きまぐれな日々

漆間巌・内閣官房副長官が、報じられた「自民党側は立件できない」とした発言を、9日の参院予算委員会で「全然記憶にない」と否定したのにはあきれてしまった。昨日のエントリに対し、「政治記事は政治部の記者と各政治家との信頼関係で成立しており、情報元のプライバシーを守ることは、知る権利よりも優先的に守らねばいけない」とするコメントをいただいたが、それはあまりにもナイーブな見方だ。問題の本質は、マスメディアの横並びの体質にある。記者クラブに入っていれば、どの社にも同じような情報が「政府高官」からもたらされ、記者は労せず記事を書くことができる。それは、権力側の政治家の利益にはかなうが、国民の利益を損なうものだ。オフレコ取材が全く不要とはいわないが、権力者に過剰な権利を与えているのが現在のマスメディアのあり方であり、これは「メディアが権力と一体となっている」という以外に表現できないものだ。1972年の「西山事件」では、毎日新聞の西山太吉記者(当時)に情報源の秘匿の配慮が足りずに失敗してしまったが、今回の漆間の件はそれとは全く異なる。「政府高官」という符牒で報道されたことによって、マスメディア報道の慣習を知っている人にとっては、ああ、官房副長官が言ってるんだな、とわかるだったのであり、こともあろうにその内容が捜査への政府の介入を疑われるようなものだったから、報道関係者にとってはわかり切っていた発言者の実名の公表が求められたのである。繰り返して言うが、これは、政治家側に過剰なフリーハンドを与えている現在のマスメディアの問題である。政治家と新聞記者には、信頼感だけではなく緊張関係もなければならない。昔の新聞記者が書いた本などからはそれが感じられるのだが、現在の新聞記者からは感じられない。

それから、「国策捜査」批判への批判も結構出ているが、昨日、立花隆がテレビに出演して、検察はいつでも国策捜査をする、それが彼らの仕事だ、と言ったそうだ。これは、当ブログがずっと主張し続けていることでもある。検察が行政機関である以上当然のことで、何も小沢一郎の秘書逮捕の一件だけが「国策捜査」ではない。だから、検察の捜査については、常に権力側からのバイアスを疑ってかからなければならないのは当然である。何度も何度も書くけれども、陰謀の仮説を立てることは「陰謀論」でもなんでもない。立てた仮説がドグマと化してしまって、仮説への検証作業を攻撃したり排除したりすることが、「陰謀論」の弊害だ。陰謀論者も、型にはまった、というか考察を欠く「陰謀論批判論者」も、この点を理解していない。自然科学でも社会科学でも当たり前に行われるアプローチのプロセスを全くわかっていないのである。

とことで、各種メディアの世論調査は、予想通り民主党の支持率が大きく下落する一方、麻生内閣および自民党の支持率は変わらないか微増である。毎日新聞の調査で麻生内閣支持率が5ポイント上がって16%になったのと、テレビ朝日の調査で21%に増えたあたりが目立つ程度だ。だが、もともと毎日新聞調査では麻生内閣支持率は低かったし、テレビ局の支持率調査は、どういうわけか都市部の有権者の意見が強く反映されるように思う。麻生内閣が、経済軸で「右」から(つまり、渡辺喜美氏らのような新自由主義的な立場から)批判されていた頃は、テレビ局調査の世論調査で内閣支持率がいち早く下がった。地方在住者としての感覚からいうと、地方の保守は自民党が「コイズミカイカク」を総括しない限り、自民党支持に戻ることはあり得ない。

