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きまぐれな日々

「国民の生活が第一」というのは、実に良いキャッチフレーズだと思った。社民党や共産党がまだ生存権そっちのけで9条改憲阻止ばかり言っていた頃、2007年の参院選が行われたのはそういう時期だったと思うが(それは安倍晋三があまりにひどい改憲志向むき出し一本槍の政治をしていたから無理からぬ面もあったのだが)、生活に苦しむ人々の心をとらえたのは「国民の生活が第一」の標語であり、だから参院選は民主党の「一人勝ち」になった。

しかし、参院選に勝った民主党の小沢一郎代表(当時)がやろうとしたのは、自民党との大連立だった。これは党内の反発にあって実現しなかったが、参院選後からここまで、民主党がどこまでスローガン通りの方向性を持って行動してきたのかと考えると、決して合格点はつけられないと思う。

そして、「国民の生活が第一」というスローガンに代わって、いつしか「官僚支配の政治の打破」ばかりが叫ばれるようになった。「(豪腕の)小沢一郎でなきゃ官僚支配を打ち破れない」というのが一部の人たちの決まり文句になった(「小沢でなきゃ対米隷従から脱却できない」というのもあったが)。

長年の自民党政治によって、政官業の癒着構造は強固なものになっており、政権交代によって癒着構造を壊すというのは良い。しかし、それが単純な「官僚叩き」に還元されてしまうのはおかしいのではないか。ずっとそう思っていた。先日読み終えた松原隆一郎著『経済学の名著30』(ちくま新書、2009年)に、

新自由主義の立場からすれば、官僚は私利のため国民に無駄を強いている。

という一節があり(注1)、これだと思った。そういえば、官僚叩きは明白な新自由主義者である渡辺喜美の十八番である。同じ本で新自由主義の理論的支柱となっているミルトン・フリードマンの『資本主義と自由』を取り上げた章には、次のような記述がある。

 世評ますます高まる本書(『資本主義と自由』)を、どう評価すべきだろうか。日本で社会保険庁が年金にかんして行った杜撰な扱いを見れば、また予算を摑んで離さず無駄な道路を造り続ける道路族を思えば、官僚や政治家は税を国民の要望とは異なる使い方をするという本書の主張には、頷かざるを得ない。ただ、それはそうだとしても、だからといって市場を生かすということと「小さな政府」とが同一の立場であるとはいえない。なぜといって、たとえば証券市場を健全に運営するためには、証券法の取り締まりに人員が必要になるからだ。市場を透明にするにはルールの監督が必須であるから、必然的にある程度まで「大きな政府」にせざるを得ないのである。それを避けようとするなら、「一罰百戒」で一部の違法行為者だけを逮捕するしかない(注2)。しかしそれでは、フリードマンも強調する「法のもとの平等」ではなくなってしまう。
(松原隆一郎『経済学の名著30』(ちくま新書、2009年) 253?254頁)


つまり、単純な「官僚叩き」は「小さな政府」を志向する新自由主義の道なのである。

「国営マンガ喫茶」だか「アニメの殿堂」だかの無駄を削って社会保障の財源を確保するとか、そういう主張なら良いだろう。だが、それが単純な官僚叩きに堕しかねないところに落とし穴がある。一昨年の参院選を前にした頃、「小沢一郎は『小沢自治労』だ」と罵倒していた屋山太郎は、今では渡辺喜美一派に参加しているが、最近その屋山が民主党にすり寄っているのも、鳩山由紀夫らが強調する「官僚支配の打破」が単純な官僚叩きに堕して新自由主義の道を進む可能性があると見て取ったからではないかと私は想像している。

民主党を応援するブログの論調も最近少し変で、代表格のブログが政府の補正予算案を「バラマキ、官僚焼け太りの14兆円の補正予算」などというフレーズを用いて批判していたりする。この論法は、前記の「単純な官僚叩き」のほか、「バラマキ」という言葉を安易に用いているという問題点がある。昨年来の未曾有の経済危機にあって積極財政政策を行うのは当たり前であって、批判するなら金の使い方にある。たとえば「ETCで地方の交通道路1000円」なる麻生政権の「世紀の愚策」は、フェリー会社の経営を圧迫し、地方の高速道路の渋滞を招いて地球温暖化を加速するなどの副作用の方が効果よりはるかに大きいから批判されるべきなのであって、積極財政それ自体を「バラマキ」と批判するのは誤りである。第一その論法だと、2001年の政権発足当初、極端な緊縮財政路線をとって株価を7千円台(2003年4月)にまで下げたコイズミ・竹中の誤りを民主党政権も繰り返せと言っているようなものではないだろうか。

