この当時、なぜ『週刊ポスト』や『週刊現代』がこの件をスルーしたのかはよくわからない。その後、両誌が主導して安倍晋三批判が始まり、最後には安倍叩きがメディアのトレンドになったのだが、安倍が首相に就任する直前だけは、なぜか日本中に安倍晋三批判を自粛するムードがあり、当時私は安倍批判が載った週刊誌を買い集めたものだ。一番多く安倍批判記事を掲載したのは『サンデー毎日』だった。
しかし、その1年前、『週刊ポスト』(2005年4月22日号)は、鳩山由紀夫が統一協会の『救国救世全国総決起大会』に民主党メンバー10数人を連れて出席していたことを伝えていたのである。祝電どころではなく出席だから、安倍晋三の行為よりさらにタチが悪い。民主党が新代表に選んだ鳩山由紀夫がそういう側面を持った政治家であることから目をそらしてはならない。
鳩山由紀夫は、いうまでもなく鳩山一郎の孫だが、戦後政治史を調べてみると、戦後間もない頃に首相を務めた保守政治家は、幣原喜重郎を皮切りに、吉田茂、鳩山一郎、岸信介、池田勇人など、ことごとくタカ派イデオロギーを持った国家主義者だったことがわかる(ほとんど唯一の例外であるリベラリストは石橋湛山だが、体調を崩して短命政権に終わった)。しかし、彼らの中でイデオロギー政治を行ったのは、A級戦犯だった岸信介だけである。吉田茂は、本質的には右翼だったが、戦勝国アメリカと渡り合うために、あえて軽武装の経済重視路線をとった。鳩山一郎は、強烈な反共イデオロギーの持ち主だったにもかかわらず、吉田茂に対抗するために、日ソ国交回復を成し遂げた。池田勇人は、大平正芳や宮沢喜一など側近のアドバイスを受けて、首相就任後は本来のタカ派イデオロギーを隠し、低姿勢に徹して所得倍増計画を打ち出して、日本の高度経済成長に大きく寄与した。
何が言いたいかというと、本人がどんなイデオロギーを持っていようが、政治家が現実を直視して、国民のためになる政治をしてくれれば良いということだ。吉田、鳩山、池田らは功罪相半ばするとはいえ、比較的肯定的に評価されている政治家だ。一方、現在でも悪評が高いのは、イデオロギー政治を行った岸信介である。
安倍晋三は、こともあろうに「岸信介の孫」を自ら売り物にして、祖父を意識したイデオロギー政治を行ったあげく、参院選で惨敗して、それにもかかわらず政権にしがみつこうとしたものの、行きづまって突如政権を投げ出した。麻生太郎は、本音より現実を重視した吉田茂には倣わず、祖父の右翼イデオロギーだけを受け継いでいるように見える。
それでは、鳩山由紀夫はどうか。祖父・鳩山一郎は、吉田茂の軽武装・経済重視の親米路線をよしとせず、重武装・自主独立路線を目指した人である。憲法改正を行うために、小選挙区制実現を目指したが(いわゆる「ハトマンダー」)、世論の反対にあって野望は挫かれた。そして、日ソ国交回復の業績を残した。
安倍晋三や麻生太郎同様、鳩山由紀夫は祖父をたいへん尊敬している人物のようである。スローガンの「友愛」も、祖父から継承したものだ。そのせいか、現行の衆議院の選挙制度から、さらに比例区の定数を削減しようとしている。そんなことをしたら、社民党や共産党の議席はほとんどなくなってしまうだろう。また、改憲にはやはり積極的で、NHKテレビで、これまで自民党との対立で凍結していた憲法審査会を容認し、設置することに同意の意向を示した。
この点で、やはり鳩山由紀夫は小沢一郎とは違う。小沢は、2003年の民由合併以降、自らを応援してくれる「小さな政府研究会」に加わらず、左派と政策協定を結んで、自らのイデオロギーを封印して、改憲よりも野党共闘を重視する姿勢を見せたが、鳩山は早くもその路線を転換しようとしているかのようだ。私は、鳩山由紀夫は右派色を強めることで、「小沢一郎の傀儡」批判をかわそうとするのではないかと警戒していたが、それが早くも現実のものとなってしまうのか。
鳩山由紀夫が改憲路線を鮮明にすることは、社民党との関係にマイナスであるばかりではなく、党内のあつれきも強めることになる。いくら鳩山由紀夫が本質的には統一協会やアパとべったりの右翼政治家であっても、小沢一郎の野党共闘重視・消費税増税凍結路線を継承し、結果として成果をあげてくれればそれで良いのだが、早くも改憲に前向きの姿勢を示すようでは、鳩山由紀夫に対する警戒を強めなければならないだろう。憲法問題に関しては、鳩山由紀夫は明らかに「親自民」なのである。
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憲法改正にどうこう言う前に、
