きまぐれな日々

民主党との連携と自民党への復党の間でハムレットのごとく揺れ動いていたと見られていた平沼赳夫が、どうやら自民党政権の終わりが近いと判断したらしい。

「サンデー毎日」の先週号(5月25日号)の記事 "平沼赳夫「さらば自民党」奈良・吉野の夜" が伝えるところによると、今月15日に収監された村上正邦元労相が主宰する「日本再生 一滴の会」の勉強会が5月9日に奈良・吉野で行われた。この会は、当ブログでも何度か取り上げた佐藤優氏(外務省起訴休職事務官)を講師にした、草の根右翼というか民族派の人たちの集まりだ。

村上正邦については、昨年11月24日のエントリで、少しだけ触れたことがある。村上へのインタビューをまとめた本を出版した魚住昭は、
彼ら(注:村上正邦ら)の運動は、敗戦直後から60年安保を経て全共闘へとつづく左派の運動形態とよく似ている。特に日本会議の現事務総長である椛島有三氏らがとった、地方から中央へ攻め上る戦略は、中国革命の「農村から都市を包囲する」という毛沢東戦略の亜流と言ってもいいのではないか。
(魚住昭著 『証言 村上正邦 我、国に裏切られようとも』 (講談社、2007年)より)
と書いた。70年代以降に左翼の平和運動が徐々に支持を失っていった時代に、草の根から右派民族主義の支持を広げていった(右派から見た)立役者が村上正邦であって、その経歴からいって左翼になってもおかしくなかった村上が右翼活動にのめりこんでいったことは考えさせられるものだが、これについては頭が整理できておらず、文章にすることができないのがもどかしい。

私にいわせれば、平沼赳夫など、この村上正邦らの地道な活動にただ乗っかっただけの薄っぺらな政治家であり、肝心な場面で適切な判断のできない男だ。今後成立する政権が平沼一派を取り込んでも、害にこそなれ国に利益など何ももたらさないと思う。

「サンデー毎日」の記事に戻ると、その平沼は吉野で行われた「日本再生 一滴の会」の勉強会で「コイズミ、竹中は火あぶりだ!」と吼えたそうだ。以下同誌の記事を引用する。

「小泉さんも竹中も、中世に生まれていれば火あぶりの刑だ。皆さん笑うけど、10億円で売った銀行(注:日本長期信用銀行)がその株を(リップルウッド社に)売却したら、今度は2300億円になったんですよ」
「なぜ竹中が参院議員を辞めたか。彼は講演すると1時間200万円取る。(議員)バッジが着いてたらカネが取れないんです」

(「サンデー毎日」 2008年5月25日号より)

ここまで露骨にコイズミや竹中を批判した以上、平沼は自民党とは一線を画して反新自由主義の極右新党を作り、民主党に接近するつもりだろう。

しかし、平沼は安倍晋三から復党の誘いを受けていて、心が揺れ動いていた。安倍晋三が自民党を離党することはあり得ない。安倍はあくまでコイズミとセットの政治家であり、現在「再チャレンジ」を目指して活動中だが、その本質は首相在任時と何も変わっていない。思想極右にして経済右派である。こんな政治家は政界から放逐すべきだったと思うのだが、民主党の攻めが甘かったせいもあってトドメを刺し損ねた。

「サンデー毎日」の記事を見ると、勉強会に参加した国会議員の名前として挙がっているのは、滝実衆院議員(無所属)、西村眞悟衆院議員(同)と、元職の坂井隆憲元衆院議員くらいのものだ。私の予想では、自民党の議員は、いざ本当に自民党がぶっ潰れる直前まで自民党に固執すると思う。リベラルの側からいうと、「加藤の乱」の苦い思い出もある。自民党は権力を維持し、政官業癒着構造を温存するのを目的とする政党だから、自民党の議員はみな党を離れたがらないのだ。

平沼が「勉強会」で「コイズミ・竹中は火あぶりの刑だ」などと、いささか穏やかでない表現を用いたのも、全然仲間が集まらないことからくる焦りなのではなかろうか。確実に平沼についていくのは城内実だろうが、この間、城内と同じ選挙区の片山さつきがブログで、
「テレビインタビューによると、うちの選挙区の落選元職は自民党批判と民主党批判の両方をやってましたよ、事務所のビデオにとっておきました」「そんなことすぐに、ころと翻すよ、節操ないから。だって極右の西村眞悟から、人権擁護法案推進派までいれた落選組救済新党つくるらしいから。」
と城内および平沼新党をからかっていた。片山のほうも、平沼に負けず劣らず露骨な物言いだが、平沼同様片山にも焦りがあるせいだろう。「思想右派」(平沼、城内ら)と「経済右派」(片山)の醜い争いだ。