だが、こうしたおかしな論法を批判する声は、民主党支持のブログからは一向に上がらず、地味な保守系のブログが指摘していたりする程度だ。そして、私がこんなことを書くと、また「隠れ自公」などと誹謗されることになる。私はもう3年以上もブログをやっているから、誹謗されてもなんとも思わないけれども、異論が袋叩きにされる気風は、新規の参入者の心理的障壁を高くするだけだろう。およそ「リベラル」の人間のやることとは思われない。おかしいと思っている人は大勢いいるんじゃないか、それが「声なき声」なんじゃないかと私は思っている。「王様は裸」なのである。

(注1) 同書236頁、ガルブレイス『ゆたかな社会』を紹介した章。

(注2) 引用書に、「証券取引委員会ではなく特捜部が出動したライブドア事件および村上ファンド事件を想起されたい。アメリカではこうした事態を避けるべく、日本の何倍かの人員が証券取引委に割かれている。」との注釈がついている。


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 フレーズはフレーズでいいじゃないですか。どのブログも、14兆円すべてが無駄と言っているわけではないでしょう。
 まあ、こちらのサイトは、自由な立場ということで鳩山批判も民主党批判も別に結構と思いますが、宮崎さんなんかは、民主党員と言いながら、最近は小沢・鳩山の悪口ばっかり。政治運動というのも所詮人間のすることだから、ちょっとしたことで敵意が生じる。
 こうなると、客観性を失い、相手の良いところは無視して、悪いことばかり焦点を当てることになります。
 鳩山兄は、西川氏続投問題についての発言を党首討論の前に「民主党の同僚議員からは止められているのですが」と断って、それでも「お辞めいただく」と明言したのは立派ではないですか。彼もバカでないなら、敵もさる者であることぐらい承知のはず。
 自由な立場であっても、誉めるべきは少しは誉めてやりたいですね。
 

2009.06.18 09:47 URL | cube #- [ 編集 ]

 官僚・公務員たたきは、過去中曽根時代の国鉄民営化のころから、たびたび繰り返されてきた論法ですね。
 いわく、親方日の丸だから、国鉄職員は云々、っという言い方で、産経やら読売が中心になって散々、公務員=官公労たたきをしていました。
 しかし、実際には、国鉄民営化で、サービス水準は低下し、迅速に行動しようとすると新幹線しか使えないようなダイヤになってしまい、直行急行や各駅停車は廃止されています。電電公社の民営化は、その後の通信技術ビッグバンにより、NTTは成功しているように見えますが、地方から赤電話が無くなり、ユニバーサルサービスは劣化しています。
 利益至上主義で設備投資をしないソフトバンクモバイルの利用者は、観光地では電話ができないという状況におかれています。

 自民党の政治屋たちが何かしようというとき、多用してきたのが、公務員たたき。しかも本当にたたかれるべき腐敗した高級官僚ではなく、末端の官公労所属の公務員をたたく。
 今度の選挙では、自民党は日教組をたたくとか。
 馬鹿みたいな話です。

 私は、日本はフランスやアメリカと比べて、公務員の数が少ないと思っています。
 ですから、キャリア制度を無くし、公務員各自のインセンティブを高め、給与も高くして人材を集め、その代わり天下りはなし、というのが理想だと思います。
 また、政策スタッフは政党が抱えるべきで、官僚をそれに使うのは間違っていると思います。
 まぁ、官僚と、高級官僚と、普通の公務員の区別のつかない人にはわからない話なのでしょうが。

2009.06.18 09:47 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

一つのフレーズにも様々なとらえ方があり、「官僚叩き」のフレーズもその落としどころに大いに懸念ありの言、参考になります。

「小さくでも大きくでもない、ちゃんと機能する政府が必要だ」
と、大体そのような意味のことを米のオバマ大統領が言ったと聞きます。
「ちゃんと国民のために機能する政府」
必要なものはこれであり、官僚をいじめることではありません。

ただ、「ちゃんと国民のために機能する政府」を作る過程においては、現状のシステム上の人間に負担を強いる、あるいは排除させていただく必要もやはりある。
「官僚叩き」、しかも下っ端官吏をいくらいじめたところで、国が良くなろうはずがない。
巨悪はいない。
あるのはただ、システム上の不備であり、腐食である。
そのように理解しております。