憲法とは代議制民主主義国家にとってどんな物か、
認識を改めて統一する必要があるように思っている。
民主主義国家の権力の中枢は、言うまでもなく主権者である国民にある。
代議士=政治家は太陽から光を受けて輝く月のように、
この巨大な権力の行使を任された、あくまで代理人であり
官僚はこの権力行使を恙無く、また不正なく行使されるよう
一切の管理を任された、権力それ自体の番人である。
代議制民主主義国家の権力は、
権力の源たる国民、
権力行使の代理人たる政治家、
権力行使の管理人たる官僚、
いわばこの3点のトライアングルによって成り立っている。
その権力行使において、
主権者がどのように権力を行使すべしと命じたか、それを記した指令書こそが『憲法』である。
要するに、政治家や官僚にあれをしろこれをしろという命令を国民が行うなら、
国民の命令書である憲法にその旨を記しておくのが、
代議制民主主義国家の原理原則ということだ。
これが私の『憲法』への理解である。
しかしこれは私個人だけの理解ではなく、
憲法改正あるいは憲法護持の全ての議論、
いかなる思想の持ち主でさえも、
ここから始めるべきだと確信あっての理解、見解である。
以上、述べておくべき公共益の部分終わる。
以下は私のこれからの憲法を考えるにあたっての見解である。
まず単純に言って、
片手で扱える携帯電話や市民が気軽に情報を発信できるネットなるものが、
一般には想像すらできえない時代に作られた国民権力の施行命令書が、
今の時代に対応可能であるかと言えば、甚だ不十分としか言い様がない。
また昨今の警察検察の裁量権の問題による政治事件冤罪事件からは、
オイコラ方式で自白強要がまだ当たり前だった時代の国民権力を管理する側への命令、
即ちその部分における憲法の改正を痛感せざるを得ない。
思うに、加害者保護に片寄っている節がある現憲法は、
オイコラ自白強要が当たり前の時代には、
必要なセーフティネット兼警察検察司法の良心の呵責の落とし所だったのではなかったか、
他にも環境権に関することなど、現憲法制定時には思いもよらなかった問題が、
現在には多数ある。
9条等なかなか見所のある条文がある一方、
憲法のこうした問題にも常に気を配らねば、国民主権など簡単に覆されてしまう。
命令不在、拡大解釈が多用される権力構造の不健康さこそ、
最も恐るべきものである
2009.05.19 09:36 URL | shimura #XQYq98OQ [ 編集 ]
一部の自民民主が、国防の義務を書き込めなどという主張をしています。生存権はおろか、「公益のために死ね」ということでしょうか。
たしかに、このように「憲法とはどのようなものか」という意味でスタートラインにすら立てていない人もいます。しかも、その生存権たる25条を廃止しようという動きも自民民主の一部にあります。それに、今9条を変えてしまえば、より悪質な押しつけ憲法と化すでしょう。
そもそも。憲法の書き替えなどは、よそではやっていないことです。成文法の国でやっていることは、書き加えるだけです。慣習法なら、なおさら積み上げていくだけの法です。ドイツが何十回も変えているじゃないか、ならば日本はなんで改正しないのか、という人がいますが、その人のいう改正とは質が違います。
環境権やプライバシーを加えよという議論があります。しかし、9条の時だけいじましいまでに解釈運用の努力をしておいて、他の条文の時は全くネグレクトしている人のいう改憲論は唾棄すべきでしょう。
ただ、立憲主義だけでは対応できない問題もあると考えています。ここも前の方の仰る通りでしょう。立憲主義だけで権力に歯止めがかけられるわけではありません。「被害者の権利」のもとに、治安体制や軍事力が下から自発的に強化されていることが、今非常に問題だと言えます。市民の権利=権力の歯止め、とは言い切れず、むしろ真逆の結果を生んでいる側面も非常に強いと思います。
ここまで書いてしまえば、こと憲法についてはおおむね社民共産と同意見でしょう。実際現状では、結果的に彼らと基本的には同じ立場に立っています。
改革はいいことだ、何でも反対は糞だとよくいわれます。しかし現状維持も立派な対案だ、という考えを持ちつづけたいものです。それが保守、のはずだと思います。
2009.05.19 13:21 URL | puyonyan #- [ 編集 ]
>何が言いたいかというと、本人がどんなイデオロギーを持っていようが、政治家が現実を直視して、国民のためになる政治をしてくれれば良いということだ。吉田、鳩山、池田らは功罪相半ばするとはいえ、比較的肯定的に評価されている政治家だ。
