きまぐれな日々

小沢一郎民主党代表が辞意を表明した。昨夕5時から行われた記者会見では、小沢一郎は笑みさえ浮かべており、代表辞任の無念さより、肩から重荷を下ろした解放感の方が強く感じられた。

「戦うための選択だ」とする小沢の言葉に嘘はないだろう。田中角栄の秘蔵っ子として育ち、権力の何たるかを知り尽くしている小沢一郎は、「嘘も百回繰り返せば真実になる」という権力のやり方は百も承知だろう。西松事件に関しては、かつて自民党および自由党で政権側にいた頃の小沢一郎は、叩けばいくらでも埃の出る政治家であって、当時は法に触れることもしていたという情報もいただいているが、小沢が政権側から離れたのは2000年、さらに岩手県の有力建設会社が破綻したのが2002年であり、自民党や自由党時代の件はすべて時効になっている。それ以降の小沢一郎は、収賄罪やあっせん利得罪に触れるようなことは、しようにもできなかった。野党政治家の限界である。東京地検はいろいろ捜査したことだろうが、おそらく近い将来、総選挙の後にでも自民党の政治家を立件するための材料しか見つからなかったのではないか。だから、大久保隆規秘書を虚偽記載罪で起訴することしかできなかった。しかし、検察はともかく麻生太郎や読売・産経新聞などの狙いは、単に小沢一郎のイメージを落とすことにあったから、彼らにとっては大勝利なのである。

かつて、70年代頃までは「絶妙なバランス感覚」を見せることも多かった日本の有権者も、近年は勝ち馬に乗りたがる傾向が強まった。これは、選挙で与党が勝つ時(悪夢のような郵政総選挙をはじめ1980年と1986年の衆参同日選挙など)も、野党が勝つ時(1989年や2007年の参院選など)も、いずれも有利とされていた側が選挙戦終盤で大きく勢いを伸ばした。昨年10月に大阪で行われた辺見庸の講演会で、故阿部謹也・元一橋大学長が「世間」を発見したと聞き、氏の著書『「世間」とは何か』を読んだが、この本の上梓から14年、現在の日本の社会は、個の確立どころか際限なく「世間」の影響力が強まっているようにさえ感じられる。隣近所や職場だけではなく、電波芸者たちに誘導されるテレビ世論も似た者が集まる「ネット論壇」(笑)もまた「世間」である。西松事件で小沢一郎のイメージがダウンしたことで麻生内閣の支持率が上がることなど、「周りが小沢民主党から麻生自民党に乗りかえたらしいから、私もそうする」という行動だとしか思えない。

勝ち馬に乗る「バンドワゴン効果」を止めるには、自ら身を引くしかないと小沢一郎は考えたのだろう。政治家は結果に責任を持たなければならないものであるから、小沢一郎の判断は妥当だと私は思う。

そして、民主党には小沢一郎の辞任をプラスに転じるしたたかさが求められる。小沢一郎は、西松事件が起きると、企業・団体献金の全面禁止を打ち出し、自民党の町村信孝に「盗っ人猛々しい」と負け惜しみを言わせしめた。同様に、小沢一郎は自身の辞任を、政治家の世襲制限につなげるべきだろう。麻生内閣の過半数が世襲政治家である一方、民主党も小沢一郎や鳩山由紀夫が世襲政治家であるため、どっちもどっちと見られがちだった。しかし、実際の政治家を思い出していただければわかるのだが、かつて世襲政治家は首相になれない時期が続いたこともある自民党はすっかり性格が変わってしまい、今では世襲にあらずんば政治家にあらずという状態だ。安倍晋三に至っては、「岸信介の孫」を売り物にして総理大臣にのし上がった。一方、民主党の世襲政治家の多くは、小沢一郎や鳩山由紀夫のように自民党から移ってきた人たちだ。民主党の『次の内閣』の名簿を見ていただければわかるが、民主党式に親や祖父と別の選挙から選出された議員を世襲にカウントしないなら、世襲議員に該当するのは小沢一郎ただ一人であり、代表交代によって誰もいなくなるのである。これは、自民党と差別化して有権者に大いにアピールできる点だ。ましてや自民党では人生最後の仕事として改憲に執念を燃やす中曽根康弘が、世襲政治家の権化ともいえる安倍晋三を再び押し立てようとしている。民主党の「反世襲」は、麻生太郎ばかりではなく、国賊・安倍晋三に対する強烈なカウンターになる。このメリットを活かさない手はない。

