きまぐれな日々

耐震偽装企業・アパの懸賞論文に前航空幕僚長・田母神俊雄が応募して日本の侵略を正当化する論文を発表して最優秀賞を獲得したあげくに更迭された問題は、周辺から信じられないような事実が次々と明るみに出て、あまりの惨状に呆れ返る毎日だ。

最初に、アパの会長・元谷外志雄は、安倍晋三の非公式後援会「安晋会」の副会長であって、アパの耐震偽装が新聞で報じられるずっと前から「週刊ポスト」の記事(2006年9月29日号)や「きっこの日記」を通じたイーホームズ社長・藤田東吾の告発によって同社のホテルの耐震偽装疑惑が伝えられ、ネットでは安倍晋三に「アパ壷三」というあだ名がついていたことを思い出しておこう。また、アパの本社は石川県金沢市にあり、ここは言わずとしれた森喜朗のお膝元である。ヒューザーの耐震偽装事件が騒がれた時、なぜアパはオトガメなしで放っておかれたか、その理由はおおよそ見当がつくだろう。

そのアパが募集した懸賞論文だが、審査委員長が優生思想の持ち主である渡部昇一であることは、2008年11月5日付エントリにも書いた。

同じエントリで、田母神の「論文」のひどさをさんざんあげつらったが、ひどい「論文」は何も田母神のものだけに限らない。この懸賞論文で「佳作」に入選した、「諸橋茂一」という村山富市と河野洋平を提訴したことのある会社役員が書いた論文には、冒頭に「捏造」として知られる「アインシュタインの予言」が出てきてぶっ飛ぶ。「論文」とやらの内容ももちろんトンデモだし、田母神の「論文」と同様、章節立てもなく、体裁が整っていないひどいものだが、そもそも冒頭に「アインシュタインの予言」が出てきた時点でアウトだろう。こんな駄文を、『知的生活の方法』なる題名の著書のある渡部昇一大先生が「佳作」にお選び遊ばされたのである。なお、「アインシュタインの予言」は日本会議のドン・平沼赳夫も信じていたことをつけ加えておこう。

さらに6日、この懸賞論文には、航空自衛艦78人が応募していたと防衛省が発表した。朝日新聞の報道によると、

空自小松基地(石川県小松市)の第6航空団が、田母神氏が応募した懸賞論文と同じテーマ「真の近現代史観」で幹部隊員に論文指導をしていた

とのことである。田母神自身、98年から99年に小松基地トップの司令を務めていたそうだ。またしても石川県である。どうしても森喜朗の顔がちらついて仕方がない。前記朝日の記事によると、

 元谷氏は小松市出身で「小松基地金沢友の会」会長。田母神氏は第6航空団司令の時に知り合ったとされる。

とのことだが、「論文」と称した文章で無知蒙昧、無教養を露呈した無能に違いない田母神が、なぜ航空幕僚長にまでのし上がることができたのか、おぼろげながら想像がつき始めた。ここにも「癒着構造」があるのではないか。そして、この件は一大疑獄事件に発展する可能性を秘めているのではないか。そんな想像もしたくなる。

朝日の記事に戻ると、

 懸賞論文は、ホテルチェーンなどを展開するアパグループの主催。グループ代表の元谷外志雄氏の著書「報道されない近現代史」の出版を記念して創設された。本は「鬱積(うっせき)する愛国、憂国の思いを、半ば書き下ろした」と書き、懸賞は「独自の近現代史観で日本の活性化に役立つ論文を」と呼びかけた。

とあるが、アパのサイトにもこの本が宣伝されている。それを見て私は驚いた。
http://www.apa.co.jp/outline/outline07.html

昨夜、メモ代わりに使っている裏ブログ『kojitakenの日記』にも記録しておいたが、なんとあの佐藤優が推薦文を寄せているのである。

元谷の著書にアパがつけた宣伝文句には、「陰謀渦巻く世界の真の姿がここにある」と謳われており、元谷の陰謀史観に基づいて書かれたトンデモ本であることは本を読まずとも明らかなのだが、これをなんと佐藤優は、

異能の実業家、元谷外志雄氏が描くグローバリセージョン後の帝国主義的国家対立の姿に戦慄した。

と絶賛しているのである。

佐藤優というと、以前は私もその論考を面白く思い、何度か好意的に取り上げたことがあるのだが、その後認識を改めた。佐藤の正体を知るうえで、『多文化・多民族・多国籍社会で「人として」』のエントリ「脱「植民地主義」という鍵(その2)?「〈佐藤優現象〉批判」を読んで」が大いに参考になる。
http://ukiuki.way-nifty.com/hr/2008/01/post_c7ee.html