政治家自身の判断力もまともだった事に加え、彼らのタカ派イデオロギーの暴走を押さえるブレーキもなんとか正常に機能していました。中選挙区制で野党もかなりの議席を国会に占めていたしで。
体が何かウイルスのキャリアになっても、他が健康で免疫が正常に機能すれば、発症せず健康体のように暮らせるのと同じです。
ところが、今の日本は体力が落ち免疫力もかなり弱くなっていて、いつ軍拡ファシズム病を発症させても不思議じゃない状況。リベラルと思われていた人たちですら、いかに一方方向に走りやすく、異論を述べる者に対して罵詈雑言を投げつけるまでになってしまうかは見ての通りです。
もっとも確かに今はひたすら応援でもいいのですが、政権交代後は応援以上に監視する事が「勇気あるブロガー」さんたちの重要な役目になります。
鳩山さんが名前のままでいられるか、鷹に変身するかを決めるのは本人ではなく国民です。
2009.05.19 19:35 URL | ぽむ #mQop/nM. [ 編集 ]
ここにこられる方は小沢を評価している方が多いように思う。ただ私は彼を評価しない。確かに主義主張がどうであろうと行動として行ったことは重要だ。その意味で今までは左派に配慮していた。だがそれは果たして彼はこれからもそうだろうか。民主党が政権をとり権力を手にしてもなお左派に配慮するだろうか。私はその点について彼にまったく信頼を置いていない。彼は権力を握ったとたん変わると思う。彼は全ては政権をとってからだと公言している。逆に言えば逆に言えば権力を取るまではどのような形でも良いということだ。彼は湾岸戦争前後に自衛隊の海外派遣を始めとする日本の外交の転換が起きた時に中心にいた人物だ。また、その後の連立政権でも社会党を追い出した人物でもある。これでは彼を信頼しろといわれても無理な話である。
また直近の出来事でもそれはいえる。消費税を含めた財源の問題がそれだ。私は高福祉高負担の社会を考えるものだ。よって高福祉のためには高負担が不可欠だと考えている。よってどこかの時点で消費税の増税はやむをえないと考えている。もちろんその大前提として行政の無駄をなくし、下がり続けた法人税と累進課税の強化をすることは当然としてその上で高福祉と引替えに消費税の増税もやむなしと考えている。消費税の逆累進性の問題は高福祉のほうで対応すべきだと考えている。財源のあてのない政策など政策ではない。私が岡田を支持した理由の一つにこの消費税がある。その是非はともかく財源について選挙の前に(十分かどうかは別にして)表明したのだから誠実な対応といえる。その意味では麻生が消費税の増税を明言したのも選挙前にしたというその意味だけでは評価できる(最も目的は岡田と違い現在の官僚国家を維持するための手当てとしての増税だからまったく評価できるものではないが)。
翻って小沢はどうだろうか。財源問題についてまったく語ってないではないか。消費税を上げないのならばどこから取ってくるのだろうか。行財政改革といっても具体的には何も見えない。財源のない政策は政策ではない。小沢の政策は財源の裏づけがなく単なる選挙向けのパフォーマンスに過ぎない。それは選挙の時だけうまいことをいう自民党そのものだ。いつから民主党はそんな党になってしまったのだろうか。
私は政権交代を望む。だがそれは単なる看板の架け替えでは意味がない。自民党が下野しても自民党とまったく同じ小沢が権力を握ったのでは救われない。もちろん過渡期としてはしょうがない面もあるが、自民党を分裂させることが出来たならばそれに呼応して小沢と決別するべきだと思う。小沢と手を組むということは自民党そのものと手を組んでいると考えるべきだと思う。
2009.05.19 23:47 URL | 政権交代を望むものとして #- [ 編集 ]
世論は「麻生辞めろ」だから民主も「辞めろ」って言う。
他方で世論は「小沢辞めろ」って言っても小沢を守り、世論は岡田なのに鳩山が代表になり訳が分からない。
小沢切れない奴が官僚切れますか?「現実を見る力」が民主にありますか?ってのが正直なところです。
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20090519/CK2009051902000177.html
民主党員や民主党所属議員や党本部がどう意見しようが「小沢氏の意向が党本部の最終判断」だなんて擁護するマスコミもいませんよ。
管理人さんは改憲を懸念しているみたいですが、その前に政権交代自体があり得なくなりましたね。残念。
2009.05.20 00:38 URL | 与志 #- [ 編集 ]
