現在の麻生政権だが、発足から2か月しか経っていないのにもう末期症状を呈している。麻生は、コイズミはおろか、安倍晋三よりも福田康夫よりも人気が低く、麻生を押し立てて選挙に勝とうともくろんでいた公明党は、人気は福田康夫以下だわ、求めていた解散総選挙は先送りされるわで怒り心頭だろう。でも自ら望んで麻生内閣成立に協力したのだから、「身から出たサビ」としか言いようがない。
麻生が連発する漢字の読み間違いについて、養老孟司は、「読字(どくじ)障害ではないか」、「読字障害の人は、特異な能力を発揮することが多い」などと、庇っているのか馬鹿にしているのかわからないコメントをしている。いや、いちおう麻生を庇って「エールを送って」いるのだが、「麻生首相やブッシュ氏は時代に求められたとみることもできる」などと、今世紀最低の不人気にあえぐブッシュを引き合いに出すあたり、庇っていると見せかけて馬鹿にしているのではないかと思える。
だが、仮に漢字の読み間違いは「読字障害」に過ぎないとしても、麻生が「株式に満期がある」と思っているとしか解釈できない発言をしたことは、「読字障害」では説明がつかないだろう。麻生太郎は、単なるバカなのだ。それこそ、超えられない「バカの壁」がある。
安倍晋三も福田康夫よりも麻生太郎が不人気なのは、それなりの理由がある。「真正保守」を自称する人たちの絶大な期待を受けて総理大臣に就任した安倍晋三には、改憲へのすさまじい執念があり、経済政策をそっちのけにして、教育基本法の改正に代表される、改憲を実現するための諸政策を推進した。田母神俊雄が航空幕僚長に昇進したのも、安倍内閣の時だった。時代が「ワーキングプア」という言葉が定着し、格差問題が取り上げられ始めた頃だったから、経済政策そっちのけの安倍晋三は世論の総スカンを食って、参院選惨敗によって内閣総辞職に追い込まれたが、安倍には狂気じみた信念があった。そして、福田康夫は基本的には総理大臣になりたいだけの人間だったが、コイズミと安倍晋三が大嫌いだったので、安倍内閣の政策を転換して、新自由主義色を弱めるとともに、アジア重視の姿勢を打ち出し、「福田ビジョン」を打ち出して、私はこれでは不十分だと思うけれども、コイズミ時代に推進にストップがかけられた再生可能エネルギー政策を曲がりなりにも再建する方向性を示した。つまり、福田康夫には、「反コイズミ、反安倍晋三」という方向性があった。
だが、麻生太郎には何もない。そのことがわかった2か月だった。
麻生太郎に期待をした人たちには2種類あって、まず、安倍晋三、中川昭一や平沼赳夫らと親しい麻生に、「真正保守」の政策推進を期待した、産経文化人やネット右翼ら、「極右」の人たちだ。だが、その期待は麻生が「村山談話をふしゅうする」と言ったことによって裏切られた。
また、麻生に旧保守のケインジアン的経済政策による景気対策を期待した人たちは、麻生が実質的に何もせず、景気対策を口実に解散総選挙を先送りしたにもかかわらず、2次補正予算案の提出を先送りにしたことによって期待を裏切られた。そもそも、「株式に満期がある」と思い込んでいる人間が、「経済の麻生」などであるはずがない。
臨時国会冒頭での解散を回避した麻生の決断は、やはり自公与党を窮地に追い込んだ。あの時解散していれば、今ごろもう選挙は終わっているが、自民党は負けたにしてもさほどの大敗にはならなかっただろう。安倍内閣や福田内閣の発足直後より低かったとはいえ、麻生内閣にはそれなりの「ご祝儀相場」で40%台半ばから50%台前半の支持率があったからだ。だが、今となってはNHKがいくら「自民党のコマーシャル」として、他のメディアより高めの支持率調査結果をたたき出したところで、もはや麻生内閣の人気を再浮上させることはできない。
こんな状況に、自民党内では早くも「泥船から逃げ出す」動きが始まっているようだ。
先週の『サンデー毎日』(11月30日号)には、加藤紘一と山崎拓が自民党から30人を離党させて民主党への合流に動くという観測記事が出ていたし、朝日新聞の星浩編集委員は、先日『報道ステーション』で、中川秀直ら「上げ潮派」の動きがカギを握るという、新自由主義寄りの同氏らしいコメントをしていた。また、昨年未遂に終わった「大連立」の仕掛人・ナベツネは、「早くも麻生政権に見切りをつけ、与謝野氏を軸にした小沢民主党との連立政権の可能性を探っている」という情報もある(下記URL)。
http://www.data-max.co.jp/2008/11/post_3586.html
