http://mainichi.jp/photo/archive/news/2009/04/19/20090419k0000e040018000c.html
この区間を運航するフェリー3社のうち津国汽船(玉野市)は4月1日に撤退、他の2社も「歴史ある航路を残したいが、収支を見極めて」と先行きは不透明で、地元自治体は国へ支援を求めているという。
この件をブログで取り上げようと思っているうちに時間が過ぎていって今に至ったのだが、昨日(1日)の日本経済新聞の社会面が、「1000円高速」がフェリーを次々に廃業や減便に追い込んでいると報じていた。日経はいつもウェブ版では記事のサマリーしか載せないが、広島?愛媛を結ぶ呉・松山フェリーが6月末で廃業する件のほか、紙面には日本全国各地の主な長距離フェリー会社の減便や値下げの状況が出ている。
苦戦しているのはフェリーだけではない。前記日経記事によると、
とのことである(より詳細な記事は、西日本新聞の記事を参照されたい)。高速バスも苦戦しており、九州の約80社でつくる九州バス協会が5月27日、利用者減に加え、渋滞が増えて運行に支障が出ているとして、お盆などの高速道の割引拡充に反対する要望書を国交省に提出した。
さらに、環境面への悪影響も懸念されている。以下、やはり同じ日経記事から引用する。
国立環境研究所(茨城県つくば市)の松橋啓介・主任研究員は「一般的な自家用車のCO2排出量は1人あたり鉄道の約9倍」と指摘。世界各国が温暖化防止に力を入れるなか「移動手段が車にシフトし、CO2削減の流れに逆行する」と話している。
(日本経済新聞 2009年6月1日付紙面より)
温暖化の件については、割高な高速道路料金が一般道の渋滞を引き起こしているという現状もあり、5月25日付エントリ「クルーグマン教授の政策採点 & 経団連が日本を滅ぼす」にも書いたように、民主党の主張する高速道路無料化によって一般道の交通量の一部が高速道路に移行すれば渋滞が解消・緩和されることから、CO2の発生が抑制できるという試算もされているのだが、現在の「1000円高速」の悪いところは、全国一律ではなく、地方に偏った値下げであることであり、これによって地方の高速道路で渋滞が生じてしまったわけだ。自公与党が、選挙の票欲しさに場当たり的に行った今回の「1000円高速」は、公共交通網の衰退と環境悪化を同時にもたらす、最悪の政策といえると思う。
民主党の高速道路無料化政策にしても、仮に一般道の渋滞緩和効果によって環境悪化にはつながらないとしても(それもどこまで本当かわからないが)、公共交通網の衰退を加速させることは否定できない。時あたかも改正道路交通法施行令が6月1日から施行され、75歳以上の運転免許更新時に認知機能検査が義務づけられたことが報じられているが、昨日(1日)朝のNHKニュースで、愛媛県の東予地方の人がインタビューに答えて、以前から高齢者の運転免許返納運動を行っているが、公共交通網が衰退しきっているために、車がなければ生活できない高齢者が多く、そういうお年寄りには無理に運転免許の返納を勧められないと言っているのを聞いた。実際、当該の地域を少しでも歩いてみればわかるが、町は過疎化し、飲食店などが廃業した空き家が目立つにもかかわらず、国道の交通量は決して少なくなく、それなのにバスのダイヤはごくまばらという状態である。ヨーロッパはおろか、あのアメリカでさえ鉄道が見直されているとは昨今よく報じられていることだが、自民党も民主党もその流れに逆行する政策しか打ち出さない。こんなていたらくで、京都議定書は設定した目標が厳しすぎたなどと泣き言を言っても世界に通用しないのは当たり前である。
お年寄りや車を持てない若者でも暮らしやすく、環境へのダメージも提言する社会にするために二大政党が政策を競うのであれば良いが、現実はそれに真っ向から反する。見え隠れするのは経団連の影である。政権交代が起きて、民主党が中心になる政権ができたとしても、経団連の影響からどこまで脱することができるか、そこが問われるだろう。
[参考記事]
景気対策、逆に「エコ破産」「公共交通衰退」を加速?
