あの選挙戦の期間ほど、政治のことが人々の口に上ったことはなかったと思う。みな熱病に浮かされたように「郵政民営化は必要だ」と叫んでいた。
あの時、政治は娯楽と化した。その流れは今日に至るまで続き、田原総一朗が司会を務めるテレビ朝日の「サンデー・プロジェクト」の視聴率は、いまや巨人戦の視聴率より高い。
政治ブログを運営するブロガーの中にも、「政治ブログは敷居が高い」などと言う人がいるが、私には信じられない。俗悪な政治番組よりもさらに噛み砕いて政治の話題を解説したって何の意味があるのだろうかと思う。マスコミは与党寄りだ、などというのかもしれないが、現在のマスコミが自民党に甘く民主党に厳しいわけでは決してない。マスコミは政府を批判しながらも新自由主義政策の宣伝だけは怠りないとはいえるけれども。
ところで、今日の記事は政治番組ではなく、政治番組に視聴率で抜かれた巨人戦中継の話である。巨人戦の年間平均視聴率は、今年も昨年に続いて10%を割ったらしい(関東地方)。今年は、強力な裏番組が存在するなどの理由で視聴率の見込めない試合の中継数がずいぶん減らされたのに、平均視聴率はほとんど回復しなかった。
巨人戦というコンテンツが視聴者から見放されてきたのは明らかだ。これを、生活が苦しくなってきた国民がプロ野球への関心を失ったと見る人たちがいる。しかし、それは必ずしも正しくない。たとえば、今年53年ぶりの日本一になった中日ドラゴンズの親会社系のスポーツ紙「中日スポーツ」は、ドラゴンズ戦の東海地方における視聴率が2年連続で上昇したことを誇らしげに報じている。
http://www.chunichi.co.jp/chuspo/article/dragons/news/200710/CK2007100502053967.html
また、映画・放送・音楽の業界情報を伝えるという「文化通信.com」によると、ホークス(福岡)、ファイターズ(北海道)などの地域に密着した球団の野球中継は、「地方局の人気ソフトとして定着。「地元球団戦はスポンサーもすぐ付く」(地方局幹部)というように営業的にも優良コンテンツになっている」という(下記URL参照)。
http://www.bunkatsushin.com/modules/bulletin/article.php?storyid=11364
ところが、同じ記事は次のような指摘もしている。
かつての巨人戦に代わって地元球団のナイター中継が毎晩のように盛況かと思われた。ところが、地方局の意欲とは裏腹にさほど中継が増えていないのだ。
○キー局の巨人戦削減で、地元球団中継も削減に
地方局が地元球団の試合を中継する場合、基本的にキー局が関東で巨人戦を放送している時間帯で行われる。しかし、日本テレビが今季巨人主催試合(全72試合)の中継を40試合に削減したのをはじめ、キー局の巨人戦中継が縮小されたため、地方局は思うように中継出来なくなってしまったのだ。加えて、多くの地方局が、系列キー局との兼ね合い、全国ネットセールスの影響等で、「巨人戦を中継せざるを得ない」という。
名古屋地区では、3?4月の対巨人を除く中日戦で23試合のうち、わずか9試合しか中継されなかった。ちなみに、その平均視聴率は16・9%の高視聴率となっている。
かつて「巨人王国」とまで言われた北海道・札幌地区での巨人戦ナイター4月平均は8・5%という結果だ。
地方局は、地元球団戦ならもっと数字がとれるとの思いがあるだけに、ジレンマを抱えている。
(「文化通信.com」 2007年6月11日付記事より)
つまり、地方局は放送したくもない巨人戦を東京キー局に押しつけられ、迷惑を蒙っているというワケだ。人気が低下しているのは巨人戦であって、プロ野球全体ではない。いや、前記「中日スポーツ」の記事によると、熱狂的なことで知られる関西の阪神戦の視聴率も低下傾向にあるらしいのだが、巨人と阪神以外の地域に密着した球団は、決してテレビ中継の視聴率が下がってなどいないのである。
