きまぐれな日々

話はコイズミ政権が発足した年である2001年にさかのぼる。

この頃、プロ野球パシフィック・リーグの近鉄バファローズは、赤字に苦しんでいた。チームを強くすれば客は集まると考えた近鉄球団は、元ロサンジェルス・ドジャースの監督だったトム・ラソーダを「技術顧問」に迎えるとともに、積極的な補強で戦力強化を図った。

今よりずっと熱心なプロ野球ファンだった私は、NHK-BS第1で放送されるプロ野球中継を楽しみにしていた。当時から読売ジャイアンツは大嫌いだったので、巨人戦中継より、パ・リーグの試合や、セでも阪神や中日の主催戦を多く放送していたNHK-BSを見ることが多かった。

覚えているのは、西武球場で近鉄が西武ライオンズ先発の西口投手を打ち込んで圧勝した試合で、アナウンサーが「ダイエーの王監督が、『今年の近鉄は意欲的だね』と警戒していた」と言っていたことだ。この年の近鉄は、シーズン終盤の西武との競り合いを制して、12年ぶりにリーグ優勝した。

しかし、これが近鉄にとって最後のリーグ制覇になってしまった。当時、プロ野球では渡邉恒雄(ナベツネ)の画策によって、人気が巨人や阪神を中心とする一部のチームに集中する流れが作られており、近鉄は優勝しても4年連続でセ・リーグの最下位だった阪神の観客動員数にはるか及ばず、その人気はリーグ優勝を遂げても盛り上がらなかった。ヤクルトとの日本シリーズの視聴率は低迷し、「夕刊フジ」などの四流夕刊紙は、「巨人が日本シリーズに出ないからだ」などと妄言を垂れ流した。

これが、近鉄が球団経営を投げ出すきっかけになった。近鉄がオリックスとの合併を発表したのは2004年6月だった。日曜日の早朝、NHKがスクープしたニュースを旅先の宿で見て知った私は、もちろん大いに驚いたが、「来るべき時がついに来た」と感じた。その前夜、広島カープが巨人の巨大戦力の前に歯が立たず完敗した試合をテレビで見ていたから、余計にそう思った。

ここから、世間を騒がせた球界再編騒ぎが始まった。この騒ぎの仕掛人は、宮内義彦、渡邉恒雄、堤義明の三人で、彼らは2リーグ12球団あるプロ野球を、2球団削減して1リーグ10球団にしようとした。竹中平蔵の盟友として悪名の高い新自由主義者・宮内がオーナーを務めるオリックス・ブルーウェーブは、看板スターだったイチローがメジャーに流出し、観客動員の不振による球団の経営難に苦しんでいたし、それは西武の堤義明も同様だった。彼らは、当時まだ人気の高かった巨人とくっつくことでその分け前にあずかり、なんら経営努力をすることなく果実を得ようと思ったのである。

当時宮内は68歳だったから、「老害三兄弟」とはさすがにいえないが、この時にもナベツネは「老害」と批判されたものだ。そして、三人で悪事をたくらむのは昔からのナベツネの習い性らしい(笑)。

結局このナベツネらのたくらみは、古田敦也率いるプロ野球選手会の抵抗と、それを支持する世論に阻まれ、プロ野球の1リーグ化は阻止された。そして、北海道日本ハムファイターズ、東北楽天ゴールデンイーグルスなど、地方に密着した球団が人気を博すようになる一方、悪事をたくらんだ巨人、オリックス、それに西武は軒並み凋落し、巨人はライバル・阪神タイガースの後塵を拝するようになった。どうした弾みか、巨人は今年リーグ優勝したが、今年からセ・リーグでも導入されたプレーオフで、中日ドラゴンズにコテンパンに叩きのめされて3タテ(プロ野球用語で同一対戦カード3連敗のこと)を食らい、日本シリーズへの進出を阻まれた。

三宅久之は、ナベツネが政界工作をしたのは、日本シリーズに巨人が出られなくなってナベツネが暇になったからだと言っていた。もちろんこれは冗談で、ナベツネの政界工作は参院選直後から始まっていた。昨日のエントリでも紹介した11月7日付の 「きっこの日記」 にナベツネの政界工作が時系列でまとめられているので、ご参照いただきたい。また、11月8日付でもナベツネ及び読売新聞批判が展開されており、こちらも必読である。

「きっこの日記」 ? 「強欲ジジイの茶番劇」 (11月7日)
http://www3.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=338790&log=20071107

「きっこの日記」 ? 「厚顔無恥な新聞の私物化」 (11月8日)
http://www3.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=338790&log=20071108

きっこさんも指摘しているように、安倍晋三が「民主党・小沢代表と話し合いができなかった」ことを首相辞任の理由にあげていたのは、実際には小沢に安倍の率いる自民党との「大連立」を蹴飛ばされたためだと考えてほぼ間違いあるまい。ショックを受けて引きこもってしまった安倍晋三の「心の傷」はまだ癒えないのだろうか(笑)。

ナベツネは、事前に書いたシナリオ通り、首相を福田に代え、改めて民主党との大連立を図った。ナベツネが自民党の「新YKK」といわれる山崎拓、加藤紘一、古賀誠らと、安倍内閣打倒の密談をしていたことは、かつて産経新聞に暴かれ、当ブログでも8月30日のエントリで紹介したが、ナベツネはそれに先立つ8月16日の読売新聞社説で「大連立」を提唱していた。つまり、「大連立」を形成するために邪魔になる安倍晋三をナベツネは切り捨て、安倍と同じような極右思想を持っている麻生太郎をも追い落とし、福田康夫を総理大臣に押し立てたのである。そして小沢一郎は、うかつにもナベツネの描いた「大連立」に乗りそうになってしまった。これが、先週末から世間を騒がせた騒動だった。

