きまぐれな日々

民主党・小沢一郎代表の公設第一秘書・大久保隆規氏が逮捕された3月3日以来、当ブログのアクセス数はプチバブル状態になり、普段より3?4割多いアクセス数の日が続いた。当ブログは、捜査は無理筋であり、そこには権力の意思が反映されている可能性が高いとしながらも、総選挙が迫っていることを考慮すれば、小沢一郎の代表辞任も視野に入れるべきだと主張した。これに対して、自民党寄りの人たちからは「小沢支持の陰謀論者」、共産党寄りの人からは「政治とカネの問題に鈍感」、そして小沢一郎の熱烈な支持者からは「自公政権の回し者」などなど、ありとあらゆる批判を受けた。だからと言って自分の立場が「中道」だと主張するつもりなどさらさらなく、要は自分は自分、他の誰でもない、というだけの話だ。私には固有の立場がある。

その、小沢一郎をめぐって、ああでもこうでもないと騒いでいたバブルが、突如弾けた。土曜日(4日)の昼前くらいから、アクセス数が突然がくっと落ちたのだ。土日はもともとアクセス数が平日よりかなり少ないが、それにしても減り幅が大きい。いうまでもなく、北朝鮮のミサイル騒ぎの影響だ。

しばらく前にメディアやネットを騒がせた前財務相・中川昭一の「もうろう会見」の話題をもう誰も口にしないように、今後西松事件のメディアへの露出は徐々に減っていくことだろう。しかしそれは、小沢一郎や民主党が難を逃れたことを意味しない。メディアの世論調査では、すさまじい勢いで麻生太郎内閣と自民党の支持率が上昇しており、小沢一郎と民主党の支持率が落ちていっている。これを、「メディアの捏造」と言ってしまったら、2月までの麻生内閣の支持率の急落をメディアのせいにしていたネット右翼と変わらないことになってしまう。麻生内閣支持率低下は真実で、小沢一郎の支持率低下はメディアのせいというのは、いくらなんでも説得力を欠く議論だろう。マスメディア、特にテレビの影響を著しく受けやすくなった「民意」とはちょっとのできごとで激しく振れるものなのだ。実は、投票行動への影響はそんなに大きくないのだが、具合の悪いことにちょっとの民意の振れを著しく拡大する「小選挙区制」を中心とする選挙制度になってしまっている。それを推進し、さらに小選挙区の比重を増そうとしているのが小沢一郎や鳩山由紀夫であることは、きっちり批判しておかなければならない。

ところで、自民党や民主党の支持率以前に、私が強く懸念するのは、改憲論が急激に勢いを盛り返してきていることだ。改憲を社論とする読売新聞は、4月4日付の社説「憲法世論調査 改正論議を再活性化すべきだ」で、

 読売新聞の世論調査で憲法を「改正する方がよい」と思う賛成派は51・6%へ増加し、3年ぶりに過半数となった。「改正しない方がよい」という反対派は36・1%に減った。

 「ねじれ国会」に象徴される政治の混迷の中、憲法論議は脇に追いやられてきた。だが、改正論議を求める国民の声は、今回の調査でも根強いものがある。

 与野党は、次の総選挙に向け、改憲論議の再活性化をはかるべきだろう。

と、うれしそうに書いている。

それにしても改憲派の反撃は急だ。つい1年前、映画『靖国 YASUKUNI』の上映中止問題をめぐって、圧力をかけたとされる稲田朋美が批判を浴び、ちょうど1年前の昨年4月6日放送のテレビ朝日『サンデープロジェクト』では、田原総一朗が稲田朋美を欠席裁判よろしくコテンパンに罵倒した。結局この映画は憲法記念日の5月3日に一般公開されたのだが、この日の読売新聞の社説は、上記で紹介した今年4月4日付のものとは全く異なり、元気のないものだった。例年なら社説を一本にまとめて改憲論を声高に叫ぶのだが、昨年は普段と同じ2本立ての1本で、弱々しく改憲を主張しただけだった。それもそのはず、2004年から翌年頃をピークに、改憲支持派は急激に減少し、安倍晋三が首相を辞任したあとの世論調査では、護憲派の数が改憲派を再逆転していたのだった。

