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きまぐれな日々

さて、これからいよいよ靖国問題をめぐって議論が高まっていくことになると思う。おそらく小泉や安倍は、総理大臣の靖国参拝を国民の多数が支持するような方向へと世論を誘導しようとたくらんでいるものと思うが、それを阻止するのもAbEndの重要なテーマの一つだと、勝手に思っている。

先週末に読んだ、読売新聞会長・主筆の渡邉恒雄と、朝日新聞論説主幹の若宮啓文の対談をまとめた『「靖国」と小泉首相』という本(朝日新聞社、2006年)は、読売新聞と朝日新聞という日本の二大紙の論説の責任者が、靖国神社の問題をどう考えているかを示すと同時に、豊富な傍注や巻末につけられた資料によって、靖国の問題を論じる時に参照することのできる、なかなか良い本だと思う。

もともとこの対談は、朝日新聞社発行の月刊誌「論座」2006年2月号に掲載されたもので、本は、雑誌に掲載されなかった部分も収録して、今年3月に出版されたものだ。
「論座」のこの号は、発行部数の少ないこの雑誌としては異例によく売れ、当時私も買うことができなかった。

ジャーナリストの立花隆氏が、外国人記者クラブに招待されて行った講演で、この渡邉・若宮両誌の対談を取り上げたビデオファイルのURLを下記に示す。

http://www.videonews.com/asx/fccj/020306_tachibana_300.asx

余談だが、この講演会で立花氏は、ライブドアに絡んで変死した野口英昭氏の怪死事件を、「ブラック勢力のプロによる殺し」だと断言している(31分30秒あたりから)。今でもこの問題を執拗に追いかけているのは「きっこの日記」くらいになってしまったが、まだまだ忘れ去られるには早い問題だ。なにしろ、野口氏は安晋会のパーティーに「理事」として紹介されて登壇したという報道もされているのだ(「週刊ポスト」2006年2月10日号)。

話を靖国問題に戻す。読売新聞が社論を転換し、靖国神社への総理大臣の参拝を否定するようになったのは、昨年(2005年)の6月4日の社説からである。昨年の総選挙前も、読売は小泉内閣と若干距離を置くような報道で、むしろ小泉支持を煽っていたのは朝日新聞であった。

さいきん、森田実氏の記事からの引用がAbEndに投稿するブロガーの間で一種のブームになっている(もちろん私もその一人だ)が、保守派ながら反戦、反新自由主義を唱える森田氏の主張には、共感できる部分が多い。下記は今年の元旦に発表された森田氏による朝日新聞批判だ。

2006.1.1(その2)
2006年森田実政治日誌[2]

(前略)
2005年9月11日の総選挙投票日の朝日新聞の社説は、ジャーナリズムの政治権力への屈服の歴史に記録されるほどの政治権力への隷従の見本として記憶されるだろう。その恥ずべき朝日新聞社説で「小泉首相はこれまで見たこともない型の指導者だ。……単純だが響きのいいフレーズの繰り返しは、音楽のように、聴く人の気分を高揚させる」と称賛したのだ。

2006年1月1日「森田実の時代を斬る」より

このようにぶざまな紙面を作る朝日新聞だが、それでも、選挙後は何食わぬ顔をして小泉批判の記事を書いたりしている。産経新聞の「アリバイ作り」が一時話題になったが、朝日新聞だってアリバイ作りに関しては負けてはいない。
まあ、だから朝日新聞の言うことなど話半分に聞いておいた方が良いのかもしれないが、『「靖国」と小泉首相』の傍注(4)によると、2005年10月の小泉の靖国参拝を社説で支持したのは、産経新聞一紙だけだったという。この時点では読売は首相の靖国参拝を批判する立場に回っており、当時「ナベツネ(渡邉恒雄)の心変わりに産経の社内は大いに震撼した」と聞いたことがある。

その渡邉は昨年末に週刊朝日、AERA、テレビ朝日など朝日新聞系のメディアに立て続けに出演し、インタビューに応じた。これらのインタビューで渡邉が力説したのが、靖国神社に首相が参拝することの否定であった。

前にも書いたが、私は渡邉恒雄なる人物に昔から興味を持っていた。そしてその興味は、好意的なものではなく、全否定に近いものであった。ナベツネというと読売新聞の社論を大きく右寄りに転換し、大阪読売の黒田軍団を放逐し(今テレビでコメンテーターをしている大谷昭宏氏は、黒田軍団のエースだったかと思う)、プロ野球の運営に介入して読売ジャイアンツを巨大戦力のチームに仕立て上げて球界の戦力バランスを崩し、それになんと言っても読売新聞社において最高権力者として君臨して、意に反する記者を片っ端から追放してイエスマンで固め、魚住昭氏の言を借りれば、『「国家と対峙する新聞」から「国家と一体化する新聞」へとジャーナリズムの理念そのものを変えようとしている』(魚住昭「渡邉恒雄・メディアと権力」=講談社、2000年)男であった。

