きまぐれな日々

麻生太郎首相が衆参両院の本会議で施政方針演説を行った。ポイントは2点で、まずやっとこさ「コイズミカイカク」路線からの離脱を明言したこと、もう一つは景気回復後に消費税を増税することを明言したことだ。

今回の施政方針演説で麻生が「脱カイカク」を打ち出すことは、マスコミの報道で知っていたので驚かなかった。麻生は、

「官から民へ」といったスローガンや、「大きな政府か小さな政府か」といった発想だけでは、あるべき姿は見えないということです。

市場にゆだねればすべてが良くなる、というものではありません。サブプライムローン問題と世界不況が、その例です。

国民の安心を考えた場合、政府は小さければよい、というわけではありません。

などと明言した。

ここで絶対に思い出しておかなければならないことは、2005年の総選挙におけるコイズミの、有名な「改革を止めるな」のフレーズで始まる公約である。URLを下記に示す。
http://www.jimin.jp/jimin/jimin/2005_seisaku/pamphlet/

ここでコイズミは、「小さな政府をつくります。」と明言している。以下引用する。

小泉改革のめざすもの

■小さな政府をつくります。

「小さな政府」とは、官が民の邪魔をしない政府のことです。
官の組織を小さくして、官が使うお金を減らします。官の規制や許認可を撤廃して、民間が仕事をしやすくします。
小さな政府を実現し、個人が自由に活力を発揮できる社会の中で、新しい技術・サービスを核とした起業・創業を支援します。
そして、経済と産業の国際競争力を強化し、民間主導の経済成長を持続させます。少子高齢化の中でも、国民の負担はできる限り小さく、国民の活力はできる限り大きく。それが小泉改革の目指す「小さな政府」です。


つまり、麻生太郎は、郵政総選挙から4年、コイズミ内閣発足から8年になる今頃になって、ようやく「コイズミカイカク」路線を明確に否定したのである。

本当は、これは麻生が総理大臣に就任した直後の、昨年秋の臨時国会冒頭の所信表明演説で言わなければならないことだった。「カイカク」からの離脱を明言した上で直ちに衆議院を解散し、民主党と「脱カイカク」を競う選挙戦に持ち込んでいれば、自民党に勝機があったかもしれない。しかし、あの時麻生がやったことは、逆質問による民主党の挑発であり、特に見過ごせないのは「財源を明確にせよ」と民主党に迫ったことだ。これは、典型的な新自由主義者の論法だった。しかも、麻生の景気対策の方こそ財源を示せと民主党の鳩山幹事長に切り返されて麻生は口ごもり、年末までに明らかにすると答えて野党議員に野次を飛ばされた。私はニュースでその映像を見て、麻生の無能を確信した。まだ麻生が「漢字が読めない」ことを知る前である。

物事にはタイミングがある。麻生の言葉の軽さが国民に知れ渡った今頃になって、コイズミカイカクからの離脱を表明したのは、何も言わないよりずっとマシではあるが、時既に遅しなのである。

しかもいけないのは、「小さな政府」を否定したあと、「中福祉中負担」を目指し、そのために国民に負担をお願いする、と言い、さらに2011年に景気が回復すれば消費税を増税すると言ったことだ。これは、朝日新聞の主張とそっくり同じである。

なぜいけないかというと、コイズミカイカクによって日本社会は格差が著しく拡大し、日本経済を支えていた分厚い中産階級がやせ細り、貧困層が増えたことによって、消費が減退し、日本経済が衰退していったことを考慮していないからだ。今緊急に必要なのは、富の再分配である。たとえばイギリスでは消費税を2.5%引き下げたし、アメリカのオバマ大統領は就任前に金持ち増税と中産階級以下の減税を公約した(金持ち増税には横ヤリが入っているようだが)。

コイズミが公約した「小さな政府」は、政府が富の再分配をしないという意味だから、格差が拡大するのは当たり前なのである。実際にはコイズミは何もしないどころか、法人税減税や金持ち減税を行って格差を拡大させた。そして、どうしても必要な政府支出には、消費税増税で対応するというのは昔からの自民党の方針だが、消費税とは森永卓郎がよく言うように、逆進性の強い税制である。
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/o/141/index1.html