それにしても、自民党はなんで麻生太郎のような男に総理大臣をやらせてしまったのかと、ベルサイユ宮の人たちの感覚にあきれるばかりだ。つくづく思うのだが、福田康夫総理のままで、昨年秋くらいに解散総選挙をやって、自民党はいったん下野し、経済危機の難局への対応は、一昨年の参院選で「国民の生活が第一」を唱えていた民主党を中心とした連合政権にやらせて、自民党は野党としてその政策を批判する状態にすればよかったと思う。「良き敗者」であれば、自民党に再生の道はあった。だが、自民党はその道を選ばず、権力にしがみつく道を選んだ。人気者だとうぬぼれて首相になった麻生は、その人気がコイズミ政権時代に捏造されたものだったという事実を認めることができず、小出しにする景気対策は後手に回り、ウケを狙うパフォーマンスも不発に終わり、あげくのはてには財務相が泥酔して辞任に追い込まれた。小沢一郎に狙いをつけたのは、「そうでもしなければ政権の座を守ることができなかった」麻生が、ついに禁断の手段に手を染めたものだ、そう誰もが思ったことだろう。だから、民主党の支持率が大きく下がったにもかかわらず、麻生内閣や自民党の支持率はほとんど上がらなかったのだ。敵失で支持率が上がるものではないし、「政治とカネ」の問題だから、直ちに自民党に跳ね返るのも当然のことだ。昨日のエントリでも書いたように、捜査が小沢一郎と二階俊博で止まったのでは、「旧経世会」の狙い打ちであり、依然として権力の利益と合致する。西松建設が受注した沖縄の公共事業に関する職務権限を持っていたことが指摘されている尾身幸次は、本当なら真っ先に捜査の手が伸びていて当然の人物だが、捜査がなされていないのは、尾身が町村派の政治家だからではないかと私は疑っている。とはいえ、「はてなブックマーク」のコメントでも指摘されたように、「国策捜査」と一言でいっても、何をもって「国策捜査」とするのかという問題もある。ライブドア事件のように、コイズミ内閣の利益とは必ずしも一致しない、旧保守側による「国策捜査」が行われた例もあるから、今後尾身幸次の身は安泰、とまでは言い切れないだろう。

ところで、私がとっている朝日新聞の早版には出ていないのだが、最終版では「小沢代表の元秘書、談合に関与か」という記事が一面トップになっているようだ(下記URL)。
http://www.asahi.com/national/update/0309/TKY200903090343.html

この元秘書とは、ネットでは既に広く知られているように、次回の総選挙で小沢一郎の「刺客」として岩手4区から自民党公認で立候補を予定している高橋嘉信氏を指すのは明らかで、早朝のテレビ朝日の番組でも、コメンテーターがその旨コメントしていた。今回の一件も、高橋氏によるタレコミに端を発するといわれていて、真偽不明の情報によると、これは朝日新聞の記者が社のスクープにはしないで検察に垂れ込んだのだという。今朝の朝日に、元秘書に関する記事が掲載されたのは、上記の噂話と一致する。

元秘書は自民党から立候補予定とはいえ、小沢一郎に歯が立つはずもなく、自民党からしたら絶対勝てない選挙区で候補者を差し替えれば良いだけだ。一方、元秘書が提供した情報が小沢一郎に与えるダメージの大きさは計り知れない。朝日新聞は、民主党に対して「この不信にどう答える」と題した社説も掲載しているし、当初検察の捜査に激しく反発していた鳩山幹事長も、トーンを下げてきた。

ことは「政治とカネ」の問題であり、自民党も民主党も深くかかわっているのは当然だ。「自民党もやっているから小沢代表は悪くない」という論理は成り立たないし、公共事業にかかわる職務権限を持っていた議員が複数いるのに、「金額が小沢一郎より少ないから問題ない」という論理も全く成り立たない。

そして、単に自民党も民主党も悪い、というのではなく、「民主党も悪いが、自民党はもっと悪い」のだということだけは押さえておかなければならない。政治不信に陥るのは仕方ないが、投票率が著しく下がると、公明党の票に支えられた自民党の議席が増え、最悪の政治勢力がさらに延命するという結果を招くことを忘れてはならない。比例区においては、何も自民党と民主党だけが選択肢ではないのだし。


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テレビも新聞も、マスメディアの報道は、民主党というより小沢一郎はずしの線で一致しています。世論調査を根拠にして。しかし、世論というものは、マスメディアによる報道の鏡ともいえましょうし、またたった数日間のことがらに対する反応ですから、ますますこれはメディアの影響が大きいといえます。
メディア・リテラシーということから見ると、このマスメディアの一致した風向きはまことに奇妙なものです。それに乗らないようにしたい。http://ofureco.exblog.jp/ こういうのもあります。

2009.03.10 08:45 URL | akiko #- [ 編集 ]