大切なのは「大きい」「小さい」に関わらない、「国民のために機能する政府またそのためのシステム」。
そのシステム論をいかに現実に則した確固とした形で持っているか、
これを「官僚改革」を唱える人間に、改めて聞き質さなければならない。
必要なことは、おそらくそういうことなのだと認識いたしました。

今後、私の関わっている選挙の過程において、あるいは渡辺喜美にそのことを聞くチャンスがあるかもしれない。
そのときには是非このブログにいずれの形でか、渡辺喜美はこう答えたと、お知らせしたいと思います。
下っ端の私に、そのようなチャンスがもしあればですが。
いつも参考になるブログ記事、ありがとうございます。(選挙モード)

2009.06.18 10:03 URL | shimura #XQYq98OQ [ 編集 ]

↓以下をアップしました。すぐ衆議院 Internet TVの党首討論に飛べるようにアイコンのリンクを張っておきました。

どちらが総理か分からないね、こりゃ、映像上の貫禄では既に政権交代済み。(笑)⇒国家基本政策委員会合同審査会(党首討論)
http://soba.txt-nifty.com/zatudan/2009/06/post-ef93.html

 
 党首討論中継39分40秒から、鳩山さんの「3月4月、自殺がどのくらいされたと思いますか」から始まるところは圧巻でした。

 読売しか報道していないようですが、以下の記事には目が点。内閣府のHPによれば、「自殺総合対策会議構成員」の会議の会長は官房長官です。しかも官房長官と言えば本来なら総理や閣僚が失言をした時などのフォローをするのが大きな仕事。その当人がこれじゃあ何をかいわんや。完全に終わってますねこの内閣。

鳩山代表の自殺論議は「お涙ちょうだい」…官房長官が批判【読売】
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090618-OYT1T00111.htm

 河村官房長官は17日の記者会見で、民主党の鳩山代表が党首討論で医療事故や若者の自殺問題などを取り上げたことについて、「お涙ちょうだいの議論をやるゆとりはないのではないか。財源の問題や外交・安全保障などテーマは多々ある」と述べた。

 長官は「人の命は重要なテーマだと考えているが、情緒的な話をしている段階ではない」とも語った。

 野党は「『お涙ちょうだい』という言葉が出ること自体が、若者の自殺問題の深刻さを理解していないことの表れだ」(民主党幹部)と批判している。
(2009年6月18日01時21分 読売新聞)

2009.06.18 10:57 URL | SOBA #XPXthLJ6 [ 編集 ]

「官僚を使いこなす」というフレーズも与野党ともに好むわけですが、三権分立の原則を考えても官僚を政治家の部下のように考えるのは少し行き過ぎのような気がします。

「官僚政治」ということばが表す、「官僚が政治の領域まで侵している」という現状を変えるべきであって、その逆の「政治家行政」まで行ってしまっては、その弊害もまた現れてくると思います。

橋本大阪府知事が民主党の行政改革に対する期待を口にしたというニュースが今日ありました。民主党政権へのしたたかな布石、という見方もあるかと思いますが、一方でメディアで人気のある橋本府知事の動向に、民主党議員がぐらっとくるようなことがないか危惧しています。

2009.06.18 18:36 URL | seike #v5LGPhT2 [ 編集 ]

「官僚たたき」についてコメントしようとするとかなり込み入ってしまいそうなので、「官僚」については一言だけ。
民主党の代表が小沢氏から鳩山氏にになってからも変わっていないことのうち一番重要だと私が考えているのは、「予算編成を、官僚主導から政治主導に変える」ということです。

民主党がマニフェストで公約した政策を遂行するためには、個々の政策について個々の財源をどこからか持ってくる、というやり方ではなく、それぞれの政策の優先順位に従って予算をつけていく、というのがそれをやるためには、「各省庁からの概算要求を積み重ね(そして財務省が適宜切り捨て)たものを予算として国会に提出」するというこれまでの慣習を終わらせる必要があります。
そして「政治主導の予算編成」が実現すれば、官僚と与党との力関係がかなり変わることになるでしょう。
これまでのやり方と新しいやり方と、どちらが望ましいのか。
政治主導の予算編成を、1回だけではなく何回か行った上で、納税者・有権者が選挙で判断を下すことにすればよいのではないかと思います。

「バラマキ批判」に対するkojitakenさんの批判について。
>民主党を応援するブログの論調も最近少し変で、代表格のブログが政府の補正予算案を「バラマキ、官僚焼け太りの14兆円の補正予算」などというフレーズを用いて批判していたりする。この論法は、前記の「単純な官僚叩き」のほか、「バラマキ」という言葉を安易に用いているという問題点がある。
(中略)
>積極財政それ自体を「バラマキ」と批判するのは誤りである。