そのためには、小沢一郎の後継者は「鳩山一郎の孫」の鳩山由紀夫であってはならないことは言うまでもない。鳩山は、小沢を支えてきたとして、小沢一郎支持者からの評価が高いが、政治的スタンスは前原誠司よりさらに右に位置する右翼政治家である。改憲にだって熱心だし、コイズミ時代に自民党と「カイカクを競う」誤った路線を選択して参院選に惨敗した。さらに、2002年に民由合併の動きがあった時も、説明責任を果たさず民主党の支持率を大幅に下げる失態を演じ、代表辞任に追い込まれた。結局、民由合併は菅直人と小沢一郎によって行われたのである。このように、何度も失敗を犯している鳩山由紀夫を代表に据えることは、民主党にとって自殺行為以外の何物でもないだろう。同じように構造改革支持者で改憲論者である前原誠司も、「偽メール事件」の大失敗を3年前に犯したばかりで、鳩山由紀夫同様、絶対に代表にしてはならない人物だと思うが、鳩山と前原を比較すると、世襲でないだけまだ前原の方がましかもしれないくらいだ。それくらい、鳩山由紀夫は絶対に代表にしてはならない人物なのである。第一、自ら幹事長を辞任すると言っているのだから、代表になるのは筋が通らない。

岡田克也もできれば避けてほしい。政治家としての世襲でこそないが、イオングループの御曹司である岡田克也は、この格差社会時代の野党第一党党首としてはいかにも弱い。郵政総選挙の敗北は、仮に小沢一郎や菅直人が党首であっても避けられなかったと思うし、2004年の参院選勝利の実績もあるから、鳩山由紀夫や前原誠司が代表になるよりはマシだが、政権交代を起こすためには岡田克也では力不足ではないか。

結局、緊急避難的に菅直人を昇格させるか、さもなくば思い切って若手の長妻昭か馬淵澄夫を代表にするのが良いと思う。後者の二人については、その思想信条など必ずしも支持できない部分もあり、本当ならもっと社民主義寄りの人の台頭を期待したいのだが、それでは右派が納得するはずがないことも考慮すると、選挙に勝つためには、間違いなく有能な政治家である長妻昭や馬淵澄夫という選択も、大いにあって良いと思う。目的のためには手段を選ばないのかと言われれば、政治とはそういうものだとしか言いようがないし、権力の陰謀だか検察の暴走だか知らないが、西松事件での大久保秘書逮捕も、目的のために手段を選ばなかった結果だと私は考えている。政治は結果がすべてなのである。

西松事件によって、企業・団体献金の全面禁止、小沢一郎代表の辞任によって、政治家の世襲制限。民主党には、災いを転じて福となすしたたかさで、自民党との差別化を図ってほしいと思う。


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おざわ氏
「国民はすぐ俺様の悪口を言うが自ら決断したことなんてないだろ?
結局烏合の衆じゃないか。
だから俺様は身をもって『決断しろ!』って一刺ししたわけよ。
俺様の決断で党内にも喜んでいる奴らはいるだろうが、
それ以上に国民の中でも喜んでいる連中は多いだろう。
しかし、勧善懲悪で政治が片付くと勘違いしていないか?
ヒーローが出てきて何でも解決してくれるなんて考えはガキの考えだ。
各々示された問題に自らの判断で意思表示するしかないんだ。
その先にしか未来はないと指摘しておく。」

2009.05.12 09:41 URL | 観潮楼 #- [ 編集 ]

kojitakenさんに同意です。
小沢代表が降りるのは、民主党にとっても、そして何よりも国民にとっても大きなマイナスでしょう。
でも、マスコミを総動員して、検察を動かしてまで小沢代表を追い落とさないとならないところにまで現体制は追い詰められているのです。
だからここでめげることなく踏ん張らないといけませんよね
鳩山・岡田両氏が後継有力候補とマスコミで報じられていますが、厳密に言うと政治的立場で鳩山幹事長は、次期代表としても、ましてや総理としても、あまり魅力は感じられません。
鳩山幹事長で良いところは、現執行部の一員であったとして、社民や国民新両党との連立がうまくいくかな?というところで、岡田副代表だと、多分担ぐであろう若手中堅が些細な事にこだわり反発して、まとまらなくなる恐れもあります。
となると残されたのは菅代表代行という線ですが、このふたりで決まらないときはありえると思います。
菅代表代行だと連立もうまくまとまるのではと思います。
そして菅代表代行の場合、何よりも大臣としての経験がものを言う。
ところで小沢代表ですが、是非とも選対の責任者としては踏みとどまり、民主党の若手中堅に多い頭でっかちのアマチュア政治家を、当選に導いてやって欲しいですね。
小沢代表が一歩引いても、選対責任者として残れば、自民党を完璧に倒す事が出来ると思います。
そして新政権が樹立したあかつきには、小沢代表には霞ヶ関に睨みを利かす重石になって欲しいですね。

