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きまぐれな日々

民主党の鳩山由紀夫代表が、かねてからの持論である衆議院の比例区定数削減をきたる衆院選における民主党のマニフェストに盛り込む意向を示しているが、とんでもない話である。

私はもともと1990年代の「政治改革」を冷ややかに見ていた人間であり、「小選挙区制にすれば金のかからない政治が実現できる」とか、「二大政党制が実現できる」などというたわごとは、当時も今も「何を馬鹿なことを言ってるんだ」としか思っていない。

そもそも、中選挙区制のままであれば、菅直人が民主党、小沢一郎が自由党をそれぞれ率いていた時代に既に、民主党と自由党の議席を足せば自民党を上回る選挙結果になったはずだと試算した人がいたはずだ。小選挙区制は、第一党に圧倒的に有利な選挙制度であり、それを最大限に活かしたのが2005年の「郵政総選挙」におけるコイズミだったが、コイズミ自身は小選挙区制を含む「政治改革」には反対していた。政治改革を推進していたのは、小沢一郎をはじめ、現在民主党にいる面々である。これに関しては、鳩山由紀夫も岡田克也も菅直人も全員同罪であり、岡田克也は今回、参議院の定数削減まで言い出したし、菅直人もかつて単純小選挙区制を主張したことがある。

小選挙区制にしたところで、政治に金がかからなくなどなりはしなかった。ようやく民主党が「3年後」の企業・団体献金全面禁止を打ち出したが、政治改革の議論の頃からもう15年以上経ってもこのざまだ。また、小選挙区制の大きな欠点の一つとして、党執行部の権限が強まりすぎて、たとえ国会議員であっても党員が執行部に頭が上がらなくなったことが挙げられる。かつては「分裂選挙」で分裂した両方の候補が中選挙区制で当選することもあったが、現在では党の公認を得られるかどうかが候補者の死命を制する状態で、これを悪用したのが「郵政総選挙」で「刺客戦法」を仕掛けたコイズミだった。この悪夢のような総選挙以降、自民党議員は次の選挙で「刺客」を送られてはたまらないとばかり、コイズミに頭が上がらなくなったばかりか、以後の総裁選で、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎と、「総裁選に当選しそうな候補」に一斉になびくという情けない姿をさらした。

いや、自民党ばかりではない。民主党でも、昨年の代表選が小沢一郎の無投票当選になったのは、議員たちが執行部を恐れたからにほかならないし、今月16日に行われた代表選でも、「小沢チルドレン」とも呼ばれる一昨年当選の参議院議員らを中心に、優勢と見られた鳩山由紀夫になだれを打つ現象が見られた。

このように、百害あって一利のない現行の小選挙区中心の選挙制度は、一刻も早く比例代表制を中心にした制度に改められるべきであって、当ブログは以前からずっと、小選挙区比例代表併用制(現行の制度は小選挙区比例代表並立制)にすべきだと主張し続けているのだが、自民党や民主党の面々はそれに逆行して比例区の定数削減の先鋭さを競い合うありさまだ。今回も、自民党の「50減」に対抗して、民主党はもっと過激な「80減」を言い出した。そもそも、90年代の「政治改革」の頃、小選挙区と比例区の定数を250ずつの半々とする制度になるはずだったのが、土井たか子による斡旋を社会党がのんで、小選挙区300、比例区200の案で制度がスタートした。それが、比例区180に減らされ、さらにそれが一気に80も減ると、限りなく単純小選挙区制に近くなる。これでは、社民党や共産党の議席はほとんどなくなってしまう。「多様な民意を汲み上げる」ことに真っ向から反する、とんでもない選挙制度改悪であり、その裏には一日も早く改憲を行いたいとの思惑が見え隠れする。

私は以前から選挙区と比例区の投票先を分ける「戦略的投票」を行っているが、民主党が比例区削減を選挙公約に盛り込もうとしていることは見過ごせない。読者の皆さまにも、仮に選挙区は自公政権を倒すために民主党候補に入れるとしても、比例区の投票先は他の政党(保守なら国民新党か新党日本、左派なら社民党か共産党)への投票を検討されることを、強くおすすめしたい。


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今度の総選挙では、比例区では社民党、小選挙区では、自公以外の最も当選しそうな候補に一票を投じようと思います。ただし、民主党が勝ちすぎる可能性が高まれば、社民党に入れるつもりですね、死票になろうとも。

