きまぐれな日々

昨日(21日)衆議院が解散され、衆議院選挙は8月18日公示、8月30日投票と決まった。与謝野馨財務・金融担当相は解散詔書に署名しないのではないかなどと噴飯もののことを言っていた報道機関があったが、そんなことがあろうはずもない。与謝野はそんなに腰の据わった政治家ではない。

解散の日の常で、マスコミは今回の解散に名前をつけようとしているが、そんなものはあとから自然に決まることだからどうでも良い。苦く思い出されるのは4年前で、投票日が9月11日だったから「自爆テロ解散」だ、などという浮わついた声もあったが、結局自民党の地すべり的圧勝になり、選挙の単一争点になってしまった「郵政民営化」にちなんで、「郵政総選挙」の名前が定着した。

麻生太郎首相は、解散の日になってようやく、コイズミカイカクとの決別を宣言した。朝日新聞の記事から一部を引用する。

政治の責任は安心社会の実現だ。行き過ぎた市場原理主義から決別する。社会保障予算の無理な削減はやめる。徹底した行革をする。国会議員や公務員の削減、天下り・わたりの廃止、行政の無駄を根絶しなければならない。自民党の改革もおろそかにできない。国民から厳しい目を向けられている。国会議員の世襲候補も特別扱いはしない。

(asahi.com 「自民党両院議員懇談会での麻生首相らの発言要旨」より=2009年7月21日)


衆議院議員全員を失職させる直前に、やっとこれが言えたかという思いだ。麻生首相が「行き過ぎた市場原理主義から決別する」と言ったということは、コイズミ以後の自民党政治が「市場原理主義」に基づいていたことを認めたものだ。ただ、これを改めるというのならどのように自民党を変えていくのか、その道筋を示す必要がある。自民党の前職議員は、前回の総選挙で「コイズミカイカク」への熱烈支持を訴えて当選した人たちだから、それは無理だろう。下野してから自民党が「政治右派」(極右)と「経済右派」(新自由主義)の2つの右派政党にでも分かれて党を変えていけばよいと思う。

問題は民主党であって、これまで自民党に対抗するために打ち出していた政策を次々と軌道修正している。これについては、『村野瀬玲奈の秘書課広報室』のエントリ「民主党の政策方針: ここが×、ここが△、ここが○」が詳しい。給油撤退をマニフェストから削除したり、橋下徹に秋波を送ったりして、右派・新自由主義寄りに舵を切ろうとしている。どういうわけか、ネットではこの責を岡田克也幹事長にのみ求めて鳩山由紀夫代表を免責しようとするブログが多いが、責任は鳩山氏・岡田氏双方にあることはいうまでもない。2人は確実に小沢一郎の「国民の生活が第一」の路線を転換しようとしている。小沢路線を継続するのなら菅直人のリリーフしかなかったと思うが、覆水盆に返らずである。

ただ、普段民主党に辛口の当ブログとして民主党の政策の良いところを挙げておくと、農業者戸別所得保障制度や、温室効果ガス2020年中期目標の1990年比25%削減を打ち出した環境・エネルギー政策(これには社民党がさらに先進的な方向に政策を引っ張っていくことを期待したい)、それに情報公開だ。これらの美点をなぜ民主党熱烈支持のブロガーたちが強調しないのか、私には不思議でならない。特に、温室ガス削減中期目標は、経団連や御用労組の意向である1990年比4%増の中期目標と真っ向から対立するものである。一方で、たとえば情報公開により「核持ち込み」の密約を認める代わりに、「非核三原則」のうち「持ち込ませず」を撤回してしまおうという鳩山由紀夫の安直な発想は、せっかくの美点を欠点に変えてしまうものであり、断じて認められない。

あと、全国紙各紙の社説を見てみると、朝日新聞の主張が目を引いた。これにも、評価できる点とそうでない点がある。

評価できるのは、バブルと冷戦終結の年、1989年以降の20年を「失われた20年」として総括していることだ。つまり、社説には明記されていないが、コイズミカイカクを熱烈に支持していた朝日新聞が、コイズミ在任期間を含めて自民党政治の限界を認めた。また、日米関係偏重の政策への批判も説得力がある。以下引用する。

 日米同盟が重要というのは結構だが、それでは世界の経済秩序、アジアの平和と繁栄、地球規模の低炭素社会化に日本はどう取り組んでいくのか、日本自身の構想と意思を示してほしい。それが多国間外交を掲げる米オバマ政権の期待でもあろう。

