きまぐれな日々

一昨日のエントリ「クルーグマン教授の政策採点 & 経団連が日本を滅ぼす」は、ノーベル賞経済学者の名前をタイトルに用いたためか、多くのアクセスをいただいた。

このエントリの後半では、環境・エネルギー問題を取り上げた。温室ガス削減の2020年までの中期目標を、「4%増」としたいとする経団連を批判したが、これ以上の努力を強いるのでは企業は悲鳴を上げるとのコメントもいただいた。

だが、これは企業だけの問題ではなく、政官業の三者すべての問題である。24日のTBSテレビ「サンデーモーニング」をご覧になった方も多いと思うが、環境エネルギー研究所所長の飯田哲也氏は、1992年のリオ・サミットで「2000年までに温室効果ガス安定化」という約束をしておきながら、バブル崩壊にもかかわらず、無策のまま石炭火力を増設し、1990年以降二酸化炭素の排出量を減らすどころか急増させてきたことを批判していた。今になって、いけしゃあしゃあと「4%増」などと言い出す経団連の言い分は、国際的には全く通用しないが、それは政治家や官僚にも大きな責任があり、これぞ政官業癒着の弊害ともいえるものだ。

中期目標の「4%増」を主張しているのは、政官業の三者ばかりではない。全国電力関連産業労働組合総連合(電力総連)をはじめとする7つの労組も、経団連に歩調を合わせている。これは、24日の「サンデープロジェクト」で民主党の岡田克也幹事長も認めていた通りである。電力総連は民主党への影響力が強いので、民主党も自民党同様、グリーンニューディール政策推進の「抵抗勢力」になっている。よく、「悪徳ペンタゴン」という言い方をする人がいるが、これに大企業の労組を加えて「悪徳ヘキサゴン」というべきではなかろうか? ブログでも、無批判に「自民党=悪、民主党=善」としているかのような言説が目立つが、政治はそんな単純なものではない。幸い、岡田幹事長は労組の抵抗があっても温室ガス削減政策に前向きな姿勢を崩さないことを明言していた。

積極的といえば、斉藤鉄夫環境相も温室ガス削減に熱心で、NHKや朝日新聞のインタビューに応じて、自らの姿勢をアピールしている。朝日のインタビューでは、「中期目標で15?25%削減」という意欲的な目標を打ち出す構えで、これは、「サンデーモーニング」で寺島実郎氏が支持するとしていた「7%削減」または「8%?17%削減」よりさらに踏み込んだ数字だ。ウェブ版には出ていないが、26日付の朝日新聞紙面には、公明党議員である斉藤環境相は公明党の独自色を打ち出したいが、総選挙に企業の支援を必要とする同党の太田代表は、必ずしもそこまで積極的ではなく、公明党にも産業界の包囲網が形成されつつあることが報じられていた。強すぎる経団連の政治支配からいかに脱出するかが、今後の日本政治の課題だ。

「広島瀬戸内新聞ニュース」のエントリ「「政治介入」という「麻薬」に手を染め、後れを取る日本経済界」は、環境省のグリーンニューディール政策も、中身は原発推進だと批判している。北欧では1970年代からなされていた原発推進の是非に関する議論が、日本では今に至るも行われてこなかった。昨年5月に書かれた、飯田哲也氏の「「環境ディスコース」の欠落――なぜ日本は環境政策でいつも迷走し後追いするのか」と題した論考から以下に引用する。

■日本の忘れ物

 環境ディスコースを構築することなく、その都度、「落としどころ」でドロ縄的対応をしてきた日本の環境エネルギー政策には、少なくとも3つの重要な「忘れ物」がある。それが今日でも、気候変動対策の足を引っぱっているのである。

 ひとつは、言うまでもなく原子力だ。北欧では1970年代、ドイツでも1980年代に乗り越えてきた原子力論争を、日本は「国策」の名の下に避けて通り、未だに消化していない。じつは米国や英国も十分に消化してきたとは言い難いが、少なくとも経済合理性からの議論は経ているのに対して、日本はそれも避けてきた。そのため、今やその反動で、ナイーブな原子力復古主義が幅を利かしている。

 第2に、電力市場改革だ。これは、「落としどころ」どころか、電力会社対経済産業省の総力戦となり、最終的には「日本型電力自由化」、すなわち見せかけだけの「自由化」で事実上の現状維持となった。本来であれば、環境エネルギー政策としての共通意味世界を構築するべき言論が、経済学の一分野(公益事業の規制緩和)に矮小化され、さらには組織間バトルへと堕ちてしまった。

 第3に、環境税だ。税自体が日本では密教中の密教である上に、多省庁かつ多くのステークホルダーにまたがるため、これまでほとんどまともな政策論議の場が与えられず、「アジェンダに乗るかどうか」が唯一の争点だったのではないか。

(「「環境ディスコース」の欠落――なぜ日本は環境政策でいつも迷走し後追いするのか」(日経エコロミー, 2008年5月22日付)より)


環境・エネルギー政策の推進は、政治主導でなければ進まない。財界や官僚と比べて、政治家の能力が著しく劣る日本にとっては、不得意な分野だと言わざるを得ない。せっかくの技術的なポテンシャルを持ちながら、それを政治が活かすことができていないのが最大の問題である。政治家の中には「官僚支配の打破」を訴える人が多いが、官僚や財界、労組などをコントロールできずにいいなりになる政治家の能力不足こそ解決しなければならない最たるものだと私は思う。経済や社会だけではなく、政治も今後混迷を続けるだろうが、その中で、国民のための政治を推進する能力を持った政治家を選んで育てていくのが、日本国民に課せられた課題である。


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 私も、いまや日本のガン細胞は、自民党よりも財界だと思います。

 本来、民法上の営利社団法人でしかない存在が、自分たちの利益の最適化のために、国の政策を壟断するのが当たり前になっている今の世界は異常です。

 マネー至上主義、まさにリアルな意味での資本中心主義の弊害がもろに現れています。
 利益至上主義の弊害が、派遣などの非正規雇用や、正社員の過労死、うつ病を招いている現状を放置しながら、さらに環境問題でまで、口出しをする。
 しかも、同じ経済構造のヨーロッパは自ら責任を負おうとしているのに、日本とアメリカだけが、財界の利益のためにのみ行動しようとしている。
 滅ぼすべき経団連。
 御用組合の弊害はそれに準じて悪質。

2009.05.27 18:03 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]













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