小選挙の定数削減ならともかく、比例区の削減など許しがたい。英国のようなことになってはならない。2005年の英国総選挙は以下の結果となった。

      得票率     議席数
労働党   35.2%   355
保守党   32.3%   197
自由民主党 22.0%    62
その他   10.4%    30

わずか35.2%の得票率で、議席数の比率では55%以上も獲得する。自由民主党の場合、22%も得票率があるのに、議席数の比率では10%にも満たない。

日本で完全小選挙区制になった場合、たちどころに憲法改悪の動きが本当の意味で加速されるのではないか、と危惧する。

なお、日本より人口の少ない英国でさえ、下院議員は640人もいる。日本の参議院のような存在のない英国と単純比較するのには問題があるとはいえ、比例区の定数を減らすのは馬鹿げている。民主主義を理解していない政治家と権力に逆らわない従順な国民がうようよいる日本で完全小選挙区に近い選挙制度になったら、安倍晋三のような民主主義を全く理解していない独裁者が誕生し、ひたすら強行採決を行うことは間違いない。

2009.05.26 09:49 URL | 負け組みの矜持 #- [ 編集 ]

マスコミの改革論調に乗せられやすいのが鳩山代表の弱点ですね。
 小沢一郎や亀井静香みたいに、マスコミ受けが悪いことでも堂々と主張できる度量に欠けるですよね。
 衆院選は03年の選挙みたいに自民と民主の改革争いになってしまうのでしょうか?
 財界、マスコミ、評論家の思う壺ですな。

2009.05.26 12:35 URL | kechack #1/Y8RI0s [ 編集 ]

 議員定数削減は、そうは言っても、すぐにという話にはならないでしょう。次の参院選以降、どうなるかでしょうね。
 ただ、今後の議員定数削減・民主党躍進と、憲法変更は直接関係ないのではないでしょうか。
 今でも、憲法を一切変えるなと明確に主張しているのは共産・社民だけであり、その他の政党が一致すれば、国会を通すことはできます。
 ただ、国民投票がありますから、世論が煮詰まっていないのと、民主党内にも反対派が多いわけです。

 それより、第2の公明党みたいな気味悪いのが、全選挙区で立候補するらしいですね。単純に考えれば、この教団は自民党支持だったので、与党側の票が分散するわけですが、どんな影響を及ぼすでしょうか?

2009.05.26 13:23 URL | cube #- [ 編集 ]

小選挙区制の客観的メリット
・二大政党化により強大な単独与党が出現
⇒安定的かつスピーディーな政権運営が可能
・二大政党化により常に単独与党の地位を狙う第一野党が出現
⇒答責性が高まり与党に緊張感が増す

小選挙区制の客観的デメリット
・二大政党化により第三党以下が国政から消滅しやすい
⇒有権者の選択肢が二択に限定される
・地滑り的大勝が起こりやすい(93年カナダ、05年日本など)
⇒「強すぎる与党」が数の暴力に走るおそれ

小選挙区制を望む勢力
・改憲派
⇒社共が衰退した今なら改憲を是とする二大政党による改憲が可能
・中道右派(保守本流的、非復古的)
⇒自民党ほどではないが保守的な民主党を唯一の非自民政党として残すことで、常にある程度の保守政策を実現できる
・民主党支持者(ただし社共不支持)
⇒第一野党たる民主党単独での政権交代が容易になる

小選挙区制を望まない勢力
・中道左派、左派、護憲派
⇒(特に後二者は)受け皿となる社共が国政から消滅してしまう
・創価学会員
⇒選挙協力があったとしても公明党の国会勢力が激減する
・右翼(復古派、いわゆるネット右翼も)
⇒自民党より右の勢力が立てる余地が欲しい(平沼新党、新風など)

2009.05.26 14:10 URL | 選挙制度研究員 #aXP94Ji. [ 編集 ]

初めてコメントします。いつも読ませていただいています。
企業献金廃止を名目に始まった政党助成金も、もらっている政党が有権者に対して抱く緊張感を失わせる結果となっています。議席(数)が利権と化している。その上企業献金はなくなっていない。
二大政党制などというものは、歴史的風土の帰結として取りうるものに過ぎず、特定の政治勢力が、恣意的に作り出すものではないと思います。特に少数勢力の権利を担保すべきです。選挙制度の変更は、国民の総意、または国会内の全会一致が必須であると考えます。
定数削減を言い出す方々は、1議席あたりの有権者数が増えるという民主主義の後退というと大げさですが、民意が反映しにくくなる(特に少数意見)という側面をいわず、歳費の問題しかいわないのは誘導的です。役人の数を減らすのとは意味が違います。この議論の行き着くところは、論理的には議会そのものの否定につながります。
# 個人的には、かつて衆議院で共産党が40議席持っていたときのような与野党の緊張感がよみがえって欲しいです。