 現実的な国益判断に立って、国際協調の外交を進めるのは、そもそも日本の有権者が望むところだ。それができなければ、外交への国民の信頼は失われ、日本の国際的な存在感もますます薄れていく。

(朝日新聞 2009年7月22日付社説より)


これからは、過度の対米関係偏重の政策はかえってリスクを高めることをよく認識するべきだ。これは、特に民主党に求めたい。一方で、対米関係偏重からの脱却志向が行き過ぎて反米になり、それと民族主義が結びついて排外主義・国家社会主義に走ってしまうのがもっとも危険である。これを志向する勢力が平沼赳夫一派であるが、民主党は情けないことに平沼が立候補を予定している岡山3区にも、小泉龍司が立候補を予定している埼玉11区にも候補者を立てない。これは、民主党にも平沼一派的なものを受け入れる体質があることを意味するから、民主党政権成立後は特に監視が必要だ。救いは、静岡7区で民主党が斉木武志氏を立て、自民党の片山さつき・平沼一派の城内実の2人と戦うことであり、コイズミチルドレンの片山はもはや当選圏外だろうが、城内は相当な強敵なので、斉木氏にはターゲットを城内に定めての大番狂わせを期待したい。

さて、朝日新聞の社説で全く評価できないのは、16年前の「政治改革」に対する評価である。以下社説から引用する。

 選挙後の勢力図次第で、政局は予断を許さない。自民党内からは政党再編論が早くも聞こえてくる。自民も民主も基本的に差はない、危機には国を挙げて、という理屈だ。

 しかし、政権交代しやすい小選挙制度を導入して15年。民意が政権公約に基づく選択でそれを機能させようというところまできたのに、いきなりその選択を無にしようという発想はいただけない。複雑な大変化の時代だからこそ、選択の結果を大事にしたいというのが有権者の思いではなかろうか。

(朝日新聞 2009年7月22日付社説より)


この期に及んで大連立を模索する自民党は論外だが、現在の政治の惨状は小選挙区制が政治家の劣化をもたらしたものではないのか。党執行部の権力が強まり、個々の政治家の意見が封じられる。今回、自民党の「麻生降ろし」が不発に終わったのも、逆に麻生首相が解散当日になるまで「行き過ぎた市場原理主義からの脱却」を口にできなかったのも、「政治改革」、特に小選挙区制の帰結であったと当ブログは考える。

「郵政総選挙」での自民党圧勝をもたらしたコイズミは、衆議院が解散された21日の衆議院本会議を欠席した。神奈川県鎌倉市の円覚寺で1200人を前に講演をした後、車で東京に向かったが、事故渋滞で間に合わなかったそうだ(朝日新聞記事より)。なんとも締まりのない議員生活の幕切れだが、そのコイズミは、「小選挙区制には反対だった。しかし、小選挙区制でなければ、郵政民営化を掲げた選挙のあの圧勝はなかった」と述懐したという(同記事より)。国民生活に災厄をもたらした、小選挙区制度を軸とした現行選挙制度は改めるべきだ。そして、民主党の主張の中でもっとも悪いところは、小選挙区制への過度の傾斜であり、衆議院の「比例区80削減」など、断じて認めてはならない。ただ、それよりさらに悪いのが自民党案で、なんと憲法改正の必要な一院制(選挙制度は大選挙区制)による議員数削減を主張しており、論外だ。民主党にも問題は多いが、やはり政権交代は必要だ。


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 なぜか、今朝はTBが通りません。
 今朝は、私のブログでも、比例区80名削減を批判しました。一体、この主張に、何の目的と国民へのメリットがあるのでしょう?
 表向きは議員定数削減による経費節減かもしれませんが、民主、自民、ともに、2大政党制を定着させるために、少数野党の壊滅を図っているように思えます。
 その点の説明がないのはおかしな話です。
 鳩山代表が、自党のみでの過半数と言ったり、野党で過半数と言ったりするのも、本音と建前なのかと思います。
 とは言っても、同じ主張をしている自民党を勝たせるわけにはいきません。頭の痛いところですが、今後の私たち自身の政治への関与と、民主党への働きかけが重要かと思います。

2009.07.22 09:16 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

眠り猫さん、

自民党の選挙制度改正案はもっとひどくて、衆参を合併して一院制にしたうえで定数を削減するんでしたね。当然憲法改定が前提です。ただ、選挙制度は「大選挙区制」だって。こんなところにも自民党の党勢衰退が反映されています。

