きまぐれな日々

今年ももう残すところ今日を含めて25日となった。「2007年の回顧」が新聞などに載り始める時期だ。

今年の日本政治における最大のできごとは、7月の参院選での自民党惨敗と9月の安倍晋三内閣退陣であることは論を待たないだろう。そして、否定されたのはひとり安倍晋三のみならず、コイズミ・安倍の「新自由主義」路線であることは、何度強調しても強調しすぎることはない。

元首相コイズミは、「聖域なき構造カイカク」を唱え、国民に「痛みを耐える」ことを求めた。この「聖域」というのが曲者だったのだが、大衆煽動家として抜群の才能を持つコイズミに国民はころっとダマされてしまい、2001年の参院選と2005年の衆院選で自民党に大量の議席を与えてしまった。

その結果現出したのが「格差社会」だという認識は、昨年あたりから一般的になったと思う。「格差社会」は、よりはっきりと「階級社会」という表現に改めるべきだという指摘があり、私もその通りだと思った。先日、デヴィッド・ハーヴェイの 『新自由主義』 (渡辺治監訳、作品社、2007年)という本を読み、これはたいへん面白かったのだが、マルクス主義経済地理学者のハーヴェイは、新自由主義の「実践」を「富裕階級の権力回復のプロセス」ととらえ、新自由主義は、経済成長ではなく格差の拡大を真の目的としたプロジェクトであるとしている。これは現実をかなりよく説明できる非常に面白い仮説だと思った。私はマルクス主義者ではないし、そもそもマルクスを読んだことさえないが、ソ連・東欧の崩壊によって効力を失ったと思われたマルクスの思想が、新自由主義化の進行によって新たな「階級社会」が現出したことによって、再び水を得た魚のようによみがえったという指摘があって、それにはなるほどとうなずかさせられる。日本にも、国民がコイズミカイカクの「痛みに耐えた」末に、階級社会があからさまな姿で立ち現れたのだ。

自民党の政治家を見よ。コイズミ、安倍晋三、福田康夫。みな世襲議員ではないか。田中角栄が首相をやっていた頃は、総理大臣になるためには主要閣僚ポストのうち2つは経験していなければならないとされていたが、安倍晋三はコイズミの特別な引きによって抜擢された男だったし、福田康夫も主要閣僚ポストなどは経験していない。福田康夫といえばコイズミ内閣の官房長官として人をバカにしたようなシニカルなコメントを発していたというネガティブなイメージしか私にはない。そんな彼らが、「頑張った者が報われる社会を」などと言う。福田康夫はあまり言わないが、安倍晋三はよく言っていた。だが、政治の能力に劣り、単にコイズミに引き立てられただけのアベシンゾーにそんなことを言われても、説得力は皆無だった。

民主党の菅直人代表代行は、「自民党の人たちの顔ぶれを見てごらんなさいよ。世襲議員ばっかりじゃないですか」と言っていたが、その民主党も小沢一郎代表や鳩山由紀夫幹事長は世襲議員である。小沢も鳩山ももとは自民党出身であり、要は自民党自体が世襲議員でなければ出世できない 「階級政党」 に変質してしまったということだ。この自民党が、ハーヴェイの言う「経済成長ではなく格差の拡大を真の目的とした」新自由主義を信奉する政党になったのは必然といえるかもしれない。

この期に及んで、コイズミや竹中平蔵は「まだカイカクが足りない」と絶叫しており、日本経済新聞に代表される御用メディアも同様の論調だが、こんな掛け声にダマされる日本人が減ってきたことは、遅すぎるとはいえ歓迎すべきことだ。コイズミにダマされた結果の2001年参院選の結果は、その改選分に当たる今年の参院選でひっくり返った。6年前が自民党の圧勝だっただけに、今回の自民党惨敗との落差は大きく、どうしようもなくなった福田首相は、ついに対テロ新法を衆議院での再議決で成立させる意向を示した。この期に及んでご主人さまのアメリカに尻尾を振りたいようだ。

少し前まで年内解散・総選挙の可能性が言われていたが、福田首相と民主党・小沢代表の「大連立」協議とその破綻、ならびに民主党がいったんは辞意を表明した小沢代表を慰留したことなどにより、解散・総選挙は遠のいた。