植草氏の blogのことを指しているのだと思いますが、植草氏は
「14兆円もの国費を投入するなら、はるかに優先順位の高い費目が存在する。」
として具体例を挙げて何回か述べているので、kojitakenさんが指摘するような「積極財政それ自体をバラマキと批判」しているわけではないと私は認識しています。

2009年度補正予算(13.9兆円)の財源は、
・赤字国債 3.5兆円
・建設国債 7.3兆円
・財政投融資特別会計の金利変動準備金 3.1兆円
となっています。「財政投融資特別会計の金利変動準備金」は国債の償還に充てられることが法により定められているわけで、これを補正予算につぎ込むということは、将来の国債発行と同義ととらえることもできます。

景気を良くするために財政出動が必要、という考えに納得する人は多いと思いますが、その中味を見てみれば、
・今の時点でやらなければならないもの、すなわち緊急度が高いものが本当に多いのか?
・高所得層のみが恩恵が得られるものであったり、特定の業界に片寄って利益を上げられるようなものが多いのではないか。
・各省庁に58の基金、4.6兆円が振り分けられている。単年度では消化しきれないほどの金額を、とりあえず丸投げしたのではないか?(官僚焼け太りは、主にこれに対する疑念、と理解されます)

そして総合的には、「単に、G20で米国に追随して口約束した、GDP2%の財政出動」を達成するためのつじつま合わせだったのではないか?という疑念を持たざるを得ません。

以上から、「たいして緊急性がなく、景気対策にもほとんどならない案件を盛り込み、国債を財源として予算を組んだ」
というように私は認識しています。

自民党は民主党に対して、ことあるとごに「財源はどうするのか?」と問いますが、
その資格は、自民党にはないと考えます。

2009.06.19 02:57 URL | sweden1901 #SVqLzQOU [ 編集 ]

sweden1901さん、

> 植草氏の blogのことを指しているのだと思いますが、植草氏は
> 「14兆円もの国費を投入するなら、はるかに優先順位の高い費目が存在する。」
> として具体例を挙げて何回か述べているので、kojitakenさんが指摘するような「積極財政それ自体をバラマキと批判」しているわけではないと私は認識しています。

これは、よく読むと確かにそうですね。私も記事を書いたあと植草氏のブログで確認しましたが、確かにたまにはそういうことを書くのだけれど、それ以上に毎回のように「バラマキで官僚焼け太りの14兆円補正予算」と連呼しているのだから、たまにしか植草氏のブログを読まない人たちには、その部分しか印象に残りません。今回の記事を書くに至った契機の一つに、保守系の「ラサlhasaのブログ」の記事(下記URL)があり、ラサ氏も植草氏が緊縮財政路線を支持していると思われたようです。
http://blog.livedoor.jp/lhasa0619/archives/50699756.html

植草氏は読者にそういう印象を与える記事を書き続けているわけですから、批判を撤回する必要はないと考え、あえてそのままにしておいた次第です。

それから自民党の補正予算についてですが、財政政策は、本来それ自体再分配の効果を持つものなので、それがもとの業者内での再分配にしかならず、一般国民が恩恵を受けないのであれば効果は期待できず財政赤字だけが膨らむのは当然ですよね。自民党の政策はそういうものだから批判されるべきなのであって、「再分配効果のある」財政政策は必要だ、というのが私の言いたかったことです。

そもそも自民党が民主党の政策を中途半端にパクっておきながら、「財源はどうする」と民主党に逆質問したり、それに対して民主党が「バラマキ批判」論法で反論するなどというのは、倒錯もいいところの議論であって、自民党は論外ですが、民主党(や植草氏)は「バラマキ」という誤解を与えやすい用語を用いるのを止めるか、さもなくば毎回毎回「バラマキ」の定義を明確にしながら批判するのでなければならないと思います。そうでないと、ラサ氏や今回のエントリを書いた時の私のように、「コイズミ・竹中と同じ論法を用いている」と誤解されてしまいます。

2009.06.19 09:16 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]

kojitakenさん、コメントありがとうございます。

>今回の記事を書くに至った契機の一つに、保守系の「ラサlhasaのブログ」の記事があり、ラサ氏も植草氏が緊縮財政路線を支持していると思われたようです。

ご紹介の記事を読みました。

「自民党のバラマキを批判的に見る」

「財政出動には反対である」

という思考経路で「植草氏が緊縮財政路線を支持している」と考えるのは、「保守系」のblogならさもありなん、とは思います。(民主党が緊縮財政路線を取っている、とラサ氏が述べているのには言葉もありませんが)