佐藤は、『正論』と『世界』の両方に論文を発表することで知られており、「左右共闘」を主張する人たちから神のように崇め奉られている。たとえば、城内実を熱心に支援しているブログがあるが、当然のごとく佐藤優も絶賛している。

私は一昨年末ごろだったと思うが、「週刊現代」に佐藤が安倍晋三を持ち上げる文章を書いているのを読んだことがあり、それが佐藤に疑問を持った最初のきっかけであった。しかし、その後魚住昭との共著で朝日新聞社から発行された『ナショナリズムという迷宮』(2006年)は結構面白かったので、当ブログで好意的な書評を書いたことがあった。

佐藤は、論文を掲載する媒体や議論の相手によって議論を巧みに使い分けるテクニックを持っており、それにころっとダマされてしまうわけだ。もちろん、私自身も例外ではなかった。そして、間違いなく政官業癒着企業であり、安倍晋三や森喜朗らと癒着していると想像される極右思想の持ち主・元谷外志雄が書いたトンデモ本を絶賛するところに、佐藤優という男の本質がある。「優しくなければファシズムではない」というのは他ならぬ佐藤優の指摘だが、その佐藤の名前が「優」であることは、実に面白い偶然の符合である。

『kojitakenの日記』にも書いたが、いいかげんにリベラル・左派の人間は「佐藤優現象」に真剣に向き合う必要があると思う今日この頃である。


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エントリーの趣旨には、まったく賛同するのですが、一点だけ。

>アパの本社は石川県金沢市にあり、ここは言わずとしれた森喜朗のお膝元である。

石川県金沢市は石川1区で、森喜朗は石川2区選出です。

恐縮です。
石川県出身者として、森喜朗にもアパにも、苦々しい思いを抱いている者として、「いや、うちの地元は違うんや」と無駄な抵抗をしてみました。

2008.11.07 13:12 URL | kogo #- [ 編集 ]

> 佐藤は、『正論』と『世界』の両方に論文を発表することで知られており、「左右共闘」を主張する人たちから神のように崇め奉られている。たとえば、城内実を熱心に支援しているブログがあるが、当然のごとく佐藤優も絶賛している。

できれば、その「ブログ」にリンクを張ってください(笑)。

2008.11.07 14:42 URL | 喜八 #WE/hy34. [ 編集 ]

想像はしていましたが、かつての皇軍を支配した思想は、敗戦後60年以上が経過した現在でも、自衛隊(=日本軍)の中に生き続けているのですね。


自衛隊の最高幹部が憲法と異なる見解を持っているということは、隣国との緊張状態が続いた場合、第2、第3の河本大作や石原莞爾が登場するかも知れないということです。彼らは大日本帝国憲法下の、天皇の統帥権に背いて暴走しました。自衛隊内にも、同類の人物がいるかも知れませんね。

2008.11.07 20:00 URL | ポンポ・ナイナイ #- [ 編集 ]

http://www.business-i.jp/news/sato-page/rasputin/200803260010o.nwc
で、佐藤優の「南朝精神に帰れ」を読んで、呆れたのを思いだしました。
後醍醐は自分の欲望のみに忠実な人で、中国的な専制体制を目指しており、それが日本で破綻したのは、当然でした。
また、佐藤は大塔宮の墓に詣でたのですが、大塔宮は失脚後、後醍醐の命により、足利尊氏に幽閉されました。これは煮るなり焼くなりしていいと同じ意味で、後醍醐に殺されたも同然です。

2008.11.07 21:28 URL | #- [ 編集 ]

夕方のニュースは、30年前に朝鮮(「北朝鮮」と言う呼称は、極めて不当です。日本を「倭国」と呼ぶようなものです。)に拉致されたと思われていわゆる「特定失踪者」に挙げられていた人から、訪朝した人に、友人に向けて伝言があったことを一斉に報じていました。


政治が混迷し、自民党の支持率も低下し、次期総選挙も敗北が予想される中、再度「拉致問題」キャンペーンで民族差別排外主義を煽り、それをテコとして政権の浮上を図ろうとする意志がミエミエです。ハッキリ断言します!日本政府に拉致問題を解決する意志はありません。解決せずに、政治的に利用する方が得策だと考えています。


外国人が徹底的に監視されるあの国で、自分の意志で電話で外国人に伝言なんか出来るのか疑問です。電話の横で誰かに監視されていた可能性があります。考えられるとしたら、朝鮮政府が日本政府に何らかの隠れたメッセージを伝えたかったのかも知れません。

