きまぐれな日々

昨日のエントリが注目されたらしく、昨日は当ブログとしては今年最多のアクセス数を記録した。「はてなブックマーク」の件数も当ブログとしては過去最多だった(「kojitakenの日記」には、これを上回る件数の「はてブ」をいただいたことが3度ある)。

だが、上記の「はてブ」についたコメントをご覧いただけばわかるように、記事に対して批判的な反応が多数を占めた。「ゆとり教育」を批判した当ブログ昨年9月27日付エントリ「福田内閣支持率50%超に見る日本人の知性の劣化」や「kojitakenの日記」に書いた「[予告]夏休み明けには「毎日新聞叩き」に反対するキャンペーンを開始します」にも、多数の批判コメントをいただいた経験があるが、これらはいずれも意図的に読者を挑発したエントリだった。しかし、昨日のエントリは、ブログにいただいたコメントおよびその方のブログの紹介をしたもので、週末でもあり、普段よりアクセス数は少なくなるだろうと予想して書いた。だから、まさかこれに多数の批判的コメントを伴った「はてブ」をいただくとは思わなかった。批判コメントを寄せられた方の多くは大阪府民だと思うが、大阪ではまだまだ新自由主義が全盛で、多くの橋下信者がいることを思い知った。石原慎太郎を知事に戴く東京帝国と双頭の鷲ならぬタカともいうべき大阪帝国の臣民を結束させるエントリだったかもしれない。ハイル・ハシモト!(笑)

そこで、今日はここ最近ブログ定休日にしている日曜日なのだが、ネオリベ帝国・大阪にちなんだエントリを上げることにした。といっても、現代の大阪ではなく、江戸時代の「堂島米会所」の話である。

堂島というと、昔、毎日新聞大阪本社があったところで、その跡地に建つビルに「ジュンク堂書店」という神戸発祥の本屋さんがある。私が大阪に用がある時には決まってこの本屋に立ち寄る。

その堂島に、「堂島米会所」が開設されたのは、享保15年(1730年)のこと。当時の大坂(大阪の旧表記)は経済で栄えた町だった。この堂島米会所では、

敷銀という証拠金を積むだけで、差金決済による先物取引が可能であり、現代の基本的な先物市場の仕組みを備えた、世界初の整備された先物取引市場であった。(Wikipediaより)

とされている。

本山美彦著『金融権力―グローバル経済とリスク・ビジネス』(岩波新書、2008年)からの孫引きだが、ノーベル経済学賞受賞者の故マートン・ミラー (1923?2000)は、NHKテレビで放送された「マネー革命」という番組(1999年)の取材に答えて、

「先物市場は日本で発明されたのです。米の先物市場が大坂の真ん中の島で始まりました。それは現代的な取引制度をもった最初の先物市場でした。それはあまりにも成功しすぎてしまったので、(明治)政府につぶされてしまって、今日では存在していません。そして、同じようなものは生まれませんでした」

「世界最初の先物市場が政府につぶされてしまいました。最終的にはさすがの大蔵省も先物やオプションの取引を許可しましたが、それは私たちがうるさく文句をいったから、仕方なく引っ張られたのです」

「(日本の先物市場は)残念ながら不毛の土地に落ちた種に似て、まったく発展しなかったのです。規制さえなければ、日本はこの分野の先駆者になれたかもしれません」
(以上、NHKテレビ「マネー革命」(1999年)より?本山美彦『金融権力―グローバル経済とリスク・ビジネス』(岩波新書、2008年) 101-102頁による)

などと言っていた。

ノーベル賞学者のお墨付きをいただいたせいか、この堂島米会所をもって、「大坂には先見の明があったのに、明治政府につぶされた」という言い方をする人は多い。特に新自由主義者がそう言いたがる。

