これは、コイズミが引退するとともに、次男の進次郎氏を後継者にすると報じられたためだ。「小泉進次郎」の検索語でネット検索しても、当ブログは引っかからないが、「宮本佳代子, 宮本佳長と小泉純一郎」というタイトルの記事が引っかかる。そして、「宮本佳代子」を検索語にしてGoogle検索すると、当ブログが2番目に引っかかるのだ。
前記の当ブログのエントリは、佐野眞一氏の著書『小泉純一郎―血脈の王朝』(文藝春秋、2004年)を紹介したものだ。コイズミが後継を次男に託そうとするから、コイズミの家系が改めて注目されることになり、こういう記事が再発掘されるのである。どこが「頑張った者が報われる社会」なのだろうか。同じ新自由主義者でも、前原誠司が言うならわかるが、自ら三世政治家にして、四世を国会に送り出そうとしているコイズミが、「頑張った者が報われる社会にする」とか「国民にも痛みを我慢してほしい」などと言った言葉を、どうして日本国民は信用してしまったのか。2001年から2006年、いやそれに続くコイズミ直系の安倍内閣の終わった2007年までの6年間は、日本社会を奈落の底に突き落とす過程だった。そこから立ち直るには、15年ないし20年の月日が必要なのではないかと私などは考えている。
朝日新聞は、「小泉改革 光と影残し」などという見出しをつけた記事で、あたかもコイズミ時代の企業業績の回復がコイズミの政策のおかげであるかのように書いているが、これはとんでもない誤りで、当ブログが繰り返し指摘しているように、企業業績の回復は、90年代後半の各企業の身を削るリストラによるものだ。その効果がコイズミ時代にようやく現れたに過ぎない。コイズミ自身は、当初緊縮財政路線によってむしろ景気を冷やした。
そして、すさまじいばかりの格差の拡大と貧困に面する人々の増大は、むろん「コイズミカイカク」のなせるわざである。コイズミ内閣の頃、自民党と民主党は「カイカク」の先鋭さを競っていたが、その結果、2005年の郵政総選挙で自民党が圧勝した。岡田克也では「カイカク」が不十分として、民主党は代表選の結果、コイズミよりさらに先鋭的な新自由主義路線をとる前原誠司を代表に選出したが、この頃が日本の新自由主義時代のピークだった。その後すぐに耐震強度偽装事件、ライブドア事件など、新自由主義のひずみが現れた事件が連続して起き、民主党の前原体制はライブドア事件での追及を誤り(「偽メール事件」)、わずか半年あまりで退陣を余儀なくされた。そして、後任の小沢一郎は民主党の政策を転換し、「反カイカク」路線をとって、2007年の参院選では民主党が圧勝、自民党は惨敗した。安倍内閣は倒れ、福田内閣、同改造内閣、麻生内閣と、「カイカク」色はどんどん後退していった。
それでも、コイズミ退任後からもずっと、コイズミ再登板待望論は「カイカク」派の間で根強くあった。「偽装CHANGE勢力の反攻」説はその代表的なもので、コイズミ、中川秀直、小池百合子らが党を割って出て、それに前原誠司率いる民主党一派が合流して「カイカク」勢力が自民党、民主党に対抗する第三の保守勢力として立ち上がるというものだ。
私はこれはナンセンスだ、こんなことは起こり得ないとずっと批判してきたのだが、どうやら正しかったようだ。次なる新自由主義の脅威は、むしろ次の政権への新自由主義の浸透にあると私は考えている。「偽装CHANGE勢力の脅威」の議論が蔓延した背景には、右派内の「経済右派」(新自由主義者。いわゆるネオリベ)と「政治思想右派」(新保守主義者。いわゆるネオコン)の確執があり、私からすればネオリベとネオコンは不可分の関係にあって、単にどちらの要素が強いかだけの話だと思うのだが、「政治思想右派」が「経済右派」を攻撃する狙いがあったのだろうと考えている。
しかし、麻生太郎内閣が発足し、この内閣は「経済右派」色を福田内閣よりも抑えるかわりに、「政治思想右派」色を強めた内閣だ。だから、もともと先に「改革クラブ」を立ち上げておいてあとから「平沼新党」を立ち上げ、総選挙後に両者を合流させようと考えていた平沼赳夫も、自民党復党へのバリアが下がったと判断して、改革クラブだけはとりあえず西村眞吾を加えて政党の形にしておき、平沼新党自体の結成は取り止めたものだろう。改革クラブは、首班指名では「麻生太郎」と書いた。そもそも平沼赳夫自身、郵政総選挙後の首班指名で「小泉純一郎」と書いた腰抜けだということを指摘しておこう。改革クラブも平沼赳夫も城内実も、すべて自民党側の政治勢力であると考えなければならない。