今日は朝日新聞に以下のように抗議しました。

昨日午前中、政権と官僚中枢の漆間氏から記事内容に泥を塗られたのに、それはやり過ごし、小沢批判をぶつ今朝の社説。また社説と同趣旨の、星浩氏の文章もくどい。
 小沢氏の問題も大切かもしれませんが、彼は小渕政権以降は野党にいる方であり、金権体質に切り込むなら、現政権与党の政治家を、より重視すべきではないでしょうか。
 貴社の主筆殿が米国の某大物の指図を受けているとか、ネット上ではさまざまな噂がまことしやかに流れております。只今、政治に関してはまだ「まとも」な毎日新聞あたりに講読先を換えようかな、と考慮しております。
 戦前と同じような、翼賛体質になってしまうのは残念ですね。

2009.03.10 10:59 URL | cube #- [ 編集 ]

麻生自民の早期解散、小沢の辞任、陰謀論レッテル
などを見るとkojitaken氏は隠れネオリベではないかと思います

2009.03.10 20:31 URL | 生卵 #- [ 編集 ]

生卵氏は頭が悪くてダマされやすい、オモテ陰謀論者ではないかと思われます(笑)。

2009.03.10 20:41 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]

kojitakenさま、こんにちは。
昨日(3/9)の報道ステーションで、西松と小沢さんについての街頭インタビューのVの音声が途中で途切れ、スタジオにいったんもどって、また別のVが始まりました。こちらは、漆間さんと記者クラブの記者たちの記者会見映像でした。質問する記者たちは、オフレコに参加していた記者たちで、あの時、私はこう質問して、官房副長官はこう答えましたよね、という問いに、漆間さんは、たじたじの答えでした。いつもの報道ステーションからすると、随分思い切ったVだなあと思いました。Vがかわるときに、変な間があったので、もしかして、現場が上に通さずに、後者のVを放送したのかなあ、などどいつもの妄想をしてしまいました。おわり。

2009.03.10 20:52 URL | 散策 #TY.N/4k. [ 編集 ]

小沢の元秘書を聴取方針というから、てっきり件の現自民党議員な前任者かと思いきや・・・現秘書の補佐だった民主議員でした。
深く突っ込む意図がないというか、むしろ拡大を抑えたいのかなあという気もしますね。
自民の二階ルートにも手をつけてイーブンではまずいから、とりあえず民主を足してみました、ていうこれが検察的バランス感覚?

しかし民主党の一部で検察長官を喚問しようとかいう話が出ているのは利口とはちょっと思えません。バックレられるに決まってると思うけど。
結果が出せなければ騒いだだけ反動が来るに過ぎないのでは。

2009.03.10 22:08 URL | Gl17 #EBUSheBA [ 編集 ]

と思ったら、新たに聴取方針という民主議員は、あの、中川(酒)元大臣の選挙区ででした。
酔っ払い会見で醜態を晒し、党の有力者でありながら政治生命が危ない、その彼の対抗馬だったというのは・・・。
うーん偶然だと思うけど、余りにも都合よくピンポイント過ぎる。

2009.03.10 22:31 URL | Gl17 #EBUSheBA [ 編集 ]

下のサイトに書かれている漆間巌に関する記事の内容には説得力があります
一読してみて下さい

「戦前型警察国家の謀略官僚人脈 - 漆間巌、大林宏、田母神俊雄」
http://critic6.blog63.fc2.com/blog-entry-40.html#40

2009.03.11 01:55 URL | 蘭光太郎 #xsUmrm7U [ 編集 ]

>「小沢代表の元秘書、談合に関与か」という記事

高橋嘉信氏(と思われる元・秘書)が、西松建設からの献金額を2500万円と指示した、などのリーク情報(?)は3月6日の読売、東京新聞など
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090306-OYT1T00028.htm?from=rss&ref=news
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009030602000258.html
から出てましたが、「談合に関与か」というのは朝日のこの記事が初出ですね。

高橋嘉信氏が自分で垂れ込んだのか、これら高橋嘉信氏の情報をつかんだ朝日の記者が検察に垂れ込んだ(自分のスクープにした方がよほど得をしそうですが)のかわかりませんが、高橋嘉信氏が小沢氏関連の疑惑のキーパーソンであることは間違いでしょう。