私は、ナベツネがフィクサーとしての力を持っていたのは、90年代末の自自連立や自自公連立の時までで、その後政界への影響力を次第に失った過去の人になっていたと考えていた。それだけに、ナベツネが今なおそこまでの力を持っていたことに驚くとともに、こんなナベツネごときにやすやすと動かされてしまう自民党や民主党の政治家たちに深く失望した。

2004年のプロ野球再編劇は、ナベツネの敗北に終わり、読売ジャイアンツの試合のテレビ中継は、徐々に地上波から追い出されつつある。巨人はすでに人気で阪神に抜かれ、実力では中日に抜かれた。もちろんパ・リーグの日本ハムやロッテには歯が立たないだろう。そのうち「巨人は楽天より弱い」と言われるようになるに違いない。事実、昨年の交流戦で巨人は楽天に負け越したし、楽天は田中投手の加入や野村監督の指導によって、着実に強くなっている。

サッカーではナベツネはさらに悲惨で、昔から読売が育ててきた伝統あるチームだった「読売クラブ」の後身・ヴェルディ川崎を「読売ヴェルディ」と称させようとしてJリーグの川渕チェアマンと衝突したがナベツネは敗れた。そうこうしているうち、ヴェルディは人気・実力とも凋落、読売はついに経営権を日本テレビに明け渡したが、ヴェルディの凋落はその後も続き、ついにJ2に陥落した。今調べてみたらヴェルディはJ2で3引き分けを挟んで10連勝中だが、こんなチームをJ1に復帰させないよう他のチームには頑張ってほしい。

このように、プロ野球やサッカーでは駆逐されつつあるナベツネだが、もともと政治記者であったナベツネがもっとも本気で取り組むのが政界工作であることはいうまでもない。ジャーナリストが政権与党の側に立って政界工作をするなど、ジャーナリズム論からいうと言語道断であるが、そんなことが堂々とまかり通るのが日本の政界なのである。

今回、ナベツネに切り崩されかかった民主党の責任は極めて重い。ここは何が何でも踏ん張って、このふざけた「マスコミ界のドン」にサッカー、プロ野球に続く3タテを食らわせ、引導を渡してもらいたい。

もちろん、共産党、社民党、国民新党の他の野党は、本気で党勢拡大の努力を行ってほしい。特に、民主党に対して影響力を持つ社民党と国民新党には、民主党があらぬ方向に突っ走らないよう、影響力を行使してもらいたいものだ。


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大体、プロスポーツの1チームを全国的な人気にしようとするのに無理がある。(新聞拡販のため)。そのフランチャイズで盛り上がっていればよいのです。日本シリーズの視聴率だってチームの地元で高ければ問題ない。大リーグのWシリーズの視聴率だって1ケタか良くても10%台。先日「あの老人」はCS(プレーオフ)にケチつけてましたが勝ったのが親会社が商売敵の中日というのも面白くなかったのでしょう。古館アナが先日「あの老人」を評して「野球も政治も1リーグ」(笑)と・・・・

2007.11.10 14:59 URL | でんそう #szTeXD76 [ 編集 ]

自ブログでも、返事させて頂きましたが、こちらにも、同じものをコピーしておきます。

>早速のコメント、ありがとうございます。あなたのお奨めで、本を読むことは、実行できていませんが…(笑)、思想は抜きにして、晴耕雨読さんと、あなたの姿勢にはいつも、学ぶものがあると、せっせと通っております。健康に留意され、今後とも、エントリーを期待しています。
私も、ここにきて、やっと自分のスタンスが確立と言いますか、固まってきたように思っています。「直観と経験」のブログがどこまで通用するか分かりませんが、今後ともよろしくお願いします。

2007.11.10 15:49 URL | simanto114 #.HUrAvmg [ 編集 ]

古田とナベツネの戦い。えげつない日本野球界の経営者たちに憤慨したものでした。
文春で「ドン達」側にたったドキュメントを読んでから文春購読をやめるきっかけにもなったなあ。
古田氏、民主から出馬の噂はどうなったのでしょうか?

2007.11.10 23:31 URL | #- [ 編集 ]

 「3たて」とは、蕎麦グルメ用語で、「轢きたて、打ちたて、茹でたて」の蕎麦は美味い、っと言う意味もあります。(関係ないか)
 ナベツネがこのような動きをするのは、単なる権力亡者だからだけではないでしょう。
 まぁ、一部はボケによる思い込みもあるでしょうが、自民党政権が、選挙で敗北して、旧悪が暴露されると、そのスキャンダルの中には読売も入っているからでしょう。右翼や暴力団とのつながりは公然の秘密ですし。

2007.11.11 08:06 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

こんにちは、
眠り猫さん処で書いた、品川さんらの対談の中に
『東京のやり方』ってセリフがありました。
大阪も、自治力超低下中です。自業自得な面もかなりありますけど、臭中的攻撃にさらされていると言えなくもないんかも?
ショピン愚モールとかも、従来の『すみわけ』が崩れ、次々侵食されて・・。政治地図にも大きな変化が、進行中でオマス。

2007.11.11 11:31 URL | 三介 #CRE.7pXc [ 編集 ]













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『トンデモ予想』をする事がマイブームになりつつあります(^.^)
 最近「トンデモ予想」をする事がマイブームになりつつあります。「トンデモ予想」と

2007.11.12 23:21 | 嶋ともうみ☆たしかな野党を応援し続ける勇気を!