と書かれていた。鳩山邦夫元総務相のことを裏切り者だと言っておられるブログがあることを知り、ちょっと戸惑っています。
素朴な庶民感情としては、和久さん(以前はわこさんと名乗られていたと思う)の心情もわかる。だが、この件はちょっときな臭すぎるのである。何より気になるのがナベツネの暗躍である。
「かんぽの宿」売却問題以来、朝日、日経、読売の「あらたにす三社連合」は鳩山邦夫批判の立場で論陣を張ってきており、これは、これらの新聞社がコイズミ・竹中の郵政民営化路線に賛成するスタンスを守ってきたことを意味すると思うが、その中で読売が突如社論を転換し、西川善文・日本郵政社長の退陣を求めた。
毎日新聞は、13日の記事で読売新聞の主筆にして会長である渡邉恒雄(ナベツネ)と鳩山邦夫の生々しい会話を報じている。以下引用する。
(前略)鳩山氏は5月27日には、鳩山氏と懇意な渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長兼主筆から西室泰三東京証券取引所会長でめどがついたとの連絡を受け、西川氏の交代に自信を示した。
鳩山氏のボルテージは6月に入って急激に上がっていく。
6月3日夕。鳩山氏は渡辺氏と東京都内で極秘に会談した。関係者によると渡辺氏は「鳩山さん、あなたは英雄だ。西川は悪者だ」と激励。さらに「あなたを切って西川を残す。これがどういうことか。簡単に分かる話なのに、麻生(首相)も与謝野(馨財務・金融・経済財政担当相)も分かっていない」と語った。渡辺氏の一言一言が鳩山氏を鼓舞したのは間違いない。(後略)
(毎日新聞 2009年6月13日 2時30分(最終更新 6月13日 10時49分))
そして、当の読売新聞は、同じ13日にこんな記事を書いていた。
首相、当初は「西川交代」…竹中・小泉コンビが封じ込め
麻生首相は当初、日本郵政の西川善文社長を交代させる意向だった。
今年2月、首相官邸の執務室。首相は鳩山邦夫総務相と会い、日本郵政の6月の株主総会で西川社長を含む取締役を一新するよう指示した。「ポスト西川」の候補として、NTTの和田紀夫会長、生田正治・元日本郵政公社総裁、西室泰三・東京証券取引所会長らの名を記したリストも手渡し、水面下の調整をゆだねた。
首相の意を受けた鳩山氏は5月に入り、日本郵政の取締役人事を決める指名委員会の一部委員に「首相は西川氏を代えるつもりだ」と伝え、「西川辞任」に向けた多数派工作を始めた。
しかし、直後から巻き返しにあう。
指名委員会は、委員長を務める牛尾治朗・ウシオ電機会長を始め、郵政民営化など、小泉元首相が進めた構造改革に積極的な財界人が名を連ねる。そうした委員を通じて鳩山氏の動きを察知したのは、構造改革の旗振り役だった竹中平蔵・元総務相だった。
竹中氏は小泉氏に相談した。小泉氏は2005年、竹中氏を通じて西川氏と知り合い、社長就任を要請した経緯がある。すぐに指名委の委員を「西川続投」で説得して回り、首相や鳩山氏の動きを封じ込めた。
結局、指名委は5月18日、西川氏を続投させる方針を決めた。
(2009年6月13日01時49分 読売新聞)
タイトルに「竹中・小泉コンビが封じ込め」とあることから、これはもうナベツネがコイズミ・竹中に露骨な宣戦布告をしたと解釈するしかない。
ナベツネが勝ったら構造改革路線が転換されるだろうから万々歳じゃないか、などと考える人はいるだろうか? 仮にいたとしたら相当おめでたいというほかない。ナベツネといえば反射的に思い出されるのが一昨年秋の「大連立」騒動である。そのナベツネが鳩山邦夫を口説いた。これが何を意味するかというと、鳩山邦夫およびその同調者と鳩山由紀夫・小沢一郎ら民主党主流派を軸にした大連立をナベツネは狙っているということである。
