私が読んだのは朝日新聞だが、読売新聞と日本経済新聞にも掲載されたことだろう。「あらたにす」のサイトでも読めるが、つまらない記事であり、アクセス数アップに協力してやるのも癪なので、リンクは張らない。サイトでは昨年の論説責任者の鼎談も読めるが、千葉県知事選に立候補を表明している白石真澄が司会をしている。極端な新自由主義者であるこんな女に司会させること自体、「あらたにす」の性格を現している。「新's」とも表記するようだが、「新自由主義新聞社連合」という意味なのだろう。
もともと新聞の社説など読む人はほとんどいないが、Googleで検索してみると、「あらたにす」と入力すると「失敗」とか「毎日新聞」という複合語検索の候補が表示されて笑える。「あらたにす 毎日新聞」で検索してみると、下記のブログ記事が引っかかった。
http://d.hatena.ne.jp/n-asakaw/20080201/p1
「【メディア】「あらたにす」,毎日新聞が入っていないのは残念」と題されたこのブログ記事は、下記のように三大新自由主義紙の社説を寸評している。
日経:ハイエク
読売:体制
朝日:感想文
日経は基本的に,政府の市場への関与を最小限にする,いわゆる「小泉-竹中」路線のような政策を支持する。読売は,自民党の政策にほぼ寄り添う論調。
そして朝日は…新聞に掲載済みの事実をつぎはぎして提示し,最後に「慎重に議論すべき」ないし「許されてはならない」といった感想文で締める。つまり,読者にとって新しい情報がない。もちろん,ときとして人を唸らせる社説も登場する(特に科学関連)。だが傾向として,「論説委員は,現場の記者から何も話を聞かず,自社の新聞に載った記事を読んだだけで執筆したんじゃね?」と思わせる社説が多すぎる。読者は感想文なんて求めていない。
(『ITとエレクトロニクスの知的備忘録』 2008年2月1日付エントリ「【メディア】「あらたにす」,毎日新聞が入っていないのは残念」より)
新自由主義にして財界の代弁者・日経、自民党の機関紙・読売に対して、明確な主張を示さない朝日という取り合わせだ。このブログ主は毎日新聞の社説をほめているが、確かに同じ問題を取り上げたとき、毎日新聞が一番マシな社説を掲載することが多い。その毎日新聞が英字紙のエロ記事事件を起こした時、それに便乗して『サンデー毎日』に叩かれた恨みを晴らそうとした程度の低い「元政治家」が城内実である。
それはともかく、田中康夫は「新聞(全国紙)は毎日新聞と産経新聞だけあれば良い」と言ったそうだが、うなずけなくもない。いや、新自由主義の日経、自民党そのものの読売と極右の産経の三社を比較した時、産経の方向に引っ張られるのはそれこそファシズムへの道だからろくなことはないか。
朝日新聞の話題に戻ると、「感想文」と評されてから1年。その間、朝日新聞の論説主幹は若宮啓文から村松泰雄に代わった。若宮啓文時代に「右傾化した」と評された朝日新聞だが、論説主幹が代わってさらに右傾化の度を強めたようにも見える。論説主幹の交代に先立って、主筆に船橋洋一が就任しており、船橋が朝日新聞の論調をリードしているようなのだが、船橋は竹中平蔵との共編著のある人間である。
最近も、1月18日付社説で「かんぽの宿」のオリックス不動産への譲渡に横槍を入れた鳩山総務相を批判したり、1月24日付社説でソマリアへの海自護衛艦派遣をあっさり容認した。自民、民主両党に消費税増税を執拗に求め続けているのも異様だ。
消費税増税については、読売新聞がもっとも熱心で、これはナベツネの方針なのだろう。日経は、消費税そのものより法人税減税に熱心だ。『Munchener Brucke』が、日経の大林尚が、非民主的なやり方をとってでも法人税を引き下げよ、とコラムで書いたことを紹介し、話題を呼んだが(下記URL)、これが日経に限らず「勝ち組」三紙の論説委員たちの感覚である。
http://d.hatena.ne.jp/kechack/20090201/p1
ところで「あらたにす」に加わっていない全国紙が産経新聞と毎日新聞だが、産経は新自由主義に反対した方が評判をとって部数が伸びると思うのに、実際にやっていることは逆で、派遣村を誹謗するなどした。毎日新聞は、以前にはコイズミ・竹中の構造改革を支持する社説をずっと掲載していて、「記者の目」などの多様性とは対照的な社説の硬直性とネオリベ支持が目立っていたが、昨年からやや軌道修正した。積極財政も全国紙としては早い段階から支持したし、消費税増税も、支持のニュアンスを見せながらも、国民の7割が反対していることに考慮した社説を掲載した。この大不況で、潰れる新聞社が出るとしたらまず毎日新聞ではないかと思われるのだが、座して死を待つより思い切った社論の転換に活路を見出せとは当ブログがつねづね言っていることである。その観点からすると、まだまだ及第点はやれないとはいえ、毎日新聞は全国紙では一番マシとはいえるだろう。
それにしても、「あらたにす」三紙を読んで感じるのはやりきれない疎外感である。今ほど、大新聞社のエリート記者たちが読者を疎外している時代はなかったように感じる。「あらたにす」は死んだ。
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私も親の代から朝日新聞を読んでいるのですが、最近の右傾化というか、劣化ぶりにはあきれてしまいます。
私の予備校~大学生時代(1980~85)は、「朝日新聞」の記事から、社会のあり方をずいぶん学んだものでした。本多勝一らがいた時代ですね。1990年代から紙面が変化して来ましたが、今思えば、石川真澄さんあたりが、朝日の最後の良心だったのかもしれません。
そろそろ他紙に変えようかと考えているのですが、変えるとしたら「東京新聞」になるかもしれません。大手紙では、「東京新聞」が、社会面の活気を一番感じると思いますが、いかがでしょうか?
2009.02.03 08:49 URL | jun #- [ 編集 ]
TBどうも。
注意しないといけないのは、新聞社の主張と言うのは必ずしも新自由主義支持ではないという点です。もっとも新自由主義に親和的と言われる日経新聞でさえ、新自由主義とは微妙に違う。
新聞エリートの主張は霞ヶ関の意見に近い。つまり財政再建至上主義です。彼らに最も支持される政治家は小泉改革の継承者である中川秀直や小池百合子ではなく、与謝野馨です。彼らはおしなべて小泉改革を支持していましたが、それは歳出削減でプライマリーバランスを改善する点を支持したに過ぎません。
本来の新自由主義施策である「減税して小さな政府にする」という政策まで、新聞社は支持しません。日経とて、法人税や所得税主体の税制体系から消費税主体とする税制の抜本改革を支持しているのであって、税制規模を縮小させることは主張してません。読売などは結構初期段階から新自由主義には批判的で、公共事業バッシングや公務員バッシングとは一線を画す「古い保守」のスタンスに近いですからね。
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