http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080216AT1G1403115022008.html
この記事を読んで驚いたのは、現在の中学校では二次方程式の解の公式さえ教えていないということだ。理系の大卒者の平均学力レベルは、近年目立って落ちていることに驚かされるのだが、「ゆとり教育」に重大な原因があることは言うまでもない。現状では「技術立国」日本のお先は真っ暗だ。
その「ゆとり教育」を見直そうという動きがようやく起きた。私は、これまでの「ゆとり教育」なるものは全くのまやかしであると考えている。これについては、ブーイングを浴びた昨年9月27日付のエントリ 「福田内閣支持率50%超に見る日本人の知性の劣化」 に書いた通りだ。
新自由主義が現実の政治に導入されたのは、1973年にチリで起きたクーデターでアジェンデ政権を倒したピノチェト政権だとされているが、「ゆとり教育」はその頃始まっている。「ゆとり教育」と新自由主義の関係を指摘したのは斎藤貴男だが、その慧眼に敬意を表する今日この頃である。
これは、前述のエントリを公開したあと、新自由主義に反対しているはずのリベラル・左派系に蔓延する疑似科学や陰謀論への傾斜について多くのエントリを公開するようになって、さらに痛感するところとなった。この考察をさらに進めると、新自由主義と反知性、ひいては疑似科学や陰謀論との関係に思いを致さざるを得ない。
「アインシュタインの予言」や「水からの伝言」の議論で出てきた、「いい話だからいいんじゃない?」という開き直りは、思考停止、反知性主義の典型のような反応だと思うが、そもそも新自由主義とは反知性的なものではないかと私は考えている。つまり、疑似科学(や陰謀論)と新自由主義には強い親和性があるのではないかと考えるようになったのである。
新自由主義は市場原理主義ともいわれるイデオロギーであって、市場が万能だ。この思想においては、動物的、獣的な闘争が称揚される。人間の知性より闘争本能に重きを置くのである。そして、価値は市場によって決定される。たとえば、物理学の専門書は、UFOや超常現象や「相対性理論は誤りだ」と主張するコンノケンイチの本ほど売れないから、新自由主義イデオロギーにとっては価値がないのである。
疑似科学や陰謀論を主張して開き直る態度には、新自由主義の悪影響を感じる。散見される「私は直感的に9.11は怪しいと思った」と堂々と語る姿勢から感じられるのは、専門性の否定である。新自由主義は、市場がすべてというカルト思想だから、その教義によって専門性は否定される。前述のように、「庶民的」なものは、「専門的」なものより市場価値が高いからだ。「庶民的」という言葉を、不勉強を正当化するために用いている人たちは、知らず知らず新自由主義に骨の髄まで侵されているのだ。
陰謀論者から見ると、反疑似科学・反陰謀論の主張は「権威主義」に見えるようだ。当ブログにもよくコメントをいただく「ねこ」氏は、その典型例である。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20080211/1202690227
おめでたいのは、そういう主張をする人たち自身が、新自由主義にどっぷり浸かっている自覚が全くないことだ。もはや、日本社会は新自由主義の毒が全身に回った状態だと思う。一刻も早い解毒が必要だ。
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困ったことに詐欺にあってるのに詐欺だと
気がついてないどころ感謝すらしてる
場合は多いんですよね。
何をどう説明したらいいものかと
悩みます。個人の問題なら
ほっといてもいいんですが
社会全体にかかわることだと
そうもいかないわけで。
2008.02.16 21:00 URL | JMaEND #RpRZ5X7E [ 編集 ]
>私は直感的に9.11は怪しいと思った
直感レベルの議論はとっくに終わり、具体的な議論・検証がさんざんされているのだけどね。
kojitakenさんは、「鉄の結束」の一員ではないと思います。しかし、「鉄の結束」のグループを擁護する立場にはありますね。らんきーコメントでは、そこまで詳細に書くつもりはなかったけれど。
清和会系右派ブログの「鉄の結束」グループの周りにそれを擁護するグループがあります。清和会系右派ブログの中には、有名ブログのはずなのに上位ではないブログがあります。それが「養護グループ」です。「結束組」はランキング操作の対象で、「養護組」はランキング操作の対象ではないのでしょう。
「鉄の結束」の考察は、上記のような右派ブログを観察した結果をリベラル側に適用したのです。
右派の一部のグループに「鉄の結束」があれば、左派にも同様なグループがあっても不思議ではないです。
「右派」「左派」「リベラル」は、ラベルでしかないから。
2008.02.16 21:29 URL | ねこ #mQop/nM. [ 編集 ]
こんばんは、KOJITAKENさん。
>「権威主義」
まあ僕も含めて『肩書き』についつい心を許すっていうか、わかった気になってしまうのが、悲しいかな、便利な効率「嗜好」の行動パタンですからね。時刻表通りに列車や飛行機は運行するはずだ!
