きまぐれな日々

鳩山由紀夫新首相が誕生した。2006年以来、年中行事になった9月の新首相誕生だが、今年は民主党政権発足ということだけは新味がある。しかし、元総理の息子だの孫だのという世襲総理大臣の誕生としては4年連続である。その意味では新味はない。しかも、藤井裕久を財務大臣にしたことに象徴されるように、閣僚人事は安全運転に徹していて、政治主導どころか財務省主導になってしまうのではないかと危惧される。

でも、そのような懸念を書くなら当ブログよりずっと辛辣で痛いところを突くブログがいくつも存在する。当ブログがその土俵に上がりたいとは思わない。

それより、昨日ネットで見かけたある記事が印象に残った。

天野礼子氏の「祝・政権交代!"八ツ場ダム中止"と"ダム撤去"」と題する記事である。

八ツ場ダムについては、このところ毎日のようにテレビのニュースで取り上げられている。どちらかというとダム建設推進派の視点からの報道が多い。つまり、民主党政権の政策を批判する立場に立っている。

しかし、2001年に岩波新書から『ダムと日本』を上梓した天野さんは脱ダム派である。当時は、田中康夫が長野県知事に当選した翌年で、脱ダムの動きが世の注目を集めていた。私も当時この本を読んだ。

その天野さんは、次のように書く。

鳩山さんの「ダム中止」は、彼が2000年に私に依頼して「公共事業を国民の手に取り戻す委員会」を代表の特別諮問機関として発足させた時からの路線で、2000年11月1日に、この委員会が作った報告書「緑のダム構想」を持参して川辺川現地入りをされた時に始まっています。

民主党はその委員会と共に、コンクリートのダムに依らず、「緑(森林)のダム」をつくって治水しようと決めたわけです。

「ダムに依らなくても治水はできる」「利水上もこれ以上の水資源は必要ないにもかかわらず、"多目的"と称してダム造りが続けられたのは、政官財癒着腐敗の図式にあった」「ダムによる自然破壊は、ダム造りが始まった頃に予想されていた被害に比べて大きすぎる」ことが、ダムが中止される理由です。

(天野礼子の「環境と公共事業」?「祝・政権交代!"八ツ場ダム中止"と"ダム撤去"」より)


これを読んで、昔、私が民主党に期待を寄せていた頃のことを思い出した。その後、民主党には幻滅させられることの方が多かったが、そういえば脱ダムの政策があったなと記憶をよみがえらせた次第だ。

しかし、こう書いたあと、天野さんは注文をつける。

オバマ政権と民主党の今のところの違いは、日本の民主党はまだ従来の公共事業に代わる「グリーン・ニューディール(緑のたて直し策)」を提案できていないことです。
「ダム中止」では予算が減額するだけですが、「ダム撤去」なら、新たな公共事業が発生します。それがグリーン・ニューディールです。そしてその工事代金がどこから捻出できるかが問題でしょう。

社民党の福島党首は「軍事費の削減」に目をつけておられます。これも巨額です。アメリカの傘の下にいるのに今ほどの軍備をしているのは「アメリカに買わされているだけ」とも見えます。「グリーン・ニューディール」で、経済をまわしてゆく策を考えることが、日本民主党の急がれる仕事と思います。

私自身は、「軍事費を減額すれば、いろいろなことに使えるのに・・・」と思っている一人です。


そうだよなあ、「ダム中止」だけだったら、民主党お得意の「ムダを省く」だけで、「小さな政府」路線でしかないよなあと思う。そして、私もまた、軍事費を削減していろんなことに使え、と言う社民党の福島瑞穂党首に共感するものである。

天野氏のエントリは、このあと長良川河口堰の撤去運動の話へと移る。これは、昔から元朝日新聞の本多勝一記者が熱心に追及していた件だ。私も、本多氏の著書でこの件に関する記事をずいぶん読んだ。本多勝一は、イデオロギーを語る文章にはあまり感心しないが、こういう件だとか教育問題を取り上げると本領を発揮する。本多氏が2002年の民主党代表選を論評して、北海道知事時代に開発利権に絡んでいた横路孝弘を批判し、民主党代表には菅直人か、さもなくば若手を起用せよと主張していたことを思い出した(この時は菅直人が代表に就任した)。ちなみにこの頃だったかこの少し前だったかに、『週刊金曜日』で本多勝一は小沢一郎と対談して意気投合していた。

それにしても、天野さんの記事にある、

農水省はすでに「生物多様性戦略」を発表し、そこには「不適切な農薬・肥料の使用、経済性や効率性を優先した農地・水路の整備、埋め立て等による藻場、干潟の減少など一部の農林水産業の活動が生物多様性に"負の影響"を与えていた」と書かれており、なんとそこには、諫早水門閉め切りの写真が載せられています。