しかも、忘れてはならないのが鳩山邦夫の前歴であり、当ブログの裏ブログ「kojitakenの日記」に上げたエントリ「鳩山邦夫 裏切りの人生」にも書いたように、武村正義・村山富市両氏を排除し、菅直人の刺客として自民党から立候補したことのある鳩山邦夫は、大の「リベラル・左派嫌い」であり、民主党左派にとっての天敵なのである。従って、この「大連立」からは民主党左派が弾き出される可能性がかなり強い。ナベツネは盟友・中曽根康弘ともども「憲法改正」を生涯最後の仕事にしようと執念を燃やしており、そのためには護憲派を抱える民主党左派は邪魔に違いないから、兄・由紀夫以上に病的な左派嫌いである鳩山邦夫を利用して、民主党左派を排除してもらおうと考えてもちっとも不思議はないどころか、むしろその方が自然だ。民主党左派を弾き出してしまえば、自民党議員たちの民主党アレルギーはほとんどなくなるだろうから、晴れて大連立政権が成立し、憲法改正へ一直線という運びだ。こうなった場合、「反自公」や「政権交代」を掲げて小沢一郎や鳩山由紀夫を支持し、今回の日本郵政の社長人事をめぐって鳩山邦夫を支持していた人たちはどう思うのだろうか。あまりにミエミエのナベツネの大連立狙いに、私はもううんざりなのだが、無邪気に小沢一郎や鳩山兄弟を支持する人たちは、何の警戒感も抱かないのだろうか。
過去にナベツネや小沢一郎や鳩山邦夫が何をやってきたか。それを思い出す時、「大連立」のどす黒いたくらみの予感を振り払うことは、私にはできない。
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kojitakenさん、こんにちは。
私も読売の小泉・竹中を名指ししたこの記事には非常に違和感を覚えました。
この期に及んで大連立などということになれば、野党支持者(与党不支持者?)への裏切り以外の何物でもありませんね。
ちなみに私は鳩山邦夫という人間を全く信用していません。
2009.06.15 09:11 URL | pam #- [ 編集 ]
TB有難うございました。
それから詳しく解説して下さって、有難うございました。
小泉改革なるものに騙されて、もうかなり用心深くなっていたつもりだったのですが、持ち前の単純思考はなかなか改まらないもののようです。
民主党結党の時、武村さんを民主党に入れないと言っているとのニュースは良く覚えています。
武村さんは滋賀県民として、郷土の誇りのような方でしたので。
2009.06.15 12:02 URL | 和久希世 #dN1wHbUA [ 編集 ]
今回の郵政問題は 先の西松建設の第2弾
前回の西松建設でも一気に民主党の支持率を下げる事に成功した検察が、次なる手を打って来たという事ではないでしょうか?
選挙対策ですね! これは!
検察だって 今の自民党政権の下でやりたい放題やっている訳ですし、官僚が牛耳ってますので、、、
2009.06.15 12:07 URL | 反体制派 #- [ 編集 ]
ナベツネが主導する「大連立」への動きや、鳩山邦夫新党( ができたとして)と民主党がくっつき、民主党左派が追い出される、というパターンへの懸念、よくわかりました。
私としては、後者への警戒は怠ってはならないと思っていますが、前者については、
・大連立してしまうと、その次の総選挙での小選挙区の選挙協力は事実上不可能になる。
・自民党議員は次期総選挙で下野したくないので、最後の望みを大連立の成立に賭けるしかないのだろうが、民主党としては自分たち(+社民党など)で衆議院で過半数を獲得できるのであれば、参議院でも(社民党などを加えて)過半数を抑えている以上、大連立のメリットはまったくなく、デメリットの方が大きい。よって、民主党執行部が大連立を進めようとしても、民主党内の反発は相当強いはずである。
という理由から、大連立が実現する可能性はかなり小さいとは思っています。
ただし、kojitakenさんがおっしゃるようにナベツネと中曽根大勲位の「憲法改正」の野望は、簡単にはついえないでしょうし、それとは関係ないかもしれませんが、読売新聞の世論調査だけではなく、毎日新聞や朝日新聞の世論調査でも、「望ましい政権の形」として「大連立」が選択する人が多数派であるのは懸念材料だと思います。
<毎日新聞2008年9月5日~7日>
http://plaza.rakuten.co.jp/heitei48kagawa/diary/200809090002/
<朝日新聞2009年2月~3月中旬>
http://www.asahi.com/special/08003/TKY200903170342.html
次期総選挙で下野する可能性が取り沙汰されている自民党の支持者が大連立を望むのは理解できるとしても、無党派層や、民主党支持層でも大連立が望ましいと考えている人が少なからずいる、というのはどう考えたらよいのでしょう?