民主党に注文したいのは、こんな思想右派と経済右派はともに相手にせず、「国民の生活が第一」を訴えて参院選に大勝した時の公約をしっかり守ってほしいということだ。平沼新党と組んではならない。何度も書くが、5月11日の「報道2001」に出てきた平沼は、ネット右翼かと思うほど下品な物言いでヒステリックに反中プロパガンダをしていた。政権に平沼が加わると、日中関係が悪化し、日本経済にダメージを与える可能性が高い。「国民の生活が第一」と訴える民主党は、かかる事態を避けなければならないと思うのである。

日本の政治に、平沼赳夫など必要ない。


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kojitaken さん、はじめまして。

ご指摘のとおり平沼氏は、当選後も反自民を鮮明にしなかった優柔不断なところや、苦悩で倒れたという精神力や体力の面から為政者としての資質は疑わしいものがあります。この点は小沢氏、鳩山氏、菅氏の民主党トップ3も十分承知しているものと思われます。

今必要なことは、政権交代してソ連末期と同じほどの「官僚主義で煮詰まってしまっている自民党長期一党支配と官僚とのタッグによる現状」を打破することかと思います。

自民党の1955年かの53年間の長期一党支配が終結がまずは第一かと考えます。

その後は、おっしゃるとおり「ヨーロッパ型社民主義」の政党と「アメリカ型自由主義」の政党が2大政党となり、政権交代を繰り返して両者の良いところを国民が選択できる状態になることが望ましいところではないでしょうか。

とにかく、自民党+中央官僚機構による「官僚経済主義(もっとも優秀な頭脳を政府に集めて計画的経済運用をする方式)」は、日本の経済力(GDP)が500兆円から成長しないことからも無理なことは判明しております。

小沢氏、菅氏は、中央官僚が握る非常に非効率な170兆円の特別会計予算を国民の手に取り戻してから、それから社民主義にいくか自由主義にいくかを国民が選択すべきと考えているのかと思います。

2008.05.23 14:21 URL | しっくい #TY.N/4k. [ 編集 ]

現在の日本のGDPの弛い成長を新興国の爆発的な成長と比べてどーすんの。
民主党でどうにか出来る事なんてありゃしませんよ。右でも左でも構いませんがこうであるべきあって欲しいと言う願望ばかり膨らませてどうすんの。民主党が政権運営出来る訳無いでしょ?普通に考えれば。
皆さん今一度頭冷やして下さい。過激な主張は、皆さんが大嫌いな極右と同じです。

2008.05.23 18:55 URL | はしげた #cZbWyr9s [ 編集 ]

日本は先進国だから成長しないという大嘘にだまされてはいけません。

アメリカも欧州も大体、10年間で、1.5倍から1.7倍に経済が成長しています。

日本は取り残されて一流ではなくなったのですよ。

2008.05.23 22:09 URL | さとうしゅういち #- [ 編集 ]

>現在の日本のGDPの弛い成長を新興国の爆発的な成長と比べてどーすんの。

平成不況が、実は政策として意図的に長期化されていたことが徐々に明らかになりつつあります。

もう少し待てば、あなたも自民党政権に騙されていたことが分かるでしょう。

もちろん、民主党になれば良いのかと言うと、もちろんそうではありません。
民主党内部にも自民党と同様に自国民への経済制裁を良しとしている者たちが大勢いるからです。

三面等価のような基本中の基本すら理解できず、不況下における政府支出の縮小や企業の賃金抑制を歓迎するものがいる間は、我が国の衰退は続きます。

それを止めるためには、自民党政権の終焉と民主党内部の新自由主義者を落選させる必要があります。

我が国の潜在GDPとの現実のギャップは非常に大きく、我が国の経済成長の余地はまだまだたくさんあります。

2008.05.24 08:23 URL | sonic #GCA3nAmE [ 編集 ]

「日本の政治に平沼が必要ない」のではなく
あんたが必要ないと思っているだけだろう。
どこまで思い上がっているんだか・・・。
最近の?このブログの左翼的偏向振りは度が過ぎているのではないか。政治の批判がしたいなら、平沼なんていう一政治家を叩く前に、きちんと福田政権を叩くべきだろう。
それとも福田は親中派だから、左翼としては叩きたくないのかね。実にご都合主義なことだね。

2008.05.24 22:52 URL | mei #- [ 編集 ]

私はガチガチの保守主義者なので、ここは居心地良いですよ。
左翼とか右翼とか、ほんとは分類の定義を知らないんじゃないですか?

