きまぐれな日々

最近は、ブログの一方の柱である新自由主義批判をほったらかしにして、田母神俊雄や城内実の批判に血道をあげている当ブログだが、それだけファシズムの再来に強い警戒心を抱いているということだ。

田母神や城内には一度たりともたぶらかされたことのない当ブログだが、佐藤優にはもののみごとにダマされた。ブログを開設するかしないかの頃に読んだ佐藤の著書『国家の罠』(新潮社、2005年)はとても面白くて示唆に満ちたものだった。この本は、魚住昭が絶賛したから読んだものだが、その魚住との共著である『ナショナリズムの迷宮』(朝日新聞社、2006年)も面白かった。しかし、その後読んだ鈴木宗男との共著である『反省 私たちはなぜ失敗したのか』(アスコム、2007年)はあまり感心しなかった。

それでも、当時の私は佐藤優に対する肯定的な評価は変えていなかった。実は、2006年の末頃、『週刊現代』において、佐藤優が安倍晋三を持ち上げている文章を読んで、一度佐藤への評価が否定的に傾きかかったのだが、直後に読んだ『ナショナリズムの迷宮』で再び評価を肯定的に変えたのである。今思えばこれがうかつだったのだが、私が最も信頼していたジャーナリストの一人である魚住昭との共著だったのが大きかった。

魚住昭は、その著書『特捜検察の闇』(文藝春秋、2001年)で、私に辺見庸の「鵺のようなファシズム」という言葉を教えてくれた人である。その魚住昭自身が佐藤優に引っかかり、「佐藤優現象」の形成に協力してしまった、というのが現時点における佐藤優と魚住昭に対する私の評価である。もちろん、私自身もブログで『ナショナリズムの迷宮』を持ち上げてしまうなどの誤りを犯した。

今日のエントリの後半では、ブログにいただいたコメントを紹介する。最近再びコメントをいただくようになった三介さんは、11月21日付エントリ「麻生内閣支持率30%に見る日本人の知性の劣化と城内実」へのコメントで、

佐藤優氏は『国家の罠』で、「ナショナリズム(排外主義)は過激なほど受け、自国の損害はよく記憶するけど、他者の痛みにはまったく無頓着」という風に定式化してる。ご本人は、ナショナリスト(排外主義)ではなく、愛国主義者(郷土愛に近い概念かな?)だとも言っている。

と書いている。

これを受けたjunkoさんのコメントを以下に紹介する。

>佐藤優氏は『国家の罠』で、「ナショナリズム(排外主義)は過激なほど受け、自国の損害はよく記憶するけど、他者の痛みにはまったく無頓着」という風に定式化してる。

上記で三介さんがおっしゃっているとおり、佐藤氏は『国家の罠』ではこのように記述しています。これを普通に読めば、過去アジア諸国に与えた日本の侵略や植民地支配の加害性を(も)念頭に置いた上での発言かな、と思えます。しかし、次(半年後)に刊行された『国家の自縛』では、聞き手の斎藤勉氏(サンケイ)が

?その韓国ですが、歴史・教科書問題での執拗さ、謝罪要求のしつこさには本当に閉口させられますね。

と語りかけたのに対し、

?そう思いますよね。ですから「斎藤さん、確かに斎藤さんと手切れの約束をしてあのとき百万円いただきました。しかし、斎藤さんとの子供が今度中学に入るんです。私立にも入れたいんであと二百万円ください」そんなふうに言ってくるような女性と一緒ですよね。

と答えています。歴史認識や教科書問題が、なぜこのような次元のたとえ話に変わってしまうのか、実に不可解なのですが、実は、佐藤氏の言論活動はそのほとんどがこのような二重性をもって構成されているように見えます。

金光翔さんは具体的例を克明にあげてさまざまな観点から<佐藤優現象>を記述・分析なさっていますが、その他たとえば憲法に関して、佐藤氏は、「筆者は護憲論を支持する。しかも現行憲法の条項には一切、改変を加えてはならないと考えるかなり硬直した護憲の立場に立つ。」(『世界』2007年5月号)と明言しながら、一方、著書や対談、講演などでさかんに軍法会議の設置を唱えていて、どうやら最近ではご本人もそのことを隠そうとはしていないように見えます。「私は、軍法会議を設置しようと強く主張しているんですよ。軍法会議を設置することによって、防衛省が自足するようなところへ持って行くという形になれば秘密も守れるじゃないですか。」(国家を斬る2007年)

