する「下からのクーデター」を完遂したし、前述の『広島瀬戸内新聞ニュース』が繰り返し指摘する通り、安倍晋三は小泉純一郎や野田佳彦らと比較すると、ずっと「自主独立派」的な選択をしてきた。例えば安倍は、2013年9月にオバマのシリア空爆を支持しなかった。私は2014年2月27日付の『kojitakenの日記』に、「安倍晋三がシリア空爆支持に慎重だったのは正しいが、靖国参拝は誤り」と題した記事を書いた。2012年に孫崎享がトンデモ本『戦後史の正体』で岸信介や佐藤栄作を「自主独立派の政治家」と絶賛した背景には、当時自民党内で不遇を託っていた安倍と、民主党から飛び出した小沢一郎を組ませて「自主独立派」の政治勢力を作ろうという野望があったとみるべきだろう。安倍に「自主独立派」の可能性を見た(に違いないと私は想像している)のは孫崎享の慧眼であった。結局同様に不遇の安倍に目をつけた橋下徹・松井一郎の「日本維新の会」による安倍晋三のスカウト失敗やら、森喜朗や古賀誠が石原伸晃を自民党総裁に担ごうとした浅はかさやらによって、あれよあれよという間に安倍晋三が自民党総裁になり、さらには総理大臣に返り咲いて長期政権を担うという悪夢の現実になってしまって、植草や孫崎は政権のブレーンになり損ねてしまった。

 なお、『広島瀬戸内新聞ニュース』の記事「【備忘録】第二次大戦の過ちを認めない『対米自立』は危うい」も記録しておきたい。以下一部引用する。

第二次世界大戦の過ちを認めない「対米自立」というのは確かに危ういものがあります。

それは、とりもなおさず、単独軍国主義につながりかねないからです。
むしろ対米従属の小泉純一郎さんをはじめとする過去の自民党内閣のほうがマシということになりかねないのです。

そうではなくて、第二次世界大戦の過ちを認めた上での対米自立でなければならないでしょう。

(『広島瀬戸内新聞ニュース』2017年1月21日付記事「【備忘録】第二次大戦の過ちを認めない『対米自立』は危うい」)より)


 孫崎の『戦後史の正体』は、日本国憲法に7ページ分だけ触れているが、岸信介の信奉者らしく、「押しつけ憲法論」で片付けていた。呆れるばかりである。こんな人間を「戦争をさせない1000人委員会」は、呆れたことに「『安倍政治を終らせよう』1.19院内集会」の講師に招いた。護憲・平和勢力の劣化はこれにきわまれり、と言いたい。

 さて、トランプの話に戻ると、「アメリカ第一」の経済政策もさることながら、もっとも危ないと思ったのは軍拡への強い意欲を表明したことだ。他の国がアメリカより強い軍備を持つことは許さないとトランプは言った。危険極まりない指導者だとしか言いようがない。

 倒錯した「小沢信者」の中には、「ヒラリーは空爆大好き女だが(それは確かに事実だ)、トランプは平和主義者だ」などと抜かす人間がいた。彼らの妄言の逆を考えればいつも正解が得られる。これもまたその典型的な例だ。

 私がもっとも懸念するのは、オバマに対してはそれなりの「自主独立派」として振る舞うこともあった安倍晋三が、トランプにはべったりの関係になるのではないかということだ。昨日の『サンデーモーニング』でも私の嫌いな寺島実郎だったかが指摘していたが、アメリカのことしか考えないトランプにこれまでのアメリカに対するのと同じように追随していては、世界で孤立する可能性がある。安倍ならやりかねないと思った。

 また、『サンデーモーニング』ではトランプの就任演説がヒトラーを思い出させると、これまた私の大嫌いな右派論客・大宅映子が言っていたことにも驚かされた。私も、トランプは安倍晋三ともどもヒトラーになぞらえられるべき政治家だと常々思っているが、それを「右」の大屋映子が口にする。

