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きまぐれな日々

郵政総選挙の頃、あれほど全盛だったネオリベ(新自由主義)が、論壇ですっかり押されっ放しになってきた。

社会に多くの自殺者やワーキングプアと呼ばれる人びとを生み出したのは、「コイズミカイカク」という名の新自由主義政策だった。そういう認識を持つ人たちは徐々に増えてきたように思う。

だが、かつて、というよりついこの間まで国民が熱狂的に支持してきたコイズミに矛先が向いた言論は、まだまだ多くない。たとえば、6月20日の朝日新聞社説は、

 死者30万人。東京の新宿区の住民がそっくり消えたのと同じだ。10年前、政府も対策に乗り出したはずなのに、なぜ効果が上がらないのか。

 その大きな原因は、うつ病や職場のメンタルヘルスといった個人の精神疾患対策に偏っていたことだろう。

 死を選ぶ直前は、心の病だったかもしれない。しかし、さかのぼれば、多重債務や過労、いじめといった社会的な要因があり、身体の病気から心のバランスを崩すことも多い。そうした自殺の背景に踏み込んでいなかった。

 その点で、内閣府が昨年初めて作った自殺対策白書が興味深い。冒頭で「個人の問題ととらえていた」「遺族支援策がほとんどなかった」と率直に過去の政策の誤りを認めている。

 政策を転換させたのは、人々の力だ。2年前、遺族やNGOが10万人署名を突きつけ、議員立法で自殺対策基本法ができた。10年遅れで政府はようやく総合的な対策にとりかかった。

と書いているけれど、新自由主義政策が「自殺の背景」となったことへの批判は、朝日の社説からはすっぽり抜け落ちている。

昨年の参院選のあと、福田内閣が成立し、当初は自民党と民主党が「脱カイカク」を競うような動きを見せかかったことがあったけれど、その後新自由主義勢力が巻き返してきた。「緊縮財政派」(=増税派)と「上げ潮派」(=企業減税派)の対立など、そのどちらかの選択肢しかないかのような印象を国民に与える悪質なプロパガンダだ。すでに十分減税されて業績が改善された財界が、味をしめてさらなる減税を求める姿は、彼らのモラルの低下を感じさせる。国民が景気回復を実感できないのは、民間の給与所得が8年連続減少するなどして内需が拡大しておらず、外需頼みの好景気であるためで、なぜそうなっているかというと、再分配が十分行われていないからだと当ブログは考えるのだが、読売新聞や自民党はもちろんのこと、朝日新聞や民主党にしてもそれを強く主張することはなく、特に朝日新聞の最近の論調は、消費税増税論議をタブー視するな、というものだ。

消費税増税を言い出した福田首相に対し、民主党の鳩山幹事長は、消費税増税は必要ないと反論しているが、それでは、民主党が法人税増税や所得税の累進性強化など、経団連が喜ばない政策を打ち出せるのか。少なくとも現状の延長線上ではそんなことはできないだろう。「ムダを省いて」財源を捻出するのだ、と民主党は主張するだろうが、ムダの削減には限界がある。その先の財源確保になると、民主党には保守政党としての限界があるから、そのうちに「やっぱり消費税増税が必要だ」と言い出すのではないか。そういう疑念を私は持っている。

今後政権交代があった時の新政権にそんな動きをさせないため、あるいは外交・安全保障面で右寄りの軍拡路線に走らせないためには、それに歯止めをかける連立のパートナーが必要となる。経済政策では、ともに「経済左派」的政策を掲げる社民党と国民新党がその役割を担うべきであって、経済政策について何も語っていない平沼一派にその役を担わせることはできない。それに、極端な民族主義を主張し、反米かつ反中韓の傾向を持つ関岡英之をイデオローグの一人とする平沼一派には、日本を国際的に孤立させる危うさを私は感じる。何度も書くけれども、平沼一派が参加する政権に社民党の参加が可能だとは、私にはとうてい思えない。

いつもの癖で平沼一派批判になってしまい、またかと思われる方も多いだろうから、ここらへんでいくつかの記事を紹介しておこう。

まずは、前原誠司の民主党批判を高く評価した田原総一朗の妄論。
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/column/tahara/080619_64th/index.html

これは、田原にとっては、自民党と民主党が「二大新自由主義政党」として切磋琢磨する姿が理想であることをよく示す噴飯ものの記事だ。

次いで、前のエントリのコメント欄でフリスキーさんに教えていただいた佐藤優の記事。
http://www.business-i.jp/news/sato-page/rasputin/200801230005o.nwc

少し古い1月23日付の記事だが、『世界』や『週刊金曜日』には左派受けのするようなことを書く佐藤が、産経には

 筆者は、持病が完治することがなくても、安倍氏には、よき副総理候補とペアになって再び総理の座を狙ってほしいと思う。安倍氏の活動が日本に本格的な保守政治を根付かさせるために、これからも必要とされるからだ。

