今回は、平日の昼間だったので、テキストベースの情報を追うことしかできず、ストレスがたまった。特に、日本は小刻みに加点するものの、「なおも続くチャンス」を逃し続け、その間に先発の岩隈久志が同点ホームランを浴びたり、2点のリードをもらいながら1点差に追い上げられるなど、決して良い流れではなかった。リアルで映像を見ていなかったのでなんともいえないのだが、岩隈は7回84球を投げて1失点のところで交代し、8回をダルビッシュ、9回を藤川球児という継投かなと思っていたので、8回も岩隈が続投すると知って、いやな予感がした。そして、リードを1点に詰められた9回にダルビッシュが登板したと知って、なおいやな予感がした。これらの予感はことごとく当たり、ダルビッシュは打たれて、土壇場で試合は延長戦にもつれ込んだ。
これは、日本が勝つとしたらイチローが決めるしかないなと思った。そして、10回表にチャンスでイチローに打順が回った時、ここで決めなければ日本は負けると思った。敬遠されたらいやだなとも思ったが、韓国は勝負を挑んできた。追い込まれたあとファウルで粘っていると知って、ああ、これは打てるなと思った。そしてその通り、イチローは決勝となる2点タイムリーを放った。
原辰徳監督は、松坂、ダルビッシュ、岩隈の先発三本柱にこだわったようだ。原が巨人に入団した頃、江川卓、西本聖、定岡正二の先発三本柱がしっかりしていた。特に江川と西本はリーグを代表する好投手で、完投が当たり前だった。故藤田元司監督は、昔の名投手だったから、先発完投へのこだわりが強かったのだろう。現在の巨人には、そこまでの能力を持った投手はいないので、どうしても継投に頼りがちだが、先発投手を球数制限ぎりぎりまで引っ張るのが、原のイメージ通りの采配なのかもしれない。
だが、岩隈の続投も、岩隈を継いだ杉内が後続を断ったのに9回にダルビッシュを救援に送ったのも、ともに原の采配ミスだと思う。そして、その采配ミスをイチローが救った形だ。
私は、原辰徳は決して悪い監督だとは思わない。巨人の前監督・堀内恒夫は本当に無能な監督で、アンチ巨人の私には大歓迎だったのだが、原は堀内よりははるかにましな監督だ。王貞治よりも上かもしれない。前回のWBCでは、メキシコがアメリカを破る番狂わせがなければ、日本は2次予選で敗退していた。王は、それまでも短期決戦に弱く、日本シリーズを制した2度(1999年と2003年)も、いずれも短期決戦最弱男の星野仙一(一度も勝ったことがない)が相手だった。王は、メキシコに助けられたり星野に助けられたりした運の良い監督だったと思う。今回のWBCにおける日本チーム(平沼赳夫を連想させるチームの愛称は私は用いたくない)は、前回と比較してもはるかに堂々たる勝ちっぷりだった。ましてや、昨年の五輪での「星野ジャパン」とやらのていたらくとは大違いだった。しかし、監督が渡辺久信であれば、さらに堂々たる勝ち方ができて、決勝戦も3点差くらいで勝っていたのではないかと思う。
もっとも、延長戦にもつれ込んだからこそ、長くファンの記憶に残るであろうイチローの決勝打が生まれたのであって、原辰徳というのは強運の持ち主なのだろう。
思い起こせば、藤田元司監督のもと、最初の3年間は順風満帆だった原は、4年目に新任の王貞治監督の未熟な采配からくるチームの成績不振の責任をマスコミに追及されるようになった。1986年のシーズン終盤では、早世した津田恒美の速球をファウルした時に骨折。ところが、原が戦線離脱すると同時にチームの結束が強まって巨人は連勝を重ね、優勝した広島をあと一歩のところまで追い詰めた。この頃になると、いまいち頼りない四番というイメージが定着してきた。最悪だったのは長嶋茂雄が1993年に監督に復帰したあとで、原は代打に長嶋一茂を送られる屈辱まで味わった。巨人を自ら敗戦に追い込む長嶋采配は、アンチ巨人の私には歓迎だったが、一茂を代打に送られた原には同情したものだ。
スター選手でありながら、スーパースターまでには至らなかった原は、それなりに屈辱を味わった男であり、だからこそ監督としてそれなりに成功できたのではないかと思う。私のような昔の世代のプロ野球を見てきた人間には、「巨人は嫌いだけどONは別」という表現がおなじみだった。それくらいONは国民的英雄だったのだが、あえて巨人を離れて福岡の地で苦難の道を選んだ王貞治はともかく、読売の威光をバックに好き勝手に四番打者を金の力でかき集め、プロ野球の魅力をすっかりそいでしまった長嶋茂雄には、その現役時代も末期しか知らないせいもあるのか、私には全然好感が持てない。そしてその長嶋茂雄に冷遇された原辰徳にはむしろ好意的で、「巨人は嫌いだけど原は別」というのが私の感覚だ。だから、今回のWBC優勝も素直に喜べる。
