きまぐれな日々

2008年は閏年で、アメリカ大統領選挙や夏季オリンピックのある年だ。
アメリカの大統領選では、8年ぶりに共和党から民主党へ政権交代があるかが注目される。昨年、フランスで親米のサルコジ政権、韓国では保守ハンナラ党の李明博(イ・ミョンバク)政権が誕生したが、アメリカではもうだいぶ前からブッシュ政権がレーム・ダック化しており、日本でも参院選で自民党が大敗し、自民党政権の終わりが見えてきている。

韓国の政権にしても、金大中、盧武鉉の左派政権は、経済政策では新自由主義をとって国民生活を苦境に追いやった。そのあと、田中角栄の列島改造論を思わせるような政策を掲げる李明博が大統領になったが、果たしてうまくいくだろうか。あまり明るい展望は持てないように思う。

やはりもっとも注目されるのはアメリカの大統領選だろう。近年では1977?81年のカーター大統領、1993?2001年のクリントン大統領が民主党選出の大統領で、1976年にカーター氏が大統領選に勝利した時には、"Jimmy who?" などといわれて新鮮なイメージがあり、日本の新聞もカーター氏には好意的だったと記憶している。時代的には、カーター時代は日本経済の全盛期で、当時話題になった経済書は、ガルブレイスの「不確実性の時代」、ヴォーゲルの「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などだった。アメリカでは、自国に都合の悪いことが起きるたびに「日本の陰謀だ」とする陰謀論が流行したという(笑)。

しかし、79年からの英サッチャー政権、81年からの米レーガン政権が取り入れた新自由主義に日本もなびいてしまったのがつまずきの元だった。私はその元凶は中曽根康弘であると考えている。しかし、日本経済は好調だったし、中曽根は現実主義者だったので、日本では新自由主義の経済政策はさほど徹底されることはなかった。しかし新自由主義思想に基づく中曽根政権の民活(民間活力の活用)路線は、バブル経済を招いた。バブルを招いた中曽根の責任も重いが、バブルの後始末の政策を誤って、徐々に新自由主義的カイカクを進めてしまった橋本・小渕両政権の罪も重かった。橋本は消費税率引き上げで不況を招き、小渕は経済よりむしろ戦後民主主義の根幹を壊す戦争志向の諸法案の成立で、日本の政治をおかしくしてしまった。その間、アメリカから日本にプレッシャーをかけ続けたのがクリントン政権だった。本来決して右派的ではないはずの米クリントン、英ブレア両政権は、結局前政権(米レーガン?ブッシュ父、英サッチャー?メージャー)の新自由主義政策を引き継ぐしかなかった。だから、ビル・クリントンに対して持っている私の印象は、ジミー・カーターに対して持っているそれとは全く異なり、早い話私はビル・クリントンが大嫌いである。

日本で無能な森喜朗政権に対する国民のストレスがたまっていた2000年、アメリカの大統領選でブッシュが勝った。当時私は、世界平和のためには好ましくないが、経済政策に関しては民主党政権の方が手強いから、アメリカがブッシュならむしろアメリカに対して巻き返せるのではないかと思ったのだが、対米隷従主義者のコイズミが日本の首相になってしまい、その読みは狂ってしまった。コイズミ政権は、日本で初の本格的新自由主義政権となって、国民生活を痛めつけたのである。せっかくアメリカがアホのブッシュなのに、日本がそれ以下のコイズミや安倍晋三ではどうしようもない。政治家の程度は民度を映す鏡というが、ブッシュを8年も大統領にしたアメリカもひどいが、世襲でないと総理大臣になれなくなってしまった、「階級政党」自民党を延命させ続ける日本はもっとひどい。それにしても、2000年の米大統領選でアル・ゴアが勝ち、年末に加藤紘一が乱心を起こさなかったなら、日本の社会は現在とは全く異なるものになっていたのではなかろうか。

30年前にも、自民党は金権腐敗をずいぶん批判されたが、田中角栄、三木武夫、福田赳夫、大平正芳、それに(鈴木善幸をはさんで)中曽根康弘と、一通り政権の座に着いた実力者たちに世襲の政治家はいなかった。みな実力で総理の座をつかんだ。「頑張った者が報われる社会を」と安倍晋三はよく言っていたが、それはこの時代の自民党にこそ当てはまり、90年代以降の自民党には全く当てはまらない言葉だ。良くも悪くも「国民政党」だった自民党は、いつの間にか「階級政党」へと変わり果ててしまった。民主党は自民党と同じような政党だとよくいわれるが、両者のもっとも大きな違いは、民主党はまだ(支配する側の)「階級政党」にはなっていないことだろう。たとえば同じ新自由主義者でも、前原誠司は世襲政治家ではない。

それでアメリカの大統領選の話題に戻るのだが、注目のアイオワ州の党員集会で、共和党は右派のハッカビー、民主党は左派のオバマが勝った。私はもちろん大統領選では民主党の候補者に勝ってほしいが、その中でもヒラリー・クリントンではなくバラク・オバマに勝ってほしい。オバマはヒラリーよりリベラルだし、もしヒラリーが大統領になったら、1989年以来、アメリカの大統領選はブッシュ父子とクリントン夫妻によって24年間も寡占されることになってしまうからだ。これを、二大政党制ならぬ二大王朝制だ、と評する人たちもいる。

加えて、私は昨年2月にオバマに関する記事を書いたことがある。毎日新聞の報道を紹介したあと、オバマをほめて安倍晋三をけなしただけの他愛もない記事だが、「バラク・オバマ」を検索語にしてネット検索すると、上記の記事が比較的上位で引っかかるらしく、この検索語で当ブログを訪ねてくださる方がたまにおられる。そんなことも、私がヒラリーよりオバマをひいきにする理由の一つだ。