2009.05.26 15:19 URL | あきら #HfMzn2gY [ 編集 ]

小選挙区制から大選挙区制・比例代表制に移行するのは実際かなり難しいと思われます。

まず二大政党(自民党と民主党、米共和党と米民主党、英保守党と英労働党など)のいずれかに満足している人々は小選挙区制にあまり異義を唱えたがらないでしょう。むしろ自分の支持する政党が単独与党になれなくなるとして、大選挙区制・比例代表制を嫌うかもしれません。

次に政治にあまり関心のない人々、選挙を棄権したり雰囲気で投票したりする人々は、政党の数が2だろうが10だろうが興味を持たないでしょう。むしろ単純な方がいいとして小選挙区制を支持するかもしれません。

こう考えてみると、大選挙区制・比例代表制への動きを支持するのは、「政治に関心があるが二大政党のいずれも支持できない」人々に限られるわけですが、そういったスタンスの人は明らかに少数派なわけで…

2009.05.26 16:20 URL | たこす #Iv6k9Q5A [ 編集 ]

政治改革とやらで、いつの間にか左派中道・護憲勢力の日本社会党を破滅へと追い込み、さらに比例区の定数を削減して残存勢力?の社民党を根絶やしにする。すべてシナリオ通りですよ。

2009.05.26 17:45 URL | 日本改 #99DFA69w [ 編集 ]

鳩山はかつて、「共産党をつぶすために民主党をつくった」といっていました。ここで共産党は自民党のまちがいではありません。あながち冗談とも言い切れないな、と今になって思っています。実際この人は、自民党政権のもとで、協調路線をとりつつ第二党としてやっていきたい、というような発言をくり返してもいましたね。

2009.05.26 18:18 URL | puyonyan #- [ 編集 ]

自公と政権を争う民主党もまた定数削減に賛成の立場ですが、まぁマニフェストで前から削減案を掲げてきてましたからね。

ただ民主党は国民の関心が最も高い消費税も献金禁止も、政権交代のために今だけはあえて封印っと先延ばしにしたのは痛い。

財源にしても憲法にしても、こうなると自民党と民主の違いは薄く、あるのはせいぜい政策の「程度」を争うくらいのもの。
先日のサンプロで、自民党の議員が「民主党は秘書が逮捕されている!」っと自民党側との強調していましたが、違いってその程度なんですかね?


ちなみに、Youtubeにアップされていた「小泉進次郎VSよこくめ勝仁 対面 in 横須賀」です。
http://www.youtube.com/watch?v=JhFUYwt3kfY
学歴や能力や人間力は無いけど、でかい態度だけは人並み以上の進次郎。
こんな人間だけは政治家にしてはイケないので、自民党以外を応援したい気持ちはあるのですがね。

2009.05.27 00:47 URL | 与志 #- [ 編集 ]

英国について言えば、小選挙区制度に不満を抱いている人々は非常に多いですよ。だからこそ、2005年の総選挙では、自由民主党とその他をあわせると、保守党の得票率とほぼ同じになるわけです。なお、英国のお隣の国アイルランドは比例制度を採用しています。

2009.05.27 05:45 URL | 負け組みの矜持 #- [ 編集 ]

逆に言うと、六割超の投票者は英保守党・英労働党のいずれかに投票しています。戦略投票の可能性を考慮しても、

二大政党のいずれかで一応満足できる人+無関心層>二大政党のいずれにも満足できない人

であろうことは想像に難くありません。有権者の多数が二大政党制≒小選挙区制に反対するようなことはなかなか考えにくいと思います。

さらに議員レベルではその傾向が顕著になります。二大政党のいずれかに属している議員にとって、比例代表制への移行は自分達の勢力縮小、引いては自分の落選に繋がりかねません。大選挙区制でも相対的な勢力縮小は避けられないでしょう。彼らには小選挙区制を改めるメリットはあまりないのです。

小選挙区制は、多数派にとっては麻薬のようなものだと思います。

上位二政党が多数派を支持基盤とする限り、多数派に属する有権者はそのいずれかに満足し、支持政党の安定化と支持しない少数派の関与を排除するため、小選挙区制による二大政党化を選択するでしょう。マジョリティたる上位二政党に所属する議員は、自らの勢力増大のため、小選挙区制による二大政党化を選択するでしょう。そして一度小選挙区制を選択すれば、多数派有権者も多数派議員も、自分達の勢力を守るために、小選挙区制を選択し続けるでしょう。まるである種の依存症のように…