2008.11.08 00:09 URL | ポンポ・ナイナイ #- [ 編集 ]

保守ってる男性達って私達女性から見ると視野が狭くて発展性に乏しい上に時勢に逆行していて魅力が無い感じがしますよぉ。まず知り合いにはなりたくないタイプですよぉ。普通の女性達は保守ってる男性達をアキバ系オタクを見るような感じで見ているのでぇキモがられて保守が廃れていくのは当然のことだと思いますよぉ。

2008.11.08 15:18 URL | LL #KfMO8t.E [ 編集 ]

田母神をめぐっては、連日驚くことばかりですね。

佐藤優のことは判断しかねていましたが、これでアウトです。

元谷外志雄氏の著書「報道されない近現代史」に、「日本図書館協会選定図書」なんて書いてあるではありませんか?もしかして、この日本図書館協会というのも右翼団体ですか?調べてきます。

2008.11.08 18:34 URL | 非戦 #tRWV4pAU [ 編集 ]

わたしのページ、『アインシュタインの予言』にリンク、ありがとうございます。
いつもそうだけど、今回はとくに、アクセスが多くなっています。

>http://www.apa.co.jp/outline/outline07.html

佐藤優氏の写真が出てますね。

信奉者が増えるのは、彼には人を魅了するふしぎなものがあるらしいので、
外見からして、さぞかしダンディなのかと思ったら...
そういうわけではないのね。(失礼!)

2008.11.08 23:07 URL | たんぽぽ #ZiqE0vWU [ 編集 ]

記事のご紹介ありがとうございます。
うちも今回、前にご紹介いただいたときをはるかに超えるアクセスが来ています。はてなの日記の方からもかなりあって、サイドに表示している過去4ヶ月のアクセスランキングでも、1月の記事が再びランクインしてきました。

さすがにアパがらみで、「佐藤優、やっぱアパんなあ」と思った読者が多かったのでしょうか。
私も田母神作文のおかげで、気づかなかったことに色々目が行くようになった気がしています。

2008.11.09 19:31 URL | 仲@ukiuki #z/AVyrZM [ 編集 ]

いかに佐藤が政権や外務省を批判していようとも、保守派が持ち上げるのはまだ納得がいくが、左派が現政権批判という一点において一致するからと言って国家主義者にして天皇主義者の佐藤優を持ち上げてきたのはまことに情けない。このあたりの矛盾を小谷野敦のような人が執拗に批判しているが、まったく答えないようだ。そして柄谷行人などとも対談するに及び、佐藤の権威は高まるばかり。

もっとも要するに現政権への批判ならなんでも利用してしまえという程に弱り切ったのが今の左派系なのでしょう。さる有名ブログでは麻生の秋葉原演説を批判しながら、民主党幹部夫人の割烹着パフォーマンスを延々と大絶賛しているのを見て、なんだか背筋が寒くなる思いだったものです。どっちもどっちでしょう。おなじ人ははてなのkojitakenさんブログのコメント欄で、小沢のアフガン派遣を一生懸命擁護していたので、さもありなんと思ったのですが。

佐藤はある意味では政界のみならず言論界にも存在するねじれ状況を体現しているのでしょう。このまま政権交代しますと民主党の不一致ぶりからして、どこが勝っても再編必至であって、その過程で一気に右に揺れる可能性すらあるように思われます。平岡秀夫氏のような「リベラルの会」は勢力としては弱いですし・・・。個人的にはきっちり議論をした上で民主党が政権を担うべきだと思うのですが・・・。今では行革やアフガン派兵を持ち出したとたんに割れてしまうでしょう。

2008.11.09 19:44 URL | にだりんこ #- [ 編集 ]

こんばんは、KOJIさん。
佐藤氏に[以外にも少し]関してこんな記事があったので、ご紹介。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/eed72c37e5abe4dabdcdbfa4f7901e08

2008.11.10 00:02 URL | 三介 #CRE.7pXc [ 編集 ]

kojitakenさん、三介さん、
私はすっかり忘れていた営業面の話(汗)ですが、
kojitakenさんの記事を受けて、金光翔さんも最新記事で分析・推察していますね。
「辺見庸の警告と<佐藤優現象>の2つの側面」
http://watashinim.exblog.jp/8890526/

2008.11.10 22:37 URL | 仲@ukiuki #z/AVyrZM [ 編集 ]

このコメントは管理者の承認待ちです

2010.09.10 19:34  | # [ 編集 ]













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