きまぐれな日々

これまで輸出に頼っていた日本の製造業が、アメリカ発金融危機の煽りをもろに食らって業績が悪化し、非正規社員を中心にした猛烈なリストラの嵐が吹いている。とんでもない年末になってしまった。

さんざんな1年だったが、来年は今年よりもっと悪い年になるのではないか。これは、大方の人の感じるところだろうし、私も例外ではない。

昨日(28日)朝放送されたTBSの「サンデーモーニング」も、この話題で始まった。この番組は、昨年年末に時間を延長した特番を組んで、新自由主義を本格的に批判していたそうだ。私は残念ながら昨年暮の特番は見ることはできなかったが、普段の番組作りも、伝えられるその内容にほぼ沿ったものである。番組が鳴らした警鐘が現実のものとなったが、その激変ぶりは想像を絶するすさまじさである。

事態は、経験した人はほとんどいなくなっている1929年の世界大恐慌にたとえられる。アメリカで経済危機を立て直したのは、フランクリン・ルーズベルト大統領のとった「ニューディール政策」であり、これは、ほっとけば経済はよくなるとして、大恐慌に対して有効な対策を打たなかった共和党のフーバー大統領の政策をルーズベルトが大胆に転換し、政府が経済に関与する社会民主主義的な政策によって経済危機を克服したものである。もっともルーズベルトはテネシー川流域開発公社などの公共事業を積極的に行なって経済を立て直したが、均衡財政論者の巻き返しによってアメリカ経済は再び低調となり、結局、アメリカ経済を立て直したのは、第二次世界大戦による軍需景気だった。

ここで注目したいのは、現在の麻生太郎政権が曲がりなりにも積極財政路線をとろうとしていることであって、それに対して財政規律の面から批判する与謝野馨一派や朝日新聞・日経新聞を代表格とする大多数のマスコミは、ニューディール政策を批判して経済を冷え込ませた側の論理にのっとっている。つまり、麻生政権を批判するのは良いが、それが「新自由主義側」からの批判になってしまっているのだ。三十年にわたって浸透させられてきた新自由主義の刷り込みは、まことに強固なものだと思う。

もちろん、麻生らの狙う道路建設を中心とした公共事業による景気対策の裏には、政官業癒着構造と密接な関係がある。だから、癒着構造に関与している人たちだけが潤って、その恩恵は一般庶民には行き渡らない。これに対する真に有効な批判は、政府支出を抑えろというのではなく、適切な政府支出を行えと主張することだと私は考えている。

実は、26日付のエントリ「自民党政権最後の年末に日本版ニューディール政策を思う」に対し、タイトルに「日本版ニューディール政策」と書かれているが、「日経エコロミー」に載った飯田哲也氏のコラムへのリンクが張られているだけで何の説明もなく、さっぱり理解できないというご批判を読者の方からいただいた。そこで、私が考えていることを簡単に説明したいと思う。

まず、サブプライムローン問題で、日本の金融機関の痛みは少なく、日本経済への影響は限定的だとされていたにもかかわらず、日本が先進諸国のうちでもとくにひどい株価の下落や企業業績の悪化、そしてリストラなどの惨状に見舞われている理由は、日本の産業、特に製造業が輸出依存の体質になってしまっているからである。コイズミはいろんな大企業優遇政策をとったが、特に円安誘導政策は、トヨタなど輸出産業に大きな恩恵をもたらした。日本経済が低迷する中、昨年まで愛知県の好調が伝えられたのは、もちろんトヨタの好業績に負うところが大きい。要は、日本の輸出産業が作った製品を、アメリカなどの浪費好きの人たちが消費して、大手製造業の好業績が成り立っていたのである。

それが、アメリカ経済がおかしくなると、需要がなくなるとともに、これまで無理に円安誘導をしていたツケが一気に出て、急激な円高になってしまった。これが日本経済に与えた悪影響は計り知れないものがある。

これをどう立て直すかというと、外需に頼り無理な円安誘導をしていたこれまでの政策を改め、国内の需要を高める方策をとるしかない。つまり、ルーズベルト大統領がやった、ニューディール政策にならった政策をとるしかないと私は考える。これを私は、「日本版ニューディール政策」と仮に呼ぶのであるが、具体的には、農業支援や医療・福祉の充実、それに再生可能エネルギーの開発推進などによって、冷え切った国民の懐を暖め、雇用を創出し、国民が元気を取り戻すようにしようというものだ。この際、一時的に財政赤字は拡大するが、その分は将来の諸産業の伸びによる税収増加で取り戻すことができる。この点で評価できるのは、民主党が打ち出した農家の戸別補償政策である。これは、近年主流だった新自由主義的発想による「大規模化による農業再生」の考え方を大きく転換するものだ。