2009.07.22 09:23 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]

せっちー
「しかしこの四年は『郵政民営化は改革の本丸』ってのが嘘っぱちだという
我々の主張が正しかったのが証明された意味においては意義があった。
ただまだ信奉者がいるから油断はできん。
それにしても、週刊誌では民主が300取るなんて予測も出たな。
まあこの選挙中に与党候補が『民主に300議席を与えるのはナントカに刃物だ!』くらいの妄言は吐くだろうな。
もちろんオレは吐かんぞw」

2009.07.22 12:26 URL | 観潮楼 #- [ 編集 ]

最近ではブログより
googleの未来へのQA
http://moderator.appspot.com/#16/e=9df89
のようなものへ直接的に外交タカ派、軍事力増強、国内攘夷、歴史虚飾 という連中がアップしていますが、どうなるやら。

2009.07.22 13:15 URL | ろーりんぐそばっと #ehuBx04E [ 編集 ]

<小泉龍司が立候補を予定している埼玉11区>に住んでいるのですが、今朝の朝日の立候補予定者を見ると小泉と新井の他には幸福の科学の職員のみ、折角の一票が棄権になりそうです。 民主の最寄りの支部にでもリクエストしてみますかね?

2009.07.22 16:21 URL | ricanikanmuri #- [ 編集 ]

「植草一秀教授支援ブログデモ参加エントリ」
http://kihachin.net/klog/archives/2009/07/demo090722.html

2009.07.22 23:08 URL | 喜八 #WE/hy34. [ 編集 ]

「自エンドブログ村界隈の主力反体制派」の特徴

1. 「護憲派」を名乗りながら、護憲政党とはいいがたい民主党を応援している人が多い。しかも、押しも押されぬ改憲論を広げた小沢一郎に加えて更に復古調を感じさせる改憲論者・鳩山由紀夫両氏を持ち上げる傾向がある。
2. 1.と 同様に「歴史修正主義反対」のバナーをご自身のサイトに貼りながら、河村たかし名古屋市長・川勝平太静岡知事の当選を諸手をあげて喜んだりする。「民主党公認or推薦or支持」は最強の免罪符のようである。
2. 「官僚支配の政治からの脱却」を金科玉条のごとく主張するが、「官僚支配が生んだ弊害」の具体的な実例をあげることがほとんどない。その一方、格差・貧困を生み出した元凶である経団連をはじめとする財界と癒着した政治への批判はあまり強くない。
3. 関心を寄せる話題は主に政局に関することである。頻繁に登場するキャラもとい政治家や評論家・マスコミ人は、小泉純一郎・竹中平蔵・麻生太郎・小沢一郎・鳩山兄弟・岡田克也・前原誠司・田原総一郎・みのもんた等で、彼らを善玉・悪玉に分けて論じるのが一番の人気演目のようである。
他方、環境エネルギー問題や外交問題などには関心を示さない。太陽光発電のFIT問題や核密約など「官僚支配」の明確な具体例を提示できる格好の機会だというのに。
4. 植草一秀氏を崇拝する人が多い。しかし、氏の主張する国会議員定数削減批判や同州制批判には賛成であれ反対であれ反応しない。
5. 「9.11」から極東ニッポンの個人ブログランキングの上下に至るまで、この世界は権力の陰謀に支配されていると主張する人がいる。
6. 自公からの政権交代を望みつつも護憲・反新自由主義の立場から、民主党を批判すべき点は批判し、少数野党の意見も尊重すべきというまっとうな意見を述べるブログ主を「左右のイデオロギーにとらわれた時代錯誤の教条主義者」「裏切り者」「自公の工作員」などとレッテル張りをする。

※ 「護憲派」を自認していながら「まずは政権交代」という立場から護憲政党とはいいがたい民主党を応援している人のなかには、その矛盾を逃げずに認めている人もいます。また、そういう人は、反自公ではあるけれど護憲・反新自由主義の立場から民主党を批判する人を「自公の工作員」などと決めつけず、総選挙でも護憲政党が一定の議席を得ることが望ましいと主張されています。

2009.07.23 02:35 URL | ぽむ #E28kKb9k [ 編集 ]

