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きまぐれな日々

自民党総裁選は後半盛り上がらず、彼らの当ては外れた。マスコミは、今回はなりふり構わず自民党の宣伝に協力しようとしたが、NHKのコールセンター責任者が、視聴者(内野光子さん)の問い合わせに「自民党のコマーシャルをしている」と答えた件は、「きっこのブログ」にも取り上げられたことにより、インターネットを利用していて政治に関心を持っている人の多くの知るところとなった。

麻生太郎の勝利は最初からわかりきっていた。魚住昭が著書『野中広務 差別と権力』(講談社、2004年)に書いた麻生の部落差別発言は、当ブログでも2006年6月24日のエントリ「タカ派か極右かの選択」と今年8月5日のエントリ「麻生太郎・自民党新幹事長はどんな人物か」の二度紹介したが、最近も著名なブログ「カトラー:katolerのマーケティング言論」の9月12日のエントリ「麻生太郎の部落差別発言と自民党総裁選レースの行方」で取り上げられている。このブログは、記事のレベルが非常に高くてオススメだ。

当ブログも麻生の問題発言の三度目の紹介をする。2003年9月21日、野中広務は、引退前の最後の自民党総務会で、最後の発言として、次のように述べた。


「総務会長(筆者注:堀内光雄を指す)、この発言は、私の最後の発言と肝に銘じて申し上げます。

総務大臣に予定されておる麻生政調会長。あなたは大勇会の会合で『野中のような部落出身者を日本の総理にできないわなあ』とおっしゃった。そのことを、私は大勇会の三人のメンバーに確認しました。君のような人間がわが党の政策をやり、これから大臣ポストについていく。こんなことで人権啓発なんてできようはずがないんだ。私は絶対に許さん!

(魚住昭 『野中広務 差別と権力』=講談社、2004年より)


カトラーさんのブログの記事によると、

麻生のこの発言は、後に国会でも取り上げられたが、麻生は「そうした発言はしていない」と否定している。野中は、それに対して、証人をつかんでいることを明言しながら、政治家としての最後の場面に臨み、麻生太郎を目の前にして完膚無きまでに面罵したわけだが、魚住のルポによれば「麻生は、何も答えず、顔を真っ赤にしてうつむいたままだった」という。

とのことだ。

一昨日早朝のTBSテレビ「時事放談」に出演していた野中広務は、二つばかりの新聞が麻生新総理・総裁誕生の筋書きを書いたと怒っていた。読売新聞と産経新聞を指すのだろう。日経なら、小池百合子をバックアップするはずだからだ。今回もまた、ナベツネが舞台裏で暗躍していたことは想像に難くない。だが、昨年ナベツネらの謀議に加わって福田康夫擁立に動いた加藤紘一は、麻生とは相容れないはずだ。加藤の動きも今後注目される。

再びカトラーさんのブログから引用すると、

当初、小池百合子と麻生の一騎打ちになるとの話もあったが、小池百合子が反麻生の動きの受け皿になることを嫌って、麻生、森喜朗のラインが動き、与謝野馨を今回の総裁選に担ぎ出した。

とのことで、つまりは与謝野馨の出馬もデキレースの一環だった。逆転の目がないと見たコイケは、与謝野の出馬表明以降は、次の次を見据えた売名に徹していた。

ただ、ここで一つ確かなことは、自民党の主流は「コイズミ一派だけは党の中枢から外す」という方針を持っていることだ。コイズミ一派がもし国民に支持されているなら、これは不当な扱いといえるかもしれない。しかし、事実はどうかというと、コイケは5人の候補のうちただ一人、地方票をただの1票も獲得することができなかった。コイケに主張の近いカイカク派の石原伸晃も、1票しか獲得できなかった。

今や新自由主義の信者は、東京や大阪に残っているだけだが、東京人は石原慎太郎にはなびいても石原伸晃にはなびかない。いくら子供たちの前でポニョポニョ歌っても功を奏さない。また、大阪人も橋下徹にはなびいてもコイケにはなびかない。東京生まれ、巨人ファンの橋下が、関東アクセントの言葉で「教育委員会はクソだらけ」と言っても阪神ファンだらけの大阪人に支持されるが、コイケが大阪弁を駆使してタイガースの今岡誠の後援会長であるとアピールしても、聴衆の反応は冷淡そのものだった。

つまり、コイズミや石原慎太郎、橋下徹らにあるカリスマ性が、石原伸晃やコイケにはないのだ。逆に言うと、コイズミの再来のような政治家が現れたら、いつまた「郵政総選挙」の悪夢が繰り返されないとも限らない。ただ、石原慎太郎はもう年だし、橋下徹はいくらなんでも全国区では通用しないだろう。

ひとつ、新自由主義のリーダーには、強烈なカリスマ性が求められるという仮説が立てられるかもしれない。国民は新自由主義自体を信奉しているわけではない。カリスマ性を持たないコイケが地方票をただの1票も得られなかったことは、そのことをよく表している。コイケが得た46票は、コイズミの威光によるものに過ぎない。

コイケ自身にもそんなことはわかっているから、「コイズミ父さんが築いたカイカク路線に、コイケ姉さんが、ちょっと優しさを加えて、守っていきます」などと、コイズミを引き合いに出して媚びを売ったが、
http://d.hatena.ne.jp/cypres/20080921/p1
でも的確に指摘されているように、「自分が「優しい」と公言する女に、ほんとうに優しい人間はいない」のである。それは、今年前半の「左のほうの水伝騒動」で、恐るべき排他性を持った一派が、しきりに「愛」を訴えていたことを思い出させるものだ。恐るべきKY女というほかない。