民主党には、政策立案能力、政策遂行能力が不足しているのではないか、という不安の表れなのかもしれません。
その不安を払拭するために、民主党は、マニフェストに掲げている政策だけではなく、経済危機をどう克服していくのか、そして日本をどういう方向へ導こうとしているのかを丹念に説明していく必要があると思います。
もう少し個別的には、
・官僚主導の予算編成から、政治主導の予算編成に変える。
・消費税を増税しなくても、一般会計と特別会計を一体化して、剰余金や繰越金の無駄を省くことで財政赤字の縮小を図る。(所得税の累進制強化や法人税の増税も掲げて欲しいところです)
・衰退する一方の地方経済をどう活性化するかのプランを示す(kojitakenさんが、公共交通網に致命的な打撃を与えるものとして反対している「地方高速道路無料化」は、地方経済活性化のための切り札だと私は思っているのですが、それについてはまた改めて書こうと思います)
これらを、執行部そして各議員・新人候補者が地道に説明していくことが必要だと思います。
いくら自民党政権がお粗末であっても、「一度民主党に任せてください」と懇願されただけで投票先を自民党→民主党に変える人はほとんどいないはずですから。
なお、きょうのエントリーで取り上げられている「今年2月の時点で麻生首相が、西川社長交代を指示していた」という6/13付の読売新聞の記事
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090613-OYT1T00127.htm
については、6/13のエントリーでのコメントで私も、鵜呑みにはできない、と書きつつ、「鳩山総務相の西川社長辞任要求は、【盟友・麻生首相のお墨付き】あってのことだったので、後先考えずにこぶしを振り上げ続け、下ろすことができなくなった 」と
思っている、と書いたのですが、
本日(6/15)鳩山総務相は総務省での退任会見で、
http://mainichi.jp/select/today/news/20090615k0000e010060000c.html
「今年4月までに麻生太郎首相から、西川氏の後任候補のリストを同封した手紙を受け取っていた」
ことを明らかにしています。ですから、少なくとも読売の「とばし記事」ということはなさそうです。(読売の記事のタイトルの付け方は意味深だと思いますが)
その退任会見の記事の続きにあるように、鳩山邦夫氏は、
「(西川社長の続投を認めないのが)既定路線と思っていたのがばかだった」
と述べています。
鳩山総務相は、小泉・竹中一派の巻き返しを過小評価していたのか、麻生首相と自分の信頼関係を過大評価していたのか。
その両方かもしれません。
2009.06.15 19:49 URL | sweden1901 #SVqLzQOU [ 編集 ]
kojitakenさん
こんにちは。ナベツネさんの意図はわからないですね。小泉さん支持のブロガーの方には、若かりしころの共産党歴から批判しているかたもいました。
J-waveというラジオで、上杉さんが、鳩山(弟)さん秘書歴のある議員の間から、鳩山(弟)さん総裁選出馬待望論が出て来ているとか。当人は、そんなことは考えていないが、自民の勝ちを望む議員から担がれる可能性もないとはいえないと。タックル見ますので、また。
2009.06.15 21:03 URL | 散策 #TY.N/4k. [ 編集 ]
>「かんぽの宿」売却問題以来、朝日、日経、読売の「あらたにす三社連合」は
>鳩山邦夫批判の立場で論陣を張ってきており
これは違うでしょう。
鳩山邦夫批判をしてきたのは朝日、日経、産経であり、読売と毎日は当初から鳩山を持ち上げていた筈です。