しかし、本山氏によると、事実は全く異なる。酒井良清・鹿野嘉昭著『金融システム(改訂版)』(有斐閣アルマ、2000年)を参照しながら、こう批判している。

 堂島米会所の歴史を正しく認識していれば、民間の力の拡大を恐れた明治政府が会所を廃止したという馬鹿げた議論などはとてもできなかったであろう。

 堂島米会所が明治政府によって廃止されたのは、マートン・ミラーの言うように、市場の力を新政府が恐れたからではなかった。堂島米会所は自壊したのである。この会所は、極端な投機に走り、民衆の最重要の生活物資である米の価格が暴騰し過ぎ、経済社会混乱の元凶となっていた。没落過程にあった旧幕府権力がこの会所を利用して投機に走っていたのである。

 幕末の幕府、諸藩の財政窮乏化が、会所崩壊の原因であった。この会所を利用して、担保となる米がないにもかかわらず、諸藩は過米切手、空米切手と呼ばれる融通手形を過剰に発行していた。これが全国に出回り、経済は大混乱に陥ってしまったのである。米価格は大暴騰し、会所はもはや先物市場も価格付け機能も喪失していた。幕末の金融システムを破壊したものこそ、先物取引の堂島会所だったのである。(酒井・鹿野[2000])

 明治政府は、堂島周辺に集まっていた諸藩の大名蔵屋敷を没収した。当時の堂島は大名を最大の顧客にしていた。大名の没落が会所を没落させたのである。それは、歴史の当然の成り行きであった。けっして繁栄する民衆の力を弾圧するために、明治政府が会所を廃止したのではなかった。

(本山美彦『金融権力―グローバル経済とリスク・ビジネス』(岩波新書、2008年) 102-103頁)


大坂には、確かに世界に先駆けて先物取引市場があった。あるいは大阪人は新自由主義のDNAを持っているのかもしれない(笑)。しかし、「庶民の町」という大坂(大阪)のイメージとは裏腹に、堂島米会所は幕府や大名と癒着していたのである。そういえば、阪神タイガースのシニア・ディレクター星野仙一も、ライバル球団の親会社・読売新聞のボスにして保守政治のフィクサー・ナベツネと癒着している(笑)。

冗談はともかく、「金融工学」なんてものが存在しなかった江戸時代にも、現在と同じようなことが行われていたわけで、人類の進歩なんてたかが知れているんだなと思わせる。それとともに、明治維新というのはやはり革命だったんだなあ、とも思う。

そして、今の日本は幕末に似ているとつくづく感じる今日この頃なのである。


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 今朝のTBSの番組でも、慶応大学の教授が、1929年の世界大恐慌や、今回のアメリカの金融機関破綻は、新自由主義の帰結だと断言していました。
 結局、ブッシュは、バーナンキFRB議長に説得され、大規模な国家による救済を行うことになりましたが、これすなわち、すべてを市場に任せるという新自由主義の破綻と言うべきだと言っていました。

2008.09.21 12:06 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

 市場の機能そのものより、原油なんかは、生産者と問屋(OPECと石油メジャー)、政権がカルテルを結んで価格操作していることが問題でしょう。市場も建玉制限などある程度規制できるはずなのでしょうが、市場管理者までも買収されてたらどうしようもない。
 たぶん、イランやベネズエラ、ロシアなんかは、友好国には米国市場が付けたものと無関係の値段で原油を取引しているでしょう。
 穀物なんかも、農家、穀物商社とエタノール政策を進める米国政府はズブズブでしょうね。
 本来、投機だけでなく、実需にとって便利で必要なのが先物市場なのですが、全く健全性が失われてますね。
 かといって「計画経済」などは不可能ですから、市場経済と公の管理を両立させ、バランスを取る中道路線こそ真理なんでしょうが、誰もがそれを認めるにはまだまだ紆余曲折がありそうですね。

2008.09.21 14:56 URL | cube #- [ 編集 ]

追加で申し上げるのですが、
 そもそも、米国の先物市場、株式市場の動きに世界中がどうしてここまで影響されるのか、思えばとても不可思議ですよね。
 古代中国は、塩や鉄といった生活必需品を皇帝権力で専売し、都合のよい値段を付けたそうですが、
「自由市場」という虚飾だけは、古代と違っいても、内実は圧倒的武力と思想支配を背景にした権力による価格統制に他ならないでしょう。
「交子・会子」という世界初の紙幣を作ったのも古代中国ですが、それを乱発してインフレを招き、結局金・銀・銅の現物貨幣しか通用しなくなった歴史もまさに現代と重なります。
 人の世はちっとも進歩していませんよね。