もちろん、偽メール事件でミソをつけた前原誠司にもカリスマ性などはない。今後日本においては、新自由主義は急速にすたれていくことだろう。

昨日、テレビ朝日の政治バラエティ番組「TVタックル」を見ていたら、猿芝居の仕掛人・三宅久之が、「実際の獲得票数ではコイケが2位だった」と強がっていたほか(実際その通りだったが、2位のコイケ以下は麻生太郎にお話にならない大差をつけられていた)、民主党の安住淳が「コイケさんは、民主党の菅(直人)さんがいったことをパクっている」と言っていた。安住は菅直人がコイズミカイカクの継承者だとでも言いたいのかと呆れてしまったが、要は三宅にせよ安住にせよ新自由主義に迎合する発言をするからテレビに出してもらえる。長妻昭のような例外もいるが、それは年金問題に関する長妻の追及があまりにも鮮やかで、出演してもらえば視聴率を稼げるからだ。一方、ネオコンやネオリベの政治家だったら、その長妻昭に恥をかかされた大村秀章のように、無能であってもテレビに出演することができる。

そんなテレビ界なのだが、彼らはもはや時代から取り残されている。テレビを見ながら、地方都市在住の私はそう感じた。かつては東京や大阪が変化を先取りして、それが全国に波及していったが、今回の反新自由主義、反カイカクの波は、地方から都市部へと波及していっている。大新聞もテレビの東京キー局も、地方から押し寄せる反カイカクの大波に圧倒されて、徐々に「カイカク」の旗を下ろしていっているように見えるのである。

さすがに、こんな局面は今までの人生で経験がない。これからの日本も世界も、どんな変化が起きても不思議のない、激動の時代を迎えるのだろう。


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憂鬱ですね。
麻生といい、中川昭一といい、
また差別平気な傍若無人派が出てきました。
解散がもし無ければまだ1年近くの任期ですか…
あっても過半数割れが無ければ…
また靖国・中韓の話題かよ…

隣人と平等に、仲良くしましょう、
などと説教くさい、くそ面倒なことを言われるより、
大衆は、自分もいじめられっ子、被害者になってしまっていると真に自覚できない限り、
強気ないじめっ子を応援するものです。
弱いのより、強いのが好き、
それを世の中、そんな単純じゃないと思えるには一定の知力が必要でしょう。
都会は今の日本でもまだ多少は余裕があるんでしょうよ。
「世の末の末」まで突っ込むか、「世の末」で一度己を振り返るか、の争いでしょうね。

2008.09.23 22:27 URL | cube #- [ 編集 ]

「カトラー:katolerのマーケティング言論」って、プロファイルで「週刊!木村剛で第5回 BLOG OF THE WEEKに選んでいただきました」って喜んでるアホのブログでしょ。植草とか小沢って名前には即時反発するくせに、木村って名前には条件反発しないのはおかしくない?

2008.09.23 23:05 URL | arataku00 #- [ 編集 ]

っていうか、カトラーなんとかのブログをちゃんと読んだらどうですか。リーマンのエントリーなんていい訳と自己撞着のオンパレードで、何をいいたいのか分からないし、そもそもレベルの低い平均的アナリストの水準からみてもさらに低水準。過去記事は、ネオリベそのもので、どこに質の高さが見受けられるのか、ちゃんと解説すべきでしょう。

2008.09.23 23:13 URL | arataku00 #- [ 編集 ]

だったらどこが悪いと具体的に指摘してあげたらいいのに。
カトラー氏の名前で反射的に噛み付くんじゃなくて。

2008.09.23 23:49 URL | Gl17 #EBUSheBA [ 編集 ]

麻生の悪質な点は、漫画ファンであることを通じて、まだ物事の判断のできない子供に、安易な現状肯定論、ニートでかまわないじゃないかというメッセージ、被差別部落や在日韓国朝鮮人差別、その他のタカ派的心情を、植えつけていることだと思います。

インターネット時代に、子供にどこまでPCを自由に使わせるかは難しい問題ですが、この、親の監視の届きにくいところで、オタクのニートのネットウヨが多数育ち、ローゼン閣下こと麻生の影響を受けているのです。若いうちに刷り込まれた麻生の悪影響は、一生に渡り、子供を支配するでしょう。

また、週刊新潮の、自民党総裁選にあたり麻生が創価学会の協力を得ていたのではないかという指摘は、非常に重要な問題です。自民党員のリストを創価学会に提出していたとすれば、個人情報保護法違反の可能性が出てくるからです。

長文ですが、詳しくは、http://harepanda.blog.so-net.ne.jp/2008-09-22 をご参照ください。

2008.09.24 07:37 URL | harepanda #- [ 編集 ]

今の政治家は与野党含め皆粒が小さい。
隣の芝は青い的要素もありますが今回の総裁選挙などあまりにくだらなすぎて私のブログでは取り上げたくもなかった。

また先日から続くリーマンショックにしても昔、内外から批判された渡辺美智雄氏の「アッケラカのカー」発言が実はアメリカにすむ人々の気質を見抜いていた発言であった事。アメリカ社会がこの発言の真意を分かっていたならここまで深刻な問題にはならなかったと思います
本当に大物政治家の登場を期待したいこのごろであります

2008.09.24 08:06 URL | ノーザン #- [ 編集 ]

私も憂鬱です。
この人本当に国民から選ばれたと信じてるんですかね。
http://birthday-energy.co.jp に詳しく載っていましたよ。ご参考までに。

2008.09.24 16:12 URL | future lane #- [ 編集 ]













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