そうじゃない国は『いかれた・遅れた非産業国家』で、『カンバン方式』とかで教育してやらねばならない!なんて、思い込んでいる日本人は多いんじゃないですかね?
だから『地下鉄サリン事件』のような異常な事態下でも、『通勤』を最優先する産業サラリーマンが大挙現れて(あわれれれ)、逸見庸さんはびっくらこいてしまう。
こういった仕事(会社)への忠誠心は、自己発現的とも言え、そうでないとも言え、合理的な面もあるとはいえ、不気味で、不合理にも思える。ここの企業がアトランダムに自らの私的合理を追求する分には、『均されて』それな理に、平準化するという面もあるでしょう。けれど、色んな公的委員会を似たようなメンバーが独占する度合いが高いほど、スターリン体制へと近似するかも?っていう畏怖「審」を持ってない、少なくとも希薄なところが御目出度いんでしょうね。或いは本当に『こころに余裕』がないのかも。
病的なくらいに?
2008.02.16 22:52 URL | 三介 #CRE.7pXc [ 編集 ]
地元選出議員なので、よく小澤一郎のサイトを覗きます。
すると、すでにご本人が「新自由主義には反対だ」っつってるのに、支持者が「公務員を削減しろ」とか「給与を引き下げろ」とか投稿してるんですよ。
全国の支持者の多くは、未だに小澤さんに新自由主義を期待してんじゃないですかね?
小澤さん、選挙区の現実を見て、とっくの昔に転向してます。
でも、新自由主義の弊害については理解出来たようですが、じゃ、どうしたら良いかわかっていないようです。
で、結局、新自由主義に反対だと言っておきながら党内に新自由主義者を居座らせたり、自分で新自由主義的なことを言ってしまったりする。
民主党の党首がこれじゃ他は察して知るべし。
>日本社会は新自由主義の毒が全身に回った状態だと思う。一刻も早い解毒が必要だ。
どうしたら解毒出来るんでしょうか?
2008.02.17 13:27 URL | sonic #GCA3nAmE [ 編集 ]
Kojitakenさん、
全然関係ない記事をTBしてしまってすみません。
2008.02.17 19:00 URL | 美爾依 #- [ 編集 ]
専門性の否定といえば、理工系だけでなく教育や医療の現場も非科学的な精神論で翻弄されていますね。私が直接関わっているの医療分野は、科学性や倫理性が強調される一方で、手術だけでなく、看護師が日常的に行なっているような注射や採血も、熟練がものを言う職人技の世界でもあります。基本的に「人が人をみる」という分野でる上に、ここ数年は医療不信(を煽る報道が多いせいもあり)のせいか、患者・家族への説明にも多くの人手を割かれるようになっています(無料奉仕ですよ)。なのに「人件費率が高いのは絶対悪」という一般企業の経営手法を鵜呑みにしたような経営論がまかり通り、その結果として世界に冠たる日本の医療制度は音を立てて崩壊中です。救急車の受け入れ拒否って言われても、診る医師がいない病院で受け入れても責任持てません。以前は一か八かで何とかしてましたけど、今は下手すると逮捕ですから。そして、理科系の思考訓練を受けたとは思えない法律家に裁かれるのです。
2008.02.18 12:31 URL | #- [ 編集 ]
医療関係者は法律家の
専門性は否定ですか?笑
医療問題を扱う弁護士さんの
サイトをみてると医者も
裁判について無知すぎだなと
思うこともあります。
医療崩壊の問題はもちろん
わかりますが。
2008.02.18 17:55 URL | JMaEND #RpRZ5X7E [ 編集 ]
私は反米的意見をよく書くけれども、米国もかわいそうなものです。
下手に覇権国だけに、野心家におもちゃにされます。
日本はその米国政府におもちゃにされているけれどね。
強力すぎる軍隊は考えものですね。