もはや自民党の溶解が始まった、そんな観さえある。もういつ総選挙をやろうが、自民党の再生は不可能な状態となった。ことここに至った以上、民主党が平沼一派と提携する必要など何もなく、人間とは思えないレイシスト発言をした元政治家をメンバーに含む平沼一派など、民主党は一刻も早く切り捨てなければならないと私は考えるが、それはともかくとして、こんな状態になった自民党がこれ以上政権を運営するのは、国民にとって百害あって一利なしだろう。
久々に経済関係について述べると、11月14, 15日の両日行われたG20金融サミットについて、納得できる解説をしてくれているのが森永卓郎である。
「米国という泥舟にしがみつく外交でよいのか」と題したこのコラムで、森永はIMFに1000億ドル(約10兆円)を融資すると約束した麻生を批判し、
と書いている。つまり、今回の金融サミットで、麻生総理は全面的にブッシュ大統領にくっついて戦ったわけだ。これは現在の世界経済の状況を全く認識していないことを示す恐るべき行動である。米国がまさに沈んでいこうとしているとき、その泥舟に全面的に乗っかっていこうというのだから救いようがない。しかも、それを国際舞台で堂々と宣言をして、なおかつ行動までしてしまったのだから、もう驚くよりほかないだろう。
(中略)それにしても、今後も米国ベッタリを推進するとなると、これは日本経済にとって非常にマズい事態なのである。
森永は、アメリカは今後10年は復活できないだろうと予想し、
と悲観的な予想をしているが、残念ながらこの主張にはとても説得力がある。そんな米国に、最後までしがみついていこうというのが麻生総理の戦略なのである。この方針をいますぐに転換しないと、日本の未来は真っ暗である。
しかし、米国との同盟は、祖父の真似をしたがる麻生総理の根っこであるといっても過言ではない。政権交代が起きるか、少なくとも総理大臣が変わらない限り、日本は米国という泥舟に乗ったまま一緒に沈んでいく運命が待っているのである。
もはや、自民党の世襲政治は限界に達した。無能な二世、三世の総理大臣では日本を悪くするばかりだ。
民主党の小沢一郎や鳩山由紀夫も世襲議員だが、世襲議員や極右議員が党全体に占める割合は、まだ民主党の方が自民党よりは低い。
民主党を中心とする連立内閣ができたところで、一朝一夕に素晴らしい政治をやってくれるとは私にはとても思えないが、それでも現在の最低最悪の麻生内閣が退陣するだけでも意味がある。誰に交代したって自民党ではどうしようもないことは、ここ数年続いた自公政権の迷走を見ていれば自明だろう。
麻生太郎がこれ以上悪名を後世に残さないためには、一刻も早く総辞職して、野党第一党である民主党の選挙管理内閣によって解散総選挙を行ってもらうことだ。麻生内閣の存続こそ、最大の政治空白である。
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「もはや麻生内閣の人気を再浮上させることはできない。」
そうです、早くも賞味期限切れ。
しかし、与党が麻生を切って挽回できる可能性は一応あります。もちろんうまくやればの話ですが。
例えば、都議選前に首相のポストを公明党に渡して、公明党主導で子供手当てを先取りする形にしてやるとか。
2008.11.27 17:18 URL | Black Joker #RtNpiJ3M [ 編集 ]
こんばんは、KOJIさん。
森永さんほどじゃないけど、斉藤精一郎・千葉商大教授も、オバマミクス[オバマ政権の経済政策]にかなり悲観的な観方をしてると言えるかも。
借金消費と金融技術という二大エンジン亡き中で、公的資金注入、ゼロ金利を超える量的緩和、[此処までは小泉改革時と同じ]さらに、大規模な財政支出。この「3種の神器」でも、痛み止めにしかならないので、へたこくと、大量国債と不良債権の国家・公的機関のマル抱えで、沈没?!
新しい技術(成長エンジン)への重点投資が鍵!ってな内容でした。
「(2008/11/27)斎藤精一郎 79回「オバマノミクスの政策総動員とデフレの罠――オバマ政権は米経済を危機から救えるか」
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/saito.cfm 」
結論部分は、以前日経にあった「世界経済と米国経済危機、3つのシナリオ
『今の金融危機は問題の“症状”であり、“原因”ではない』
2008年11月10日 Michael Mandel」と同じ。
アメリカが自前でやり切れそうもないので、多国間協調[或いは恫喝・恐喝?]が増えそう・・。
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