http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090114-OYT1T00705.htm
かねてから「大連立」を唱え、一昨年秋には仕掛人にもなった渡邉恒雄の読売新聞はこの動きを歓迎するのだろうか? ナベツネ自身は加藤紘一や山崎拓を接着剤とする「大連立」をもくろんでいると思うから、ちょっとズレがあるかもしれない。
ところで渡辺喜美は、
などと力んでいるのだが、自民党内からは「劇団ひとり」などという絶妙のあだ名をつけられて孤立している。しかし、渡辺が提携しようとしているのは、昨日のエントリでも書いた橋下徹をはじめ、江田憲司、東国原英夫、中田宏といった、知名度の高いネオコン連中であって、彼らを民主党政権にくっつけよう、いや彼らを介して民主党と自民党の大連立政権を組もうというのは、早い話が新政権を再び新自由主義者が乗っ取って、新自由主義を延命させるたくらみであり、こんなものは断じて許してはならない。危機管理内閣をつくるべきだが、(自民党と民主党が)水と油みたいな戦争を繰り広げている今の状況では無理だ。私が第3極をつくって橋渡しをやる
自民党が下野必至になると、自らが接着剤となって大連立を、などと考えるバカがあとを絶たない。平沼赳夫もそうだった。平沼が新党「侍」を立ち上げて、自民、民主以外の第3極となる構想があるとぶち上げたのは昨年5月だが、平沼は先に民主党に手を突っ込もうとして失敗した。福田康夫前首相が退陣を表明した直前の昨年8月、民主党から分かれて「改革クラブ」を結成した渡辺秀央や大江康弘は、いずれも極右政治家であり、平沼新党に参加する人たちだと見られていたが、泡沫新党を結成するにとどまった上、姫井由美子に逃げられるわ、民主党から絶縁されるわで散々、首班指名で平沼赳夫に投票した衆議院議員の西村真悟は次回の総選挙で落選必至の状況である。「平沼グループ」本体の方は、現職の平沼赳夫自身のほかに、前回の総選挙で落選した元職・城内実と小泉龍司の当選が見込まれているが、それでも「改革クラブ」とどっこいどっこいの勢力にしかなりそうにない。仮に両者が合同しても大きな政治勢力にはならないし、改革クラブが民主党に絶縁されている以上、平沼がもくろむ「大連立」の接着剤にはなれない。平沼の野望は潰えたも同然である。
渡辺喜美がやろうとしていることも、平沼と同じ発想であり、メンバーが極右ではなく、新自由主義者たちであるだけの違いだ。どっちもどっちというより、渡辺喜美の方がよりタチが悪いといえる。なぜかというと、彼ら新自由主義者は日本の社会や経済をめちゃくちゃにしてしまった元凶だからだ。
コイズミ政権時代に、極端な外需主導の景気回復策をとり、ただでさえ手薄だったセーフティネットをさらに薄くしたために、アメリカのバブルが弾けると、その影響をどの国よりも手ひどく受けてしまった。自動車業界が軒並み業績を急落させたのは、同業界の製品を消費に占めるアメリカの比率がきわめて高かったからだ。これまで日本人はいったい誰のために働いてきたのかと思うと、暗澹たる気分になる。一方で、ブッシュに追随するしか能のなかったコイズミは、太陽光発電への補助金を打ち切り、それまで同業界において世界でシェア1位だった日本は、以後シェアを急落させ、ドイツにとって代わられた。これも、コイズミの失政の一つである。ブッシュは再生可能エネルギーに冷淡で、京都議定書からも脱退したほどだが、そのブッシュにコイズミは追随して補助金を打ち切ったのに違いない。そして、オバマが「グリーン・ニューディール」を唱え始めると、日本も慌ててこれに追随しようとするありさまで、政治家にせよ官僚にせよ、日本の支配者層どもは、アメリカのご機嫌を伺ってしか行動できない無能な連中ばかりなのである。
そういえば、しばらく前に「新自由主義」とは何か、それを定義せよというコメントをいただいたことがある。その方は、リバタリアンとお見受けした。だが、新自由主義はリバタリアニズムとは似て非なる、いや、全く異なるものである。当ブログの2007年12月7日付エントリ「「痛みに耐えたカイカク」の先に現出した「階級社会」」にも書いたが、デヴィッド・ハーヴェイは、新自由主義の「実践」を「富裕階級の権力回復のプロセス」ととらえ、新自由主義は、経済成長ではなく格差の拡大を真の目的としたプロジェクトであるとしている。これは現実をかなりよく説明できる非常に興味深い仮説だ。現実に日本では格差が急激に拡大し、一時期新自由主義者たちが叫んでいた「再チャレンジ」とは裏腹に、階級が固定された不自由な社会になろうとしている。これを意図的に目指していたのが真の新自由主義者であり、その代表格は竹中平蔵だ。一方、新自由主義にリバタリアン的幻想を持っていた人たちは、その誤りに既に気づいている。中谷巌がその例で、『週刊朝日』を立ち読みしていたらまた中谷のインタビュー記事が出ていて、新自由主義とはエリート層が庶民から搾取するのに都合の良いツールだと言っていた。
