きまぐれな日々

このところ、最新の情報にキャッチアップできず、間の抜けた記事が増えている当ブログだが、今日も5日前の12月12日に決定された平成21年度与党税制改正大綱を取り上げる。

マスメディアがこの件を大々的に報じたが、私が注目したのは、12月13日に『広島瀬戸内新聞ニュース』が取り上げ、12月15日には森永卓郎が日経BPのサイトに不定期掲載しているコラム「構造改革をどう生きるか」の第164回「庶民の手元にカネを回す税制改革を」で取り上げた個人所得課税の見直しである。自民党税調ももうやく富の再分配強化の必要性を、おそらくはしぶしぶながらも認めざるを得なくなってきているのだ。

「平成21年度与党税制改正大綱」の11頁には、下記のような記述がある。

個人所得課税については、格差の是正や所得再分配機能の回復の観点から各種控除や税率構造を見直す。最高税率や給与所得控除の上限の調整により高所得者の税負担を引き上げるとともに、給付付き税額控除の検討を含む歳出面もあわせた総合的取組みの中で子育て等に配慮して中低所得者世帯の負担の軽減を検討する。金融所得課税の一体化を更に推進する。

(自由民主党「平成21年度与党税制改正大綱」(平成20年12月12日)より)


この方針が実現されると、分離課税によって優遇されてきた高額所得者の配当収入(不労所得の典型の一つ)に重く課税されることになり、所得再配分という財政の役割が強化されることになる。森永卓郎は、下記のように評価している。

(所得税の最高税率の引き上げと低所得者の所得税優遇は)小泉・竹中路線のときには絶対に考えられなかった方向性だ。金融資本主義、新自由主義の考え方では、金持ちが経済の牽引役だと考える。だから、金持ちを活性化するために減税し、その代わりに庶民に対して増税するというのが基本方針であった。今回の自民党税調の方針は、明らかにこれまでと逆を向いている。

(森永卓郎「構造改革をどう生きるか」第164回「庶民の手元にカネを回す税制改革を」(2008年12月15日)より)


神野直彦著『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書、2007年)の89頁に図入りで説明されているように、日本では個人所得課税の国民負担率が低い。スウェーデンでは22%、英独仏で10?13%、アメリカでも11.1%なのに(いずれも2003年)、日本ではわずか6,6%(2006年)なのだ。それだけ極端な金持ち優遇税制になっているわけだが、従来コイズミや竹中平蔵らは、「金持ちの旺盛な消費が経済を引っ張って景気を浮揚させる」と説明していた。そんなのは真っ赤なウソで、金持ちはケチだから金持ちなのであって、「庶民の手元にカネを回す」ことこそ景気浮揚につながるのだが、ようやくその当たり前の事実を自民党も認め始めたというところだろう。個人所得課税の見直しというか、「金持ち増税」はどんどん進めてほしい。

だが、これは「与党税制改正大綱」に自民党が「仕方なく、しぶしぶと」盛り込んだものであって、彼らが何としてもやりたいのは、消費税率の引き上げと法人税率の引き下げである。いろんなブログを見ていると、一昨日(12月15日)にNHKテレビで放送された『セーフティ・クライシスII』も、結局は消費税率を欧州諸国並みに上げよという主張で番組をまとめていたらしい。だが、庶民に金が回らないための景気低迷なのだから、景気対策の意味からも、消費税増税は3年後などの早い段階で行ってはならない。1997年の消費税率引き上げで景気が冷え込んだところに、アジア金融危機の追い打ちを食って日本経済が低迷したことを、自民党はどうやら忘れてしまったらしい。欧州のように国民が十分な社会保障が受けられるようになって初めて、消費税増税が検討されるべきであって、それは10年くらい先の話だ。

法人税についても、森永卓郎が指摘しているように、昨年(2007年)11月の政府税調答申「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」の22頁に、「我が国の企業負担は現状では国際的に見て必ずしも高い水準にはないという結果も得た」と書いておきながら、その直後のセンテンスで「こうした点を踏まえつつも、法人実効税率の引下げについては、当調査会の議論において、法人課税の国際的動向に照らして必要であるとの意見が多かった」などと書いていて支離滅裂なのだが、税調の委員に神野直彦がいる一方、新自由主義者が大勢加わっているからこんな記述になったのだろう。そして、自民党の本音はもちろん大企業の優遇であり、だから彼らは法人税率引き下げに固執する。

だが、これでは日本経済は絶対に良くならない。トヨタやソニーを筆頭に、日本の大企業はこれまで輸出で好業績を上げてきて、コイズミ時代には輸出産業が最大限に優遇されて、その結果、「戦後最大の景気拡大」のはずなのに民間給与所得が9年連続で減少するという前代未聞の状況が現出した。しかし、アメリカ経済はサブプライム・ローン問題に端を発した金融危機によって、今後最低数年間は立ち直れない。日本経済を上向かせるためには内需を拡大するしかない。そんな時に輸出産業の支援にばかり力を入れても景気浮揚の効果は期待できず、税収が増えないから財政赤字は拡大するばかりだろう。