kojitakenさんの日記でいろいろ書いてますね。
他のブログのコメントで陰口のように書くのは良くないので、ここで書くけれども。
私の意見を短く述べると「外部を信用するのは危なっかしい」です。
リベラルの一部は「外部の人の勧告に従うべきだ」のような雰囲気があり、警戒が弱いな~危なっかしいな~と思っています。
私は外部(外国・国家間・国際組織・多国籍企業)は、悪い奴だらけだと思っています。
もちろん外部だけ警戒したり非難するのも良くないですが。
例えば南米の腐敗は米国政府のせいだけではないですね。
米国政府と現地の腐敗した政治集団(いわば南米版清和会)の共犯です。
私は、民族主義自体はあまり強く支持してません。「生ぬるく」支持しています。
私が本当に支持しているのは「外部への警戒」のほうです。私自身はあまり「集団」は好きではないので。
民族主義(内部的な団結)と外部への警戒は連動するため、結果的に団結のほうを「生ぬるく」支持することになります。
三輪さんは外部を憎悪・敵視したりするけれども、それはやりすぎです。「警戒」で必要かつ十分です。
2008.02.18 21:11 URL | ねこ #mQop/nM. [ 編集 ]
基本スタンスとして、ねこさんのおっしゃっていることに賛成ですね、僕も。
遠くの人。団体対であればあるほど、具体的に知るには時間掛かりますし、そのための訓練や手法
が(組織も)、戦国期から太平の江戸時代へ、及び、江戸から明治への移行期に、断絶した所為もあるんでしょうけど、上手く行ってませんからね。
その点を指摘しているということでは、『小説・中野学校』は意味があった。もっとその理由とかも開示してくれていれば、もっと読み応えのある著作になってたんでしょうけど・・。
2008.02.18 23:36 URL | 三介 #CRE.7pXc [ 編集 ]
医療関係者が法律家の専門性を否定するもなにも、弁護士に頼らなければ裁判自体を維持できないですよ。しかし、医療・交通など人命を預かる分野で事故が発生した場合、「犯人捜し」よりも「再発防止」を優先して事故調査を行なうのが世界標準です。その調査で出された情報を刑事裁判の証拠とすることが許されないのも、海外では常識です。国際線の旅客機が乱気流などで怪我人を出した場合、日本の空港にだけは緊急着陸しないように指導している海外エアラインも少なくないとのこと。私が危惧しているのは、権力を持った文系エリートが、自然科学的事実を論理の遊びでねじ曲げるような事態が多発しているように見えることです。
2008.02.19 11:27 URL | #mQop/nM. [ 編集 ]
清和会は、私の感覚的には「日本内部の寄生虫」ではなく「外部の敵」になってます。
宿主(日本人)に寄生するだけではなく、総力をかけて戦争、それも絶滅戦を仕掛けているように見えます。経済的な攻撃だけではなく、医療崩壊に見られるように、健康や生命に対する攻撃も激しいです。
医療崩壊は、医療費削減だけではなく、訴訟攻撃(民事・刑事両方)もあります。医師が消滅した地方もかなりあります。医療費削減だけならカンパや地方通貨などでどうにかなるかもしれないけれども、訴訟に対しては対策の方法がないです。
戦前の場合は「産めよ増やせよ」で奴隷を育成しようとしていたけれども、現在は日本人の絶滅を意図しているようにも見えます。産科・小児科から先に崩壊したしね。
清和会一派は、完全に日本人とは別個の集団になってます・・。
外部にいる「困った連中」は警戒の対象であっても憎む必要はないですが、日本人に現在総攻撃を仕掛けている連中は憎悪の対象です。
2008.02.19 22:52 URL | ねこ #mQop/nM. [ 編集 ]
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