2009.06.15 22:52 URL | くぁwせdrftgyふじこlp #fJWGzukU [ 編集 ]
kojitakenさん
たびたびすいません。今日収録したと思われるTVタックルですが、ナベツネさんが鳩山(弟)さんを後押ししていたことには触れていました。長妻さんがこの問題では弱すぎです(カットされているのかもしれませんが)。TVタックルもその後の報道ステーションも、西川さんがだめだというなら、かわりを出さなければだめじゃないかといい、毎日新聞のナベツネさんの西室泰三東京証券取引所会長でめどがついたというあたりには触れていません。昨晩のサキヨミは、小泉さんの影など郵政改革派の巻き返しに焦点を当てていました。でも、小泉さんが欠席した平成20年度第2次補正予算関連法の再議決は、小野次郎議員が途中退席しただけで、小泉さんの影響力が未だそこまで強いという説明は、どうもしっくりきません。むしろ屋山さんが、西川さんと鳩山さんを天秤にかけたら財界を敵に回してしまうから、西川さんのほうがはるかに重いといっていたのは、財界による圧力説と同じ切り口で、あり得るかなあと思いました。
2009.06.15 23:12 URL | 散策 #TY.N/4k. [ 編集 ]
ナベツネの暗躍はさておいて。
どうもまたしても郵便不正利用がらみで、厚生労働省局長逮捕の先に民主党の議員がターゲットにされているような気配が出てきました。
まえに朝日が一面ででかでかと報じていたあれです。
厚生労働省幹部の話では、逮捕された局長だったら偽造書類ではなく、きちんとしたものも作れるはずとの証言もあります。
このままだと、民主党の議員が小沢さんと同じ目に遭いそうな気がします。
そしてこの議員を庇った鳩山代表が苦しい立場に追い込まれるかもしれません。
いずれにしても今週から来週にかけてがヤマ場になりそうです。
注意が必要です。
この動きに合わせて麻生がいきなり解散にうって出るかもしれません。
2009.06.15 23:26 URL | 風太 #seTEoywg [ 編集 ]
風太さんのおっしゃる大阪地検特捜部の件、同感です。ブログでも第二の西松事件と書くかたもいますし、日刊ゲンダイや夕刊フジなど書き出してるんじゃないかでしょうか(買ってませんが)。
かんぽの宿は、鳩山(弟)さんのことは置くとして、野党3党の「かんぽの宿疑惑追及チーム」は、6/15も旧かんぽヘルスプラザ(東京簡易保険総合検診センター)を視察しました。粛々と調査をしているということには、注目していきたいと思います。
2009.06.16 00:53 URL | 散策 #TY.N/4k. [ 編集 ]
同じく憲法を変えます、といっても、自民党のそれと、国民新党や民主党とは内容が異なるはずで、例えば自民党の「試案」と、鳩山由紀夫の「試案」とでは違うでしょう。検討が必要であり、ごちゃまぜにしてはいけないのではないでしょうか。
また、憲法改正=軍国主義復活とか、憲法改正=人権侵害とか、ステレオタイプに決めつけるのは、これまでの社会党・共産党のスタイルで、明確でないものを最初からこうだと決めつける、陰謀論と同じだと思いますね。
もちろん、私は中曽根や森が書いた憲法なんか絶対嫌ですが。
前にも書きましたが、まったくの丸腰で、「非武装中立」を貫くことなど、国民大多数はとても承知しません。これは人間の性であり、現実でもあります。それを無視するのは、かえって危険だと思います。自衛隊を憲法の中できちんと規定すべきでしょう。
2009.06.16 05:45 URL | cube #- [ 編集 ]
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