一度、当ブログに頭のおかしなコメンターが現れ(確か最初は名なしで、のちに「資本主義者」と名乗っていた)、消費税と言ったって金持ちの方が金を多く使うではないか、全然公平な税制ではないなどと寝言を言っていたことがある。なんて馬鹿なことを書くのかと呆れたが、思い出してみれば、竹中平蔵が理想とする税制はどんな人だろうが定額の税金を課する「人頭税」だった。今となっては信じられないことだが、イギリスのマーガレット・サッチャー首相は現実に人頭税を導入し、すさまじい国民の反発を買って退陣に追い込まれた。そして、「コイズミカイカク」や安倍晋三の「教育カイカク」は、サッチャーをお手本にしたものだったのである。後世の歴史家からは、間違いなく前世紀前半の戦争に突き進んだ時代と並んで酷評されるに違いない愚挙だが、これが大手を振ってのし歩いていた時代が、ついこの前まで続いていた。

いや、その影響は現在も残っている。当ブログにも時々、財政再建をどう考えているのか、消費税増税抜きでやれるのかというコメントをいただく。私はもともと高福祉高負担論者だから、ずっと先の段階では消費税増税は必要だと考えており、その点で共産党支持者と意見が合わず、増税論者として批判を受けたこともあるのだが、ここ数年に限って言えば、消費税率の引き上げには断固反対である。それは、日本社会の現状が緊急な再分配政策が必要な時期であるにもかかわらず、消費税増税はそれを阻害するからだ。要は、もっと庶民にお金が回るようにしなければならない。国民の生活が楽になれば、気持ちも明るくなって生産性が上がり、消費も促進される。結果として、税収が上がる。最近、無利子国債発行なども議論されているが、金持ちにはもっと金を出させなければならない。もちろん、アメリカより累進性のゆるやかな所得税制を改めなければならないし、環境税を創設して、環境に優しくない企業からは税金を取り立てなければならない。税収増は社会保障の充実に当てる。消費税率の引き上げを検討してもよいのは、これらがすっかり終わってからの話である。

ところで、せっかく麻生太郎が朝日新聞の主張を取り入れた施政方針演説をしたのに、今朝(29日)の朝日新聞社説はつれない反応を示した。「麻生演説―信なき人の言葉の弱さ」と題した社説は、下記のように結ばれている。

 景気対策としての公共事業への封印を解き、財政再建の青写真も描き直す。そうした大転換をするには、本来なら有権者の信任に支えられた強力な政権が必要だ。

 首相の言葉がいま一つ胸に迫ってこないのは、信任の問題、つまり総選挙から逃げているからだ。まして小泉時代に得られた与党の議席数を使って押し通すというのでは、著しく説得力を欠く。


その通りである。「小さな政府」を公約して総選挙に圧勝した与党の議席数の威力にしがみついている人間が、口だけ「コイズミカイカク」を否定してみたところで何の説得力もない。逆進性の強い消費税増税にやたらとこだわるのも、自民党が基本的に富裕層のための政党であることの反映だ。

麻生がやるべきことは、早期の解散総選挙である。自公政権の延命は、そのまま日本経済低迷の泥沼化を意味する。今後、3月末にかけて企業の倒産が相次ぐことは間違いない。その時、やっとコイズミカイカクからの離脱を表明したばかりで、党内に中川秀直らカイカク派の反発が渦巻いている自民党政権ではまともに対応できないことは火を見るより明らかである。


↓ランキング参戦中です。クリックお願いします。
FC2ブログランキング

関連記事
スポンサーサイト

■施政方針・経済・財政演説“景気回復を最優先”強調-日本人の知らない世界?!
こんにちは。昨日、麻生総理の施政方針演説がありましたが、その報道ぶりをみてあきれています。ほとんどの新聞が、最初から最後まで、麻生総理に対する批判を書いてあり、その合間に細切れで麻生総理の演説を細切れで掲載するというものです。アメリカのオバマ大統領の就任演説の報道とは対象的だと思います。私も、オバマ新大統領の就任演説をブログに掲載しましたが、まずは、そのまま掲載しています。それが、公正な報道だと思います。先の施政方針演説の報道の仕方は最低であり、なにやら幼児性すら感じます。私のブログでは、麻生総理の「大きな政府」止む無しという考え方について、大多数の日本人が知らない事実も交えて解説してみました。詳細は是非私のブログをご覧になったください。

2009.01.29 15:47 URL | yutakarlson #.BcbyNME [ 編集 ]

