今回の件は、インターネットやブログという媒体の持つアナーキー性や、それとポピュリズムとの親和性、さらにはファシズムを呼び込みかねない恐れなど、根の深い問題を持っていると思うのだが、これについてはもはや今回の件を離れて一般論として論じるべき段階にきていると思う。だからここではこれ以上触れない。ただ、ブログ管理人は今なお各所でコメントを書き回っていて、主張すべきことは主張し続けなければならないと考えている。
さて、今回は雑誌記事の紹介をしたい。保守系の雑誌である「週刊文春」は、このところあまり買わなかったのだが、最新の1月24日号にはいくつか面白い記事が出ている。
新テロ特措法の採決を小沢一郎・民主党代表がドタキャンしたことへの批判記事も出ているが、その中で安倍晋三が元気一杯だったと書かれていたのには笑った。小沢がいないのを知ると、安倍は「本当は賛成なんだろ!」と野次り、近くに座っていたコイズミは、それを聞いて吹き出したのだそうだ。だが、テロ特措法をめぐるドタキャン劇では、総理大臣の座まで投げ出した安倍が先例を作っている。安倍にだけは小沢を笑う資格はないと思うのだが、安倍という男はまともな神経を持ち合わせていないようだ。
その他では、参議院の外交防衛委員会で「9.11陰謀説」を質問でブチ上げた民主党の藤田幸久議員をおちょくる記事も出ている。新聞社の社会部記者のコメントとして、陰謀論はもともと米国で広まり、日本ではベンジャミン・フルフォード氏が中心となって広めているが、証拠とされる資料には綻びがあって、いわゆる「トンデモ話」の1つとされていると紹介されている。記事には、「こんな話を国会の場で聞かされた出席者も、たまったものではないはず」と書かれている。町村官房長官は「まったく、なんなんだよそれ」といった感じで露骨にいやな顔をしていたそうだが、その町村氏は「UFOは絶対にいると思う」、「霊感だって信じている」と発言して話題になった人物だ。町村氏に藤田議員を笑う資格はない。その町村氏の「舌禍」を批判する記事も「週刊文春」に出ているが、ここではこれ以上紹介しない。
本エントリでメインの話題にしたいのは、ブラジル人のオカルト予言者を下村博文・前内閣官房副長官が礼賛したという記事である。
記事によると、NPOが運営する「超人大陸」というインターネット放送で、下村氏は半ば自慢げに「先日、面白い方と話す機会がありました」と、その会談の模様を紹介している。
この予言者は、ジュセリーノというブラジル人で、下村氏によると、9.11の同時多発テロを予知したほか、予言の90%が当たっているひとなのだそうだ。記事中に出てくる「テレビ局関係者」によると、「イラク戦争や、サダム・フセインの潜伏情報も事前にアメリカに通報していた」とのことだ。日本についても、地下鉄サリン事件や阪神大震災、長崎市長射殺事件を予言したと言っているらしい。
とはいっても、昨年3月に東京で大地震が起きてパニックになると予言して外れ、アル・ゴアが次期大統領になるとか、2010年に消費税35%になるなどと予言しているそうだ。この消費税に関する予言が、下村氏に気に入られたのかもしれない(笑)。
下村氏は、「各国政府が環境問題について立ち上がっていかなければ、天変地異的な異常現象を含め、災害等が起きることによって、地球そのもののポールシフトというか、地軸がずれることによって世界中で大地震が起きる。人類にとっても30年後、40年後、たいへんな被害が起きる可能性が高いと」主張している。
このような予言を満載したジュセリーノの予言書は、トンデモ本の版元として有名な「たま出版」から出版されているのだが、下村氏はその信憑性には何の疑問も抱かず、堂々と宣伝している。「トンデモ本」に詳しいさるブロガーに教えていただいたのだが、なんとその映像をインターネットで見ることができる(下記URL)。
http://www.akibach.com/shimomura/shimomurayochi.html
下村氏はこの予言者を信奉しているはずなのに、名前をずっと言い間違え続けているところが笑える。
ところで、この下村氏だが、若手では代表的な「日本会議」系議員の一人であり、安倍晋三に極めて近い人物である。
当ブログでも、何度か下村氏を取り上げたが、まず一昨年11月23日付の、"嘘つきが「教育改革」を進め、テロ肯定者が「伝統と創造の会」を主宰している" を挙げておく(下記URL)。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-184.html
この記事で、下村氏が稲田朋美や山谷えり子などとともに、小泉首相の靖国参拝への礼賛や、中国、韓国批判、歴史教科書の検定強化などの主張を次々に展開したことを紹介している。
下村氏は、イギリスの教育改革を視察したメンバーの1人であり(視察団長は平沼赳夫)、当ブログは、改正教育基本法が成立した翌日の一昨年12月16日付のエントリ "毎日新聞の報道?改正教育基本法は「改憲へのステップ」" (下記URL)で、毎日新聞の記事を引用しながらこのことを紹介した。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-201.html
毎日新聞の記事(当然、現在ではリンク切れ)の引用部分を一部再掲する。