自民党の選挙対策の責任者の古賀さんが、投票率が高くないと良いなというような本音を漏らしましたね。
彼がそう言うという事は、選挙をすれば自民が大敗するというシュミレーションが出たということでしょう。
消費税の事が言われていますが、当然ながら岡田さんよりも鳩山さんの主張に利があったということです。
現政権は財源の消費税増税論争に持ち込むことで、政権交代しても変わらないというイメージを国民に植え付けようと狙っていたのでしょう。
岡田さんの性格から仕掛けたのでしょうが、見事に彼は引っかかりました(苦笑)。
でも小沢さんを参謀にしている鳩山さんは、跳ねつけられました。
正解でしたね。
そもそも霞ヶ関は大事なところは何も情報公開していません。
国の財政の実態など何もわからない段階で、増税もへったくりもあったものではない。
すべては政権交代を果たした後に、明治以来のアカ(苦笑)をすべて落として、国の財政の本当の姿が明白になった段階で、今度は国民本位の物差しで不必要な予算をカットし、必要な予算を加える。
それらの作業を国民の意見を聞きながらしっかりと進めた後に、結果として不足分が出てきたら、その段階でさらにいくつかの案を国民へ提示して、そしてどの様な方法で予算不足を補うかを決めていけばいいのです。
それをしないうちから増税なんて、明治以来の膿を出さないで、無条件で役人の提出してきた案を信用するようなものです。
年金問題で役所がいかにインチキなことをしているのか、皆さんよくおわかりのはずなのに、どうして騙されるのですか?
もういい加減に賢くなりましょうよ。
せっかく小沢さんがここまでの道筋を立ててくれたのですからね、大事にしていきましょうよ。
鳩山さんのタカ派体質ですが、これはそれこそ国民がコントロールしていくしかない。
その為には民主党内のリベラル勢力や社民党などの党外勢力を後押ししていくのがベストでしょう。
岡田さんを立てておけばその心配はなかったというのもあります。
だったら適当なところで岡田さんに交代させるように国民が仕向けていけばいいだけです。
政治家など国民の公僕であり、都合が悪くなれば挿げ替えればいいのですからね。
それが本当の民主国家のあるべき姿です。
いままでの(いまもまだそうですが)官僚主導で国民が下僕のような国家体制がおかしいのです。
国民本位の政治が日本の未来を作りだしていくということです。
もっともその為には国民の側に最低限の学習意欲と賢さが求められます。
いままでのように人任せ、役人任せでは民主国家の国民にはなれませんからね。(^^)
2009.05.20 08:00 URL | 風太 #seTEoywg [ 編集 ]
皆さん、こんにちは
風太さんの意見に大賛成です。
国民主権が実現しない、信頼のない政府での増税論議は、信用できません。
北欧の福祉国家は、政治家や官僚が公僕で、国民に奉仕することが実現しているので、政治に信頼を置き、増税にも納得するのです。
政治に信頼あって初めて、増税ありきです。
増税論議をすることが、責任政党、誠実な態度でもありません。
そんな大増税をする羽目になったことの説明責任無くして、増税論議はあり得ません。
マスゴミも民主党に財源を明らかにせよと詰め寄りますが、マスゴミは政府に税金の使い方を完全に透明にしろなんて全く追求しません。
公開されていれば、野党も財源に裏打ちされた施策提言はいくらでもできますし、素人でも考えられます。
そのことの方がはるかに大事なことなのに、マスゴミは一切詰め寄りません。
マスゴミの流す情報は常に疑って掛からなくてはいけないでしょう。
2009.05.20 14:31 URL | 愛てんぐ #PARia3Ic [ 編集 ]
鳩山が仮に改憲派だからといって、それだから何だというのでしょうか。
改憲=悪というような発想は左翼的な思考停止ではないでしょうか。憲法というのはあくまでも、「手段」のひとつです。
それを護ること自体が「目的」となるのは本末転倒であり、結局は「改憲派」に対して悪というレッテルを貼るだけの、あなたが言うところの「イデオロギー政治家」と同じ振る舞いを犯すことになります。
あなたのいつもおっしゃることは、全て自分自身にも返ってくるのですよ。誰々を「右翼」と決め付けてそれを批判するだけという発想ではしょうがないでしょう。違いますか?
2009.05.25 02:05 URL | 江戸ワード #- [ 編集 ]
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