それが、1年も経たないうちのこの様変わりである。「KY」と揶揄され、首相の座を石もて追われた改憲派の象徴・安倍晋三も元気を取り戻し、「『村山談話』に代わる『安倍談話』を発表すべきだった」などとほざいて、総理大臣への「再チャレンジ」をもくろんでいるらしい。どうしてこんなことになってしまったのか。

これを、北朝鮮のミサイル発射のせいになどできないだろう。たとえば田岡俊次(元朝日新聞の防衛担当記者)の著書を読んだ人間にとっては、北朝鮮のミサイルを、精度が怪しく命中するかどうか疑わしいPAC3なんかで迎撃するはずもないことなどわかり切っていたし、ましてや田岡の著書に推薦文を寄せた石破茂あたりは内心苦笑していたのではないかと思うが、テレビのニュースはミエミエの防衛省のデモンストレーションを仰々しく放送していた。あれって、「自民党のコマーシャル」ならぬ「防衛省および防衛産業のコマーシャル」だとしか私には思えないのだが、それに騙される国民は多い。しかし、それだけで改憲論がここまで盛り返すとは考えられない。

田母神俊雄である。アパ懸賞論文の最優秀賞受賞が問題視されて航空幕僚長の座を追われた田母神俊雄がメディアの寵児になったことが大きかった。田母神の論文自体は、右派の学者・秦郁彦にさえ、「歴史学では相手にされていない陰謀論」と一刀両断にされるほどお粗末なものだったが、電波媒体を通じて発信される田母神のトンデモ国防論が右寄りの視聴者の心を捉えた。

昨年11月29日に放送されたテレビ朝日『朝まで生テレビ』で行われた視聴者へのアンケートでは、「田母神論文を支持」する人が61%に達したそうだ。『朝生』のアンケートというと、つい先日、3月28日の放送で「小沢一郎続投支持」が66%に達したとして小沢支持者が熱心に宣伝しているが、田母神論文を論じた回のアンケート結果は、それの「右」バージョンといえる。

「田母神論文支持61%」を声高に叫ぶ人は「小沢続投支持66%」を無視するし、「小沢続投支持66%」を声高に叫ぶ人もまた「田母神論文支持61%」を無視する。しかし私は、両者は表裏一体の関係にあると思う。

昨年11月7日付エントリ「田母神俊雄、渡部昇一、元谷外志雄、佐藤優らに呆れる日々」で指摘したように、田母神論文を最優秀に選んだ懸賞論文の主催者・アパの元谷外志雄は、安倍晋三の非公式後援会「安晋会」の副会長でもあるが、その元谷がトンデモ陰謀史観に基づいて書いた歴史本『報道されない近現代史』を、佐藤優が絶賛している。つまり、佐藤優?元谷外志雄?田母神俊雄は一本の線で結びついている。もちろん、政治家では安倍晋三、評論家では懸賞論文の審査委員長も務めた渡部昇一と直接結びついている。まさしく、「安倍晋三につながる極右人脈」、佐藤優の人脈の「右巻」である。

一方、検察批判に関しても佐藤優は第一人者である。こちらでは佐藤は魚住昭や宮崎学らとつながっている。『週刊金曜日』や『世界』といった左派雑誌にも佐藤優は寄稿しており、いわばこちらは佐藤優の人脈の「左巻」といえる。ここでは、佐藤は「青年将校化する東京地検特捜部」という見立てをしており、西松事件についての左派論壇の論調をほぼこの線で押さえてしまっている。