その副作用は自分達の代表者を選出できなくなる少数派が被ることになりますが、それを省みられることはほとんどないでしょう。

なぜなら、彼らは少数派だからです。

2009.05.27 09:56 URL | たこす #kXNe0gkk [ 編集 ]

たこすさんの意見に全面的に賛同するわけではありませんが、まあ二大政党の議員レベルから小選挙区制廃止論が出ることがないのは確かでしょうね。ただ国民レベルでは二大政党に不満を持ちつつ、やむを得ずどちらかに投票している事例は少なくないはず。とくに二大政党で政権をたらい回しにしている米英では…

しかし選挙制度は立法事項ですから、最終的には議会の過半数が制度改正に同意しないと意味がない。私の考えでは、日本で小選挙区制廃止が実現するには以下のような条件が揃わないと無理かと。

①民主党が一度政権を獲得する
②民主党が政権運営に失敗する
③自民党・民主党双方への有権者の失望が広がる
④自民党・民主党からある程度(少なくとも数十人)の議員が離党し、それぞれいくつかの新党を結成する
⑤それらの新党に国民の支持が集まる
⑥それらの新党や、公明党・社民党・国民新党などがキャスティングボードを握る形で自民党・民主党に影響力を行使する
⑦それらの新党が自民党・民主党への合流を選択しない

以上の条件が揃えば、新党勢力と公明党その他の中小政党が、自己に有利な中選挙区制or比例代表制への移行を主張して自民党・民主党への圧力をかけ、選挙制度改正案を飲ませるという可能性が僅かながら出てきます。

ちなみに
・民主党が政権運営に成功する
⇒民主党は国民支持をバックに小選挙区制への傾倒を強める
・新党メンバーが少数に留まる
⇒影響力を行使できず小選挙区制でいずれ吹き飛ばされる
・新党を作ったが結局自民党か民主党に合流
⇒いわずもがな

2009.05.27 13:02 URL | 選挙制度研究員 #Y8uDfkUM [ 編集 ]

kojitakenさん、皆さん、こんばんは

国会議員にも痛みということで、定数削減を言っているのでしょう。
狙いは、2大政党制に有利なように、比例区を減らし、弱小政党を潰し、2大政党が有利なようにしようというものでしょう。
国会議員にも痛みは、一見、国民に受け入れやすいものです。
しかし、反対です。
様々な民意を反映させるには、政治を身近にするには、議員の数は増やす方向にあるべきです。
少数にすることは特権階級化させることです。
特権階級にさせないことは定数を増やすことと、もう一つ議員報酬を庶民感覚に合うものに変えることです。
2400万円の報酬を1000万円以下ぐらいにすべきです。
定数削減以上に、人件費も削減できます。

現代人は生活スタイルは多様化していて、それに呼応して、意見も様々です。
それを二大政党に収斂させるのは、時代への逆行です。
死に票が半分近くなるのは、民主主義の否定です。
二大政党制は先の小泉郵政選挙で、自民党が圧勝しましたが、投票数はそれほどの差はありません。
その結果、過半数を少し上回る投票率の自公政権が、2/3条項で、あらゆる法案を通しました。
民意を反映し、死に票が出ない、比例代表制には賛成です。
私も比例区と選挙区では政党は違います。

2009.05.27 23:15 URL | 愛てんぐ #PARia3Ic [ 編集 ]

選挙制度改悪=小選挙区制の導入が叫ばれていた当時、私は所属する労組の組織内議員(衆院議員・社会党)との対話集会で、
なぜ民意をゆがめる小選挙区制にするのか?と、質問すると、その議員は
「民意を集約する必要がある」と述べていました。
私は、望ましい選挙制度とは、民意の「集約」ではなく民意の「反映」ではないか?と突っ込みましたが、多勢に無勢でした。
当時は、選挙制度を変えようとしない者=守旧派という時代でしたから。
その後、私は労組の大会等でも、小選挙区反対の論陣を張りましたが、執行部は「政治改革に乗り遅れるな」の一点張りで、
社会党は自滅への道を歩みます。
ちなみに、そのときの議員は、村山政権下で政務次官になりましたが、その後の選挙では、小選挙区で敗退、比例区(民主党)でも復活できず、引退しました。

2009.05.28 08:47 URL | jun #- [ 編集 ]













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