きまぐれな日々

麻生太郎を幹事長に起用し、挙党体制作りか、と思っていたところに驚いたのが野田聖子の入閣だった。これを知って、やっと福田首相や自民党首脳の意図がわかった。

これは、自民党の「コイズミカイカク路線」からの転換の意思表示なのだ。朝日新聞(大阪本社発行14版▲)の1面まん中あたりにも、「構造改革の転換 鮮明」という見出しがついている。

しかし、同じ朝日新聞の社説はそのことを指摘していない。朝日新聞は、日経新聞とともにもっとも強烈にコイズミカイカクを応援した新聞で、こと経済政策に関しては「最右派」だと私は考えているが、その朝日が構造改革からの転換を、社論としてはスルーしている。朝日だけではなく、毎日も読売も産経もスルーしている(これを書いている時間には、日経と東京の社説は、ネットではまだ2日付に更新されていない)。

おそらく、大新聞社は世論の風を見極めようとしているのだと思う。3年前、国民はコイズミカイカクを熱狂的に支持した。しかし現在は、各地で『資本論』の勉強会が立ち上がり、小林多喜二の『蟹工船』がベストセラーになるご時世だ。なんとも極端から反対側の極端に振れるのが日本人の心性で、1977年に社会党を揺るがした路線闘争の報道に接して江田三郎のシンパになって以来、ずっと中道左派を貫いてきた当ブログ管理人としては苦々しい思いを禁じ得ないが、結局のところ過激な新自由主義を支持する主張とそれに反対する主張のどちらにより強力な支持があるのか大新聞各社は判断しきれず、下手にどちらかに肩入れして読者を失いたくないから、社論を明確にしないのではなかろうか。もっとも、産経が左寄りの論調になることだけはあり得ないと思うが。

しかし、ネットの掲示板はいち早く反応した。3年前の郵政総選挙でコイズミを熱狂的に支持した連中は、今回の内閣改造に怒り狂っていたのだ。特に、野田聖子の入閣に対するネオリベ連中の反発にはすさまじいものがあった。一方、ネオコン連中の間からは、こんな政権で幹事長をさせられるなんて、と麻生太郎に同情する声があがった。

そう、極右勢力を自民党にとどめておくことが、今回の内閣改造のもう一つの狙いだ。「HANAの会」と呼ばれる平沼赳夫、麻生太郎、中川昭一、安倍晋三連合のうち、麻生太郎が自民党幹事長に就任したことによって、平沼赳夫や安倍晋三は動きにくくなった。平沼一派と民主党の提携話は、これでなくなるのではないか。これは、今回の改造で個人的にはもっともポイントが高かったことであり、極右の麻生太郎が党幹事長として取り込まれたことで政権批判がやりやすくなった。これまでは、福田内閣が倒れたら次に麻生内閣が出てくるかと思うと、政権批判の矛先がどうしても鈍ってしまっていた。

もちろん、一部でささやかれている総選挙前の福田から麻生への禅譲の可能性もあるのだろうが、果たしてそこまで麻生に国民的人気があるだろうか。マスコミがあれだけ持ち上げた安倍晋三にしても、そのコクミンテキニンキは虚像に過ぎなかった。福田から麻生に代わって総選挙になっても、自民党が勝つ可能性などほとんどないだろう。それなら、一度下野を覚悟し、福田首相、麻生幹事長のまま解散総選挙を迎えよう、麻生はそう腹をくくったのではなかろうか。

構造カイカク路線からの転換に話を戻すと、自民党が公明党の要求する新自由主義路線の見直しを受け入れるには、この布陣しかなかったのだろうと思う。しかし、顔ぶれを見て思うのは、これでは旧保守の政官業癒着構造温存内閣だなということだ。一方、中川秀直やコイズミチルドレンは今回の政局で完全な敗北を喫した。テレビを見ていたら、竹中平蔵が「これはカイカクをやりたくない、そういう内閣だ」と言っていたが、今後新自由主義勢力による政権批判が一気に高まっていくことだろう。

野党第一党である民主党に求めたいのは、そういう竹中ら「経済右派」による政権批判に決して同調しないでほしいということだ。今回の内閣改造は、自民党内の「経済左派」の政治的勝利であり、閣僚には右翼掲示板投稿者のいうところの「リベラル」がずらりと並んだ(もちろん、当ブログは彼らが「リベラル」であるなどとは全く考えていない)。朝日新聞社説は、