日本で新自由主義の旗を振っていた人たちは、竹中平蔵のような確信犯から、新自由主義が本当に日本の改革のためになると無邪気に信じ込んでいた人たちまでさまざまだろうが、そのプロジェクトが支配者層以外に何の利益ももたらさず、社会を破壊し、大多数の国民を不幸にするという結果は既に出ている。そして、新自由主義に対する審判も、直近の国政選挙である一昨年の参議院選挙で下されているのである。
だから、いまさら「大連立」という形で、離党したとはいえ実質的に自民党の延命をなおかつ懸命に図っている渡辺喜美は、単なる見苦しいピエロであり、民主党はおろか自民党からも追随者が出ないのは当然のことである。今度はまた、消費税増税の問題をめぐって、中川秀直を筆頭とする新自由主義者たちが巻き返しを図っているようだが、国民はこんなものにダマされてはならない。アメリカより弱い所得税の累進性をそのままにしながらの消費税増税を許してはならないのは当然だが、それを「小さな政府」論者どもに悪用させてはならない。議論には十分な注意が必要である。
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こんにちは。
渡辺は、何か確たる見込みを持って行動しているとは思えません。
自民党内から言われている通り、政権を追われそうな泥船自民党から逃げ出したというだけのように見えます。
年末から策動していたのに、同調者は0。しかも、離党早々会いに行ったのが、あの橋下。
もはや渡辺自身を含め、麻生不人気の反動によるポピュリズムを狙っているようにしか見えません。
政局論で、「橋渡し」うんぬんを言う前に、政治家としての政策、思想を表明するべきでしょうに、それがないということは、結局はネズミにすぎません。
ただ、それを持ち上げる産経をはじめとしたマスコミにはあきれるばかりです。
2009.01.15 12:44 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]
こんにちわ。
定義の件では失礼しました。
自分の考えは自由に公正な競争社会。既得権は認めない。小さな政府。歴史認識では反靖国、護憲(変えてもいいけど、平和憲法の主旨は守る)派です。だから格差はあってもしょうがないですが、利権や既得権での下の格差は反対です。
ところで
渡辺喜美氏ですが
・日本会議
・みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会
・日本の前途と歴史教育を考える議員の会
所属 ってのが気になります。
正直、片山さつきの方がまだ城内実よりマシ派です。
2009.01.15 14:53 URL | ろーりんぐそばっと #ehuBx04E [ 編集 ]
確信犯として市場中毒を撒き散らすよりも、
無邪気に中毒になった方が害毒が大きいですね。
周りにどんな被害をもたらしたのか知らなかったり、知ろうとしないのは救いようがありません。
広告屋が国の先回りをして道徳心を押し売りする
acに似た気持ち悪さを感じます。
2009.01.16 00:37 URL | 観潮楼 #- [ 編集 ]
渡辺氏の会派結成の記者会見に出たのが、PHP総研社長と屋山太郎というのが最低ですね。
こんなのとつるんでたら、何がどんな人間でも二度と信用しません。
2009.01.16 19:27 URL | Gl17 #EBUSheBA [ 編集 ]
私からみると渡辺氏は延命を図ろうと策動する新自由主義勢力と見えます。
彼が作る受け皿には、おそらく中川秀直氏や小泉チルドレンといった連中が合流するのではないかと懸念しています。
それが行われるとすれば、選挙の直前。それまでは、メディアに露出し続け自民党と民主党批判を繰り返す。これによって、有権者にどっちもどっちという意識を植え付ける。
最終的には選挙のテーマを「政権選択」ではなく、「新党ブーム」に持ち込むことが狙いではないでしょうか?そうなると自民党も負けるが民主党も勝てない結果となり、政界再編に持ち込めます。
2009.01.21 08:54 URL | ちゃこ #PefwKnF. [ 編集 ]
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2009.01.16 07:28 | by jp & Blog-Headline