2009.05.12 11:10 URL | 風太 #seTEoywg [ 編集 ]

 さて、事態が進み、状況が変化した以上、「小沢代表」に恋々とするのはやめて、またその事態に至った経緯を憶測するのもやめて、今の状況で、今後最善の道を探すべきです。その意味で、すぐに、次期代表の吟味に入った、kojitaken氏の記事はすばらしい。

 私個人としては以前から、小沢代表辞任がそれほどマイナスになるとは思っていなかったので、これで人心を刷新したうえで、小沢氏は選挙対策本部長としてでも辣腕をふるってもらいたい。代表を辞めても、議員を辞めたわけではないのだ。

 私は岡田でよいと思う。個人的願望は管だが。管にはいずれ出番が来るだろう。
 鳩山は確かにダメだと思う。

2009.05.12 13:17 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

 本人が望むなら、今代表に近いのは鳩山氏でしょう。新聞などに書かれているように、彼なら小沢支持グループや旧社会党、民社党といったベテラン多数派が納得するでしょう。
 私は鳩山氏に抵抗感はありませんね。改憲論というのも、私は従来左派の非現実性、頑迷さが、かえって「平和主義」という憲法精神まで危うくしていると思っていますので、国民新党が言うように憲法精神を尊重しつつ、自衛隊の必要性を修正的に憲法に盛り込むことはありだと思います。
 世襲というのも、そのために北海道から出馬しているのだから、構わないでしょう。
 ただし、ここで皆さんが書かれている通り、改革政党の顔としては確かに鳩山氏は弱いと思います。彼はむしろ幹事長向きの人でしょうね。
 もっとも、日本人の根っからの保守性向からすれば、名門出身というのは選挙の顔として悪くないかもしれませんが。
 

2009.05.12 13:42 URL | cube #- [ 編集 ]

kojitaken様
「鳩山ゆっきー」については、少なからず誤解があるようにお見受けします。
「前原より右」と言うのは、まったく事実誤認で、前原なんて比べ物にならないくらい「リベラル」です。
ウソだと思うなら、お引き合わせしますヨ(笑)。
きっとファンになると思います。
とても気さくで信頼できるかたです。
ただ、代表は引き受けないと思います。
長妻氏、馬淵氏はご両人とも「今は、本人にやる気がない」と思います。

2009.05.12 16:40 URL | 「気弱な地上げ屋」 #- [ 編集 ]

はとあにき
「小沢さんが『補正が衆院通過後に代表選』って言ったのになぜ16日にやるかって?
そりゃ私が勝つために決まってるでしょ。
外野は『メディアジャックのために時間稼ぎしないのはヘボ将棋!』って騒いでますが、
そんなことしたら岡田さんとかにウチのグルーピーが切り崩されちゃうでしょw
まして地方票なんて取り込んだら私の不人気がバレるじゃないですかw
要はなんでもあり。自民だって総理の座をもて遊んでるんだからこれくらいアリでしょ」

2009.05.12 19:53 URL | 観潮楼 #- [ 編集 ]

>前原の方がましかもしれない…
は絶対間違っています。彼は小泉以上にララジカルです。日本がむちゃくちゃになってしまいます。

岡田氏では財政再建派です。いわば貧乏神候補だと思います。我々の生活はさらに苦しくなること請け合いです。米国は喜ぶでしょう。

一方鳩山氏は改憲派で田母神氏とつながるような政治家だと思いますが、これまでの彼のスタンスから右傾化を進行させるようなことはできないと思います。まあ鳩山政権が長引けば大変危険ですが…その意味で彼しかいないと思います。

個人的にはブログ主さんと同じ官氏が良いのですが、小沢氏対応であまりにも日より見過ぎました。小沢氏擁護の姿勢を強く打ち出せば可能性は合ったと思いますが。

2009.05.12 23:30 URL | バク #- [ 編集 ]

民主党が世襲禁止だなんて大げさに旗を振っていますが、
副代表の石井一は、一族で兵庫県内の議席を占めてますよね。息子は現職ではなくて、公認予定者ですから、次の選挙には出ないのでしょうか。
それとも、衆議院の時は隣の選挙区だから世襲じゃないし、今は参議院の比例区(全国)だから大丈夫なんでしょうか。
無役ならまだしも..あれでは小泉さんの事をとやかく言えませんね。

2009.05.13 19:24 URL | 世襲議員の定義 #7yu2AX4I [ 編集 ]













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