ナベツネを追った魚住氏の上記のルポは、1999年、月刊「現代」誌に連載され、2000年春に発売されたが、読売新聞はおろか、朝日新聞や毎日新聞にも書評が載ることはなく、発行部数もそんなに多くなかったと思う。当時、ナベツネ批判はマスコミのタブーだった。唯一の例外はプロ野球に関する言論であり、巨人以外を応援するプロ野球ファンの多くはアンチナベツネであり、プロ野球関係のホームページや掲示板がナベツネの悪口で埋め尽くされていることも珍しくなかった。

しかし、ナベツネで本当に問題だったのは、読売新聞という巨大ジャーナリズムを壟断(ろうだん)する独裁者となり、自らの思うがままに政治や社会を動かそうとしたことだ。私は魚住氏の「渡邉恒雄・メディアと権力」を二度通読したものだ。

そのナベツネは、よく知られていることだが、学生時代は共産党員だった。そして、晩年にさしかかった現在、靖国に反対する言論を唱え始めた。しかし、政治や社会を思うがままに動かせたはずのナベツネが、なぜか自らの率いる読売新聞さえ思うがままに動かせないようなのだ。

このあたりを、また森田実氏が指摘しているので引用する。

2006.1.27(その1)
2006年森田実政治日誌[55]

「権力の親衛隊」=忍者的仕掛け人集団の存在は本当か? それは平成時代の「新撰組」か? 動き出した右翼革命の中核部隊か? 政権の末期症状の一つか?

古い知人から電話があった。彼が言った言葉――「日本の情報をコントロールし、日本の政治を動かす政治権力の一種の親衛隊が組織されているという情報があるが、あなたは知っているか」――が、ここしばらくの間、気になっていた。
 昨日、別の古い知人から電話があり、政治権力の「親衛隊」の存在を教えてくれた。彼が話したのは、次のようなことだった。
 (1) 「親衛隊」の構成は、官庁、巨大広告企業、各種報道機関、大企業、大銀行、研究機関のメンバーと各種専門家などの約100名。ボスは現政権の某中心幹部。
 (2)性格は一種の情報機関。約100名のメンバーは諸々の情報を集めボスに報告する。その情報をボスが分析し、攻撃すべき人物と彼に関するスキャンダル資料を集める。これを報道機関が一斉に報道する。そのほかの機関も動き出す。ターゲットにされた人物はマスコミ報道によって葬られる。
 (3)この集団の狙いは「現体制の政治路線の存続・発展」。政治理念は岸信介元首相の政治理念と生き方に近い。「誰か」のために働く一種の忍者的集団の性格が強い。
 (4)資金力は豊富なようだ。メンバー約100名には一回20万円の活動費が渡されている。
 (5)マスコミはほぼ完全に握った。大マスコミの実力スタッフをメンバーにしているようだ。「某マスコミ機関の実力者が反政府的言動を強めているが、そのマスコミを自由に動かすことができないのは、その報道機関のなかに親衛隊が存在しているからだ」。
 (6)当面の仕事は、ポスト小泉の主導権争いのなかで反対派を押さえること。反対派幹部を調査し、スキャンダル的なものがあれば、マスコミを使って暴露し、追い詰める。

 以上が旧友の話である。この内容を何人かの“情報通”に知らせ、意見を求めたところ、「その種の情報を耳にしたことがある」との返事だった。「そんなこと、よく知っていますね。深入りしないほうがいいですよ」と言った者もいる。
 9月の総裁選に向けて、今後、非主流派の特定の政治家とその周辺に関する週刊誌記事が出るだろう。この背後に「仕掛け人集団」の策動があると見てよいだろう。「とくに狙われるのは中国に近い政治家ではないか」との見方が比較的強かった。

 ポスト小泉をめぐる政治闘争はこれから激化する。現体制を守ろうとする勢力は強く激しく働く。もし体制が根底から変わると、現体制の「影」の部分が暴かれるおそれが生ずる。これを防ぐための一種の「新撰組」的役割を担ったプロ集団が動き出したようである。
 日本も危険な国になったものである。[この点については改めて書きます]
2006年1月27日「森田実の時代を斬る」より

ここで森田氏が書く「某マスコミ機関の実力者が反政府的言動を強めているが、そのマスコミを自由に動かすことができない」というのがナベツネを指すことは、疑う余地がないだろう。

前振りだけでこんなに長くなってしまった。何回かのシリーズになってしまうかもしれない。
(つづく)
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こんにちは。
今読んでる本によると、小泉靖国参拝は、心の問題なんていうきれいごとではなく、中韓をわざと怒らせて、反日感情をあおらせるためためのもの・・・と書かれていました。
そういわれると、小泉さんの人を小馬鹿にしたような言動の理由もよくわかります。

2006.07.12 12:28 URL | pirikara710 #ieBsaL3k [ 編集 ]













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