 別に大宅が「リベラル」に転向したわけでも何でもなく、昔からずっと同じ立場なのであろう。変わったのは「リベラル」や「小沢信者」の方だ。前者に関しては、トランプには与しない「リベラル」の少なくない部分(下手したら過半数)が小池百合子になびいているのも大問題である。最後に、前述の『広島瀬戸内新聞ニュース』の記事「4年遅れの『安倍晋三』トランプ大統領が就任・・ポストモダンへの反動で『金丸的なるもの』を取り戻そうとする日米」の末尾を引用して締めくくりたい。

これに対して、人権や民主主義を守りたいひとたちは、しっかりと格差是正を打ち出すしかないのです。

ニューヨーク州の民主党員知事は公立大の無償化を打ち出しました。

ポストモダニズムに汚染され、信用を失ったアメリカ民主党。
生活不安を持つ人々の声に応える取り組みを積み上げることでしか、人々からの信頼回復はできないでしょう。

日本の野党も、反安倍の勢い余って、小泉純一郎さんや細川護煕さんの愛弟子としてポストモダニズムを一貫して歩んできた現都知事にすり寄るのはこれまた誤りです。

セーフティネットを「企業主義・家族主義」から「個人主義」へ張り替えることを軸とした、格差是正策をきちんと打ち出すことです。

(『広島瀬戸内新聞ニュース』2017年1月21日付記事「4年遅れの『安倍晋三』トランプ大統領が就任・・ポストモダンへの反動で『金丸的なるもの』を取り戻そうとする日米」)より)

 2017年最初の記事になる。今年もよろしくお願いします、との挨拶をするのももはや「僭越」であろう。なぜなら、昨年末にこのブログの幕引きを意識せざるを得ないと書いてしまったからだ。それでもブログを読んでやっても良いという方のために、今しばらくブログを継続したいと思う。とはいっても、幕引きは今のところ今年(2017年)か、遅くとも来年(2018年)のしかるべき時期を想定している。

 1月も今日で折り返し点とはいうものの1年の最初の記事だから、「崩壊の時代」云々は今回は止めておく。今回は、昨年ちょっと気になったことを書くことにする。

 それは、アメリカ大統領選でトランプ勝利が報じられた日及びその翌日以降の日経平均株価の動きだ。

 周知のように、アメリカや日本のマスメディアが全く予測していなかった(私は40%くらいはあり得るのではないかという悪い予感を持っていた)トランプ当選が報じられた日の日経平均株価は、前日から900円以上だったかの下げ幅で暴落し、外国為替市場も円高に振れたが、翌日になると、トランプの当選の弁が選挙選当時の暴言と比べておとなしかったというだけの理由で、トランプは意外と「現実主義者」なのではないかとの根拠のない憶測が広まって、株価は前日の暴落分を帳消しにして余りある1000円以上の上げ幅で急騰し、外国為替市場も大きく円安に振れた。その後しばらくこの流れが続いた。

 私にはこの株価の乱高下はひどく不健全なものと感じられた。まず、トランプの当選が全くの想定外だったという日米のマスメディアと、それを鵜呑みにしたとしか思えない市場の動きに、メディアも市場もともに理性的な判断力を失っているとしか思えなかった。さらに、「トランプ=現実主義者」なる根拠のない楽観論に基づく「ミニバブル」としか思えない株価急騰や円安に関しては、おいおい、大統領はまだトランプじゃなくてオバマなんだから大統領がトランプにならないうちから何も変わるはずないだろ、それなのに市場は根拠もなくトランプに期待してしまって、いったい何を考えてるんだと呆れ返ったのだ。

 案の定というべきか、2017年が開けてトランプは牙を剥いてきた。米大手自動車メーカーや日本のトヨタが、米国向け自動車の製造工場をメキシコに建設するのに噛みついたり、アメリカの対日本・中国・メキシコの貿易赤字に不快感を示して保護貿易の怪気炎を上げてみたり。トヨタの株価が一時暴落するなどしたらしいが、少なくとも日本の株価上昇をもたらしたであろう楽観論には何の根拠もないことが明らかになりつつあると私は冷ややかに見ている。

