私などは結構醒めているので、オバマにはもちろん期待しているけれども、最初から期待するほうが無理な分野もあり、おのずと限界があると最初から思っている。前大統領のブッシュや、共和党の大統領候補だったマケインよりは確実にマシだし、対イスラエル政策に関しては、ヒラリー・クリントンは代表的な親イスラエルの政治家として知られているから、クリントンだったら洞ヶ峠どころかより積極的にイスラエルを支持したのではないか。
今回のガザ侵攻は、オバマ大統領就任にタイミングを合わせてイスラエルは撤退したけれども、この侵攻において、イスラエルはもはやナチス・ドイツの域に迫る悪逆非道ぶりを発揮したと私は思うし、何よりイスラエル政府が選挙を意識して人気取りのために虐殺を行ったことは許し難い。しかし、同様の体質はアメリカも抱えているのであって、十年ちょっと前、愛人のスキャンダルで支持率が低下した当時のクリントン大統領がアフガンを空爆したところ、支持率が上昇したというニュースを聞いて呆れたことを思い出す。基本的に、アメリカ人にとってアフガンや中東に住む人々の命などどうでも良いのだろうと私は思っている。
対イスラエル政策というのは、どんな大統領であろうが、アメリカの政策には私は期待しない。オバマの政策でも、対イスラエル政策はもっとも期待できないものの一つで、次いで増派を公約してきたアフガンの政策が挙げられる。私は、アメリカの経済や財政を考えた時、オバマが選挙前に口にしていたようなアフガンでの強硬な政策は、実際には取れないのではないかと考えているのだが、どうなるかはわからない。アメリカというのは何をやるかわからない国だからだ。ブッシュのような悪逆非道ではなくとも、オバマにも警戒を解いてはならないだろう。
もっとも期待できるというか期待せざるを得ないのは、経済政策の転換であって、オバマの唱えるグリーン・ニューディール政策は、対米盲従を唯一のポリシーとする日本政府も追随せざるを得ないだろう。オバマは、電気自動車政策に力を入れると公言しており、これに関連するリチウムイオン電池技術を国策にしようとしているようだが、この分野はもともと日本が得意とするところであって、日本の技術が世界をリードしてきたものだ。本当は、日本政府こそこの分野を国策としなければならないはずである。
かつて、「小さな政府」を掲げていたコイズミ政権は、やはり日本の技術が世界をリードしていた太陽光発電への補助金を打ち切り、この分野での日本企業のシェアを大きく落としてしまった。ことほどさように、新自由主義の政策は百害あって一利なしである。財界が新自由主義の政権を支援するのは、根本的にポリシーがおかしいのではないかと私は思う。
日本でも政策の大胆な転換が求められる。次の総選挙で政権交代が起きることは確実だと考えられており、これはオバマ大統領の誕生に対応する日本におけるイベントであって、最低限政権交代がなければ日本は生き残れないと私は思う。しかし、政権交代は日本の生き残りのための必要条件の一つに過ぎず、新政権がどのような政策をとるかが大事だ。
経済政策に関しては、民主党と連立を組むことが予想される国民新党と社民党が、民主党を然るべき方向(社会民主主義的経済政策)に引っ張っていくことを期待している。逆方向に民主党を誘導しようとしているのが、渡辺喜美や、現在は身動きが取れないものの総選挙後の政界再編で政権入りを狙っている、中川秀直を領袖とする自民党の新自由主義者たちである。彼らにはマスコミのバックアップがあり、電波芸者たちも彼らをヨイショしている。たとえば、テリー伊藤は渡辺喜美を「100パーセント支持する」と言い切った。万一、彼らが政権に加わって民主党との「大連立」政権なんかができてしまうと、日本は間違いなく没落の度合いをさらに強めてしまう。その害毒は、平沼赳夫一派が政権に加わった場合に政権の外交・安全保障政策に与える悪影響よりもさらに性質が悪く、コイズミカイカクという癌が除去できずに残ってしまうようなものだ。マスコミが新自由主義者をバックアップするのは、その方が業界の人間にとって好都合だからに過ぎず、彼らにとっての好都合は、日本に住むその他大勢の人々の不都合なのである。
とにかく、政権交代が実現したあとが大事だと思う今日この頃である。
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経団連は、昔から重厚長大系企業が幅を利かせています。ずっと前は鉄の会社が会長だったし、その後も電力、自動車です。
キャノンも製品は重厚長大ではないかもしれないけど、大規模製造業であることは確か。
で、これらの大企業の収益にとって重要なのは、多額の投資をして作った工場が、1日も長く回転して製品を生み出し、工場の減価償却が終わっても製品が売れることです。
ということは、売れるかどうかわからない新規産業への投資よりも、今の工場をどう回していくかが一番の目標になるのです。
太陽光や風力が主流(量的には全部は無理でも)になると、タービンやボイラーを作っていた重電系企業や造船会社は儲からない。
まぁそういうことで、「今の」経団連の顔ぶれでは、なかなか新産業に移行しようとはしないでしょう。特に今のように余剰在庫、余剰設備を抱えた状況では、新規投資に向くはずもない。
ここで、将来の主役企業と手を組めば、民主党も伸びて、古い経団連と自民党を一蓮托生にして滅ぼせるのですがね。
2009.01.22 15:55 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]
私もテリー伊藤さんが渡辺喜美さんをものすごく持ち上げているのを不信に思ってしまいました。でも、リアルの知り合いには、渡辺喜美さんに改革期待をするかたもおり、人により受け取りかたもさまざまだなあと思いました。
2009.01.22 23:16 URL | 散策 #TY.N/4k. [ 編集 ]
管理人さんの予想通りでしたね。
・オバマ大統領 「はっきり言います。イスラエルの自衛権を支持します」
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4045204.html
中東ではオバマは「ムスリムの息子」として歓迎されていたわけだから、その立場を崩すことは得策とは思えないし、すくなくとも停戦にもってく位はオバマに期待したのに。
いきなり「イスラエルは悪くない、虐殺は正当」ってこれは厳しい。彼に対して何を期待すれば良いんでしょうね?
2009.01.23 14:07 URL | 与志 #- [ 編集 ]
kojitakenさん、皆さん、こんばんは
ユダヤ人がアメリカ経済を牛耳っているため、如何にオバマ大統領といえども、なかなか難しく、だから何も言わなかったのでしょう。
イラクから軍隊を引き揚げて、アフガンに投入するというのを聞いて、やはり軍産複合体、戦争は止められなのだなと思いました。
グリーンニューディールも素晴らしいですが、人材は金融やITに集中して、ものづくりは凋落傾向にあり、これも前途多難なように思います。
グリーンニューディール等の大規模景気対策は国も国民も借金漬けで、米国債を日本に買えと迫るでしょうし、アフガンにも同様でしょう。
唯一、新自由主義の見直しは期待されるので、その辺の日本への圧力が減ることを望みます。
私も日本は、欧州のような社会民主的な方向が良いと思います。
聖徳太子の以和貴の精神、1億総中流の日本は、真正アメリカ人を武力で駆逐し常に移民を入れて競争状態を強いるアメリカではなく、長い歴史を持ち、共存共栄の文化や知恵が蓄積している欧州を見習うべきです。
資本主義を国民の意思が反映する政府が、公共の福祉が担保されるように、是正していく方向です。
自民党の新自由主義者を入れた政界再編ではなく、望むのは政権交代です。
新たな政権では、新自由主義者を排除して欲しいものです。
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