http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20081106/1225976062
そして、佐藤優は安倍晋三が内閣総理大臣になった2006年、安倍晋三支持を明言した。
「国策捜査」という言葉は、佐藤優が『国家の罠』(2005年)で流行らせたかのように言われているが、その4年前に出版された魚住昭の『特捜検察の闇』によって既に知られた言葉だった。魚住昭は、2000年に出版された労作『渡辺恒雄 メディアと権力』によって一躍注目を浴びた、元共同通信記者のフリージャーナリストであって、これは滅多にないほど面白い本だった。その魚住昭が書いたからこそ、私は『特捜検察の闇』も読み、魚住昭が絶賛したから『国家の罠』を買って読んだのだった。
しかし、その佐藤優はとんでもない食わせ物だった。佐藤優が3年前に週刊誌で安倍晋三支持を明言したので、私は佐藤にいったん幻滅したのだが、魚住昭との共著を出したので、再び佐藤を評価する側に戻った。しかし、それは誤りだった。左右両側からもてはやされていた佐藤優に、左側から本格的な批判を加えたのは、金光翔氏の「<佐藤優現象>批判」だった。掲載するメディアの立ち位置によって文章を書き分ける佐藤と、彼に入れあげる「護憲派ジャーナリズム」を痛烈に批判した論文である。これは繰り返し何度でも読むべき名論文であり、このエントリを書くために読み返していても、今なお私自身「痛いところを突かれている」(=現在の私にも当てはまっている批判である)と痛感させられる箇所がいくつもある。
最近、ようやく「<佐藤優現象>批判」の影響が広がってきている。私自身もはっきり佐藤優批判側に転じたのはやっとこさ昨年のことなのだが、最近はあちこちで佐藤優批判を目にするようになった。岩波書店でも佐藤との関係を見直す動きがあるとのことだ。しかし、残念ながら現在もなお魚住昭は佐藤優の強烈な影響下にあり、つい最近も佐藤との共著の第二弾を朝日新聞出版から刊行した。もちろん、購入はおろか立ち読みする気さえ起きない。
その佐藤優は、自らや鈴木宗男の逮捕は「国策捜査」だが、小沢一郎の秘書の逮捕は「国策捜査」ではなく一部の検事のはね上がりだという。そんな佐藤に「フォーラム神保町」の「ジャーナリスト」たちは引っ張られていってしまう。そして、大久保秘書の逮捕が「国策捜査」であるとする鈴木宗男らの主張は、「立場が違えばいろんな主張が変わる」と佐藤優にかわされてしまう。「フォーラム神保町」が開催したシンポジウム「青年将校化する東京地検特捜部?小沢第一秘書逮捕にみる検察の暴走?」の動画が公開されているが、一番最初にあれっと思ったのが、あれほど意気投合していて一心同体かに思っていた鈴木宗男と佐藤優の主張に、かなりの開きがあることだった。
単刀直入に言えば、鈴木宗男は民主党、社民党および国民新党と組んで自公政権打倒を目指す立場に立っているのに対し、佐藤優は自公政権を守ろうとする立場に立っている。だから、鈴木宗男は国策捜査だと言い、佐藤優はそうではないと言うのではないか。シンポジウムは、佐藤の論調に引っ張られて、欲求不満ばかりが残るものになってしまった。佐藤の「国策捜査」論に立脚して大久保秘書逮捕の件を論じようともくろんでいた人たちにとっては肩透かしを食わされたようなものだろうが、もともと佐藤は保守というより彼自身が認めるように右翼なのだから、そんな佐藤に乗っかって「権力の陰謀」を暴こうなどというのは、あまりにも甘い考え方なのである。
佐藤優が湯浅誠、雨宮処凛や小沢一郎、それにコイズミ時代に自民党を追い出された政治家たちと手をたずさえて、自公政権が倒れたあとに、平和志向の福祉国家を建設するという夢想をするのは別にかまわないが、政治を論じるというよりは政治に題材をとったコンピューターゲームでもやっているようなもので、全く現実的ではない。政治家たちの思惑の、表に現れている部分からさえ目を背け、自らの願望に浸っているとしかいいようがない。たとえば平沼赳夫については、2ちゃんねらーの方が「自End」界隈のブログよりもずっと冷徹な批判を加えている。その一例を『kojitakenの日記』に収録した(下記URL)。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20090315/1237089415