2008.09.21 17:01 URL | cube #- [ 編集 ]

 江戸時代、賄賂政治で有名な、老中田沼意次の時代ですが、良く見ると、意外と自由主義経済の先駆けともいえるのです。
 ですが、その時代の物なので、原始的な古典経済理論、すなわち今の新自由主義に近い物だったわけです。
 だから、賄賂が横行したのは、今の世相と同じでは無いかと思います。

2008.09.22 02:29 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

昨日は私方のブログにコメントして下さり有難うございました。
その時書きましたお返事に、変な事を書いたことに気付いて、恥ずかしくなっています。
「キチガイに刃物」と言う諺を勘違いして
「・・・・に刃物は使いよう」みたいなことを書いてしまっていました。
恥ずかしいので訂正させていただきました。

堂島米会所 このシステムによってお米の買占めが行われていたのですね。
大塩平八郎の乱も、その所為で起きたとも言えるのでしょうか?

2008.09.22 06:41 URL | わこ #dN1wHbUA [ 編集 ]

眠り猫さん>

> 江戸時代、賄賂政治で有名な、老中田沼意次の時代ですが

米会所の設立時自体はその少し前の享保の改革の頃のようですが、発達したのは田沼の頃なんでしょうね。調べてみると、商業の発達は逆に農村の疲弊を招いたらしくて、現在のアメリカがちょっと前まで金融業が全盛を誇る一方、製造業が衰退してしまったのと対応します。日本がそんな新自由主義社会を後追いしちゃダメですよね。

江戸時代というのも今見直すと面白くて、「三大改革」はいずれも幕府の財政再建を目指すもので、特に田沼意次のあとにその反動で現れた寛政の改革は、保守派によるクーデターの性格を持っていたとよく言われます。概して、田中角栄の支持者は田沼意次を高く買いますね。もっとも、列島改造の田中と商業を発展させた田沼は、収賄という共通項はあるけれど、相違も大きいようにも思います。田中角栄は重商主義とは違いますからね。

幕末に市場経済と没落する政治権力が結びついて投機に走り、経済が大混乱したというのが暗示的です。ライブドアの投資組合には安倍晋三や武部勤、竹中平蔵らがかかわっていたとされますし、今のアメリカ発金融危機なんてまんまですものね。

2008.09.22 10:06 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]

新自由主義のDNA、って何よ。
しかも大阪人は昔からそれを持っていると?
細かいことかもしれないけど、
疑似科学の批判をしてるんなら、こういう所、もっと神経質になったほうがいい。
大阪人に失礼だと思いませんか。
それとも元から悪口のつもりなら、今ここで私が怒ってもいいわけだよね。
以上、助言でした。
ちなみに私は大阪人じゃありません。大阪は街も人も下品だから嫌いです。

2008.10.24 21:34 URL | 煮 #mQop/nM. [ 編集 ]

上記の議論では、先物取引が米の暴騰を招いたとは言えませんよね。
先物取引よりも、諸藩が、今でいう国債の発行をしすぎたことによるインフレというとらえ方が妥当じゃないでしょうか?
新自由主義の思想自体ちゃんと把握していないので、あっているかは分かりかねますが、金融規制を一切しないというものではない気がします。
金融において、ある程度の規制の下で、自由な経済活動、市場運営という側面が強いのではないかなと思います。
まあ、新自由主義もあくまでただの学問の考え方の一つですし、またすべてが誤りなわけではないので、感情的な議論は控えるべきだと思います。
それこそ、筆者の憎む、新自由主義者による学問の思想化と同じように、筆者自身が、反自由主義という思想に振り回されているようで、見苦しい限りです。

2009.11.27 06:03 URL | 新自由主義の批判としては? #- [ 編集 ]













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