 昨年12月発売の『文藝春秋』新年号に掲載された福田康夫元首相の「安倍外交への忠告」を本屋で拾い読みして、福田氏もトランプ当選直後の株式市場の乱高下に違和感を持っていたことを知って意を強くした。少なくとも、株式市場の株価は、その時点までに知られている企業の経営状況や景気、それに政治・経済に関する出来事などが織り込まれた最適な値になっているという教科書の説明は、今の日本の株式市場には全く当てはまらないと思った。私には、日本の株式市場はもはや理性とか知性とかいったものを失っている用にしか見えない。

 うまく表現できないのだが、何らかの機能不全が起きているように思う。そしてそれは、安倍晋三という理よりも権柄ずくでメディアを制御する術を知ってしまった権力者が、4年以上も続けて日本の総理大臣を務めていることと何らかの関係があるのではないかとの仮説をこのところずっと持っている。「無理が通れば道理が引っ込む」社会では、いろんな機能不全が生じて当然なのではないかと思えてならないのだ。日本は過去にもそういう時代を経験している。いうまでもなく先の戦争中だ。

 そして、安倍晋三とそっくりの心性と手口の持ち主が、今週アメリカの大統領に就任する。それがトランプだ。『広島瀬戸内新聞ニュース』は「安倍晋三は4年早いトランプだ」と評したが、本当にその通りだと思う。質問には正面から答えず、自分の言いたいことだけ一方的にまくし立てるトランプのしゃべり方は、あまりにも安倍晋三と瓜二つだ。これからはアメリカも、2012年末以降の日本と同様、無理が通って道理が引っ込む国になる。その結果、アメリカの政治や社会の機能不全が一気に現れるかもしれないと予感する。

 安倍晋三のような、本人の能力は低いが祖父のA級戦犯容疑者・岸信介の孫という血筋と、魚住昭の指摘するところの岸の「民族主義」と「選民思想」を受け継ぐが故に右翼に担ぎ上げられた男が好き勝手に独裁権力を振るえる現状は、日本の政治の制度に大きなほころびが生じていることを意味すると思う。もともと世襲政治家に不当なアドバンテージを持っていた日本の政治制度に、やはり世襲政治家である小沢一郎が中心となって「政治改革」と称しつつ衆議院選挙に小選挙区制を力ずくで導入した。その結果制度の欠陥はさらに拡大され、現在の安倍晋三の独裁政治を招いてしまった。これが私の見立てだ。アメリカの場合はまた違った制度の問題があるのだろう。

 最近の『広島瀬戸内新聞ニュース』の指摘するところによれば、

安倍政権が歴代自民党政権や民主党の特に野田政権と比べて取り立てて「対米従属度」が高いとは思えません。

とのことだ。私もそう思う。同ブログは

安保法も、左派・リベラル派の懸念は「アメリカに従属して海外派兵」でした。

しかし、ここにきて、アメリカのいうことさえ無視して、南スーダンへの武器禁輸に対して棄権するなどしています。

と指摘している。

 さらに同じブログによると、安倍はフィリピンのドゥテルテ大統領にミサイル供与を持ち掛け、断られたとのことだ。ドゥテルテは安倍に「第三次世界大戦を見たくない」と言って安倍の商談を断った。フィリピン・スター紙が報じた(下記URL)。
https://sg.news.yahoo.com/duterte-rejected-japan-missile-offer-000000071.html

President Duterte has declined an offer by Japanese Prime Minister Shinzo Abe to provide missiles to the Philippines, saying he does not want to see a Third World War.


 安倍晋三の現状がかくのごとしだというのに、「戦争をさせない1000人委員会」は、呆れたことにあの孫崎享を講師に招いて「『安倍政治を終らせよう』1.19院内集会」を開くという。馬鹿じゃないか。

 なぜなら孫崎とは政治家を「自主独立派」と「対米従属派」に分類し、岸信介や佐藤栄作を前者に分類した人間だからだ。上記『広島瀬戸内新聞ニュース』の指摘する通り、少なくとも安倍晋三は小泉純一郎や野田佳彦と比較すると「対米従属派」より「自主独立派」に近い。そしてより危険だ。現状がそうなのに、5年前に孫崎が叫んだ図式で「アメリカに付き従った戦争反対」を訴えるピンぼけぶりでは、日本の平和運動が低迷する理由もよくわかる。