次の選挙までに間がありそうな今のような時期には、政党別支持率では自民党が断然高く、民主党はその半分にも及ばないのが通例だが、現在は小沢代表が失策を演じてダメージを受けたはずの民主党の支持率がなお高く、自民党と拮抗している状態だ。それにもかかわらず福田内閣の支持率がかなりの高水準を維持している(ネットでの支持率は低いが、これは福田内閣のネット右翼受けがきわめて悪いことに起因していると思う)のだが、選挙前になると自民党の支持率が下がり、民主党の支持率が上がるのが普通だから、いま解散風を吹かせても、自民党にとっては自殺行為になる。だから当分は解散総選挙はないと思った方が良い。今年の参院選には「郵政総選挙」の裏返しのような浮わついたムードがあったのは確かだから、ネット言論も現在のポピュリズムに流されやすい状況から、より内実を伴ったものに変えていかなければならないと思う。現状で「ネット発の政治家」を出そうとしても、ポピュリストしか出てこないと思うのだ。ネット言論は、まだまだ成熟にはほど遠い。


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ポピュリズムに流されやすい日本の社会なのはまちがいないですね。

ネットの普及で改善傾向が見られるとはいえ日本の世論は日本語の情報を基にしたものがほとんどで、外国ではどうなっているのか比較対照できるようにならないように情報統制しやすく国民は詐欺にあっているようなものです。

人間的に成熟する為には必ずしも語学が必要だとは思いませんが、日本のような国では体制に騙されない為には語学は必要だと思います。

きちんと比較する材料が揃えば、今の日本でも何がダメなのかハッキリするのではないでしょうか? 税制だけを見ても先進国の中では日本は不平等化が進んでいる国だということをキチンと実感できれば少なくとも今の
体制は拒否するしかないということになるはずだと思います。

もっとも、情報与えても自分では理解できないような人も多いような気もしますが・・・

2007.12.07 17:40 URL | Nakedmikan #YzsZgp7A [ 編集 ]

うーん.(^^;) もうすぐ50のオジサンとしては,やっぱりもう一度マルクスを基礎からさらっておかれると良いんじゃないかなって気がしていますよ.私も悪い目をこすって,読書器(本の活字が拡大されてパソコンの17型液晶画面に映される機械)にて,最近『毛主席語録』を読み直しています.小学生の時に読んでいた,中国から輸入された 1967年版で,1968年11月3日に買ったとあるから,小3の文化の日に横浜の中華街で買ったんでしょうね.70年安保の後に出た角川文庫版とは多少異なり,注がまったくありません.430ページほどの文庫本です.この頃には哲学や中国古典なんかの岩波文庫も読んでましたから,ある意味早熟だったのかも知れません.(^^;)

Nakedmikan さんが嘆いている「情報与えても自分では理解できないような人」は,私は病的な人と教育によって理解できるようになる人とに分けるようにしています.前者はもちろん統合失調症の患者さんなんですけど,後者の場合,子供の頃の生活環境が悪かったという事例が非常に多いです.大阪でコンビニを襲った若者なのは典型的でしょう.自分たちの行動が「犯罪」だと理解できない.こういう人たちは心理学的・精神医学的な様々方法を使って,ある意味「洗脳」する必要があると思いますよ.問題は「洗脳」が日本国憲法に触れるということですよね.

2007.12.08 00:23 URL | kaetzchen #HfMzn2gY [ 編集 ]

こんばんは、
今HP見ていて、小沢代表の
こんなインタヴュー記事。もう読まれました?
「小沢一郎独占インタビュー」 小学館『週刊ポスト』 12月7日号
http://www.ozawa-ichiro.jp/massmedia/contents/appear/2007/ar20071203112610.html
国連決議云々を出したのは、しかも「文書」で、福田首相の側だったって?!
インド洋給油よりも、大連立優先とか何とか。面白い話ですね。
ぶっしゅ氏が聞いたら、みさいる飛んで来そうな・・。
やぶから某に・・。なんちゃって。

2007.12.08 17:45 URL | 三介 #CRE.7pXc [ 編集 ]













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インチキなプログラムを入力される恐れを危惧します。だから電子投票法に私は反対します!
 国政選挙にも電子投票 自公民合意、今国会で法改正へ 2007年12月06日12

2007.12.08 01:57 | 嶋ともうみ☆たしかな野党を応援し続ける勇気を!