だが、なんといっても注目されるのは、ヨーロッパで実績をあげてきている再生可能エネルギーの開発推進であり、アメリカの場合、オバマ次期大統領は「エネルギー革命」を宣言している。

実は、オバマがこのような政策をとることはずっと以前から予想されていた。たとえば、金子勝とアンドリュー・デウィットの共著『環境エネルギー革命』(アスペクト、2007年)に詳しく記述されており、当ブログでもこの本を、7月23日付7月25日付7月26日付および7月27日付エントリの4回にわたる連載でとりあげた。

これらのエントリに引用した金子・デウィットの『環境エネルギー革命』の記述にあるように、再生可能エネルギーの開発には、長い期間をかけてエネルギー転換に伴う投資や需要、そして雇用を創出していく面がある。しかも、この事業は民間だけで立ち上げられる性質のものではなく、開発には補助金だけではなく国家主導のあらゆる政策を動員する必要がある。しかし、その一方で、欧州で再生可能エネルギーが伸びたのは、電力の自由化を導入したからでもあった。さまざまな再生可能エネルギー候補に競争をさせたのである。一方、日本では新自由主義政策をとる一方で、原子力業界を手厚くもてなし続けてきた。しかし、実は原子力というのは、単に放射性廃棄物の問題やメルトダウンが発生した時のリスクの大きさだけではなく、高コストなエネルギーなのである。ところが、それこそ政官業癒着によって、原子力政策はいっこうに改められない。日本の電力会社は、もともとは国策会社であり、今でも政官業癒着の甘い汁をたっぷり吸っている。日本で原子力発電に反対している政党は社民党だけであり、同党は当然ながら再生可能エネルギー推進や環境税創設などの政策を掲げているが、現在の同党は、すっかり泡沫政党に落ちぶれてしてしまっている。

このように、アメリカでさえ声高に叫ばれるようになった再生可能エネルギー開発による国内産業の再生は、日本では相変わらずさほど関心を持たれていないが、このままでは世界からすっかり取り残されてしまうだろう。そして、そのあげくに原発事故が起き、国土が焦土と化してしまうのが関の山ではなかろうか。

そうならないうちに、次期政権は、オバマの後追いでも良いから、再生可能エネルギーや農業支援、医療・福祉などを充実させる政策を打ち出して、日本経済を再生させてほしいと思う今日この頃である。


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本当におっしゃる通りです。そういうことを主張する政治家がたくさんでてきてほしいものですね。

このブログを見つけたのは最近ですが、現代社会の悪い点をよくついていると思います。

これからもがんばってください。

2008.12.29 10:38 URL | yuyu #- [ 編集 ]

 自民党ではもちろんダメなのは分かってますが、民主党政権になっても、電機労連(東芝、日立、三菱)、電力労連(電力会社他)を支持母体とし、それらの労組が原発容認である以上、なかなか脱原発の動きにならないと思います。
 技術開発面では進んでいても、実際の移行の速度が世界よりも遅れるような予感が。
 私は水素エネルギー社会が来ると思っていたのですが、なかなか進まないようです。

2008.12.29 11:41 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

>、そのあげくに原発事故が起き、国土が焦土と化してしまうのが関の山ではなかろうか
こんばんは、KOJIさん。
そうなったら、全く今のソマリヤやアフガンと変わらないかも? 或いは、パレスチナか。
お金持ちの企業家連中は海外逃亡でしょうね。
http://ameblo.jp/garbanzo04/entry-10184687006.html
こんな有難い講話をされる方々は・・。
いまから「いかれ」ても構わないですけど・・。どこなと、

2008.12.29 17:35 URL | 三介 #CRE.7pXc [ 編集 ]

>道路建設を中心とした公共事業による景気対策の裏には、政官業癒着構造と密接な関係がある。
>その恩恵は一般庶民には行き渡らない。
>政府支出を抑えろというのではなく、適切な政府支出を行えと主張することだ

 建設土木に財政支出しても周囲のセメント鉄産業含めて今や中心産業ではないのです。中心はITと精密機器やその部品やサービス福祉産業など。土建には投資による連鎖反応による需要掘り起こしがないのですね。これを乗数と言いますが昔は4.5から4.0だったのが今や1.2~1.1と限りなく1に近い。道路中心の自民党型公共事業は限りなく時代錯誤なのです。

環境と福祉、教育、大学など研究機関に投資したほうがいいと思います。

2008.12.29 20:54 URL | 奈良たかし #Ah2Itwss [ 編集 ]













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