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きまぐれな日々

これまで何度か書いたように、私はサッチャーもレーガンも中曽根も、政権発足当時から嫌いだった。だが、当時はまだインターネットもなかったし、私自身も親のスネをかじる年代だった。

その後社会に出て、何のメリットも実感できなかったバブル時代を経て、バブル崩壊期に新自由主義が恐ろしい牙を剥き始めた頃になって、それにうすうすと疑問を感じながらも、日本経済新聞をとり、主流になってきた思潮を取り入れようとしたが、どうしても強い抵抗感なしには記事を読めなかった。

1998年頃になると、グローバリズムの弊害を説く書物が出版されるようになり、岩波新書まで反米ナショナリズムの影響が見られるようになって少々驚いたが、それまで半ば諦め気味に受け入れようとしていた、当時主流の経済学者たちの物言いに反対する論理を少しずつ知るようになり、それまで漠然としか頭になかった「反新自由主義」の考え方を体系立てようと思うようになった。

そこからが新自由主義との戦いの本番だった。私は実生活を通じて、新自由主義と戦おうとしたが、なかなか思うようにはいかなかった。そうこうしているうちに、コイズミ政権が発足し、日本人の多くが新自由主義に感化された。この頃にはずいぶん孤立感を感じたものだ。

とりわけ、2005年はひどかった。国民が「コイズミカイカク」を手放しで礼賛し、民主党にはコイズミ以上に過激な新自由主義路線を志向する前原体制が発足した。前原民主党は当初「対案路線」をとり、コイズミ自民党と「カイカク」の速度を競うはずだった。

ところが、歴史はそこから急激に転回する。同年11月に明るみに出た耐震強度偽装問題と翌年初めのライブドア事件。私は、これらはいずれも新自由主義の抱える問題点が噴出した事件だと考えているが、この問題によって民主党は「対案路線」から自民党との「対決路線」に方向転換せざるを得なくなり、本心と異なる方向性で動いていた前原体制は、「偽メール事件」で崩壊してしまう。

あとを受けた小沢一郎は、かつてもっとも過激な新自由主義のプレーヤーだと思われていたのだが、小沢率いる自由党が民主党と合流した当初から、社民主義寄りに転向していた。そして、小沢が代表になると、民主党の経済政策を方向転換させ、これが今年の参院選での民主党圧勝につながった。

ほぼ毎日ブログを更新し、リアルでつらい仕事をこなしていると、なかなか世の中の流れが実感できないのだが、ネット検索で経済問題が論じられた過去の記事に行き当たって、新自由主義がもっとも国民の支持を集めていた頃と現在を比較すると、ずいぶん「反新自由主義」が国民の間で広がってきたことを感じる。

たとえば、2005年12月8日に「JanJan」に掲載された、「アメリカ化する日本と野党の課題」は、オナジミのさとうしゅういちさんによる記事だが、下記のような提言がある。

 野党については、第1党の民主党にきちんと庶民の側に立ってもらうようにしなければなりませんが、そのためにも、まず、反構造改革の経済左派である、共産、社民、国民新党が、一定の勢力を持つ必要があります。そのための選挙協力を07年参院選に向けて進めるべきでしょう。

 それにより、民主党をも野党協力に引き込む。ひいては、なるべく民主党が庶民の側に立つように仕向けるのです。今は民主党は単独政権狙いで、自民党に政策をどんどん近づけています。これでは、いつまでたっても民主党は政権を取れないでしょうし、庶民の苦しみも続くことでしょう。

 野党は、次の総選挙では小泉政権を打倒し、日本の国民の利益を考えた新しい福祉国家を興せるよう目指すべきです。

(JanJan 2005年12月8日 「アメリカ化する日本と野党の課題」より)

現実には、社民党も共産党も生活問題より「9条護憲」のイデオロギーを重視して、参院選で敗北してしまった。両党には、「9条護憲」とともに「25条護憲」にも力を入れてほしいと思う。しかし、とにもかくにも民主党が方向転換して参院選で勝利し、さとう記者の言う「日本の国民の利益を考えた新しい福祉国家」への道は開かれたと思う。コイズミ政権の打倒は、勝手にコイズミが総理大臣を辞めたので実現できなかったが、国民はコイズミの経済政策を継承した安倍晋三内閣を打倒したのである。

もう一つ、感慨を禁じえなかった記事が、「Munchener Brucke」「ネオリベからの開放未だ途上」 で、「ただ新自由主義支持は根強い。企業経営者がや都市部のエリートビジネスマン層は新自由主義を信奉するのは止むを得ないと考えてしまっては負けだ」として、今後まだまだ困難な戦いが続くと展望する記事だが、無論それはその通りだが、あのコイズミ自民党圧勝、民主党前原体制発足という絶望的な状況から、よくぞここまで盛り返してきたなあというのが正直な感想だ。

光の見えない戦いほど人心を暗くするものはないが、いまや光明ははっきり見えてきたと思う。


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私が読んだ中では、デビット・ハーヴェイ’新自由主義、その歴史的展開と現在’(渡辺治完訳、作品社)が渡辺治教授の’日本の新自由主義’の論考を付録に載せてあり、世界と日本の’新自由主義’をまとめて知る上で一番良かった。新自由主義は’階級闘争である’というハーヴェイの指摘は正に正しいと思います。

2007.10.24 15:45 URL | AN #- [ 編集 ]

私には、ケインズ主義と社会民主主義の境界線が今一つはっきりしない。野党だけに限って言えば前者を国民新党、後者を社民、共産と考えると、最近の民主党はその間で悩んでいるような気がします。この違いは新自由主義と新保守主義の違いが一般ピープルに分かりにくいのと一緒かもしれない。
ちなみに、私は安倍がやりたかったのはサッチャリズムじゃなくてサッチョリズムなんじゃないかと思いましたがね。

2007.10.24 20:56 URL | 買国奴 #- [ 編集 ]

今晩は、古寺タケンさん。
>小沢率いる自由党が民主党と合流した最初から、社民主義寄りに転向
難しいですね、この辺の評価。僕も迷ってmす。
経世会[故・竹下氏の角栄氏からの独立行動]以降の動き、複雑ですから・・。
先日、魚住昭氏著の「野中」本、読んだんですけど、保守同士の暗闘に公明や社民[更には解放同盟や共産党]も絡んでいて、国内政治が主ですが、背景には当然アメリカの対日要求も軍事・経済両面、ある。
官僚主導・族議員暗躍の55年体制の諸々の恥部[脅迫・恫喝の利権争いやら、教条主義的組織防衛やら]が『冷戦』という名の『平和』の陰にくっきり。
なんと!、ネット上でも、詳しい紹介されている方がいます。橋本裕さんのHP↓。[面白い記事満載です、この方のHP]
「野中広務とその時代」
http://home.owari.ne.jp/~fukuzawa/nonaka.htm

日本政治の「乱れた」生態、小泉改革が喝采を浴びた基底音[背景?]として、そういった『恥部』に対する『無党派層』の反発を感じとれました。
単純に『新自由主義』とか、ネオコン批判だけじゃあ済まされない、超~複雑な縺れを、
どう解いていくか? 幅広い考察と行動が要るのは、確かやろうけど・・。とても時代の流れが速すぎて、追いつけない・・です。

2007.10.24 21:55 URL | 三介 #CRE.7pXc [ 編集 ]













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