「「護憲派」を自認していながら「まずは政権交代」という立場から護憲政党とはいいがたい民主党を応援している人のなかには、その矛盾を逃げずに認めている人もいます」
それは要するに「開き直り」、「護憲は大事の前の小事、敢えて護憲に拘るよりもなりふり構わず何が何でも政権交代を実現させる方が大事ですが、何か?」と言っているのと同じでしょう。「スルー」と「開き直り」ではどっちもどっちだと思いますよ。
比例区削減にしても然り、「スルー」と「開き直り」に何程の違いがありますかね。幾ら「比例区削減は絶対容認できない」と口では言っていても、選挙で民主に投票するのであれば、結局その時点で「比例区削減は大事の前の小事」と目を瞑るのと同じことになってしまう。そうやって民主を勝たせて民主が比例区削減を実行に移すのならば、民主に投票した有権者にも責任が生じる、弁解の余地はありませんよ。もっとも投票した民主議員が造反して「比例区削減反対」を貫いてくれるなら話は別ですが、実際問題そんな議員が果たしてどれだけいることやら。

2009.07.23 17:05 URL | Black Joker #RtNpiJ3M [ 編集 ]

Black Jokerさま
批判いただいた部分は、知り合いのある人を念頭において書いたのですが、確かに甘いと言われて仕方がないです。
その人は「ソマリアからの自衛隊撤退を、民主党は公約せよ」と民主党に訴えていました。
しかし、民主党はマニフェストに海賊対策のため自衛隊派遣を容認することを盛り込んでしまいましたね。
さらに「在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の検証」の削除や対北貨物検査実施の明記も。

2009.07.23 18:00 URL | ぽむ #mQop/nM. [ 編集 ]

小沢→横路ラインでなきゃ、自民党と同じですね。
これじゃ政権交代とは言えない。

2009.07.24 08:00 URL | sonic #GCA3nAmE [ 編集 ]

Black Jokerさんへ

それじゃ、自民党へ投票しろというんですか。

あなたは民主党批判はするが、決して自民党批判はしない。冗談じゃない。自公は論外ですよ。

2009.07.24 10:10 URL | 負け組みの矜持 #- [ 編集 ]

「海賊対策のため自衛隊派遣を容認」
もともとソマリア沖派兵の件は民主の長島昭久が言い出しっぺですし。インド洋給油継続の件も民主の反対は本気じゃなくてポーズだけだった訳ですね。まあ「なんとかペンタゴン」とやらをやっつけることに夢中な人から見たら、別に目くじら立てる話ではないのでしょう。逆に「そんなことで民主に反対して自公を利するのは許さん」みたいに逆ギレというかお叱りを受けるんじゃないですかね。

「それじゃ、自民党へ投票しろというんですか」
いいえ、お好きにどうぞ。
私が言っているのは「政党・政治家の政策については、それを選んだ有権者にも責任がある、それを選ばず拒否した有権者に責任はない」ということですよ。コイズミカイカクは小泉を支持した有権者にも責任があるし、イシハラやハシモトにしても然り、連中に入れた有権者にも責任がある。一方、拒んだ有権者に責任はない。
民主にしても決して例外たりえない。民主が比例区削減を実行した暁に「自分は絶対反対だった」と言える資格があるのは、比例区削減反対の政党・政治家と彼らに入れた有権者だけです。民主に入れた有権者が「自分は絶対反対だった」などと弁解するのは欺瞞と無責任以外の何物でもない。インド洋やソマリア沖にしても然り。
どこへ投票しようがしまいが自由ですよ。有権者としての責任を自覚した上で、お好きにどうぞ。

「自公は論外ですよ」
私は比例区削減反対ですが、私の選挙区に自公と民主の候補者しかいないとしたら、私は迷わず無効票を入れますよ。白票でもいいし「比例区削減するなウンコやろう」とか「コンチクショー」とか書いてもいいですね。比例区削減に拘るよりもなりふり構わず何が何でも政権交代を実現させるなんて、それこそ冗談じゃない。「自公を利する」?、自公の政策は自公を選んだ有権者の責任ですから、選ばず拒否した有権者に責任転嫁されても困ります。

2009.07.24 18:01 URL | Black Joker #RtNpiJ3M [ 編集 ]

 管理人様、突然ではありますが、

 私のブログ記事へのリンクをURLに貼ります。

 太田昭宏vs池内さおりの衆議院東京12区に西松民主党・青木愛も“乱入”+私なりの『女性候補』観

~たしかな野党 支え続けて 上げ潮めざす!~
~「政治の中身を変える」ために勇気を出して奮闘しよう!~
~「党名が…」 政治良くなりゃ それでいい~

2009.07.25 22:54 URL | 生野ともうみ #ctOCoymo [ 編集 ]













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