と本音を書いている。「AbEnd」を唱えた当ブログとしては、佐藤の言論を受け入れることはできない。

関岡英之に対する批判としては、右派論客の山崎行太郎氏による昨年11月の記事を紹介しておこう。
http://d.hatena.ne.jp/dokuhebiniki/20071103

関岡某のように、竹中らの背後に、「米国政府の意図や謀略」を読むのは深読みであり被害妄想的な陰謀論の一種に過ぎない。「奪われる日本」の被害者も加害者も日本国民である。米国や中国、あるいは北朝鮮を「悪役」に仕立てて、日本国民は悪くない…、日本国民に責任は無い…、悪いのは「●●」だ…というような国際謀略論が、保守論壇やネット右翼の間で、あたかも正論のごとく持て囃されている昨今だが、それこそ最近の日本国民の思想的劣化を象徴し、知的退廃を物語るものだろう。関岡某の「米国の対日要望書」犯人説に洗脳され、踊らされている保守論壇やネット右翼こそ思想的劣化の象徴そのものであり、まことに哀れというしかない。

(『毒蛇山荘日記』 2007年11月3日付より)


「陰謀論」の悪影響を受けた思想的劣化や知的退廃は、何も「保守論壇やネット右翼」に限らず、「リベラル・左派論壇やネット左翼」にも当てはまる、というより右側と比べても汚染はいっそうひどいように私には思える。

「奪われる日本」の被害者も加害者も日本国民である、という山崎氏の主張には私も賛成で、コイズミにせよ竹中にせよ、マスメディアが垂れ流す「コイズミ?竹中カイカク」礼賛に騙された日本国民が熱狂的に支持し、自滅への道を歩んだのだ。そこをきっちり総括せずして、日本の再生はないと思うのだが、先の戦争も総括できなかった日本国民にそれが可能かというと、悲観的にならざるを得ない今日この頃だ。


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 おはようございます。
 お元気ですね。平沼にそこまで警戒する必要はないというのが私の個人的感想ですが、その平沼と連携しうる勢力が、民主党内にいることには危惧を感じます。
 さて、右派の知性の劣化は、一部は違うかもしれませんが、以前からあったこと。特に、右派言論を「読む」側の劣化が著しく、「書く」側が、それに対しての迎合主義に陥る結果、右派論壇も、右顧左眄の知性劣化であると感じます。
 それに対して、左派の知性劣化は、現状認識の違いだと思うのです。結局はその筆者自身の体験や実感が物を言うと思うのです。
 kojitaken氏が批判する、一見左派(私はリベラルと言いますが)の中で、もともと、論評するに足らないほどの劣悪な知性のものもいます。それらの連中が陰謀論にはまりやすい。科学を、物理学を知らないから、そんなことが言える。文系だから理系知識がないのは仕方がないとしたら、それならその方面のことに口を出すべきではないと考える次第。
 ついで、自分のブログ記事に書くつもりですが、最近多いのが、参議院での問責決議批判の根底をなす、民主党へのバッシングに乗じる者。内容は明日、私のブログに書きますが、要は翼賛マスコミの詭弁をそのまま流用して、民主党批判をする。自民党を批判しながら民主党も批判する。ものによっては虚無主義的に政治から逃げる。
 こういった姿勢が似非左派にもあるようです。
 現状の日本の状態が悪であるとするならば、その原因は、自民党にあるわけで、その腐敗の構造もほぼわかっている中、民主党批判をするのは、結局自民党を利しているだけ。
 特に虚無主義的発言は、無責任で、利口ぶっている一方で、自らは行動しない人々です。
 私も一時は、「左派は割れてはいけない」、「全野党共同」を支持していましたが、今はリアルでの活動も含めて、その裏も見てしまったので、自分では標榜しないことにしました。批判まではしませんけどね。
 ではでは、頑張ってください。

2008.06.21 10:08 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

被害者=日本人と外国人(の多数派)
加害者=日本人と外国人(の少数派)

外が悪いとか内が悪いというより、野心家が国境を越えて連合しているってのが実際のところでしょう。

2008.06.21 10:57 URL | ねこ #mQop/nM. [ 編集 ]

日本人を苦しめている主犯が日本人だというのは同意ですが、その主犯が外側の勢力と連携して動いているのも否定できません。

特権階級は少数派なので、そのローカル社会では圧倒されかねないため、グローバル社会と徒党を組む傾向があると考えています。

南米とアメリカ政府の関係でさえ、「アメリカ政府の一方的な支配関係」ではなかったでしょう。南米版清和会とでも言うべき勢力があって、アメリカ政府と癒着しているから、アメリカ政府は南米で影響力を発揮できます。現地勢力が抵抗した場合、ベトナムやイラクのようにアメリカ軍でさえ苦戦します。

アメリカ政府に限らず広域政権は、そのすべてが中央勢力と現地勢力の癒着によって成立したのではないですか?。遊牧帝国・大英帝国・アメリカによる世界支配体制、などなどです。