結局、自民党政権にはもう日本経済を立て直せないのだ。そもそも、「前場」を「まえば」と読んだり、株式に満期があると思っている男が総理総裁を務めているのではお話にならない。

自民党政権の速やかな退場こそ、当面もっとも効果的な景気回復策だと当ブログは考える。


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 この記事に、必ず、「金持ち課税すれば、金持ちが国外に逃げ出す」っという反論をつける奴が必ず出るでしょう。他の場所でも良く見かけて同じことばかり言ってます。
 そういう人物にお願いしたいのは、その実証的な証拠、データを示してください。
 法人についても同じです。
 小学生みたいな知識で、脊髄反射的発言は慎んでください。

2008.12.17 09:36 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

タイトルだけ見ると「おおっ、自民党もついに」と淡い期待を
煽られますが、何のことはない「小金持ち増税」でお茶を濁して
目先の批判をかわそうという、ただそれだけの話だったんですね。
全く、どこまでもやり方が薄汚いと言うか・・・。

> 金持ちが国外に逃げ出す

日本ほど金持ちを厚遇する国が他にあるとはちょっと思えないの
ですが、それでも良ければどうぞという感じですね(笑)。

2008.12.17 16:20 URL | ポール #- [ 編集 ]

金持ちと呼ばれる人が、今の日本に何%いるのでしょうね…
企業家が一代で成功した財産も高率の相続税で奪われることを考えると、重税感は庶民並にあるような気がしますね…

美智子妃のご実家である正田家が(美智子妃のお父様がなくなった際に)あまりの税金の高さのため、物納をしました。


北欧諸国のように国民の利益になるように税金が使われると 我々も生活しやすくなるのですが…

生活にかかるコストを下げることが構造改革のはずなんですけどね…

小泉改革って何のためにやられたのか未だにわからない改革だったような気がします。

2008.12.17 17:01 URL | 葉隠 #CRmGiUQU [ 編集 ]

国民生活や雇用貧困格差景気どれみても良くなる兆しなし、空気読めない政治家ばかりじゃ国や雇用貧困格差景気全て奈落の底だよ!何も出来ないなら政界を辞めるよ!ただ指くわえていて何も出来ない政治家をリストラすべきだ金の無駄使いだろ!そこから削減しないと益々悪くなるのじゃないだろうか、やる気があるやつを選ぶべきだ!杉村泰造なんかクビにするべきだ!

2008.12.17 18:22 URL | ぷー #- [ 編集 ]

フランスから高所得者が流出しているという話はありますね。

日本からアメリカへの流出はありうるでしょう。

配当への課税強化は、株式市場が冷え込むので、まず無理ですよ。

2008.12.18 11:44 URL | 川風 #GHYvW2h6 [ 編集 ]

正田家の物納は割と知られた話ですが、土地バブルの極度な亢進による害の例として語られることですね。
むしろ都内では当時、資産家でない庶民のほうが主にそういう目を見ていました。
正田家にしても、金融資産が土地評価ほど潤沢でなかったから物納をしたわけで、端折ればカネが無かった(資産家としては)ということになります。
(だいたい所得税を主テーマにした件で、何故相続のことだけを・・・)

米国にしても保険状況や治安、人種問題など好ましからぬ部分は多く、景気も疑問符がつくと、どれだけ居住地として魅力があるか。
ごく一部の、収入なんか気にしない超富裕層は絶対数が僅かなので動向は無視したっていいでしょう。
問題なのは働いてそれなりの高収入を得ている実働層で、これが簡単に日本での稼ぎから米国業務にスイッチできるかと言えば、大移動は無理でしょ。

配当課税に関しては一律で語るのは不適当かと。所得税同様に金額で語るべきでしょう。
年金がアテにできなくなりつつあり、利子所得も近年の惨状では、配当は退職世代向けの収入候補として重要と思います。
生活年収程度までは優遇すべきでは。
あと、株式配当の最大の受け取り手は年金資金ですので、そういう方面も税優遇が欲しいですね。

2008.12.19 00:03 URL | Gl17 #EBUSheBA [ 編集 ]

イギリスといえば「税金が高い高い」とサッチャー保守党でなくても盛んに連呼している(あるいは、していた)国ですが
イギリスのそばには海峡諸島だのマン島だの、あるいはカリブ海のケイマン諸島だの、メージャー保守党政権以前なら香港という格好の租税回避地があったわけですが、なんでイギリスの金持ちはみんな大挙移動しなかったんでしょうねえ?
英国海外領土って、英国市民の転居も就労も自由なんでしょ。逆に海外領住民の英本国への転居や就労が許可制なぐらい(香港がそうだった)で。公用語も英語なんだから不自由はなし。
「税金が高いと金持ちが逃げ出す」と盛んに力説している人、どうして英本国から金持ちがいなくならないのか説明してください。

2008.12.19 12:27 URL | ジャッキー・ヤン #mQop/nM. [ 編集 ]













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