「カイカク」の終わりを論じるつもりが、ついいつものクセが出て極右政治家批判になってしまったが、いまや自民党は旧来自民党から右翼色を強めた政党になり、民主党は建前上は「国民の生活が第一」を標榜する政党になった。つい三年前、両政党とも新自由主義の先鋭性を競っていたのが嘘のようだが、もうこれ以上日本の社会をぶっ壊すことは許されない。「カイカク」の時代は終わった。新自由主義者たちには、しばらくおとなしくしてもらうしかない。
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>民主党は建前上は「国民の生活が第一」を標榜する政党になった。
政局上有利だから、そういってるだけですね小沢氏はアフガンに自衛隊を送るつもりでしょう。それがわかっていても小選挙区では民主党へ一票を投じなければならないとは・・・
ブログ主さんこの点についてどう思われます。
2008.09.26 18:21 URL | バク #- [ 編集 ]
バグさんの御指摘の点は、確かに民主党政権の不安な点のひとつだと思います。
私は、民主党政権への過大な期待は禁物だと思います。
政治によって、劇的な変化を求めることは、我々の生活がより悪くなる可能性を秘めているからです。
自民党政権よりもよりマシな政策を実現したら、次も政権も任せるくらいでちょうど良いのではないでしょうか…?
小沢代表が小泉改革を完全否定するなら、(次期総選挙は)神奈川11区から出馬して欲しいと思います。小泉氏が引退することを考慮しても、彼しか勝てないと思います。
2008.09.26 19:04 URL | 葉隠 #CRmGiUQU [ 編集 ]
>バクさん
ブログ主さんはあまい細かい政策の話はご存じないから…。景気回復の主要因はむしろ小泉時代の金融緩和と円安誘導で製造業が復活したことであって、それが家計に反映されないことを問題にすべきでしょ…。しかも企業収益の回復につながるリストラも、非正規雇用の増加も一貫して90年代後半から行われていたものであって、恣意的に因果関係を粗雑に結びつけすぎ。
小沢路線についてですが、このブログ主に限らないけど、福田政権になってから左翼系は迷走しまくってるんだよね。経済政策や外交で、かなり正面から改革路線の修正に取り組んだのに、それを見抜けず支持もできなかった。(外交も民主党にはあれだけドラスティックに東アジア重視路線を取るインセンティヴはなかったでしょう)
で、小沢民主党を支持しちゃう滑稽さ。小沢が政権を取ったときに、本当に格差是正、生活第一なんてことをやると思う?もともと政治改革と国際貢献を旗印に自民党を出た小沢、経済政策では小泉以上に自立した個人というものを想定していることが、「日本改造計画」という優れた本を読めばわかる。「改革」という点では今の自民党よりもはるかに急進的なのです。小沢と麻生の対決というのは、15年前の保守派から見れば夢のようなもの。そして左派勢力がしっかり片方に肩入れしている。今一番喜んでいるのは、新進党以来の小沢支持者で、おめでたいのはリベラルの小沢支持者でしょう。
そのあたりを割りと正確に認識しているのが最近のnikkeiBPに載った渡辺治氏のインタビューで、民主党が昨年の参院選で上げた旗印を降ろさないままここまで来てしまったことの困難を指摘している。だからこのブログみたいにだまされる人が出てくるわけ。アフガンについてのコメントがあるけど、渡辺氏も去年から、小沢のISAF論文は米国と自民党に向けた物だということを指摘していますし、大連立は小沢がその旗印を転換しようと積極的に動いたものだと指摘しています(もちろん陰謀だ…ナベツネが…なんて間抜けなことはいいません)。昨年小沢氏のISAF論に対して政府与党が「危険だ」と批判したことが象徴的な出来事でした。