日本も例外ではないでしょうね。日本の一部を支配していた豪族(例えば大和王権・織豊徳川政権)が、癒着範囲を広げることで政権が広域化しました。

念のため補足すると、ローカル社会はローカル社会で抑圧体制になるので、ローカルを無条件に肯定はできませんが。(江戸時代の村社会など)

2008.06.21 11:17 URL | ねこ #mQop/nM. [ 編集 ]

田原って、何であんなに知ったかぶりが出来るんだろう?
もしかしたらサイコさんなのかも知れないと思った。

2008.06.21 18:12 URL | spnic #GCA3nAmE [ 編集 ]

ローカル支配層に対する反発のためか、グローバル支配層に対して寛容な人が少なくないですね。

ローカル支配層に対する反発はもっともなので、私はローカル支配層とグローバル支配層が共謀していることを指摘しています。ローカル支配層に反発している人が、グローバル支配層「にも」反発してもらえるようにです。

グローバル支配層に対して強く反発する人を「民族主義者」とか言ったりします。グローバル支配層への反発する層と「民族主義者」の層が重なっています。kojitaken氏は植草氏の民族主義性について違和感を書いています。

ローカリストは逆にローカルの社会的矛盾に寛容だったりする問題はあります。

2008.06.22 10:39 URL | ねこ #mQop/nM. [ 編集 ]

「悪質なプロパガンダ」
商業マスコミの収入の相当部分が広告収入で賄われている以上、彼らがスポンサーのニーズに沿った内容の記事を書くのも無理からぬことです。そうやってまともなジャーナリズムから逸脱していくことによって国民の「知る権利」が多少損なわれたとしても、スポンサーの都合と国民の趣味に合わせて演出されたセンセーショナリズムをまともなジャーナリズムの代わりに提供することによって国民をある程度楽しませることはできますし、その方が儲かりますからね。
「思想的劣化や知的退廃」
「マスメディアが垂れ流す「コイズミ-竹中カイカク」礼賛に騙された日本国民が熱狂的に支持し、自滅への道を歩んだのだ。」
まあ、概ねそういうことだけれども、より厳密に言えば、「小泉竹中は手緩い、もっと強力にカイカクを推進すべきだ」みたいなことを言ってた民主も同じ方向で競い合うライバルですし、自滅するのは負け組だけです。
「今後政権交代があった時の新政権にそんな動きをさせないため、あるいは外交・安全保障面で右寄りの軍拡路線に走らせないためには、それに歯止めをかける連立のパートナーが必要となる。」
民主がどう連立しようが、民主公式の基本政策の中の新自由主義路線が撤回されない限り、新自由主義に反対する歯止めはかかりません。そもそも社民も国民新党も、民主に対して「協力して欲しくば、基本政策書き換えろ」みたいに要求したこと自体ありませんし。

2008.06.23 17:40 URL | Black Joker #- [ 編集 ]

「自民党を批判しながら民主党も批判する。」
そりゃ両方同じ方向ですから。同じ方向で仮に政権交代しても、政策交代には繋がらない。
「現状の日本の状態が悪であるとするならば、その原因は、自民党にあるわけで」
その原因は民主もほとんど基本的に賛成してきたことですし、構造云々も然り。責任転嫁はいけませんね。
「民主党批判をするのは、結局自民党を利しているだけ。」
定義として、新自由主義の方向に賛成または黙認するのが「右派」であり新自由主義の方向に真っ向から反対するのが「左派」であるのならば、民主は「似非左派」というか「右派」です。
「虚無主義的に政治から逃げる。」
自民が勝とうが民主が勝とうが引き分けようが新自由主義からは逃げられない、というのは確かな事実であって、自民から民主に政権交代すれば新自由主義の方向が変わる、などと夢想するのは思想的劣化や知的退廃に由来する事実の曲解であり現実からの逃避です。
「虚無主義的発言は、無責任で」
現実逃避的責任転嫁発言は無責任です。思想的劣化と知的退廃を自覚しましょう。

2008.06.23 17:41 URL | Black Joker #- [ 編集 ]

新自由主義が自殺の原因というのは無理があるのではないでしょうか。福祉国家であるスウェーデンも自殺が多いですし、過労自殺は日本の企業風土の問題だといわれます。新自由主義非難が支配的にならないのはなぜか。日本は一度もまともな福祉国家を経験したことがないからですよ。企業主義が福祉を支えていたのは事実ですが、それゆえに従業員は会社には逆らえなかったですね。何か代わりのモデルを打ち出さないと、日本型社会主義か新自由主義か、だと会社中心の集団生活が苦手な人たちは、リスクはあっても新自由主義がいいと言いますよ。

2008.06.27 07:02 URL | L #NkOZRVVI [ 編集 ]

>日本は一度もまともな福祉国家を経験したことがない

>企業主義が福祉を支えていたのは事実(中略)それゆえに従業員は会社には逆らえなかった

これは慧眼かと・・・

2008.06.27 22:34 URL | sonic #GCA3nAmE [ 編集 ]













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