(JanJanニュース、2009年6月1日)
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自民党もそうですが、民主党も支持層の特性からモータリゼーションに親和的になる傾向がありますね。自動車関係及び大手流通業界など。
与党の高速1000円は需要の誘発という目的そのものが間違ってます。景気対策として高速道路を使うのがおかしい。
民主党も同じ過ちを繰り返す危険性がありますが、ぜひ麻生政権の政策の失敗から学んで、交通政策に都市地方の格差軽減という目的を以ってやって欲しいと思います。具体的に高速道路は都市部は渋滞緩和のために敢えて高い高速料金を維持するべき。公共交通機関の発達した都市部で日常的にマイカーを利用することは贅沢行為ですからうんと高負担で構わない。一方で地方の高速道路は無料開放して料金所の設備からして廃止しべきだと思います。地方ではどんな低所得者でも自動車での移動を余儀なくされますから。
もちろん地方の公共交通機関も充実すべきですね。「赤字の鉄道を作るのは悪である」というような新自由主義的な呪縛から世論を開放して、まずは人口20万人以上の都市の都市内交通を充実し、このくらいの規模の都市ではマイカーなしで生活できるレベルを担保すべきです。
日本は公共交通機関が発達していると言われていますが、あくまでも大都市だけの話。50万人規模でもマイカーなしで生活できない都市はザラです。人口10万人以下の都市でさえ路面電車があるドイツとは大違いです。
2009.06.02 09:45 URL | kechack #1/Y8RI0s [ 編集 ]
地方に生活道路が必要なのはわかるが、だからといってほとんど通らない道路を作る必要があるのだろうか。ゼロにしろとは言わないがある程度の規制は必要である。大体そのような全国的な発展を目指した田中角栄的土建国が日本の財政を疲弊させた大きな要員の一つではないか。殆ど通らないような道路を作ることことに反対することが新自由主義者というのは論外だと思う。もし短絡的にこれが新自由主義だというのならば、無駄な道路を推進するのは土建国家の信奉者以外の何者ではないと思う。
確かに地方は道路が必要な面がある。一方で大都市では環境の面からも車から降りる方向で検討するべきだろう。だが財源は限られている。無尽蔵にあるならばいくらでも作ればよいがそうはいかない。道路特定財源の一般財源化が問題となっているが、それによる福祉等の社会保障政策に回すべきである。殆ど使われない道路に回すべきではない。このような考え方は地方に住む人の切捨てを目指す新自由主義ではない。道路か福祉かという政策上の選択なのだ。
地方に住む人にとっては福祉より道路という人もいるだろうが、それによって殆ど使われないような道路に福祉に回せる金を注ぎ込んでいいのだろうか。地方に住む人にまったく回らないというのならばともかく社会保障として回る訳であり、切捨てとは思わない。逆に地方の道路を作ることによって地方の人も含む全体の社会保障を結果的に削っても良いのだろうか。私はそうは思わない。
2009.06.02 10:27 URL | 政権交代を望むものとして #- [ 編集 ]
「政権交代を望むものとして」さん
管理人さんは、地方に道路を作れなどと主張してませんよ。公共交通網を充実すべきだと言っているのです。
祖父母のお墓まいりや法事のため、年に数回、群馬県の県庁所在地・高崎から車で30分くらいの所にあるお寺に行くことがあります。駅~お寺の往復はいつもタクシー利用です。お寺はバス通りからすぐでバスも走っているのですが、1日1~2回しかないのでそれを待っていられないのです。子供の頃、夏休みなどに祖父母の家へ遊びに行った頃はもっと本数もあったのですが、年々少なくなってしまいました。中曽根元首相のお膝元ですから道路は立派ですが、公共交通は実に貧弱です。
地元の商店や病院が次々なくなっているから生活用品の買い物や通院には高崎あたりまで出てこなければならない、つまり車がないと生活していけなくなっているのです。
体が動かせるうちは、人の世話にならず住み慣れた環境で暮らしたいと願っても、心ならずもホームや都会に住む子供の家に身を寄せなければならない高齢者も多いのではないでしょうか。自分なりの生き方を望んでも多数に同化しなければ生きていけない社会になってきているように思います。
2009.06.02 12:24 URL | ぽむ #mQop/nM. [ 編集 ]
道路というのは作る時はもちろんだが、その維持管理にも多額の費用が掛かる。公共交通機関を増やすのもいいが、採算が取れるものならばともかく採算が取れなければ結局どこからかもって来なければならない。私は極論で言えばその費用を出すのであれば社会福祉関係にその多くを出すべきだと思う。
私はこれによってある程度の交通アクセスによる格差が出来ても仕方がないのではないかと考えている。たとえ交通アクセスにある程度の差がでようとも貧困や医療、年金、少子化などにもっと資金を回せるのならばその方がいいと思う。極端に言えば私には交通による不都合な思いより貧困や医療の不都合な思いのほうが優先度は高いと考えている。
結局のところ個々人が自由に過ごすための費用負担のばらつきをどの程度認めるかが問題となると思う。
2009.06.03 16:47 URL | 政権交代を望むものとして #- [ 編集 ]
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