2008.05.24 23:47 URL | sonic #GCA3nAmE [ 編集 ]

よくもまあそんな馬鹿げた妄想を。。。
米国も欧州も経済成長著しいなんて恥ずかしげもなくまあ。。。んな訳ねえだろ!(笑)
他の方が何故自民党を責めないのかって同意だね(笑)福田政権を批判出来ないからって平沼個人に八つ当たりしてどーすんの(笑)

右翼の大半が在日で構成されているややこしい日本に右翼と左翼をしっかり区別する必要性は、全くありません。

2008.05.25 01:23 URL | はしげた #cZbWyr9s [ 編集 ]

平沼さんが新党を結成して、成功するかは、自民党の現職を倒すだけの候補を擁立するかと政権戦略でしょう。個人的には新党結成は、彼を自滅させると思います。小選挙区制は冷酷に弱小政党を切り捨てます。(けしかけた)小沢代表の冷徹な計算かと感じます。

田中康夫氏は完全に自分の力を過信して失敗した人です。

平沼氏は、無所属でい続ける方が遥かに政治的影響力を維持できるでしょう。

2008.05.25 03:33 URL | 葉隠 #- [ 編集 ]

村上正邦は平沼赳夫のことを非常に高く評価していますけどね。

2008.05.29 20:28 URL | nozokist #RKuuE1sw [ 編集 ]

>彼ら(注:村上正邦ら)の運動は、敗戦直後から60年安保を経て全共闘へとつづく左派の運動形態とよく似ている。(魚住昭)
「運動」であるかぎり、どんな運動も形態は似ているといえば言えるのではないでしょうか。大衆を集め、演説をし、パンフを作りといろんなかたちで自分たちの主張を訴えかけ拡げていくという形態・構造は、主義・主張が違えどもあらゆる運動に共通していると思います。
ともかく、上記の魚住さんの認識には私は違和感をおぼえます。
たとえば、大岡昇平はすでに1980年ころから日本の右傾化、軍備増強策に深刻な危機感を抱いていて、当時「いまの右翼は実に巧妙でして、あらゆるものを利用しますからね。」「60年(安保)の抵抗があり、68年、69年の抵抗があって、二つの段階があった。戦後の平和は、この2段階の引き延ばしがあったための猶予期間で、大衆の反逆があったということで今までもってきたんじゃないかという気がするんですね。」「結局、これからの新しい事態に対応して、望みを託し得るもの、(略)つまり憲法第9条であることは、明白ではないでしょうか。」と加藤周一との対談(戦争否認の<国民的記憶>を問う)で語っています。
ここで何を言いたいかというと、魚住さんが村上氏について書いたり、佐藤優氏と対談本を作ったりするのはよいと思います。しかし、戦争経験者としてごく普通の平和主義志向を語っているに過ぎないと思える大岡昇平の立つ位置にくらべても、魚住氏には右翼である村上氏や佐藤氏に対してあまりにも批判的視点がなさすぎると思います。
「ナショナリズムという迷宮」でも、佐藤氏の発言にはいくらでも異見を述べる余地があると思えるのに、魚住さんはただ感心して聞いているだけ。これではこれまでよい本を沢山書いてこられた魚住さんにはイメージダウンしかもたらしていないのではないでしょうか。「佐藤さんのようにロジカルに物を考え、ロジカルに世界を分析できる人にお目にかかったことはなかった」「佐藤さんとの出会いで、私はロジックのとてつもない力を知った。」とおっしゃっていますが、これには「えっ?!」です。この本のなかで佐藤氏のどの論理が優れているのか、見事なのか、教えてほしいと思います。本全体に沢山の知識が散りばめられてはいますが、「論理」となると私には納得できるものは一つもありませんでした。全ての発言が断定的な口調でなされていることにも、かえっていぶかしさを感じますし。
以上、雑感ですみません。

2008.05.30 14:28 URL | junko #- [ 編集 ]

junkoさん、コメントありがとうございます。

> 戦争経験者としてごく普通の平和主義志向を語っているに過ぎないと思える大岡昇平の立つ位置にくらべても、魚住氏には右翼である村上氏や佐藤氏に対してあまりにも批判的視点がなさすぎると思います。

魚住氏は、よく言えば柔軟な方なのですが(岩波新書で「特捜検察」を書いた数年後に「特捜検察の闇」を出すなど)、取材対象に肩入れしすぎるのか、相手方の主張をそのまま出してしまうところがありますね。
村上正邦氏の聞き書きの本について、レビューを書こうとして書き切れなかったのですが、それは下手に書いたら村上氏の属する民族派の宣伝になってしまうからです。
一般に「リベラル・左派系」と思われているのに、なぜかその民族派の人たちを応援しているブログがありますが、実際にこの本を村上(や平沼、城内ら)の宣伝に利用していますしね。
佐藤優は、毒にも薬にもなる人だと私は思うのですが、最近危惧しているのは民族派と左派の野合は危険だということです。小沢一郎(小沢は左派じゃないけど)と平沼赳夫が手を組んで政権ができたりしたら、その政策は全然新自由主義から福祉国家指向に向かわず、防衛・外交面で比較的穏健な福田政権の政策から一転してタカ派の改憲指向の強い政策になるばかりの、害の多い政権になるのではないかと考えています。だからこそ、平沼赳夫を徹底的に批判しています。

2008.05.31 06:33 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]













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