きまぐれな日々

福田内閣の支持率が低迷し、次の政権の話題がメディアをにぎわすようになった。

PHPが発行している右派の月刊誌「Voice」最新号(2008年7月号)もその一つで、「福田政権後の日本」という特集を組んでいる。平沼赳夫と関岡英之の対談、竹中平蔵と田原総一朗の対談、麻生太郎に期待する中西輝政の記事、平沼・民主連立政権成立の可能性に言及した花岡信昭の記事など、「リベラル・左派」にとっては「目に毒」としか言いようのない記事がずらりと勢ぞろいして壮観なのだが、その中に前原誠司が書いた「民主党は政権を担えるか」という記事がある。

この記事が原因ではないが、他の雑誌に掲載された、前原が参加した座談会の内容を、筒井信隆、篠原孝、山田正彦の民主党3議員が問題視し、前原に離党勧告のメールを送って話題になった。
http://www.j-cast.com/2008/06/12021716.html

前原の論文を読んでみると、全くの謬論というわけではない。前原は、この中で

小泉・竹中改革の方向性や認識はまったく正しい。

と書いて、「構造改革派」、つまり新自由主義者としてのスタンスを明確にしているが、いくつか傾聴すべき主張もしている。

たとえば、先の通常国会において、民主党がガソリンの値下げに重きを置きすぎたという主張などがそうで、小沢執行部は代替財源を国民の納得する形で示すことができなかったとか、道路以外にも全国で無駄遣いがある、前原が以前国会で取り上げた河川整備やダム建設なども無駄だらけだというのは、その通りだと思う。

前原は、消費税引き上げの必要は主張しつつも、食料品課税の減免などによる逆進性緩和も主張しているし、コイズミ?竹中カイカクの「負の側面」、すなわち社会保障費削減も批判している。これは「あと出しジャンケン」だと私は思うけれど、たとえば後期高齢者医療制度は自公与党の強行採決によって成立したから、前原にも批判する資格は残っている。

しかしその上で前原は、されど「改革なくして成長なし」と主張している。なぜそう主張するのか、理由は明記していない。従って、当ブログはそれ以降の前原の主張は認めることができない。前原は、「改革派」だの「守旧派」だのといった新自由主義者の常套手段であるレッテル張りをしながら主張を続けているが、説得力は全然ない。

新自由主義者はかつて、食料自給率は下がって当然だと言い放っていた。たとえば、これは「Munchener Brucke」からの孫引きだが、池田信夫氏はかつて、

「食料自給率なんてナンセンス」である。リカード以来の国際分業の原理から考えれば、(特殊な高級農産物や生鮮野菜などを除いて)比較優位のない農産物を日本で生産するのは不合理である。そもそも「食料自給率」とか「食料安全保障」などという言葉を使うのも日本政府だけで、WTOでは相手にもされない。

と主張していた(下記URL)。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/dc1ed23cfded932bbfe48b6e39058e5e

食料価格の急騰によって、新自由主義者たちの主張がとんでもない誤りだったことが誰の目にも明らかになった現在は、さすがの池田氏も現在は主張を修正したようだ。前原誠司の以前の主張がどうだったかは知らないが、論文では、

たとえば食料安全保障を考えれば、現在の食料自給率39%はあまりにも低く、早急に上げる取り組みを国家戦略として行わなければならない。農業保護は結果として農家を脆弱にし、日本の食料自給率をさらに下げる結果にしかならない。

と主張している。しかし前原は、お得意の「対案」を論文で提示してはいない。まさか、ほったらかしにして「自己責任」だけを求めるとは思いたくないのだが。

全体として、前原の新自由主義者としてのスタンスはわかるが、雑誌記事という制約もあるためか、具体的な問題提起にはあまりなっていない。ただ、そういう主張をするのであれば、自民党に移籍して、実力で自民党の無能な世襲議員どもを駆逐して、新自由主義のリーダーになればよいのではないかと思う。

前原は男女共同参画などについてはリベラルだし、世襲議員でゴリゴリのバックラッシュのくせに新自由主義的政策を口にする安倍晋三のようなどうしようもなく自己矛盾した政治家とは一線を画す、原理原則への忠実さを持った政治家だと思う(但し、前原と安倍は仲が良いそうだ)。だが、前原の主張は、「国民の生活が第一」と訴えて参議院選挙に勝った民主党の路線(選挙に勝つためだけのスローガンだったかもしれないという疑念はあるが)とは相容れない。今回の民主党3議員の離党勧告のメールの中には、ちょっと下品でいただけない部分もあったが、前原は民主党を離れるべきだ、との彼らの主張には、私も賛成だ。


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 もし小泉がいなければ2003年に自民党政権が崩壊し、菅直人首班の民主党中心の政権ができ、2005年に民主党内の若手の反乱で前原政権ができていた。そして民主党の手によって新自由主義的政策が遂行されるが、2007年に自民党が「反新自由主義」を標榜して政権を奪取する。という夢を見たことがあります。
 韓国や台湾では、2000年は左派政権の時代で、左派政権が新自由主義的な政策を行い、最近保守政権が反動で政権を奪取していますから、強ちこのシナリオもあり得たと思っています。
 まあ前原氏はネオリベなのは間違いないですが、小泉政権と対峙することを宿命づけられたので、小泉政権との違いを強調しなければならなかったのでしょう。2000年から2006年まで、構造改革が是で、その政党がより改革的かを争う時代でした。この時代が財界にとってもっともハッピーな時代だったと思います。前原氏の退陣によって民主党がまず軌道修正し、参院選敗北でつられて自民党も軌道修正。ネオリベ冬の時代に突入した訳です。
 自民党が軌道修正し過ぎると、民主党内に空いた改革という陣地を攻めた方が得策ではという声も出てくるでしょう。

2008.06.16 12:55 URL | kechack #- [ 編集 ]

新自由主義は、前原個人の思想でもないし民主党の一部だけの主張でもない、民主党全体の基本政策ですが。
http://www.dpj.or.jp/policy/rinen_seisaku/seisaku.html
国民生活、社会保障等についても、民主党全体の基本政策は「福祉国家指向」ではありませんし。

2008.06.16 19:28 URL | Black Joker #- [ 編集 ]

 90年代、クリントンの頃は「米国の一人勝ち」などと言われたましたから、小泉政権ばかりでなく、どの政党も新自由主義に長期停滞からの活路を見いだそうとしたと思います。
 しかし今、格差拡大ばかりでなく、所得平均までも北欧諸国などに見劣りするようになっては、誤りなのは明らかでしょう。
 肝心なのは、どこがこの誤った路線を躊躇せず否定できるかでしょう。福田さんや麻生さんではとてもその任は務まりません。

2008.06.16 21:32 URL | cube #- [ 編集 ]

食料に関する論調はだいぶ変わってきましたね。私たち食料政策に関わっている者すらすると、いままでのことはおいておいて、真剣に考えてくれるようになったことを喜ぶべきと思っています。
その国の食料を無視して他国に食料を輸出することは、経済原理を超えて、政治的に許されないことは、最近わかってきました。
農業の側にもまだまだやらなくてはならないことがありますが、農業の持つ経済効果・外部経済効果を最大限に発揮させるとともに、いざというときのための自給力の強化をぜひ進めたいと思っています。

2008.06.18 20:34 URL | #- [ 編集 ]













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Impeachment, impeachment!
ブッシュ大統領の弾劾決議、可決。

2008.06.16 23:08 | thethe