でもkojitakenさんともあろう人が、植草氏のblog記事を少し読んだだけで、植草氏の基本姿勢を緊縮財政派と誤解なさるというのはちょっと解せません。
(植草氏は2001年に小泉・竹中コンビが超緊縮策を行ったことに強く反対した、などの経緯から「積極財政派」と見られることもあるくらいですよね。「積極財政派」でないことは本人は7月28日のエントリーで明言しています)

ただ、確かに植草氏は、毎回のblog記事で「単なるバラマキ批判」とは誤解されないように書いてはいないと思いますから、本エントリーをそのままとするkojitakenさんの判断にまで反対することはしません。

また、
>民主党(や植草氏)は「バラマキ」という誤解を与えやすい用語を用いるのを止めるか、さもなくば毎回毎回「バラマキ」の定義を明確にしながら批判するのでなければならないと思います。

民主党は自民党の政策をバラマキと批判し、自民党も民主党の政策をバラマキと批判するのを見ているのは馬鹿馬鹿しい限りです。
お互いが財政出動のターゲットとしている層が異なるので永遠に話は噛み合わないのかもしれませんが、「バラマキ」の一言で相手をけなすというレベルの低い議論が、今後も(特に選挙戦中に) 出てくるのは勘弁してもらいたいものですね。

蛇足ですが、植草氏のblog記事で、
「再分配効果のある財政政策は必要だ」というkojitakenさんの考え方と、基本線は合致している一例↓です。
2008年11月11日のエントリーで、定額給付金について、
「社会保障関係支出は政府の方針で、毎年度2200億円削減されることが決められている。そのために、必要不可欠な政策が切り込まれてゆく。2兆円の財源があるなら、社会保障費の削減を回避する施策、所得の少ない世帯に対する教育費の助成、国民が必要不可欠な医療を受けることができるための政府支出、などに有効活用する方が望ましい。」
という言い方をしています。
(定額給付金自体に反対していないkojitakenさんの考え方は存じ上げているので、植草氏のこの↑考え方とは合致しないのは理解しています)

また、2008年7月25日のエントリーでは、
・経済運営で最も重要なことは、インフレを回避しつつ、日本経済の実力に見合う安定成長を維持することだ。
・「バラマキ財政」を実行する必要はない。私が「バラマキ財政」を主張したことは一度もない。財政緩和は非利権型政策で実行すべきである。
とも述べています。

「非利権型政策」という言葉は私には耳慣れないのですが、民主党の「高校教育無償化法案」などの教育支援や「農業者戸別所得補償法案」などがそれに当たるのだと思います。(地方高速道路無料化は話が込み入ってくるのでまた改めて記したいと思います)

最後に、きょうの植草氏のエントリー
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-ccad.html
のこの部分↓
第三の大きな問題は、民主党が野党共闘を盤石にするために注力すべきことだ。参議院選挙で単独過半数を確保したら連立解消などの暴言を示してはならない。
社民党と共闘することにより、「平和主義の重視」が確保される。国民新党と共闘することにより、「郵政民営化の不正を暴く」ことが可能になる。
民主主義の健全な発展のためには少数意見を尊重することが不可欠だ。比例区定数の削減は、二大政党には有利だが、少数政党を消滅に向かわせるものである。
--- 引用以上---

は、kojitakenさんは間違いなく共感できると思うのですがいかがでしょうか。
植草氏が、ことさらかんぽの宿問題、西松問題を取り上げることに対して異議を唱えるkojitakenさんの考え方は理解できますし私もそう思います。私は植草氏の書いていることには(他のblogも同じですが)是々非々で対応したいと思っていますし、多くの読者もそうではないかと想像します。中には煽られるだけの人もいるでしょうけれど。

2009.06.19 23:07 URL | sweden1901 #SVqLzQOU [ 編集 ]