もちろん、野球の主役は監督ではなく選手だ。好機に弱い打線には不満が残ったが、松坂や岩隈ら投手陣はみごとな活躍を見せた。杉内も勝負強さを見せた。松坂は、若い頃はパ・リーグの首位攻防戦や五輪などでは決まって敗戦投手になり、「勝負弱い」とのレッテルを張られていたが、2004年の日本シリーズで第2戦は打たれたものの第6戦で勝ったあたりから、大勝負に強い選手に変身した。岩隈も、これまでは国際試合での実績はほとんどなかったが、今回のWBCで一皮むけたと思う。ダルビッシュも、結果的に決勝戦の勝利投手になったことは、今後に良い影響を与えるだろう。そしてなんといってもイチローである。私は、どんなに彼が不調でも、最後には彼の力が必要になる時が必ず来る、そうずっと思っていた。そして、それが現実のものとなった。
「続投」とか「イチロー」とかいうと、何かほかのことも思い浮かぶが、それについては今日は何も書かない。WBC日本チームの栄誉をひたすら称えたい。
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元はといえば野茂から始まったことを忘れたくないと思います。そして、野茂、イチロー、松坂、岩隈と、大舞台で活躍するのはいずれもパリーグの出身であるところにもっと注目すべきでしょう。かつての日本の選手は海外では「実力」を発揮できなかったのですが、私にはそれが巨人の選手とダブります。
原の場合、反面教師の星野と、パワハラ全開のナベツネの存在が人間を作った感じです。優勝の弁も、おつむが弱いかなとさえ思わせた昔の彼とは大違いでした。
2009.03.25 08:54 URL | jsds001 #wm5n2XIM [ 編集 ]
野球お好きですね。
まぁ、私もさすがに見てましたが。
最近の選手は名前もわかりませんが、原監督は、私が中学生時代に高校野球で活躍していたのを覚えています。
今回、無難といえば無難な発言ですが、しっかり考えて発言していたので、ずいぶん見直しました。采配は、選手頼みの面が多かったように見えますが。
選手は良かったですね。うまいなぁと思わせる点がいくつもありました。
2009.03.25 10:46 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]
いや、ほんとに
ブログ主さんの視点はおもしろい。
題材が野球に変っても同じですね。
同感することはあまりないが、おもしろい。
2009.03.25 11:37 URL | エディー #- [ 編集 ]
すんなり勝つことよりも苦労して勝つことの方が、プレーしている選手や監督はもちろん、観戦した世界中の人にも感動を与えたことでしょう。五輪正式競技から外れ、メジャーな球技として何が必要かを考えたときに、競技人口を増やすことも重要ですが、その競技人口は「感動」によってこそ増えるものと感じました。
原監督もイチローも、そして今回戦った侍ジャパンをはじめ韓国チームもその他のチームも、きっとベースボールの“神様”に愛されたことでしょう。
2009.03.25 17:54 URL | おてる #- [ 編集 ]
おおさわ氏(ご意見番)
「まあチームにはあっぱれだが、
明らかに手にボールがついてなかったダルビッシュにこだわった
原は喝だ!
あと『日刊スポーツ』!
いくら選手を出さなかったからって、
落合監督のコメントをわざと大きい字で載せたのも喝だ!
こういう所があったって世界一になれるって証明できたからいいだろ」
2009.03.25 18:37 URL | 観潮楼 #- [ 編集 ]
この盛り上がりは、異常です。小泉フィーバーを思い出した…
テレビに出ているゲストやコメンテーター等も、「野球興味ない」とか「君たちそこまで野球愛してたか?」とか言えない空気。変な作り笑いしたりして…
「ふつうに思っている事が言えない状況」にいとも容易くなってしまう。そこには実は言論の自由は無い。
マスメディアはだから怖いんだ。誰か突っ込んでくれよ!日本人しっかりしておくれ!
2009.04.02 02:02 URL | すごく言いたかった。 #- [ 編集 ]
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