今回の改造で、消費増税に積極的な「財政再建派」の与謝野馨氏が経済財政担当相に起用された。社会保障などの財源問題に正面から取り組むつもりなら歓迎したい。

と書き、普段から同紙が主張している消費税増税支持を改めて示した。

しかし、当ブログは現時点での消費税増税には反対だ。最終的には日本も高負担高福祉を目指すべきだと考えており、相当先の段階では消費税増税は避けられないと考えるが、それ以前に、中曽根からコイズミ・安倍・福田に至るまでの歴代内閣による新自由主義政策によって拡大した格差や貧困を是正してからでなければ、逆進性の強い消費税増税は国民生活を痛めつけるだけだ。財源は、民主党などが主張する無駄の削減もあるが、基本的にはこれまで軽減してきた法人税と所得税の累進性緩和を元に戻すことだろう。今回「増税派」に敗れた「上げ潮派」の主張の最大のポイントは法人税のさらなる減税であり、もっとも過激な新自由主義政策なのだ。民主党はそんな勢力とは断じて協調してはならない。

それより、今回の内閣改造ではっきりしたのは、自民党が「旧保守」と「新自由主義カイカク勢力」にはっきり二分され、3年前とは逆に前者が政権を握り、後者が「抵抗勢力」と攻守ところを変えたことだが、その一方で「社会民主主義あるいは修正資本主義による福祉国家指向の勢力」は自民党の中にはないことが示された。加藤紘一あたりの本音は、あるいはそこらへんにあるのかもしれないが、彼はやはり「加藤の乱」で終わった政治家なのだろう。今回彼は、あっさり「旧保守」の側にとどまった。

それならば、民主党が党勢を伸ばすためには、社会民主主義あるいは修正資本主義の路線をとるのが、損得勘定からいえばベストだろう。

実は私は、民主党の政治家の多くは、損得勘定によって新自由主義にも修正資本主義にも振れる人たちだと考えており、基本的にあまり信用していないのだが、政治は結果がすべてだ。彼らが損得勘定によってであれ、修正資本主義的な政策をとってくれるのであれば、大いに歓迎したいと思う。

評論家の森田実も、7月28日にこんなことを書いている。
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C04463.HTML

 戦後日本は、修正資本主義と社会民主主義によって、階級闘争主義の共産主義をいったんは克服した。だが、米国ブッシュ共和党政権の新古典派的弱肉強食主義の導入と展開によって階級社会化が進行し、マルクス思想の目を覚ましたようなものである。階級闘争を回避するには、修正資本主義、社会民主主義を復活させる以外に道はない。弱肉強食主義的自由競争主義と共産主義の対立を抑止するのは社会民主主義(修正資本主義)である。
 自公連立政権に代わるべき民主党を中心とする野党政権がとるべき道は、社会民主主義(修正資本主義)でなければならない。

(森田実の言わねばならぬ【509】 (2008年7月28日)より)


当ブログも森田さんの意見に賛成だ。民主党は、迷わず社会民主主義(修正資本主義)路線を選択し、これを貫いてほしい。


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 今回の改造を、産経新聞がよいしょしているのを見て、まず、この政権が右翼に舵を取ったこと(それは旧来の土建利権的セイフティネット容認も意味する)と、産経新聞が、経済的には無節操で、新自由主義から離れようとしている今回の政権を褒めているあたり、過去との継続性がなく、要は権力に媚びるだけの4流メディアであることを再確認しました。
 実際には、この顔ぶれで選挙を戦えるのか?郵政民営化造反組に媚を売っての野田聖子の閣僚入りなど、ひたすら、過去の自民党に回帰して、次の選挙を乗り切ろうという姿にしか見えません。
 国土交通相が公明党で無くなったのは、旧来の土建利権回帰への布石でしょうし。
 新味ゼロですが、過去、自民党の集票機能を果たしてきた土建利権への回帰は、農村部やゼネコンなどの票を呼び戻す可能性があるので、監視と批判がさらに必要でしょう。

2008.08.02 13:33 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

今回の内閣改造は、実務的な内閣を志向したものだと思います。与謝野氏や伊吹氏の入閣で消費税増税への布石が打たれたのかもしれません。

増税をするのであれば、節税の方策も同時に示さねばなりません。課税対象から、食料品や日用品を除外するだけでもかなりのインパクトがあります。アメリカ、ヨーロッパでの高い消費税はそのような軽減処置がされていますよね。良い所は真似して欲しいのですが…

増税をすることで財政再建できるとはとても思えません。金利の高い国にお金は集まっても、税金の高い国に納税能力の高い人は集まらないのは自明の理です。

2008.08.02 15:41 URL | 葉隠 #CRmGiUQU [ 編集 ]













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