渡辺氏はのインタビューは現実的な政局分析と切れた形で理想の国家論みたいなのが出てきているが、これは小沢が政権を取ったときのことをあまり直視したくないようにも思える(渡辺氏は政治学者としては最も小沢氏を詳細に分析てきた人です)。そりゃそうでしょう。小沢政権あるいは大連立的な形になった場合、国連をテコにして自衛隊の本格的な海外派兵(アフガン)を行うでしょう。そして内政では、財源論から否応なしに踏み込むことになるであろう行革・小さな政府路線というのが見えてくるでしょう。これが、本当の小沢支持者が15年来待ち望んできたことなのですよ。麻生氏の経済政策というのは相対的には微温的な官僚依存路線ですし、小泉・竹中改革もまた、到底市場主義とは言い難いものでした。そこに、小沢氏に期待する真の理由があるのです。橋本―小泉―小沢は紆余曲折ある一本の線なのであって、今日本のリーダー層ではっきりそれと違うものを打ち出すであろう人物は、たぶん菅直人くらいのものでしょうね。でも彼の眼はないでしょう。結局日本の大枠路線はかわらない、ということです。
2008.09.26 20:15 URL | かみーぽ #mQop/nM. [ 編集 ]
かみーぽさん>
> そのあたりを割りと正確に認識しているのが最近のnikkeiBPに載った渡辺治氏のインタビュー
それは、昨日のエントリで紹介してるんですが...
> http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-744.html
このエントリでも、冒頭に昨日のエントリにリンクを張っています。つまり、渡辺氏の民主党に対する懐疑的な見方を前提として書いていると言っているわけですよ。
あと、岩手在住の方によると、小沢一郎は2003年の民自合流の頃、政策を転換したとのことです。それには現実的な理由があって、それまで小沢を支持していたゼネコンが破綻して、代わって教職員組合が支持母体になったからだとか。そういう「不純」な要素のある転向だから、今も時々新自由主義的な部分が顔を出すのだと思いますが。
ちなみに、私は民主党では小沢一郎支持ではありません。菅直人のシンパです。
小沢一郎の自衛隊派遣は、この間調べてみたら1992年に朝日新聞に載ったのと昨年の『世界』の論文は主張が全然違わないんですね。92年にも合憲論をぶってた。だから、民主党が政権をとったら必ず問題になると思います。
でも、麻生の自民党とどちらがマシかって話でしょ。昨年の「世界」の時も、自民党のアメリカ隷従の給油と、ゴーリストにたとえられた小沢の国連至上主義では後者の方がまだマシだろうとブログに書いた途端、「大連立騒動」が起きたので、当ブログは小沢一郎をかなり強く批判しましたよ。
おかげで、小沢寄りの立場の人(たとえば、arakatuさんという経済学者をやっておられるらしい方)などから、たびたびコメント欄で痛罵を浴びてます。
2008.09.26 20:48 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]
製造業の復活したのは、むしろBRICSや米国など海外景気の波及が最大要因ではないですか。
為替も大差なく金融もまだまだ緩和的な昨今、その劇的な落ち込みと言ったら・・・。
まあ他の施策が以前から継続と言うならゼロ金利なども小泉よりずっと前からですし。
渡辺氏の記事は、米国現政権の要求を「国際社会の要請」と前説もなしに言い換えてしまう点、その変動を前提していない点はかなり違和感を覚えました。
民主党政権の可能性や、昨今の経済情勢の激変は、その要求の温度や色合いを相当変えていく可能性がありそうな気がするんですけどね。
2008.09.26 21:15 URL | Gl17 #EBUSheBA [ 編集 ]
> 製造業の復活したのは、むしろBRICSや米国など海外景気の波及が最大要因ではないですか。
> 為替も大差なく金融もまだまだ緩和的な昨今、その劇的な落ち込みと言ったら・・・。
確かに、98年のLTCM破綻を受けて、99年まで劇的に円高に振れたあと、コイズミになって02年頃までかなり円安が進行しましたが、景気の先行指標であるはずの株価は、00年4月をピークに、その後03年4月まで下げ続けましたよね。
02年あたりから円は対ユーロではどんどん値を下げましたが、円/ドルはほとんど変わらなかったように記憶しています。
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