ブログ主の「官僚叩き」の定義がはっきりしませんのでなんとも言えませんが、ご参考までに。

豊島区に於ける任用職員の年収
正規職員 850万円
正規職員OB 450万円
非常勤職員 250万円
臨時職員 150万円

2009.06.20 16:45 URL | ひまんじ #- [ 編集 ]

sweden1901さん、

植草氏のブログは、よく見ると個々の指摘事項は正しいことが書いてあることが多いのですが、金曜日のエントリに寄せられたricanikanmuriさんのコメントでも指摘されているように、表現が扇情的なんですね。それとあまりに民主党支持一本槍です。そこに違和感を持ちます。あと、まだ植草氏がブログを開設する前の昨年に、右派民族主義系の「神州の泉」さんが指摘しているように、植草氏はもともとフリードマン系列のマネタリストだったはずなのに、いつの間にかケインジアンと称していて、そのあたりの転向というか思想遍歴について、少なくともブログにははっきり書かれていないように思うのも、どこまで植草氏を信用できるか、疑わしく思う原因の一つになっています。

「神州の泉」の昨年4月1日のエントリ:
http://shimotazawa.cocolog-wbs.com/akebi/2008/04/post_a151.html

コイズミ政権当時のコイズミ・竹中批判も、榊原英資氏とテレビで共闘していたことになっていますが、私は榊原氏の印象は強いのですが、不思議と植草氏の印象は残っていません。やはり民主党支持の言論人である榊原氏が、現在の植草氏のブログを読んだらどう思われるだろうか、などと時々想像します。

定数削減や連立解消の植草氏の主張は、もちろん正論ですが、植草フォロワーの人気ブロガーたちが全然追随しないのは、やはり植草氏が民主党執行部に直言する姿勢がいまいち腰が引け気味のせいではないかと思います。

2009.06.20 19:27 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]

「神州の泉」さんが指摘しているのは、あくまで植草氏の学問遍歴のことで、少なくとも2001年あたりには、積極財政論者であったようですよ。例えば、この著作の書評を見てください。
http://www.amazon.co.jp/%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%B5%8C%E6%B8%88%E6%94%BF%E7%AD%96%E8%AB%96-%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E3%81%AE%E7%B5%8C%E6%B8%88-%E6%A4%8D%E8%8D%89-%E4%B8%80%E7%A7%80/dp/4000262688/ref=sr_1_5?ie=UTF8&s=books&qid=1245546480&sr=8-5

民主党批判に腰が引け気味というのも、彼はある意味、政治闘争を実践しているのだから仕方ないでしょう。
象牙の塔の住人だった頃の彼とは、気合いの入れ方は違うでしょうね。

2009.06.21 10:32 URL | cube #- [ 編集 ]

植草氏『現代日本経済政策論』書評の追加
http://www.toyokeizai.net/corp/award/tanzan/2002.php
2001年といえば、ブッシュ政権、小泉政権が始まった年で、これから金融詐欺バブルを本格化しようという時。この時に、ケインズ経済学の有効性を説くというのは、相当、先見の明があると思いますね。
まして彼は、マスコミ御用達の学者で、政権側、財界側に取り入ることも可能だったのですから。

2009.06.21 11:01 URL | cube #- [ 編集 ]

cubeさん、

ご紹介の書評は賛否両論で、中には構造カイカク支持者が書いた関心できないものもありますが、

> 植草氏は元々学術的な業績がほとんどないといっても過言でないほどだが、そんな彼なりの唯一のそれ系の本

なんて評価もありますね。別に権威主義に肩入れするわけではありませんけど、アカデミーの学者たちが植草さんのブログを読んだ時どう思うか、それに私は興味があります。

ケインジアンといえば故宮沢喜一氏など、コイズミ以前には政権中枢にもいたし、リチャード・クー氏など現在も麻生政権に影響力を持つとされてるんじゃなかったでしたっけ。植草氏もクー氏も構造カイカク全盛時にはテレビから干されてしまったわけですが、さすがに干されそうだから転向するというほど面の皮が厚くなかったということではありませんか。中には中谷巌氏のように、面の皮の厚さがいったいどのくらいあるんだろうという人もいますからね。

植草氏は、確かにかなり早い時点でケインズ寄りに思想を改めておられたことは理解しましたが、安易に「バラマキ」という言葉を用いたり、以前には「良い小さな政府」などという誤解を招きやすい表現を用いたりするなど(これについても、私の裏ブログのほか、共産党支持ブログが疑念を呈しただけで、大方のブログは何も指摘しませんでしたが)、控えめに言っても軽率なところが感じられます。後者については、オバマ米大統領が言うような「賢い政府」みたいなことが言いたかったのかもしれませんが、少なくとも「小さな政府」などという新自由主義用語を用いるべきではありませんでした。