 麻生さんはきっぱりと小泉改革を否定と聞いて、もしかしてkojitakenさんは麻生支持に回るのでは?と少し好奇心を持って見ていたのですが、そうではなかったようですね。リベラル派ブロガーで「麻生支持」を表明している人は皆無に近いです。今、「麻生支持」を公言したら全国的に注目の的になるところだったのですが。
 そのような虚栄心がkojitakenさんにある訳ないですよね。まあ妥当な判断だと思います。
 これから構造改革支持の立場で麻生政権を批判する人と、麻生政権を両断しないといけないので、忙しくなりますね。

2009.01.29 16:05 URL | kechack #1/Y8RI0s [ 編集 ]

kojitakenさん、皆さん、こんばんは

役人が書いた原稿を切り貼りした、全くの粗悪品です。
新しい世界、新しい日本という認識がありながら、それはどういうものか、どういうものにしたいかというメッセージがありません。
小さな政府、官から民へは方法であって、新自由主義、市場原理主義、弱肉競争社会での政府のあり方に過ぎません。
小泉改革を否定していますが、阿呆首相は総務大臣、外務大臣という国務大臣を歴任し、閣議にも参加し、「小さな政府、官から民へ」を進めた当事者です。
「小さな政府、官から民へ」を否定し方針転換するなら、自ら間違っていたことへの反省の弁を述べるべきです。
勿論、自民党総裁として、方針転換の説明責任があります。
失政や悪政の説明責任を果たさずに、黙って方針転換するのは、詐欺師の手口で、政治不信の元凶です。

政治不信がいっぱいの政権に、国民の信任のない政権に、増税論議をする資格はありません。
国民の意向が反映し、情報公開が十二分にされ、公僕として国民に尽くす政権であるならば、訪欧のような福祉国家が目指せます。
大企業と役人・政治家の利益を優先するお上政府が続く限り、彼らの言う消費税アップは、全く信用できません。

2009.01.29 18:38 URL | 愛てんぐ #PARia3Ic [ 編集 ]

逆に考えた場合、どうしても消費税をアップしたいならば、政府紙幣を発行し給付金として百万ぐらい配れば、その後のインフレの抑止力として増税できるのに…

2009.01.30 13:15 URL | #- [ 編集 ]

何でもかんでも大増税 欧州でもおおぶろしき ばらまき尽したそのあとは 消費税25%が待っている 知るか知らないアソータロー 俺が辞めた後だから気にするな

2009.03.07 19:58 URL | ジョディーは友達 #TTwyyxI2 [ 編集 ]

はじめまして
「ジョディ-は友達」というブログをしているぶるうと申します。
こちらのブログに「ジョディ-は友達」という名前でコメントされている方がいらっしゃるようですが、わがブログとは関係ございませんのでご報告を・・
これからもよろしくお願いします。

2009.04.02 21:12 URL | ぶるう #- [ 編集 ]

そだね

2009.04.06 13:51 URL | [e:257]ニックネームくん #NkOZRVVI [ 編集 ]

問題は赤字国債にしたに政府紙幣でないため三菱三井みずほは格付けを今日下げた。百年にいちどなら官公庁省の呼び名を組織改名しなきゃ創氏改名舌禍の麻生総理は、ばらまきで逃げる気である。

2009.04.10 11:03 URL | 百年にいちどは言い訳に過ぎない #NkOZRVVI [ 編集 ]

小さな政府は民が官の邪魔をしないに すり変わってる。民が政の邪魔をしない 家畜か非社員非正規非国民にする政策しか今の与野党は出さないからだ。政治は特定階層のエゴの傲慢合戦に成り果てているからだ

2009.06.20 04:18 URL | 芹沢獅堂 #TTwyyxI2 [ 編集 ]

民主党はハイブリットデジタル環境税でな。官舎と公社と校舎に太陽光パネル設置で消費税12%あげたら政官業界で消費税20%か合わせて17%を目指す

2009.06.26 23:18 URL | どっちもワルだったら #- [ 編集 ]

麻生がようやく麻生おろしを察知して動き出す。後は都議会選択前に7月2日解散宣言し選挙モードと東国原旋風で8月2日解散投票で勝てる見込みが出てきた。問題は民主党が東国原台頭を甘く見ているからだ。民主党の岡田幹事長は気が付かない。目には目をだ。誰か大物を比例区で細川もりひろみたいに駒がいることに、鳩山は真相旋風だが風は弱い

2009.06.30 20:10 URL | そうだ君 #TTwyyxI2 [ 編集 ]













管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://caprice.blog63.fc2.com/tb.php/835-ecdf8522