きまぐれな日々

(副題:「ナベツネと靖国と安倍晋三と(その3)」)

あまりのことに、ビックルを一気飲みすることも忘れてしまった。

昨日の深夜、何時間もかけて、「ナベツネと靖国と安倍晋三と(その2)」を書き上げた時、まさか日経新聞が靖国問題に関する大スクープをしていようとは、思いもよらなかった。
しかもその日経のスクープは、先日、美爾依さんの「カナダde日本語」(「安倍は靖国参拝を公私混同している」などの記事)と、いわばキャッチボールをしながら取り上げた、「A級戦犯の靖国神社への合祀に昭和天皇が激怒したのではないか」という件にかかわるものではないか。
私がブログを始めて以来、あっと驚くことの連続なのだが、それにまた新しい1ページが加わった形だ。7月20日の当ブログへのアクセスは、ブログ開設以来の最大値となった。それは、7月5日の記事「靖国神社と昭和天皇」のタイトルの効果か、Googleで「昭和天皇 靖国」のキーワード検索をすると、当ブログが5番目に引っかかったためだ。

以下、日経のスクープを「NIKKEI NET」から引用する。

『昭和天皇、A級戦犯靖国合祀に不快感・元宮内庁長官が発言メモ

昭和天皇が1988年、靖国神社のA級戦犯合祀(ごうし)に強い不快感を示し、「だから私はあれ以来参拝していない。それが私の心だ」と、当時の宮内庁長官、富田朝彦氏(故人)に語っていたことが19日、日本経済新聞が入手した富田氏のメモで分かった。昭和天皇は1978年のA級戦犯合祀以降、参拝しなかったが、理由は明らかにしていなかった。昭和天皇の闘病生活などに関する記述もあり、史料としての歴史的価値も高い。』
(NIKKEI NET 2006年7月20日 7時00分)

この富田元宮内庁長官のメモについて、「昭和天皇独白録」の出版に携わった作家・半藤一利氏は、次のようにコメントしている。

『メモや日記の一部を見ましたが、メモは手帳にびっしり張ってあった。天皇の目の前で書いたものかは分からないが、だいぶ時間がたってから書いたものではないことが分かる。昭和天皇の肉声に近いものだと思う。終戦直後の肉声として「独白録」があるが、最晩年の肉声として、本当に貴重な史料だ。後から勝手に作ったものではないと思う。

 個人的な悪口などを言わない昭和天皇が、かなり強く、A級戦犯合祀(ごうし)に反対の意思を表明しているのに驚いた。昭和天皇が靖国神社に行かなくなったこととA級戦犯合祀が関係していることはこれまでも推測されてはいたが、それが裏付けられたということになる。私にとってはやっぱりという思いだが、「合祀とは関係ない」という主張をしてきた人にとってはショックだろう。』
(asahi.com 2006年7月20日 11時12分)
A級戦犯合祀およびそれに対する昭和天皇の感情の件は、実はブログで取り上げたあとも、ずっと気になっていた。読売新聞のナベツネと朝日新聞の若宮氏との対談本でも、この件は話題に上がっていた。

若宮氏はこう言っている。

『渡辺さんが先ほどおっしゃったように、厚生省の援護局からA級戦犯の「祭神名票」(戦没者を靖国神社で合祀するため、対象者の氏名や所属した部隊名を記入した書類)が靖国神社の方に渡されたのが1966年です。当時の宮司は山階宮家から臣籍降下した元皇族の筑波藤麿氏で、彼が宮司をしていた間はA級戦犯を合祀しなかったため、結局、12年間たなざらしになっていた。
 (中略)ところが、その筑波さんが急逝され、後任の宮司に松平永芳さんが就いた。元海軍少佐で自衛隊の幹部もした松平さんは、東京裁判を真っ向から否定している人で、就任後、直ちにA級戦犯合祀に動き、78年10月に実現しました。
 A級戦犯の合祀について昭和天皇が側近に「山階ならああいうことはしなかっただろうな」と語ったという話を、ある有力政治家から聞いたことがあります。松平宮司になってA級戦犯を合祀したことへの、不快感の表明だったのではないですか。現にその後、昭和天皇は靖国に行ってませんし、いまの天皇陛下とあわせると四半世紀以上も靖国神社に参拝していないですね。だから、私も国民統合の象徴である天皇陛下が晴れて追悼に行けるような、新しい国立施設をつくったらいいと主張しているんです。それなら、外国の元首に来てもらえるでしょう』
(渡辺恒雄vs.若宮啓文 「靖国」と小泉首相=朝日新聞社、2006年=より)

この若宮氏の主張に対し、ナベツネは、「それに関しては全く同感です」と答えている。二大新聞の両最高責任者は、ともに、昭和天皇がA級戦犯の靖国への合祀に不快感を持っていたと認識していたということだ。

但し、この件については、従来は確証がなかったようだ。だから、同じ本の巻末におさめられた資料には、こう書かれている。

『昭和天皇が参拝を再開したのは52年10月。そして、75年11月を最後に参拝は途絶える。理由は明確でないが、78年のA級戦犯合祀と関連しているとの指摘がある。』
(前掲書より)

