きまぐれな日々

NYダウはまた大きく値を下げていて、7日の終値は9500ドルも割り込んだ。7日の日経平均は一時1万円割れしたあと1万円を回復して踏みとどまったが、今日(8日)はダメかもしれない。

私は経済学は素人だから、ブログでは反新自由主義と言っているけれども、本当は何が正しいのかと、最近買った新書を読んだり、10年前のアジア金融危機(1997年)からITバブル崩壊(2001年)の頃までに買った新書の類をパラパラと読み返したり、ネットでいろいろ調べたりしている。本当は経済学を一から勉強すべきなのかもしれないが、時間もないし、経済学というのは素人から見ると全く立場の異なる学派が神学論争をしているようにしか見えない。

それでも私は、調べたり、いろいろ考えをめぐらせる時には、社民主義が正しくて、ニュークラシカル(新古典派)は間違っているという先入観は捨てることにしている。そうでなければ思考が硬直してしまう。

ただ一つ私が重視していることは、現実にどういう結果が起きているかということだ。バブルが弾けるたびに、生身の人間が犠牲になる。90年代初頭のバブル破裂はその後10年以上も尾を引いたし、そんな不況下で局所的に生成したITバブル破裂の局面では、私自身も好ましくない余波を蒙った。コイズミ総理就任前年の2000年には悪平等とも言われた日本の社会が、コイズミ政権最後の年の2006年にはOECDから「日本は異様な格差社会になっている」という経済審査報告書を受けた。ついこの間まで戦後最長の景気拡大が続いているとされていたが、民間給与所得は9年連続で減少している。そして、地方経済は壊滅的なまでに悪化し、それが昨年の参院選における自民党大敗につながった。

政治は結果がすべてである。ニュークラシカルの学者たちは、自己完結した理論体系の構築に熱心で、経済の実態が理論に合わない場合、「それは市場が完全でないせいだ」などと言いたがるとも聞く。だが、現実の社会に生きている人間にとっては、それは経済理論のモデルが現実と合っていないせいなのだ。モデルが棄却した部分は、実際には無視してはならないファクターだったのだ。だから、精緻な金融工学に基づいてリスクが分散されたはずなのに、サブプライムローンの破綻をきっかけに金融危機が起きてしまう。これは、現実の社会に生きている人間にとっては、理論の敗北にほかならないのである。

先日は、日本ではいまだに「小さな政府」という言葉が良い意味に用いられていると知って愕然とした。米大統領選でこのままオバマの優勢が続くかはわからないが(続いてほしいものだが)、バラク・オバマが勝てば、アメリカの経済政策において、約30年ぶりに「大きな政府」が復権するとされている。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20080414/153028/

神野直彦・東京大学大学院教授は、横路孝弘(民主党)との2006年の「新春対談」で、「小さな政府とか大きな政府というのは、機能で判断するというのが財政の上で常識です」と語っている。
http://www.yokomichi.com/taidansyu.folder/2006.01.01sinsyuntaidan_yokomichi_vs_jinno.pdf

だから、よく言われる「無駄を削って小さな政府に」というのは、非常に誤解を招きやすい表現だ。私などは「小さな政府」と聞くと条件反射的に「新自由主義」を思い浮かべる。「小さな政府」という言葉にポジティブな意味合いを持たせる風潮には、いい加減ストップをかける必要があると考えている。

とはいえ、「ムダを省く」こと自体には私自身も異存はないし、その点では竹中平蔵のブレーンだった高橋洋一の言う「埋蔵金」を一時的な財源にする、という主張も納得できる。一説によると、東大の数学科卒業の高橋氏は、高度な数学を駆使して理論を構築していて、日本の経済学者の大部分には理解できないそうだが、だからといってそれをもって竹中一派の主張が正しいということにはならない。大事なのは、あくまで現実の社会に生きる人間を幸福にできるかということであり、その点で、コイズミや竹中平蔵は明らかに失敗したのである。

ただ、東京新聞の長谷川幸洋が主張した、高橋洋一らに影響された自民党の「上げ潮派」と民主党に親和性があるという主張には、ようやく少し合点がいくようになった。民主党は、「ムダを省く」とは主張しているけれども、その先のビジョンまで示していないからである。果たして、バラク・オバマ同様「大きな政府」への政策転換をするのか、それさえ明らかではない。「国民の生活が第一」を実現するためには、「大きな政府」を目指さなければならないはずだが、いろいろ調べてみると、まだまだ民主党には「小さな政府」という言葉をポジティブに用いている人が多いことがわかる。党として「大きな政府を目指す」ことを打ち出して初めて、自民党の「上げ潮派」と民主党の進む道が分かれる。「ムダを省く」ところまでは両者は共通していて、だから高橋洋一に影響を受けて、行動をともにしてきたジャーナリストである長谷川幸洋に「親和性がある」などと書かれるのだ。小池百合子あたりは、そう遠くないうちに自民党を離れて、民主党の長妻昭あたりにすり寄ってくるのではないかと、私には思われる。

とはいえ、いつになるかわからない選挙をにらんだ場合、財源について追及されることが必至の「大きな政府」路線は、現実問題としては打ち出せない。そのことは私も理解している。だが、いつまでも、手を変え品を変え「真の改革」などといって正体を覆い隠し、国民を騙そうとする新自由主義者たちにやられ続けるのではたまったものではない。