 平和勢力のピンぼけぶりはさておき、安倍晋三の暴走をこれ以上許さないために、この政権は可能な限り早く終わらせなければならない。この一点においては、私も「ピンぼけ平和勢力」と意見が一致するだろう。

 反安倍晋三・反小池百合子・反トランプは残り少ないかもしれないこのブログの中心テーマであり続ける。
 2016年を振り返ると、政治関係だけでも嫌なことばかりが思い出される。キーワードを挙げていくと、小池百合子、蓮舫・野田佳彦、トランプ、共産党の右傾化。

 「官邸が仕掛けた」との観測もあった「舛添降ろし」に狂奔したのはテレビのワイドショーだった。しかし、前東京都知事・舛添要一が辞任に追い込まれたあと行われた東京都知事選に小池百合子が出馬したのは官邸の想定外だっただろう。極右でもあるが本質的には新自由主義者としてとらえるべき小池という政治家は、テレビ(特に在京キー局。在阪準キー局はさらに後述の傾向が強い)がもっとも好むタイプの人気取り政治家であって、テレビの後押しも得て都知事選に圧勝したが、私がもっとも呆れたことは、「リベラル・左派」に小池を応援する人間が続出したことだ。

 「リベラル・左派」とはいっても、主に都市部に住み、戦争反対には熱心であっても、格差や貧困の問題には比較的関心の薄い人たちが小池応援の旗を振った。どこだったか忘れたけれども、どこかのメディアが行った(おそらく東京都民を対象とした)世論調査によると、小池を積極的あるいは消極的に評価する人たちは実に9割に達するらしい。私はそれには属さないから、小池、あるいは小池を持ち上げるテレビを批判する記事をしばしば書くが、それらの記事は他の記事よりアクセス数が決まって少ない。やれやれ、と思いながら蟷螂の斧を振るっている。

 その小池百合子を応援する人たちと、東京都知事選の3週間前に行われた参議院選挙で東京選挙区から立候補した蓮舫に投票した人たちとは支持層がもろに被るだろう。私は民進党は支持しないが、小川敏夫が当落線上にあり、かつ小川が落選した場合おおさか維新の会公認候補の田中康夫が当選する可能性が高いとのマスメディアの情勢調査報道を知って、田中康夫を追い落とすために小川敏夫に投票した(比例区では社民党に党首の吉田忠智の名前を書いて投票したが落選した)。やっとこさ小川敏夫が当選、田中康夫が落選して胸をなで下ろしていたら、都知事選に小池百合子がしゃしゃり出てきたのだった。小川敏夫の得票の少なさは、今や新自由主義者と右翼で議員の多くが占められるようになった民進党の都市部の支持者もまた、格差や貧困への関心の薄い、人によっては「リベサヨ」と呼ばれる人たちが中心であることを示している。

 その蓮舫が民進党の代表になり、幹事長に財政再建原理主義者の野田佳彦を選んだ。これは、参議院選挙の1人区で、事前のマスメディアの予想との比較において辛うじて成果のかけらを見せることができた「野党共闘」にとって大きな打撃だった。野党第一党のネオリベ(新自由主義)化は、自民党への支持をさらに盤石にする以外の何の効果も持たないからだ。

 経済右派政策を掲げる民進党をそれでも熱心に応援する支持者たちは、私の目にはもはや「民進党信者」としか映らない。支持者が少なくなると原理主義化する点において、後述の「小沢信者」と酷似している。彼らは、なぜ自分たちが支持する政党なり政治勢力なりが支持を減らし続けているのかを理解しようとする姿勢が最初からないように見受けられる。この日記にも一時期「タブクリア」と名乗るコメント投稿者からの批判のコメントをいただいたが、最近になってこのコメンテーターが対話を行うつもりがないらしいことを自らのコメントに明記したので、このコメンテーターのコメント禁止処分を行った。

 以上は主に都市部の「リベサヨ」に絡む話だったが、11月に投開票が行われたアメリカ大統領選で、アメリカのメディアの予想と願望を覆したトランプの当選に、アメリカの保守や右翼や差別主義者と一緒になって大喜びしたのは、植草一秀や、植草に心酔するこの日記のかつてのコメント常連投稿者・「風太」を代表格とする「小沢信者」たちだった。彼らへの批判はこれまでさんざん書いてきたので繰り返さない。