しかし何にせよ、ヒラリーとオバマには今後熾烈な候補者争いを展開してほしいと思う。両者の争いが激しくなればなるほど、大統領選で民主党候補が勝つ可能性が増す。米民主党は、新自由主義政策の見直しを志向している。その民主党の中でもオバマは最左派なので、あまりに左寄り過ぎて共和党候補に票が逃げていくと懸念する向きもある。だが、日本の政治に与える影響を考えた場合、ヒラリーよりもオバマの方がコイズミや安倍からの距離が遠い。劇的な変化を好まない日本人の背中を後押しする意味でも、オバマはインパクトが強い。

以前は、経済政策ではより日本を苦しめたのは共和党より民主党のほうだ、とずっと思ってきた。しかし、1981年にレーガンが大統領になったから82年に中曽根が民活路線を始めたのだし、2001年にブッシュJr.が大統領になったからコイズミが極端な新自由主義カイカクを始めたのである。日本の新自由主義化は、この2度の民主党から共和党への政権交代をきっかけにしている。日本政府の対米隷従は今に始まったことではないが、より日本経済に大きなダメージを与えたのは共和党政権だった。あの印象の悪いビル・クリントンの政策も、共和党政権の新自由主義を継承したからとられたのだと気づいたのは、比較的最近のことである。日常的には共和党政権の方が親日的に見えるのだが、肝心かなめの経済政策の基本については、やはり共和党政権のそれは日本経済とは相性が悪い。

アメリカが変われば日本も変わる。解散総選挙がいつになるかはわからないが、町村官房長官の更迭もできない福田康夫政権に、簡単に解散のカードが切れるとは思えない。解散は早くとも9月以降ではないかと私には思える。自民党のダメージを極小にするには、解散は早ければ早いほうが自民党にとっては好都合なのだが、それでは与党の3分の2の議席を失ってしまって手詰まりは解消できない。朝日新聞などは、元旦の社説で、衆院選で民主党が負けたら参議院での多数を振り回すなと主張していたが、早期の解散は自民党・民主党の双方にとってメリットが全くないので考えにくいのである。しかし、アメリカの大統領選の帰趨が見えてきたら、それに応じて日本がどういう針路をとればよいのか、政治家たちも方針を固め始める。そして、新自由主義指向から福祉国家指向へと転向した方が良いと判断した政治家は、かつて軍国主義者から民主主義者に転向した人たちのように、素早い変わり身を見せるだろう。

前記朝日の社説は、連立などがあってもそれは総選挙のあとにすべきだと主張している。それは正論だが、おそらくそうはなるまい。選挙をやる時には、既に新しい政権のスキームははっきりしているのだ。1993年の細川政権成立前の総選挙はそうだった。今回もおそらくそうなる。総選挙は、新しい枠組みを追認する儀式のような性格を帯びるだろうと私は予想している。日本国民の声が国政に及ぼす力は、まだまだ小さい。


[参考記事]

「カナダde日本語」 ? 「米大統領予備選: 「アメリカの底力」by冷泉彰彦」
http://minnie111.blog40.fc2.com/blog-entry-724.html


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昨日のお昼過ぎ、瀬戸大橋を越え、四万十へ戻ってきました。「きまぐれさん」を見習って少しは説得力のあるブログを書きたいと、努力していますが、元来が怠け者の私ですから、あまり進歩がありません。(笑)

今年は、少なくても、昨年以上には「毒」を撒き散らしたいと思っています。今年もよろしくお付き合い下さい。

2008.01.07 10:57 URL | simanto114 #.HUrAvmg [ 編集 ]

 オバマ氏に風が吹き始めたようです。さて、ニューハンプシャーの次はどうなるか?
 日本も、オバマ氏に習って、「カイカク」に対抗して、「チェンジ」でもって、政権交代を目指すべきでしょうね。官僚を悪者にしてのコイズミ・安倍アフォーマンスはもう使い古されています。
 野党は、富裕層を悪者にして、「チェンジ」を訴えるべきでしょう。
 でも、階級闘争みたいになりますね。
 こんな時に、本領発揮できない、某共産主義政党は、その存在意義を問われますね。

2008.01.07 14:24 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

先週末引け後の株式ニュースでコメンテータがそっち方面について。
定型通りなら民主は日本に厳しいとか、共和は小さな政府だとか全く意味の無いこと言ってました。
何も言うことが無いので誤魔化した感じでしたが。

しかし、史上最大の国債増発をやってるブッシュの時代に「小さな政府」とか良く口に出せますよ。
使い道が福祉やインフラじゃなくて戦争浪費なだけで、類を見ない「超巨大な政府」を実践中と思うんですが。
あれって要らない道路や箱物作るのと同じですからね。(人死にが伴うという点以外は)

2008.01.08 01:27 URL | Gl17 #EBUSheBA [ 編集 ]

頑張ってもほとんどを税金で取られるから頑張るのが馬鹿馬鹿しくなって誰も努力しなくなる。そして日本は衰退。

かつてのように貧困が人々を追い立てた時代なら会社中心根性主義で労働させることもできたでしょうけど、そんなことしていたから日本社会は停滞してきたんです。それを打ち破ったのが新自由主義でしょ。

新自由主義を止めたら日本は滅亡ですね。勇気のある努力家から順に海外に移住していくだけです。

2008.01.10 22:26 URL | 悪夢でしょ #NkOZRVVI [ 編集 ]

そもそも日本型社会主義はアメリカの民主党によってつくられたものです。だから、日本型社会主義は実はアメリカが元ですよ。

2008.01.10 22:28 URL | 悪夢でしょ #NkOZRVVI [ 編集 ]













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