なぜ軍事裁判所が必要なのかといえば、佐藤氏によると、「私は、自分の裁判でよくわかったんですけれども、司法官僚たちには外交の意味がわからない。」からだそうです。

イージス艦衝突事件の時、石破防衛相はテレビでチラッと「軍法会議がないから、こうやって隠そう隠そうとすることになる」というような発言をしたそうですね。誰もこの重大発言に注目しなかったと怒っておられるブログを2、3見ましたが、防衛相がこんなことをテレビなどで大っぴらに、しかもあんな大事故の直後に言えるのはなぜなのか。佐藤氏の言動を見ても、彼らの間ではもはや秘密にしなければならないほどのことでもないのではないかと疑いたくなります。「現行憲法の条項には一切、改変を加えてはならない」という見解はどこへ行ったのか。佐藤氏が見事なほどのダブルスタンダードの遣い手であることは間違いないでしょう。

(junkoさんのコメント=適宜改行を追加しました)


当ブログは以前にもjunkoさんのコメントを紹介したのだが、その時と同様、これはコメント欄に置いておくのはあまりにもったいないコメントだ。リベラル・左派をたぶらかす右翼論客・佐藤優の手口がわかりやすく書かれている。

CrowClawさんは、佐藤優現象にからめて城内実を批判している。これを紹介する。

はじめまして。

新しいエントリーへのコメントでも書きましたが(http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.m-kiuchi.com/2008/11/21/misogiharahe15710/)、あのエントリーが差別なのは、彼が(おそらく意図的に)観念としての「人種」と目の前の人間を混同して扱っているからです。例えどんなに悪辣な中国人が目の前にいたとしても、それが観念としての「中国人」を悪辣だと言える根拠にはならないように、観念としての「左翼」や「反日主義者」と、一人の右翼(城内氏)への批判者を混同することはできません。が、新しいエントリーで彼がやっていることはまさにその通りの行為でしょう(彼の言い方を用いるなら「レッテル張り」です)。

このように集団的な観念(国家もですが)ばかりが増幅され、社会が一人一人の人間の顔を見ようとしなくなったとき、ファシズムのような動きが活発化するのだと思います。

もちろん、こうした「レッテル張り」は右派に限った行動ではありませんから、kojitakenさんの仰られる通り、本当に危険なのは左派にすら肯定されるファシストが出てきてしまったときだと思います(金光翔氏は「佐藤優現象」をそのような動きの準備段階とみていますが、佐藤や城内程度の人物では(幸いなことに)真のファッショの担い手とはなり得ないでしょうね)。

あと、エントリー中で麻生の支持者について書かれていますが、kojitakenさんの言われるような「騙される人」は、別に愚かだから騙されているのではなくて、騙されたいから騙されているのではないでしょうか。私は性格が悪いので、そういうものに「騙される」人を「本当は無垢なのだ」とは思いません。むしろ、「騙される」人々の内面の悪辣さこそが、彼らをそのような行動に駆り立てているのではないかと思います。

よろしければ、toledさんの以下のエントリーなども参考になさってください(もう読まれているかもしれませんが)。
http://d.hatena.ne.jp/toled/20070726/1185459828

(CrowClawさんのコメント=適宜改行を追加しました)


コメント末尾でご紹介のエントリは未読だった。とても興味深いエントリのご紹介を感謝する。長いのでまだ全文は読めていないが、「はてなブックマーク」をつけておいたので、あとでゆっくり読みたいと考えている。

最後に、当ブログのエントリを読んで城内実に対する認識を新たにしてくださったブログ『てあとる☆北極』の管理人さん、もとい支配人さんのコメントを紹介する。

kojitakenさん、改めてお久です♪

うちにコメを入れて下さった時点では、私自身城内実氏について判断しかねる状態だったのですが、ご紹介して下さったエントリを読んだ時点で貴方が城内氏に辛辣な評価をなさる理由が良く判りました。

今日び、ネトウヨに阿るなど言語道断、正直、故・いかりや長助氏の定番フレーズ・「駄目だこりゃぁ」としか言いようがありませんね。

(てあとる☆北極の支配人さんのコメント)


当ブログでは、このところせっかくいただいたコメントにもほとんど答えることができずにいるが、このように時々コメントをエントリ本文で紹介することによって、せめてもの罪滅ぼしをしたいと考えている。