田母神俊雄は決して国民一般に広く支持されているとはいえないし、小沢一郎は説明責任を十分果たしていると思う国民も、決して多数ではない。政治問題を討論するテレビの深夜番組を熱心に視聴したり、ネットで政治について読み書きする人たちと世論の間には、大きな乖離がある。もちろん、先に触れた「テポドンの脅威とそれに対するPAC3の迎撃」などのように、マスメディアが平然と「政府のコマーシャル」をやっていて国民がそれに騙されている場合も多いから、マスメディアの世論調査に示される「民意」がいつも正しいというつもりなど毛頭ない。しかし、田母神論文の問題にしても検察批判にしても、何らかのバイアスのかかった見方であって、その双方に強い影響を与えている佐藤優という人物の「影」を見過ごすことはできないのではないか、そう私は思う。

そして、佐藤優の本質は強烈な国家主義者、排外主義者である。すなわち極右である。小沢一郎の秘書に対する捜査を「国策捜査」だと叫ぶ人たちの中には、極右系の陰謀論者や排外主義者がかなり混ざっていることを私は憂慮する。確かに疑義の多い捜査ではあるが、ここでリベラル・左派が安易に極右と手を組んではならない。現に、リベラル・左派は小沢一郎擁護にばかり熱心で、改憲論への警戒がおろそかになっている。かつて「安倍が改憲を急ぐわけ」などと書いたブログが、いまや「自主憲法制定」を目指す平沼赳夫一派の広告塔になっていることなどはその一つの象徴だ。かつて「AbEnd」(安倍晋三を終わらせるためのブログキャンペーン)で盛り上がったかに見えた「市民派ブログシーン」は、単なる「反権力」のファッションを楽しんでいただけではなかったかと、いま苦い自省の念を込めて振り返る。ファッションとファシズムは語源が同じはずだ。

[追記]
「はてなブックマーク」でyellowbellさんに教えていただいたのですが、「fascismの語源→fasces(執政官の象徴たる束桿), fashionの語源→factio(行為)」で、語源が異なるそうです。
なので、記事の最後の文章は取り消します。


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佐藤優は「国策捜査ではない」と言ってますよ。
そして、小沢さんは代表をおりるべきだと言っている。
中道の立場を装いながら、きっちりと極右の仕事をしてますよ。

2009.04.06 10:27 URL | h #vS/RWfqI [ 編集 ]

佐藤優の両刀遣いが胡散臭さの原因ですね。
例のタイムリーな記事、日本CIA漆間巌を官房長官に指名し、「こういう恐い人が官房長官をすると国家が引きしまる」といったことで完全に化けの皮がはがれた気がします。彼が「国策捜査でない」と言う前に漆間との関係をはっきり言ったら良いのでは。東京地検特捜部のバタバタぶりは明らかに上から急に言われたからでしょう。
「敵をあざむくにはまず見方をあざむく。これ権謀術数の第一歩と心得よ」ですね。諜報部員の役目だからしょうがない。

2009.04.06 15:42 URL | ゲバラの夢 #- [ 編集 ]

今日は。
同感です。新憲法制定議員同盟(中曽根康弘元首相が会長)が2日国会内で経団連など経済団体と懇談を持ち、次の解散総選挙で憲法改正を取り上げ、盛り上げる話をしています。総務省は、改憲手続き法の「周知」パンフレット(500万部)を、多額の血税を使って作製し、4月から都道府県・市町村の窓口を通じて配布しています。

尚、今回の読売の調査結果では、9条については下記のようになっております。(読売は報じたくないようですが)

「しかし、調査結果を詳細に読むと、憲法9条については改正反対がやっぱり過半数を占めていることが明らかになっています。9条第1項と第2項に分けた質問で、それぞれ、「改正の必要がある」と答えたのは第1項17.7%、第2項42.0%なのにたいし、「改正する必要はない」は第1項77.5%、第2項50.9%となっています。」
http://ratio.sakura.ne.jp/archives/2009/04/03205048/

しかし、本記事にあるように、憲法を蔑ろにして反国民、反民主政治を推進している勢力は、憲法改正の大キャンペーンを敢行すると思います。主権者国民は自分の存在をかけて、法の支配を守るためにも油断無く憲法をまもらなければならないと思っております。

2009.04.06 16:17 URL | hamham #wMyNaENg [ 編集 ]

