きまぐれな日々

新保守主義と新自由主義にまみれた今の日本政治をよくしようとする際、絶対に避けて通れないのが民主党に関する議論である。

一般的に、民主党は保守政党だと位置づけられている。当ブログもその認識だ。「真の保守」をもって任ずる人たちの間には、「自民党と民主党は二大左翼政党だ」(つまり、「真の保守」は自分たちだ)と言う人もいるが、そりゃ極右から見ると自民党も民主党も「左」に見えるだろう。

ただ、歴史的には自民党の「保守本流」は修正資本主義をとった。1973年(昭和48年)を「福祉元年」と位置づけて、福祉国家指向の政策をとり始めていた。しかし、その頃から新自由主義が台頭してきた。チリでアジェンデ政権をクーデターで倒したピノチェト政権が世界ではじめて新自由主義をとったとされるが、このクーデターが起きたのが1973年の9月11日(!)だった。

自民党の政策に対して、新自由主義的な修正をかける動きはその頃から始まり、保守本流の大平正芳首相が「小さな政府」指向を打ち出したりもした。

おおむね自民党の一部と社会党の右側(ばかりではないが)が合流して作られた民主党は、本来なら自民党より左の位置づけになっておかしくなかったのだが、一時期まで自民党より過激な新自由主義政党だったのは、スタグフレーションに直面した資本主義の行き詰まりの解決策を、新自由主義的処方箋に求めるという時代の流れに乗ったためだった。

ところで、『世界』 7月号に、渡辺治氏(一橋大教授)による「新自由主義構造改革と改憲のゆくえ?ポスト安倍政権の動向」と題した論文が掲載されている。渡辺氏は左派の政治学者で、当ブログでも昨年9月26日付エントリ「渡辺治氏「新政権、本当の課題」(日経BP)より」で氏の論考を紹介したことがある。

『世界』の論文で、渡辺氏はまず昨年倒れた安倍内閣の性格を、軍事大国化と新自由主義改革という2つの課題を完成させる任務を帯びた政権だったと位置づける。安倍は憲法改定を公約し、衆参両院の多数を背景に改憲への道をひた走った。

しかし、その過程で安倍の改憲実行への障害が現れ始めた。渡辺氏は下記の3点を指摘している。

まず、国民投票法(渡辺氏は「改憲手続法」と記述しており、もちろんこの方が法案の実態に即している)を強行採決で通したことで民主党との協調が壊れた。これは民主党代表の小沢一郎が改憲手続法制定で賛成にまわる気配がなかったためとしている。次に、2004年6月にスタートした「九条の会」が各地で爆発的に増殖し、九条改憲に反対する世論が増えたことがあげられている。さらに、保守陣営の中からも、安倍の改憲強硬路線に反対する声があがったことが指摘されている。その保守派知識人として、立花隆や保阪正康の名前が挙がっているが、実際、立花隆が安倍晋三に対する強烈な批判を始めた時のインパクトは大きかった。当ブログも一昨年9月10日、「立花隆さんが安倍晋三に「宣戦布告」したぞ!」と興奮気味に伝えている。

一方で安倍は、小泉内閣の構造改革、つまり新自由主義改革を継承し、これを強行した。ここで渡辺氏は小泉政権が行った構造改革のためのシステム作りについて指摘している。まず、構造改革の執行単位を国から地方に降ろしたこと。もう一つは、民主党を保守政党として育成して保守二大政党制の確立を目指したことだとしている。

実際、コイズミは05年の総選挙直後に民主党代表に就任した前原誠司にエールを送り続けていた。ニセメール事件で苦境に立った前原の肩を、コイズミが大きく叩いて激励した光景は忘れられない。

しかし、小泉の構造改革は、日本社会の安定を支えてきた企業社会と地方を壊し、社会保障も縮減した。すでに欧州で実現されていた福祉国家とは異なり、企業の従業員抱え込みと地方への利益誘導をセーフティーネットとしていた日本においては、新自由主義政策をとることによって、貧困や格差の問題が劇的に顕在化したのである。

昨年の参院選で自民党は惨敗したが、その敗因について渡辺氏は、特に地方で顕著になった新自由主義への怒り、大都市部で見られた安倍の改憲路線への警戒、それに民主党の反構造改革党への変身の3点を挙げている。最後の点については、民主党は小沢一郎が代表になって、党の路線を180度転換したと評価している。特に渡辺氏が評価するのは地方に対する農家戸別所得補償政策の打ち出しで、まぎれもない福祉国家的政策だとしている。

先に、前原誠司が雑誌の座談会で小沢執行部を批判したのも、まさにこの政策についてであって、新自由主義者である前原にとっては、こんな政策は認められないのだろう。6月16日付エントリにも書いたように、当ブログは前原が民主党3議員から離党勧告を突きつけられたのは当然であると考えており、それに対して前原を擁護して前原こそ民主党のリーダーにふさわしいとする菅義偉や田原総一朗は、二大ネオリベ政党制を望むゴリゴリの新自由主義者であることを、世間に向けてあからさまに宣言しているというわけだ。

民主党は、軍事大国化に関しても、自衛隊のイラクからの撤退やテロ特措法延長反対を掲げ、改憲指向をむき出しにした安倍政権との対決姿勢を鮮明にし、構造改革に怒る地方票と大都市部の反改憲票を一気に民主党に吸収した、そう渡辺氏は指摘している。

さて、安倍はというと、新保守主義的政策を振り回そうとしたが、よりどころとなる共同体をコイズミがぶっ壊していたためそれもままならず、不本意な退陣に追い込まれた。国会で所信表明演説を行った翌日に辞意を表明するという前代未聞の醜態を演じた安倍は、それだけでも議員辞職に値すると私は思うのだが、優しい「リベラル・左派」の人たちは、その安倍と深いつながりのある人たちが民主党にすり寄ってくるのをはねつけるどころか、「反自公政権」で連携せよと言う。あの安倍を終わらせるための「AbEndキャンペーン」はいったい何だったのかと思ってしまうほどだ。

渡辺氏の論考は、このあとようやく副題にある「ポスト安倍政権の動向」へと進むが、長くなったので続きは明日のエントリに回したい。


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