先週末も選挙区内で演説をしていたようです
http://mytown.asahi.com/iwate/news.php?k_id=03000000903100003
から、マスコミは高橋氏に直接突っ込むべきですね。
そして高橋嘉信氏がかかわっていた時期の案件は時効になっている(だろう)とはいえ、検察が全体像を把握するために参考人としての聴取は必須ではないでしょうか。

民主党の西岡氏が検事総長の事情聴取を検討している、
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090310-00000086-san-pol
というのは、検察から真偽織り交ぜた怪しい情報がどんどん出てくることに対しての抵抗でしょう。
聴取が実現するとはとても思えませんが、検察に対しては多少心理的な圧力にはなるのかもしれません。

今のままでは大久保容疑者の有罪が確定的であるかのような印象操作がマスコミを通じて行われているわけで、小沢氏に与えるダメージが増幅されるだけです。

一方で先週末、「週明けにも二階氏の本格捜査」という情報も流れた
(一例↓)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090308k0000m040098000c.html
わけですが、その気配はまだありません。
検察がマスコミを通じて世論をコントロールしようとしている疑いは否定できません。

2009.03.11 04:17 URL | sweden1901 #- [ 編集 ]

二階氏について追記です。
http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009030601001177.html
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090308ddm001040063000c.html
これらの(リーク?)記事によれば、
A. 「政治資金収支報告書」に記載していない
B. 議員本人と1対1の場で渡したこともあった(←2005年の日歯連闇献金事件を機に、政治資金団体に関する寄附の出入りについては原則銀行や郵便振込み等で行うことが義務づけられたので、もしそれ以降の案件ならばこれに違反している)

という重大な疑いがあります。(小沢氏秘書の容疑:虚偽記載:異なります)

上記記事では「事情聴取する」と書かれていますが、こちらこそ「強制捜査」すべき案件ではないでしょうか。
二階氏側は今ごろ証拠隠滅を済ませていることでしょう。
それを待って「本格捜査」に入るのでしょうかね。

2009.03.11 04:35 URL | sweden1901 #- [ 編集 ]

こんにちは。

「信頼感」のみならず「緊張関係」がうかがわれたという、「昔の新聞記者が書いた本」の一例を、ぜひともご紹介いただけるとありがたいのですが。

よろしくお願いします。


2009.03.11 05:56 URL | seike #bUOqhcfc [ 編集 ]

seikeさん、コメントありがとうございます。

昔の政治記者が書いた本としては、朝日新聞の故石川真澄記者の一連の著作や、同じく朝日新聞の国正武重氏が書いた「権力の病室」をおすすめします。

2009.03.11 07:50 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]

ココログからTBが通りませんので、。下記アップしました。

小沢氏の国策捜査関連でキーワード。漆間巌⇒謀略組織、内務省、治安維持法 大林宏⇒共謀罪、伊藤律尋問。世に倦む日日GJ。
http://soba.txt-nifty.com/zatudan/2009/03/post-d860.html

 
↓もよろしくです。和製版ヒムラーの漆間巌
http://soba.txt-nifty.com/zatudan/0anime/jiminwotheend73.gif


小泉・竹中路線のなれのはて
http://soba.txt-nifty.com/zatudan/0anime/jiminwotheend69.gif

竹中のペラペラ(笑)
http://soba.txt-nifty.com/zatudan/0anime/jiminwotheend70.gif

「告発しますよ」にケケ中動揺
http://soba.txt-nifty.com/zatudan/0anime/jiminwotheend71.gif

2009.03.11 14:03 URL | SOBA #XPXthLJ6 [ 編集 ]

このブログでも指摘されていた尾身幸治の問題が、先週号の週刊誌(現代、文春、新潮)でも取り上げられていました。

ぜひ、小沢氏、二階氏にとどまらず、その陰に隠れる巨悪をきちんと裁いて欲しいものです。
この機会に、日本の政界から膿を出し切ってしまわないと、政治に対する国民の信頼が崩壊し、日本はとんでもないことになるのではないかと危惧します。

こういう正論がきちんと書かれるブログの存在は本当に心強いです。
是非これからも、厳しい姿勢で自民党を糾弾していただけるようお願いします!

2009.03.17 02:12 URL | KOZO #LezRqYSM [ 編集 ]













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