という記述には驚いた。農水省の官僚にだって良心はあるのだ。

グリーン・ニューディールにもっと積極的に舵を切れ、というのが天野さんの主張であるように読みとれる。そういえば、周知のように、鳩山政権は温室効果ガス削減の中期目標として、1990年比25%削減を打ち出している。

「Living, Loving, Thinking」のエントリ「25%」は、エントリの後半で上述の天野礼子さんの岩波新書を取り上げているが、メインはタイトルにもなっている民主党の温室効果ガス削減目標値に関する論評であり、

これを聞いたとき、環境政策の名を借りた産業政策或いは経済成長政策なのではないかと思ったのだ。高いハードルを設定して、環境関連の技術革新を一気に加速させ、高付加価値の商品を開発してゆくこと。しかし、(本来は美味しい話である筈なのに)経団連は懐疑的で、さらに民主党の支持基盤のひとつである労働組合も(資本家と一緒になって)これに対して懐疑的なスタンスを示しているという。

との指摘には、強い説得力を感じた。そして、

また真に問題なのは、エネルギーの供給と分配の体制を集権的・独占的な〈ハード・エネルギー・パス〉から(30年以上前にエイモリー・ロビンスが唱えた)分権的で小回りの利く〈ソフト・エネルギー・パス〉へと転換する道筋を呈示すべきなのに、社民党も民主党もまだはっきりと明示していないということだろう。

と指摘しているのだが、この論点については、私は金子勝氏や飯田哲也氏の論考に教えられて、30年前どころか約1年前に初めて認識したばかりであった。不勉強を恥じ入る次第である。

それはともかく、財政再建路線重視を匂わせる鳩山内閣の閣僚人事への批判はあるにせよ、新政権の環境・エネルギー政策を注視したいと思う今日この頃である。


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天野礼子さんは、釣りのほうでも著名な方ですね。一度、NHKで各地の伝統的なクロダイ釣りの釣法を紹介する番組のリポーターとして出演もされたいました。
自然に対して、鋭い感性の持ち主の方だと思いました。

2009.09.16 22:42 URL | ・ #sSHoJftA [ 編集 ]

あのダムの地元住民は補償金も家も貰ってるのに、何故にダム建設に熱心なんですかね?
国家財政も経済も右肩下がり、でもダム等の公共施設の維持費へ半永久的に費やされるお金は右肩上がりなのに。
 
少し前のテレビ東京「WBS」のインタビューで、清水建設の社長が、
「自然災害のリスクは欧米と比べて日本は遙かに高い。公共投資がGDPに対して欧米と同じなのはあり得ない。公共投資をすべき」
と言っていましたが、本当なんですかね?
仮に本当でも、当分は景気悪化が確実な日本にそんな余裕はありませんよ。

2009.09.17 01:07 URL | 与志 #- [ 編集 ]

私も新政権にはできれば期待したかったのですが原子力政策に関しては自民党とまったく変わってなくて失望しています
連合の事務局長に電力総連の人が登用されたから嫌な予感がしてましたが・・・

連合が「原発新設」容認へ 民主シフト鮮明に
http://sankei.jp.msn.com/life/environment/090916/env0909160134000-n1.htm
「もんじゅ」研究開発を継続=民主の原子力政策の一環-川端文科相
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090917-00000036-jij-soci

もちろん、社民党が連立に参加してますし自公政権に比べれば民主党内にも脱原発派は多いのでマシといえばマシなんでしょうが・・・

2009.09.17 09:47 URL | エンハウ #- [ 編集 ]

政権発足にあたって左系ブロガーがほとんど狂信者の如く革命の成就と喜んでいるのはまったくうんざりで、4年前の裏返しをやっているだけでただただ見るほうが恥ずかしくなってしまい、冷静に物事を見つめられる言論の少なさにあきれてしまいます。何事も一歩ずつ進むしかないですし、後退することすらあるのでしょうから、シニカルにもならず熱狂もせず、見守っていくしかありません。

まあ、今の様子だとあの連中は、政権交代でも何も変わらないと幻滅する側と、あくまで狂信者であり続ける側とが内ゲバをおこし、政権が倒れるときには攻撃派と陰謀論派で血みどろの抗争を繰り広げることでしょう。

2009.09.17 14:45 URL | 茅野 #- [ 編集 ]

環境で言うと、リアルに議員として主張していた
中村敦夫が国会にいないのは悔やまれる。

2009.09.17 19:19 URL | 観潮楼 #- [ 編集 ]

原発行政:福島氏の見直し発言、経産相「ノー」 閣内で早くも温度差
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090917dde007010070000c.html

直嶋の態度がすごく官僚的・・・

2009.09.17 21:26 URL | エンハウ #- [ 編集 ]













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