それよりも私が最近不満に思うのは、神野直彦氏のような財政の専門家のメディアへの露出がもっと増えるのではないかと思っていたのに、全然そうなっていないことですね。「(いわゆる)バラマキか構造カイカクか」などという不毛な選択を強いられても、「どっちもゴメンだ」としか言いようがないというのに。

2009.06.21 11:22 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]

>cubeさん
>「神州の泉」さんが指摘しているのは、あくまで植草氏の学問遍歴のことで、少なくとも2001年あたりには、積極財政論者であったようですよ。

植草氏は「積極財政論者」と見られることが多いわけですが、本人はそれを否定しています。前のコメントでも書きましたが、2008年7月28日のエントリー【「バラマキ財政派」というプロパガンダ】がそれです。
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/post_1eed.html

私は植草氏の著書『知られざる真実 ― 勾留地にて ― 』を読んでいませんので、神州の泉の高橋氏が指摘しているように、植草氏のベースがマネタリズムであること(おそらくそれは正しいのだとは思います)を、自分の目で確かめられていないのですが、このエントリーからすると、植草氏はバブル崩壊後の1992年の時点で、緊縮財政に反対する姿勢を打ち出しているのだと思います。
----以下引用---
私は1991年時点で、株価、不動産価格の急落を踏まえ、深刻な不動産金融不況が到来すると判断した。経済の急激な落ち込みを回避するための景気悪化緩和政策が必要であることを、92年年初から強く主張した。
財政政策発動に最も強く抵抗したのは大蔵省だった。1990年に赤字国債発行ゼロの財政再建目標を達成した直後で、大蔵省は赤字国債発行に強く抵抗した。
しかし、政策対応の遅れが株価下落を増幅し、景気悪化が加速した。結局大型景気対策が必要になり、財政赤字は激増してしまった。
(中略)
私は、1985年以来、中期的な財政健全性回復の重要性を一貫して主張し続けてきた。しかし、政治権力と政治権力に支配された御用言論人・御用メディアは、事実に反して私を「積極財政派」と「バラマキ財政派」に色分けしてきた。
新進党、自由党、民主党が私の主張を正確に理解し、党の政策方針に採用してきてくれたが、世間一般では御用メディアによって形成された私の主張に対する間違った理解が現在も残存している。
----引用以上---

同じエントリーにある言葉で表すと、
【「行き過ぎた緊縮策」を「中立の政策」に修正すべきであるという主張】
というのが一番分かりやすいように私には感じられました。

>民主党批判に腰が引け気味というのも、彼はある意味、政治闘争を実践しているのだから仕方ないでしょう。

cubeさんのこの見方に私も同意します。

kojitakenさんがお書きになった、
>定数削減や連立解消の植草氏の主張は、もちろん正論ですが、植草フォロワーの人気ブロガーたちが全然追随しないのは(後略)

という「現象」については、私はむしろ、民主党支持者の中の一部のブロガーが、植草氏の主張の中で自分の主張と合致するところのみをピックアップしてきたからではないか、と見ています。
たとえば、私は、西松事件が発覚(3月3日)してから民主党が無党派層の支持を取り戻すためには、企業献金の廃止を打ち出せるかどうかがポイントと思い、注目して見ていたのですが、植草氏は、民主党は企業献金廃止を打ち出すべし、と早くから何度も(最初は3月6日のエントリーだと思います)blogで述べていました。
しかしその頃、多くの民主党支持ブロガーは企業献金禁止についてはまったく言及なし。むしろ「必要悪」という方向で述べているものが多かったと思います。
3月12日に菅直人氏が「公共事業受注企業からの企業献金を全面的に禁止する法制化を与野党を超えて進めるべきだ」と述べ、3月17日に小沢氏がなかばやけ気味になって(?)「「ほとんどの企業が国や都道府県、市町村と何らかの形で関係あるから、公共事業でもって仕分けはできない」「今度の問題を教訓とすれば、企業・団体献金を禁止するならいい」と言い出してから、初めていくつかの民主党支持ブロガーが「企業献金の全面禁止」を、「目のつけどころがいい」などと持ち上げるようになり、私は唖然としました。
(このあたりの「ご都合主義」はkojitakenさんも批判していたかと思います)

一例だけで人を判断することは避けたいところではありますが、このような事例が続くようであれば、それらの民主党支持ブロガーは、「民主党の政策に注文をつけてよりよい政治を実現しようとする姿勢のない、ただの応援団」と認識せざるを得ないと思っています。(念のため。kojitakenさんのことは、そのような民主党支持ブロガーとは全然異なると思っておりますので誤解なさらぬよう・・・)