要するに、見捨てられたのは「プロ野球」ではなく「読売巨人軍」なのだ。巨人の球団経営は、「新自由主義的」の一語に尽きる。金の力にあかして四番打者とエース投手と抑えの切り札をかき集める。それが、ナベツネ(渡邉恒雄)や長嶋茂雄らが目指した巨人の野球だ。そして、新自由主義がワーキングプアや格差拡大の元凶であることが知れ渡ってきた現在、新自由主義色の強い巨人の野球から大衆の心が離れて行ったのである。
私は、阪神や中日の球団経営も新自由主義的だと考えている。現に阪神は巨人やメジャーと福留(元中日)らの争奪戦を展開した。しかし、阪神は争奪戦にことごとく敗れた。また、中日も、日本プロ野球においては、巨人・阪神に次いで新自由主義的な球団だが、金の力では巨人や阪神に勝てないので、チームづくりをそれをカバーしている。中でも荒木・井端の二遊間は、中日ファンでなくても感嘆の声をあげるほかない。阪神の人気低下は巨人ほどではなく、中日戦の視聴率は巨人戦・阪神戦とは逆に上昇しているのも、そこらへんと関係がありそうだ。見放されてきているのはプロ野球全体ではなく、新自由主義的な球団経営やチームづくりをしている巨人や阪神だけなのである。特に阪神の新自由主義的球団経営は、このチームがもともと持っていた魅力を著しく損ねるので、経営陣は方針を改めてほしいと思う。一方、巨人は「江川事件」以来のイメージ通りの球団経営だ。
それにしても、かかる不愉快な巨人戦の中継が視聴者のニーズもない地域に押しつけられ、地域の人たちが本当は見たい地元球団の試合の中継が見られないのは理不尽な話である。
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kojitakenさん、こんにちは。
同感ですね。数十年来の阪神ファンである私も今年はかなり熱が冷めました。もう以前と同じようには肩入れできないような気がしています。
今年は民放のプロ野球中継はほとんど見ませんでした。巨人(あるいは阪神)寄りの解説やアナウンスを聞くのに堪えられなくなってしまったのが大きな原因ですが、その背景に kojitakenさんがご指摘なさっているような金にあかせた球団経営やチーム作りに対する反発もあったような気がします。
そんなわけで主に NHK BS1 のプロ野球中継だけで観戦しておりました。セ・リーグの試合で面白かったのは阪神-中日(中日-阪神)戦くらいでしたが、パ・リーグの試合はほとんど全部楽しめました。特に日ハムや楽天、ロッテの試合は特定の球団のファンという立場を離れて純粋に試合内容を堪能できたと思います。
そういう意味で、むしろプロ野球がもっと好きになったように感じられます(パ・リーグ限定というのが寂しいですが)。
2007.12.28 06:03 URL | シカゴ・ブルース #Q7TRsPbs [ 編集 ]
はじめまして。私の家は永年巨人ファンですが、私は寧ろ中日・阪神の方が好きです。
もっと地域密着を認めてもらいたいです。地方局が放送権を持っている試合を中継する場合は素直に認めて全国ネット番組はBSデジタルに移管、地上波は地域密着に徹する。キー局は日テレは巨人、TBSは横浜、フジはヤクルト、テレ朝は西武、テレ東はロッテを関東ローカルと一部の地方局で放送するくらいでちょうど良いです。(TVK、テレビ埼玉、千葉テレビで実現していますが)
テレビキー局を分散させて大阪、名古屋、福岡、札幌に移し、地方局の番組をBS・CSに開放。地上波は地域密着番組を多く、全国ネットはニュースと一部のドラマ・娯楽番組にするなど少なくする時期でしょう。
私は今のテレビ番組がつまらなくて仕方ありません。特に地上波。BSやCSにもっと奮起してもらいたいものです。
2007.12.28 07:39 URL | ゴルゴ十三 #DTxGwd9Y [ 編集 ]
kojitaken さん、こんにちは。
「コメント欄TB」です。
「ブログ戦略(2)」
http://kihachin.net/klog/archives/2007/12/senryaku2.html
2007.12.28 12:24 URL | 喜八 #WE/hy34. [ 編集 ]
知り合いの営業マンが、かつて、阪神の追っかけみたいなことしてました、今もしているのかな?