 今の自民党支配というものが新自由主義+国権主義の組み合わせです。

 そうなると、打破すべきは両方です。

まず新自由主義を改め、ついで国権主義を改めるというのは現実的な戦略です。

しかし、新自由主義批判の勢い余って国権主義を持ち上げたり、官僚批判の勢い余って損自由主義を持ち上げたりするのは不毛です。

http://hiroseto.exblog.jp/9993486/

以上に座標軸分析を載せました。あくまでイメージですが。

2009.04.06 19:22 URL | さとうしゅういち #EGTCt1XI [ 編集 ]

お久しぶりです。9条改正は当然必要です。集団的自衛権の問題はどうするんですか?日本は金は莫大に出しているのに、国際的に評価が低いのは人的なものが満足に出来ないからでしょ。9条2項が足枷になっているわけです。そもそも、あなた方の護憲とは、自衛隊を認めないんですよね?日米安保も?となると、自衛隊なし、アメリカの軍隊にも頼らない。で、国防はどうするのでしょう?まさか、9条があるから他国の侵略を受けないなどと寝ぼけことを言うんじゃないですよね?(笑)

2009.04.06 21:52 URL | 資本主義者 #- [ 編集 ]

今回の騒動は政府側の策略を疑いのようですが、日本自体にそれなりの成果は出ていたように思いますよ。
北のミサイル発射に対して自衛隊や米軍が展開したことは実際の有事の際の演習にもなっただろうし、レーダー監視やイージス艦やPAC3の配備などで北への核の防御体制を顕示出来たと思いますよ。
そして安保理の各国のアッサリした対応・本音を知り、北朝鮮への対応は他国頼りでは意味がないことを日本国民は認識できたのでは?
そして何よりもロケット(ミサイル)二段目の切り離しに成功してたらアメリカが危険だったのに、お気楽な同盟国の実態も知れて次回のテストケースにはなったと思いますね。
とにかく、北の脅威を実際にひとつひとつ潰す対応が出来たことは日本にとっても意味があったと思います。

2009.04.06 23:24 URL | 与志 #- [ 編集 ]

>9条があるから他国の侵略を受けないなどと

寝言は寝てから言ってほしいですね。
日本が本格的侵略を受ける可能性など現在の情勢ではほぼ有り得ません。
国際的に不可欠な役割を担う国力を維持しているからです。
侵攻などを企てれば、それによって国益を大きく損なわれる米中ロ始め先進各国は許容しないはず。
北朝鮮だって日本からの送金などに大きく依拠しているというのに。

だいたい日本規模の国家に武力侵攻しようとすれば相当の実力が必要で、可能な軍事力を持つのは米国くらいでは。
戦争というものの実情を知らない人は何でも出任せで言いきりますけれど。

2009.04.06 23:56 URL | Gl17 #EBUSheBA [ 編集 ]

資本主義者さんの意見は、代表的な改憲論の意見ですね。

9条の改正にも様々な幅がありますね。
1、交戦権否定を堅持するか?
2、自衛隊の存在をどのように規定するか?
3、国際貢献で自衛隊を活用する場合に、どこまで認めるのか?
4、徴兵制を復活させるのか?

以上のような論点に集約されると考えます。全体的なコンセンサスとしては、1と4に関しては、否定的。2に関しては合憲とする意見が多数だと感じます。

3が一番議論を二分する問題ですね。このままなし崩しに解釈改憲をされるよりは、論点が明白な問題を優先的に改正する方が9条の精神が生かされると思います。

自衛隊の実績を考えると、ゲリラを撲滅するより、社会資本を整備する方が合っている気がします。
血を流さなくても、 汗と十分な戦後復興支援を行えば、湾岸戦争の二の舞いにはなりません。

集団的自衛権を主張をする人で自ら戦場に赴く勇気を持つ人が何人いるのでしょうか?

戦争を身近の問題として考えた時に、徴兵制がなく、交戦権を認めていない現憲法に感謝する人々は
私だけではないと思います。

2009.04.07 00:14 URL | 葉隠 #CRmGiUQU [ 編集 ]













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