きまぐれな日々

今年の春闘に関して、福田康夫首相は、経団連会長の御手洗冨士夫に、「景気浮揚のためにも春闘に期待する」と述べ、賃上げへの協力を求めた(以下毎日新聞記事)。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080307k0000m020115000c.html

以下引用。

春闘:福田首相、経団連会長に賃上げを要請

 福田康夫首相は6日夕、官邸に日本経団連の御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)を招き、「景気浮揚のためにも春闘に期待する」と賃金上げへの協力を求めた。これに対し、御手洗会長は「経済状況は厳しくなっているが、余力のあるところは賃上げに努力する」と述べ、「財政状況が厳しいのは承知しているが、政府も賃金の上昇が手取りの増加に結びつくように、(所得税)減税などを検討してほしい」と要望した。

 春闘に絡み、首相が経営側に賃上げの対応を求めるのは異例。

 福田首相は同日付のメールマガジンでも「企業と家計は車の両輪。給与引き上げの必要性は、経済界も同じように考えているはず」と語っている。【内山勢】

(毎日新聞 2008年3月6日 21時00分)

2002年1月から、戦後最長の景気拡大期に入っていることになっているが、給与所得者の平均年収は9年連続で減少している。1998年というと、参院選の自民党惨敗を受けて首相になった小渕恵三が対米盲従の新自由主義政策を始めた年で、この小渕はのちのコイズミの極端な新自由主義のさきがけとなる悪政を行った政治家であり、私なら戦後日本を悪くした首相の五本の指に数え入れる(他に岸、中曽根、コイズミ、安倍)。

福田首相の発言は、急落している内閣支持率を回復させるための人気とりと評するむきもあると思うが、少なくとも日本をぶっ壊したコイズミや、ホワイトカラー・エグゼンプションを「残業時間が減って、少子化対策になる」などとほざいた頭の弱いアベシンゾーとは異なって、まともな感覚を持った政治家であることを示している。この意見は正論そのものであって、新自由主義経済人の代表格である御手洗は苦虫を噛み潰したような顔でこの言葉を聞いたに相違ない。

ところで、私は上記の毎日新聞記事に「はてなブックマーク」をつけたのだが、今見ると、「国の関与主義もここまできたか とても自由主義経済じゃねえな」などというコメントをつけている人がいるのを見て腰を抜かすほど驚いた。この人は、長年にわたって行われた新自由主義のプロパガンダにすっかり洗脳されているのだろう。資本の論理をもっともっと暴走させて、国民生活が破壊されることを受け入れよと言っているのも同然なのだから。

今日はもう一つ、福田首相を見直す材料を紹介したい。昨日のエントリ "日本国民はコイズミの復活を許すな" に、nesskoさんのブログ 「一人でお茶を」 から "福田首相の「賢政」" と題した記事のトラックバックをいただいた。
http://d.hatena.ne.jp/nessko/20080306/p1

これは、岩波書店の月刊雑誌「世界」の3月号に掲載された、東京大学の大瀧雅之教授の論文 "「金融立国論」批判" 中の注釈で、サブプライムローン問題に対する福田首相の対応を大瀧教授がほめたものだ。以下引用する。

 こうした狂騒(筆者注:サブプライム問題をめぐるアメリカ金融市場の混乱)の中、福田康夫首相の株式・商品市場のヴォラティリティー(脆弱性)への距離を置いた冷静的な対応は、近年まれに見る「賢政」である。金融経済学者や労働経済学者(最低賃金と生活保護および障害者自立支援法にまつわる彼らの議論・答申を看過しないで頂きたい)の目を覆い耳を塞ぎたくなるほど露骨に営利企業の意を汲んだ発言や答申に対して、新聞報道の限りだが、福田現首相はたしなめるようにきわめて常識的な対処で臨んでいる。

 サブプライム問題の端緒は小泉・安倍政権時代のものであるから、現在の喧噪は福田内閣の施政とは全く無関係である。つまり「市場原理」の貫徹が「構造改革」のうたい文句だが、サブプライム問題による邦銀の動揺は、小泉・安倍政権時代に金融業に不公正な保護政策がとられていたことの証左である。金融資産市場の動揺(特に株価の下落)が「構造改革」に不熱心な福田内閣の責任との暴言も相次いでいるが、上述の因果から考えれば、むしろ市場不介入を維持するのが「構造改革」の筋ともいえるのではないか。

 なお余談だが、筆者がもっとも民営化に不適と考えていた「教育」や「介護」の株式会社化・民営化が、大変なスキャンダルを巻き起こしていることに留意されたい。メディアは一部の不心得者の仕業として処理しようと目論んでいるが、経済理論から素直に考えればこうした悲喜劇は個人でなくシステムの問題である。