今晩は。
最下位の時も、そうやって支えてきたファンは、強くなってから応援している人とは、やはり違う、「信者」ですからね。
サンTVも、そういう人等の後押しを受けて、試合終了まで、放映してきたんだと思います。
おかげで、在はんパ・リーグの球団は、あおりを喰ったかも? あるいは、マスコミ戦略が下手やったンかも? 南大阪は全般に下品と思われてて[実際そうかな?]コンセプト作りでの敗北でしょうね。
2007.12.28 23:36 URL | 三介 #CRE.7pXc [ 編集 ]
理不尽の原因は地方局の甘え。
地方局としては不満はあっても
キー局のポチになってるほうが経営が楽。
不満なら地方局は自立しろということです。
野球については
野球ファンが巨人や阪神より
地元のチームを応援したほうが
いいと気が付いただけでは?
マスコミは階級固定社会の特等席
予約済みの人たちです。庶民の味方になる
報道するわけがありません。
なぜならそれは自分達の地位を
下げることになるからです。
自分達の利権だけはしっかり確保。
2007.12.29 01:25 URL | JMa-END(M-END改め) #z7Xcv.4o [ 編集 ]
あの~、原監督になってから巨人の野球はかなり面白くなったと思うんですけど、巨人の独善はいけませんが、球界全体の1/12としての価値はそれなりに認めるべきだと思います。
どこか野球に理解のある企業や自治体が巨人を買い取ってくれると良いんですけどねぇ・・・。
2007.12.29 21:26 URL | sonic #GCA3nAmE [ 編集 ]
>地方局は放送したくもない巨人戦を東京キー局に押しつけられ
この部分の分析は間違いかと思います。
なぜなら、巨人戦を放送しない場合、地方局は独自にスポンサーを見つけてこなくてはなりません。
巨人戦のスポンサーは、全国に巨人戦が流れることを期待して広告枠を買っているのですから地方局の独自番組には金を出しませんし、ですからその損失補填分の支払いに加えて、自分でゴールデンタイムにふさわしい額を出すスポンサーを見つけてこなくてはならない。これは地方局にとって少なくない負担でしょう。
もう一つ、いくら地方での野球視聴率が高いといっても、かつての巨人戦のように年間平均20%を超える視聴率をとっている地域はありません。普段流れている全国ネットの番組と同程度か、やや劣る水準です。
キー局が巨人戦を放送しているからこそ、巨人戦よりも高い視聴率だからと放送枠を流用することができますが、もし巨人戦が今以上に減れば、バラエティを野球に差し替えることはスポンサーとの問題もあって困難ですから、地上波野球中継は壊滅します。
ですから、地方での野球中継の視聴率が高いということを主張しても、現行のテレビ事情のうえではまったく意味がありません。
むしろ、アンチ巨人が一致団結して巨人戦の視聴率を上げることこそが、野球中継を守ることになるのであって、この問題に関して巨人を批判するのはお門違いであるということです。
2007.12.30 10:00 URL | 宮嶋陽人 #- [ 編集 ]
はじめまして。
愛知県に住んでいる者です。名古屋地区の中日戦中継についていえば、中継権を持っている局は、NHKと中日新聞系の放送局各局になります。中日戦ホームゲームローカル中継ですが、ネット各局は、ナイターの場合読売戦との二元中継もありますが、全国ではバラエティ番組を放送しているゴールデン枠にて放送しているケースが多いです。恐らく札幌、仙台、大阪、広島、福岡も同じケースが多いのではないでしょうか?独立局の場合は独自に長時間枠を取ってあります。地元球団を持つ独立系各局も同じでしょう。
ところで、読売戦地上波中継の視聴率低迷は、NHKの朝の連続テレビ小説の視聴率低迷と同じで、「なんとなくチャンネルをあわせる」という視聴方法を多くの人がしなくなったということではないでしょうか?目的を持ってみている人はスカパーに加入するなどしていると思います。(まあ、一昔のようにセは散らばっているものの、パは関東と関西にしかなかったのならともかく、札幌、仙台、福岡にも球団ができたということでそれらの地域では読売の需要が低下したのも事実ですが。)
球界幹部及び在京マスコミの「巨人軍依存症」は重症ですが、いい加減脱してもらいたいものです。
(長々と失礼しました。)
2007.12.30 20:56 URL | 凡人69号 #- [ 編集 ]
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