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こんにちは、KOJIさん。
>toledさんの以下のエントリーなども参考に[CrowClawさんのコメント]
http://d.hatena.ne.jp/toled/20070726/1185459828
これは非常に重要な内容含むブログの紹介ですね。さーと斜め読みしただけですけど、
「嘘で固めて! 汚いことには関知したくない。表層的に『悪事』を批判はするけど、
それを生み出す構造に加担していることを深く掘り下げることは他人任せで、自分だけ
平穏に暮らしたい」という世情。
これに対する反動としてファシズム現象[或いは非常時の独裁権力の発生]を捉えようとする、
真摯な考察やと思います。
ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』で出てくる『大審問官』のエピソードや、
福沢諭吉の『やせ我慢論』を、想い起こさせる話で、
古くて、しかも何度も歴史上新し苦、議論しなおされる問題。

「彼ら「歴史修正主義]の非論理性を暴露するだけでは、無力」
なぜなら彼らは「嘘で固めて欲しい世情」に迎合することをその養分としており、
その意味で確信犯的扇動者だから。

2008.11.26 13:03 URL | 三介 #CRE.7pXc [ 編集 ]

kojitakenさん
久しぶりです。
今回のエントリーで、自らの「肯定的な評価」を否定できるkojitakenさんには感心しています。
それにしても「本当に危険なのは左派にすら肯定されるファシストが出てきてしまったとき」にはドキッとさせられました。
少なくても、世に出るためもしくは過去を清算するために『○×のフリ』をする輩は評論家には多いと思っています。
ジックリ見極めないといけませんね。

2008.11.26 13:10 URL | morichan #AU6tPF8Q [ 編集 ]

昨日は、本文でわざわざ拙コメントをとりあげていただき、ありがとうございました。恐縮しています。

アパの元谷外志雄著『報道されない近現代史』を読んでみました。
283ページの長文です。どこかで内容について田母神論文との共通点が指摘されていたと思いますが、そのとおりです。それでも、こちらは情報量が多く、文章もはるかに洗練されていてすらすらと読めますし、また主張の論拠とか検証とか面倒なこと、小難しいことは著者にとって問題にならないようですので、大変勇ましくて、読めばスパイ小説のようにおもしろく感じる人もいるかもしれません。重要なのは、副題に「戦後歴史は核を廻る鬩ぎ合い」とあるように、この本の主題は日本における「核保有の必要性」の主張であるということです。
目についた文章をいくつか引用しておきます。

>日本はこれからの情勢に備えて現在の憲法を廃止して独立自衛の出来る新憲法を作り、現在の日米安保条約を対等で平等互恵の新しい日米安保に改正するとともに、戦争抑止のための攻撃力を装備し集団的自衛権の行使の権利も当然認めなければいけない。

>今や日本はロシア、中国、そして北朝鮮という核保有国に包囲されてしまった。この東アジアの安定のためには、それらの国が核を破棄しない以上(そんなことはあり得ない)、日本の核武装が必要である。今の日本ではそれが現実的でないというのなら、一歩引いて、ニュークリア・シェアリングが望ましいと私は強く主張する。

>米下院は戦争中の従軍慰安婦問題を巡って、日本政府に公式の謝罪を求める決議をした。この問題は、1993年に河野洋平官房長官が旧日本軍の関与を認めるという事実ではない見解を発表したことがアダとなって一人歩きしていることは、国内の良識ある人は知っている。

>私も(略)、日米戦争を仕組んだのはアメリカだという確信を持っていたが、それを物的証拠と証言によって裏付けてくれた、「真珠湾の真実-ルーズベルト欺瞞の日々」(ロバート・B・スティネット著)には、我が意を得ると同時に、その綿密で周到な組み立てに圧倒された。

>真珠湾攻撃はハル・ノートによって暴発させられたものだが、これはやはりソ連の作為戦争謀略だったことが証明されたのである。(最近公開された米陸軍電信傍受機関のソ連暗号解読資料によって)

このくらいにしておきますが、本をひらくとまず6ページにわたってずらずらとカラー写真が出てきて、これにはちょっと面くらいました。米国のアーミテージ、韓国の金泳三、台湾の李登輝、森元総理など国内外の著名人と一緒の写真、またF-15戦闘機に搭乗しひとりVサインをしている写真も掲載されています。

2008.11.27 21:29 URL | junko #- [ 編集 ]

自分のツイッターで以下の通りコメントしました。

http://twitter.com/#!/shoichinakata

"彼らの「佐藤優現象」というやつだが、本質は社会民主主義の内部矛盾による自壊である。だから、佐藤氏や渦中にいる他の人々をたたいて何の意味もない。"

お知らせまで。


2011.06.05 15:23 URL | ゆる虎 #JkMvrjgc [ 編集 ]













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