以上書いたようなことばかり考え続けていたら、すっかり疲れてしまった。そんな中、素粒子理論で成果をあげた日本の3人の研究者、南部陽一郎、小林誠、益川敏英の3氏がノーベル物理学賞を受賞したというニュースに接し、久々に明るい気持ちになった。南部氏は、シカゴ大名誉教授とのことで、シカゴ大というと新自由主義の理論的支柱である経済学の「シカゴ学派」を思い出すが、もちろん正統性のないノーベル経済学賞(ノーベルの曾孫らは経済学賞の廃止を訴えている)と違って、ノーベル物理学賞は誇るべき賞だ。ノーベル物理学賞を受賞した日本人は、これで7人になる(経済学賞はゼロ)。これは素直に喜びたい。


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私は、現代の新自由主義政権の先駆けとして、1980年代の中曽根政権を検証してみる必要があると考えます。

ご承知の通り中曽根康弘は1982年から87年の5年間にかけて、総理大臣のポストにありました。彼は同時代のアメリカのレーガン、イギリスのサッチャーと、「小さな政府」を目指し、いわゆる「臨調ー行革」路線を進め、また国鉄や専売公社、電電公社の分割民営化を進めて来ました。これらは現在の「構造改革」と同質の政策といえます。特に国鉄、専売公社、電電公社の分割民営化は、小泉政権の郵政民営化のモデルかと思うくらいです。

経済面では、空前のいわゆるバブル経済を煽り、それは土地価格の異常な高騰を招きました。対外的にはアメリカの共和党政権のレーガンに追随し「日米同盟」の強化に務め、「不沈空母」発言を行うなど、右翼的性格を帯びた政権でした。日本とアメリカの二国間関係が「日米同盟」などと呼称されだしたのは、中曽根政権からではないでしょうか?それ以前は「日米安保体制」と呼ばれていたように覚えています。

敗戦後の63年間には、あらゆる価値観の大きな転換点が2つあったように思います。一つは1970年代の田中政権時代、もう一つは21世紀の小泉政権時代です。前者は戦前から活躍した「明治」生まれの世代が、ほぼ第1線を引退し、「昭和」生まれが社会の中心に現れ、敗戦後の価値観も広く行き渡った時代の境目であり、後者は戦後の価値観が崩れ去り、新しい価値観や人間関係の萌芽がみられた時代だと考えます。しかし、小泉政権時代の価値観の変化の先駆けとして、中曽根政権の果たした(否定的な意味で、です。)役割について今こそ検証すべきと思います。

2008.10.08 16:12 URL | ポンポ・ナイナイ #- [ 編集 ]

まんず私は、近江商人の「三方良し」の精神が好きだがね。
金儲けを目的にしちゃあべ、世の中暗ろうなるべ。
みなが豊かに幸せに仲良う暮らせる世をみなで力合わしっこしながら築いていくことこだんべ。
それこそが大切な目標だんべ。

2008.10.08 19:25 URL | 與左衛門 #sSHoJftA [ 編集 ]

ノーベル賞の受賞者を見るとまさに「長生きも芸のうち」ですね。諸氏の業績を軽んじるのではないですが、つくづく坂田昌一博士の早世が悔やまれます。もっとも坂田博士は平和運動にも熱心でしたから、日本政府が手を回して妨害したのかも。まさかと思いますが、手を回してニセ平和主義者の佐藤栄作に平和賞を取らせた実績がありますから。

2008.10.08 21:32 URL | jsds001 #wm5n2XIM [ 編集 ]

話を蒸し返すようで恐縮ですが、東国原英雄は、いまだに衆議院議員への野心を捨てきれていないようですね。まだまだ未練たっぷりだと見ました。そこを狙って自民党からも、アプローチが続いているようです。

解散総選挙の時期が遅くなればなるほど、叛意する可能性が高くなってくると思います。前言を翻すくらい彼は平気でしょうから。

今日の東京株式市場、持ち直すか、更に下げるか注目です。だが、明らかに景気は下降線です。あのイオンですら、60店舗を閉店予定だといいますから。

2008.10.09 07:07 URL | ポンポ・ナイナイ #- [ 編集 ]

みんな疑心暗鬼になっている現在、効果的な対策は公共投資しかありませんね。つまりちゃんとお金を払ってくれると云う信用があるところが発注を出さない限り、実体経済は立ち直って行かないような気がしております。実体経済がしっかりしてくれば、金融の貸し渋りも収束してくることでしょう。その意味でも政府の役割は大切なのです。
社会には眼が向かわない拝金主義でエゴの塊でもある駄目利加金融資本主義やその手先の上げ潮派は、小さな政府を標榜していましたが、現実の実体経済のことぜんぜん分かっていないと思いますよ。それから日本の場合、今は高速道路を無料にして、ガソリン税のほうも一般財源化なんかしないで、その分思い切りガソリン価格を引き下げれば、かなりの経済効果が広い分野にわたって速攻で効いて来ますよ。
本当にこの国のリーダー達はおばかです。今の世界的な金融危機の深刻さが全然認識できていないと思います。

2008.10.09 23:46 URL | ♭& #sSHoJftA [ 編集 ]













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どうしようもないK国~part4「底抜けてんやわんや」
もう一つの経済危機を追う。

2008.10.08 23:18 | 無名天地