 (引用元:大瀧雅之「「金融立国論」批判」 岩波『世界』2008年3月号=「一人でお茶を」経由)

書店には、まだ「世界」3月号が置いてあったので、さっそく買い求めて該論文を読んでみた。サブプライム問題とは、「モノライン」と呼ばれる債務保証会社が、本来無価値同然の派生金融商品に債務保証という錬金術を施したことによって生じたバブルであって、弾けるべくして弾けたものだというのが、大瀧氏によるこの問題の解説だ。モノライン各社には、高い社債格付けがついており、現在、その格付けが引き下げられたとかで騒いでいるが、もともとの高い格付け自体がデタラメだっただけの話で、新自由主義の世界の馬鹿騒ぎには毎度のことながら呆れる。「金融経済学者や労働経済学者の目を覆い耳を塞ぎたくなるほど露骨に営利企業の意を汲んだ発言や答申」というのは、新自由主義者のご都合主義への痛烈な批判であって、新自由主義が立脚している新古典派経済理論によれば、その種の金融機関救済策を政府がとることこそ、政府の市場への介入だろう。ところが、新自由主義者はそんな矛盾を平気で犯すのである。その最悪の例が、1998年にアメリカのヘッジファンド、LTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)が破綻した時に、アメリカ政府が救済のために巨額の資金を注入したことだ。新自由主義とは、「頑張った者が報われる社会」を目指すものなどではさらさらないのである。

それを考えれば、「何もしなかった」福田首相こそ、「構造カイカク」の本来あるべき精神に忠実だったといえるワケで、福田首相が「構造カイカク」に不熱心だから景気が後退したなどというのは、新自由主義者の言いがかりに過ぎないことがよくわかる。だが、恥知らずにもそんな言説をばら撒いているのが、竹中平蔵であり、その走狗の田原総一朗や朝日系メディア(テレビ朝日及び朝日新聞社)なのである。

何だか、「自End」ブログにあるまじき、福田首相擁護のエントリになってしまったが、福田康夫というのは、是々非々とはいわぬまでも、是非々々くらいのスタンスをとれる対象だ。これがコイズミや安倍だと「非」をいくつつけても足りないくらいだから、6年半にわたった「コイズミ?安倍時代」が終わったのは、まあ良かったことなのだろう。問題は、福田康夫にはコイズミや安倍が進めてきた悪い流れを止める力がないことであり、福田政権を批判するなら、経済軸の「右側」からではなく、福祉国家を目指す側からの言論を展開していかなければならないと思う今日この頃だ。


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 薬が変わったためか、ほとんど寝ていない眠り猫です。
 まったくおっしゃるとおりです。
 昨日の記事で述べましたが、新自由主義自体は、ひとつの学説であり、適用するときと場所を間違えなければ、一時的な効果を発揮するものだと思ってます。
 しかし、間違えた状況なのに、目的や理由も説明せず、強引に新自由主義を拡大した自民党政権は、やはり、財界との癒着による、目先の利権を目的に動いたのだと考えています。そして御用評論家、御用学者たちに、間違った言説をふりまかせているだけだと思うのです。
 ただ、比較的まともな毎日新聞が、こと新自由主義ついては、擁護の立場をとっているのが不思議です。広告主からの圧力があるのでしょうか?
 現状、たまに出るNHKとTBSの番組と、ブログ言論以外では、新自由主義マンセーの状況が今でも続いています。「世界」などではだいぶ前から新自由主義批判があった(「ルポ 貧困大国アメリカ」は、世界に一部が掲載されていた)のですが、岩波は電波媒体を持たないですからねぇ。
 このまま格差が固定化して、新たな階級制度ができてしまうことを、本気で恐れています。

2008.03.07 12:06 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

ただ今日の『発信箱』はいただけません。
日銀人事は人物そっちのけで
外国に叩かれたから急いで決めるものですか。
この新聞は個々の記者はいいんですが、
上が偏屈なので救いようがありません。
社長の先祖は「斗南藩」で泥水をさんざん飲まされたので、
新自由主義など飲めないと思いますが。

2008.03.07 20:02 URL | 観潮楼 #- [ 編集 ]

今回の福田首相の発言、たまにはよいこともするな、と思いました。新自由主義にとっぷりと染まり、民営化・民間委託・分社化こそ最善だとされてきましたがそれがあちこちで破綻しているのは事実です。それを煽ってきたコンテンツ産業、特に大手マスコミは既得権益に手厚く保護された「最後の聖域」。一部の人間だけが富を独占し、子会社・下請け、請負・派遣が一番横行しているのもこの業界です。

2008.03.08 09:02 URL | ゴルゴ十三 #DTxGwd9Y [ 編集 ]













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??? ?夲? by Goodor Bad
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2008.03.08 22:35 | by jp & Blog-Headline