首相(注:安倍晋三)と下村博文官房副長官、山谷えり子首相補佐官の3人は、かつて保守系の議員連盟「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」のメンバーで、従軍慰安婦などの記述を「自虐的」と批判する「新しい歴史教科書をつくる会」と連携。「つくる会」は保守系の運動団体「日本会議」ともつながる。
サッチャー改革に着目した「日本会議」幹部の橋渡しで、下村、山谷両氏は04年9月、国会議員6人による「英国教育調査団」に参加した。両氏は「サッチャーは教育の英国病を立て直した」と高く評価するが、識者の間では「所得によって受けられる教育の格差が拡大した」(藤田英典国際基督教大教授)との批判も根強い。
(毎日新聞 2006年12月16日付紙面より)
この記事が指摘するように、サッチャーの教育改革には新自由主義的側面が強く、それを信奉する自民党のいわゆる「超保守派」(平沼赳夫、城内実らとも近い)が新自由主義的傾向を濃厚に有していることは、どんなに強調しても強調しすぎることはない。
そして下村氏は、従軍慰安婦問題に日本軍の関与はないと発言し、アメリカとの関係をこじらせてしまった。昨年3月27日のエントリ "タカ派のエロ拓をハト派にしてしまった安倍内閣の異常" でこれを紹介している(下記URL)。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-294.html
こんなにも勇ましい極右議員の下村氏がオカルト予言者に入れ上げているなんて、本当に呆れるが、そもそも下村氏の大ボス・安倍晋三は、統一協会や慧光塾などのカルト宗教とかかわりの深いとされる人物だった。
「週刊文春」の記事は、下記のように結ばれている。
総理は「四人の神」(注:「週刊文春」の昨年9月20日号の報道で、慧光塾、最福寺、新生佛教教団、安倍洋子を指す)、官房副長官は「オカルト予言者」??。安倍晋三内閣とは、いったい何だったんだろうか。
(「週刊文春」 2008年1月24日号収録 "ブラジル人「オカルト予言者」を礼賛した下村博文" より)
ブログで「トンデモ」が蔓延しても、現在のブログの影響力ではその害毒はたかが知れているが、有力な政治家の間で、「トンデモ」や「オカルト」が蔓延しているのは、憂慮すべきことだ。そして、政治家の程度は国民の程度を反映するのである。
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カルト、オカルト、得体の知れない新宗教などと言っても、信じている人にはそれは真実の教えなのかも知れず、批判にさらされるとムキになって反発するものでしょう。
問題は、政教分離が原則の日本国憲法下での国会議員が、内心の自由としての信教の自由を超えて、カルトや新興宗教の宣伝塔になっているという事実です。
真に信仰しているとしても、政治家として慎むべきだし、信仰していなくて、票や金の結びつきで、宣伝塔をしている議員は、政教分離原則に反しています。
まぁ、どちらかと言うと、安倍とか下村は、カルトを信じてしまっている口でしょう。
ちなみに細木数子は、3月で番組降板だそうです。裏に何があったのやら。江原啓之も遠からず追放されることを期待しています。
2008.01.20 23:05 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]
眠り猫さん、
もちろん政教分離に反していることは大きな問題なのですが、それ以前に、理性的な判断を下すことができない政治家が日本の針路を定めようとしていることにぞっとさせられます。
ところで、下村議員のような人物は、どうせ二世議員だろうと思っていたのですが、そうではなく苦労人みたいです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8B%E6%9D%91%E5%8D%9A%E6%96%87
そんな人物が、どうしてオカルトにはまり込んでいったのか。
下村氏は、「“河野談話”はもう少し事実関係をよく研究し合って、その結果どうなのか、時間をかけて客観的、科学的知識を収集して考えるべきではないか」と述べたそうですが、ブラジルの予言者を盲信することがはたして「客観的、科学的」なのか。
興味と疑問は尽きません。
2008.01.21 21:32 URL | kojitaken #e51DOZcs [ 編集 ]
サヨク側に立つと保守勢力を一括りにしがちなのですが、伝統重視の保守と新自由主義勢力は小泉時代は一体であったのが安倍時代に利害離反が目立ち、この又裂きが安倍内閣を崩壊させた一因でもあります。
教育においても伝統重視派とイギリスサッチャー教育を賛美するネオリベ派は考え方が大きく異なり一括りにするのは議論を混乱させます。
かつて反共で保守が一枚岩になっていたおと同様、反日教組で一枚岩になっているように見えるだけです。
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脱「植民地主義」という鍵(その1)「不正を不正と見なす思想を」を読んで
2008.1.20.18:35ころ 前回の記事がその典型ですが、当ブログではエー
2008.01.20 21:21 | 多文化・多民族・多国籍社会で「人として」
橋下大阪府知事候補は優秀な弁護士さんでした。
今日はあまり品の良い記事ではないけれど・・近くに住むものとして、やはり書いておかねばと思った。?人気ブログランキングへ?? ...
2008.01.21 10:58 | お玉おばさんでもわかる 政治のお話