「10年ほど選挙を凍結し大連立を」などという平沼の妄言は、2ちゃんねらーが指摘する通り、
である。あまりの電波発言に自民党支持者からさえ見放されている。もちろんしばしば平沼に期待を持たせるような思わせぶりな態度をとっている民主党も、単純な平沼をおだて上げて動きを封じているだけであることはいうまでもない。数年前ならともかく、今となっては平沼赳夫はとっくに「終わった」政治家であり、私にしても単にストレス解消のために平沼を叩いているに過ぎない(笑)。しばらく前までは本気で平沼を警戒していたが、コメント欄などでしばしば指摘されたように、それは平沼に対する過大評価であったことを今では了解している。憲法改正が無理な現状では「武力による憲法停止」と同じ意味
妄想を膨らませて自己陶酔の世界に浸っているというと、ネット右翼たちがそうなのだが、「左」の方でも同じことをやってれば世話はない。今後、現実は大きく、そして劇的に動いていく。亀井静香の言うとおり、血みどろの戦いになる。「ネット右翼」の夢も「ブログ左翼」(?)の夢も泡と消え、その一方で平沼赳夫批判スレに書き込んでいたリアリストの2ちゃんねらーはしたたかに生き残っていく(もちろん、「ニュース速報+」などで騒いでいる有象無象のネット右翼は言論戦に生き残れない)。日本の社会をマイルドな変革によって徐々に変えてゆければよかったのだが、どうやらそれは許されそうにはない。運命は、4年前の郵政総選挙で自民党を大勝させてしまった時に既に定まっていたのかもしれない。
合従連衡の模索から、「万人の万人に対する戦い」への移行。自然状態への回帰。その時こそ、まさに「右」も「左」もない。乱世の到来である。
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>もともと佐藤は保守というより彼自身が認めるように右翼なのだから
佐藤は右翼ではないでしょう。佐藤のよく使う「国体」という用語にだまされないでください。右翼もだまされているけど。
2009.03.17 10:34 URL | 讃岐 #3iNXO6Ik [ 編集 ]
お約束としてw
文藝春秋2009年4月号 p115より
===
識者33人が選んだ「最強内閣」
佐藤優
総理:柄谷行人(評論家)
危機の時代には国際的に著名な哲学者が首相となり国家体制を強化することが重要
官房長官:漆間巌(官房副長官)
こういう恐い人が官房長官をすると国家が引き締まる
===
小沢秘書逮捕よりも前に発売されたため、「自民党側は立件できない」と発言した警察官僚・漆間巌を官房長官に推してしまっているところが何度見ても痛々しい(ノ∀`)
2009.03.17 11:27 URL | dj19 #OmEQ3VCk [ 編集 ]
流行らせた言葉
と
既に知られた言葉
には雲泥の差がありますが
何か癇に障られたのですかね?
別に誰が流行らせてもいいと思うんですが…
2009.03.17 12:55 URL | #2kbNzpR6 [ 編集 ]
これもひとつの政局の読みかと興味深く拝読いたしました。論理性や正義感、率直さなど、僭越ながら、kojitakenさんのお人柄すら文章から想像できました。ですが逆説的に、こうしたご性格が盲点になるとみられる箇所が気になりましたので、その点を――。
>その魚住昭が・・・絶賛したから『国家の罠』を買って読んだのだった。しかし、佐藤優が安倍晋三支持を明言したので、・・・いったん幻滅したのだが、魚住昭との共著を出したので、再び佐藤を評価する側に戻った。しかし、それは誤りだった。
佐藤優氏だけじゃなく、何についても心象を二転三転させるのは、誰だって経験します。ですが、そんな自分に気がつくと、四転五転の愚を避けるためにグッと慎重にやろうとするのでは。佐藤優氏への評価を、kojitakenさんなり次元を変えて行う必要があるのでは、という意味です。これも僭越ながら・・・。
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