 最後に「野党共闘」について。私は「野党共闘」自体は止むを得ない選択肢だと思う。もともとは野党共闘は相乗効果どころかもともとの支持者が離反する副作用の方が大きいとして批判的に見ていたのだが、前述の参院選の一人区で、マスメディアに激戦が予想された10〜12の選挙区において、愛媛選挙区を除いて全勝した結果を受けて意見を変えた。これらの選挙区において相乗効果は確かに認められたからだ。

 とはいえ、「野党共闘」の旗の下、妥協してはならない部分まで妥協する共産党の姿勢には強い疑問を感じる。先週来首を突っ込んだ、ニセ科学者にして右翼である阿部宣男による「ナノ純銀除染」を批判し続けた東京都板橋区の共産党区議を共産党が除籍処分に付した一件は、板橋の共産党に「ナノ純銀除染」に加担した人間がいるらしい理由のほか、共産党がニセ科学を信奉する自由党の元国会議員にして小沢一郎の側近である平野貞夫に迎合したという要因もあるのではないかと私は疑っている(むろん根拠はない。いわば「陰謀仮説」である)。昨夜(12/25)に『kojitakenの日記』にいただいたコメントによると、25日日曜日の「しんぶん赤旗」8面右下に、4段横半分の『野党協力の深層』(平野貞夫。詩想社発行、星雲社発売。小沢一郎との対談も収録)の広告が掲載されたという。この新書本は、私が三連休初日の23日に本屋で見かけたのと同じ本だと思うが、目次をペラペラとめくってみると、平野貞夫が共産党の志位委員長を絶賛している文章が載っているらしいことがわかった(民進党はこき下ろされていた。但し本文は立ち読みしていない。そこまで私は酔狂ではないので)。

 昨日(25日)、図書館で辺見庸(これも「しんぶん赤旗」的にはタブーの名前だろう)が2013年に書いた小説『青い花』(角川書店)を読み始めた(4割ほど読んだ)。当時の日経の書評(文芸評論家・井口時男氏執筆)によると、「近未来、大地震や大津波に繰り返し襲われた後の三陸を思わせる地域」が舞台で、「どうやら原発事故も繰り返されたらしく、そのうえ近隣国との戦争もつづいている」状態が設定されている。書評は辺見庸を「現代の『無頼派』」と形容しているが、たまたま坂口安吾や太宰治と共に「無頼派」の一人とされた石川淳の「無尽灯」(1946)を含む短篇集を並行して読んでいるところで、2人の小説の印象は確かに被ったので、「現代の『無頼派』」とは確かにその通りだな、と思った。その辺見の『青い花』に、こんな一説が出てくる。

祖国防衛戦争の位置づけをめぐって共産党がやはり分裂したという。主流派は救国統一戦線形成を呼びかけている。事実上の祖国防衛戦争支持である。どのみちこうなるとおもっていた。
(辺見庸『青い花』(角川書店,2013)69頁)


 この小説は民主党政権末期の2012年に書かれたと思われる。当時、共産党が戦争支持なんてまさか、と誰もが思ったに違いない。私がこの小説の雑誌掲載(『すばる』2013年2月号)当時に読んだとしてもそう思っただろう。しかし、それから4年経った今読むと、「今の共産党ならやりかねない」と思わせるものがある。但し共産党は分裂などしないだろう。一枚岩で「祖国防衛戦争」を支持するに違いない。

 4年前に今を見通していたといえば、2012年に「崩壊の時代」の到来を予言した坂野潤治を思い出す。2012年12月が1937年7月に相当するなら、今はもう1941年7月ということになる。もちろん歴史が正確に繰り返すはずもないからあまり意味のない対比かもしれないが、大変なことが次々と起こるのはこれからではないか、との暗い予感をせずにはいられない。そんな気分のうちに2016年が過ぎて行こうとしている。

 今年も、「皆さま、良いお年を」との締めくくりの挨拶を書く気にはなれない。