今回の日経のスクープは、この推測を裏付けるとともに、櫻井よしこ氏ら、一部の右翼的論客が主張していた、「天皇が靖国を参拝しなくなったのは、中国などの外圧に配慮したもの」という説を否定し、小泉純一郎や安倍晋三に打撃を与えるものだといえるだろう。

小泉や安倍同様、日経のスクープで打撃を受けたと思われるのが、産経新聞である。
http://www.sankei.co.jp/news/060720/sha060.htm

以下引用する。

『政府は、小泉純一郎首相の靖国参拝に関しては「首相自身が判断するもの」(安倍長官)との姿勢だが、首相の参拝に反対する勢力が、今回のメモ発見を利用し、勢いを増すことも想定される。またメモ発見が、首相の靖国参拝に反対している中国の高官が、「A級戦犯分祀論」を唱える自民党の古賀誠元幹事長に賛意を示したばかりというタイミングの問題もある。』
(Sankei Web 2006年7月20日 16時00分)

産経は、日経のスクープが、中国や古賀誠らの謀略であるかのような書き方をしている。なんとあきれた卑劣な報道姿勢であろうか。こんな記事は「報道」の名に値しないだろう。日本の右翼は、ここまで堕落したのだ。

最後に、資料として、戦後の昭和天皇の靖国神社参拝の記録をあげておく。

1945年11月20日 臨時大招魂祭
1952年10月16日
1954年10月19日 例大祭
1957年 4月23日 例大祭
1959年 4月 8日 臨時大祭
1965年10月19日 臨時大祭
1969年10月20日 創立100年記念大祭
1975年11月21日
※今の天皇はなし
(渡辺恒雄vs.若宮啓文 「靖国」と小泉首相=朝日新聞社、2006年=より)

(「ナベツネと靖国と安倍晋三と」のシリーズは続けますが、次回は来週にします)
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私も正直言って、天皇がA級戦犯の合祀に遺憾の意を表わしていたという記事が新聞でこのように大々的に取り上げられるとは驚きました。昨日は全くブログにアクセスできなかったのですが、そのおかげでアクセス数も1000を超えていました。Kojitakenさんのアクセスも昨日はすごかったし、今もすごい勢いで伸びていますね。

そこで提案ですが、KojitakenさんもFC2のブログランキングの政治部門に参加されませんか?ランキングを見てブログに来る人も結構いるのではないかと思います。

あと、FC2ではアクセスからランキングを決めるアクセスランキングもあります。
http://blog.fc2.com/community-9.html
私は、政治・経済で登録しています。Kojitakenさんもそうだと思ったけど、ランキングに載っていないので、きっと違うジャンルで登録しているのでしょうか?政治・経済は登録者数も少ないので、上位に比較的簡単にくいこめます。是非、お試しください。

2006.07.21 03:15 URL | 美爾依 #- [ 編集 ]

昭和天皇メモの件です。
『慎重に、とにかく慎重に。』
が私の意見です。
確か「大和ごころ ときどき」さんのブログにも書いてありましたが(右派思想のブログですが、反新自由主義・反小泉安倍で一貫しています。社会民主主義や左派思想にも通ずる方だと私は思っていますが…)
『ネオリベ推進派であり親米売国の「日本経済新聞」』のスクープである事に注意しまければなりません。
前記「大和ごころ」さんは確か「これで小泉安倍は靖国に行かなくてすむだろう。要するに逃げのための手段として使った」みたいなことを仰ってました。
成る程。
日経は小泉礼賛新聞です。

ですから私たちも慎重に対処せねばならないと思うのです。
「前原永田のメール問題」
もありましたから。

2006.07.21 11:56 URL | 匿名希望(すみません) #- [ 編集 ]

美爾依さん
Googleによる「昭和天皇 靖国」の検索で、上位にマスコミのサイトがずらっと入っていたため、弊ブログは51番目に落ち、アクセス数は平静を取り戻しつつあります(笑)。
ブログランキングの政治部門は、実は政治の知識に本当の自信がなかったので参加していなかったのですが(笑)、AbEndをやっている以上、そんなことは言ってられませんよね。今日の記事を書いたり各所をめぐったりしたあと、参加の手続きをしてみようと思います。

匿名希望(すみません)さん
美爾依さん、ハムニダ薫さん、カマヤン、たんぽぽさんのところでもお見かけしました。
ご親切はありがたいのですが、やはりブログを開設して記事をAbEndにTBされたほうが良いと思います。ブログは、とりあえずFC2をおすすめします。他のブログのことはよくわからないのですが、FC2はブログ3か月目の私でも、結構使いやすいなあと思います。
あと、今回の件は永田のメールなんかとは違いますよ。昨日、「捏造の証拠を見つけた」と大騒ぎしていたやつらが、今日は「あんなメモなんて」って負け惜しみ言ってます(笑)。

2006.07.22 18:50 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]













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靖国神社参拝固執の小泉より昭和天皇の方が理性的
今日(7.20)の日経一面トップの記事には驚いた。そして私が読み始めてからの日経の過去最大のスクープ記事だ。

2006.07.22 03:03 | 大津留公彦のブログ