>アカデミーの学者たちが植草さんのブログを読んだ時どう思うか、それに私は興味があります。

これは同感です。植草氏は素人向けに書いているのだとは思いますが、緻密性に欠けるところはあるようにも思います。

2009.06.22 01:05 URL | sweden1901 #SVqLzQOU [ 編集 ]

一点、書き忘れました。

>コイズミ政権当時のコイズミ・竹中批判も、榊原英資氏とテレビで共闘していたことになっていますが、私は榊原氏の印象は強いのですが、不思議と植草氏の印象は残っていません。

テレビ東京系のWBS(ワールドビジネスサテライト)での植草氏は、レギュラーコメンテーターとしてしつこいくらい小泉・竹中路線を批判していたと記憶しています。例の冤罪(?)事件により突然終止符が打たれましたが。

2009.06.22 01:26 URL | sweden1901 #SVqLzQOU [ 編集 ]

sweden1901さん、詳細なコメントありがとうございます。話がバブル生成時にまで遡るので、当時20歳代の植草氏がどこまで発言していたのかとも思いますが、1985年というのは植草氏が大蔵省に入った年なので、その頃から発言していたというのは、あり得なくはないですね。ただ、好況時にこそ財政改革が必要なのは当たり前だし、大蔵官僚だったらみな同じような主張をしてたんじゃないかとも思います(彼らはいついかなる場合も財政規律を重んじるんじゃないですか?)。

> 政治権力と政治権力に支配された御用言論人・御用メディアは、事実に反して私を「積極財政派」と「バラマキ財政派」に色分けしてきた

というのは、90年代の話でしょうか(橋本行革の頃かな?)。

今の民主党マンセーブロガー(一部では「小沢信者」とも呼ばれる)が、植草氏の主張のうち自分たち(というか民主党)にとって都合の良い部分だけを拝借しているというのはその通りでしょうけど、植草さん自身も彼らを持ち上げてますよね。あと、ベンジャミン・フルフォードだとか、今度出るらしい副島隆彦などとの共著など、怪しげな陰謀論者とばかり組みたがるのも納得できません。副島隆彦なんて、
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20090621/1245572064
で悪態つきましたけど、トンデモ右翼ですよ。マスコミから干されて、彼らとでも組まなければ食っていけないのかもしれないけど、ちょっとは知識人の矜持というものを見せてもらいたいものです。せっかく個々の議論ではいいことも言っているのだから、必要以上に読者を煽ることはないと思います。

2009.06.22 01:51 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]

kojitakenさん、コメントをありがとうございます。

>1985年というのは植草氏が大蔵省に入った年

なるほど、それは気がつきませんでした。

>副島氏
に関連して。

私も少し植草氏について調べていたら、アパの元谷外志雄氏との対談というのが引っ掛かってきました。
http://www.asyura2.com/0401/hasan33/msg/295.html
元谷氏の歴史観に関するところはスルーしているようではありますが、そのような対談とかblogのリンクなどをする際に、相手の思想的背景にはあまり関心がないというか、無頓着な人なのかもしれません。

>>御用メディアは、事実に反して私を「積極財政派」と「バラマキ財政派」に色分けしてきた
>というのは、90年代の話でしょうか(橋本行革の頃かな?)。

↑のコメントで引用した植草氏のblog記事(2008年7月28日)に書かれているのは、そのようにレッテルを貼ったのは、
・小泉政権
・2001年度の植草氏の主張に対して、田原総一郎氏に代表される「御用言論人」
とのことです。
もしかすると橋本行革の頃にもすでにレッテル貼り攻撃は受けていたのかもしれませんが、blog記事からは読み取れません。

2009.06.22 02:15 URL | sweden1901 #SVqLzQOU [ 編集 ]

 いいじゃないですか、誰と対談本やDVDを出しても。もちろん、その中で植草氏がどんな発言をしているかが問題ですが。
 私はkojitakenさんの、そういうすぐ色分けして、一切関わるな、とおっしゃるところがよくないと思いますね。
 それを言うなら、靖国参拝を繰り返す国民新党綿貫氏と、社民党はどうして連立するのか、という話になる。
 副島氏は私も胡散臭いと思いますが、それを言うなら立花隆も胡散臭い。彼の最近の自民党擁護ぶりも際だっていますが、過去の科学ものでも、幽体離脱とか、ベンジャミンフルフォード並のトンデモを書いております。(私は幽体離脱について肯定も否定もできるわけではありませんが)

2009.06.22 08:07 URL | cube #- [ 編集 ]













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