きまぐれな日々

安倍晋三が辞任を表明して1か月以上が過ぎ、その間安倍の発したメッセージは総辞職の前日の記者会見くらいのものだったと思う。現在、安倍は自宅に引きこもっている。

攻撃目標が突然消えてしまったのは、立花隆さんばかりではなく当ブログも同じで、「安倍的なるもの」を生み出し、育んできた自民党自体に攻撃目標を切り替えたのも立花さんと同じだが、なにぶん「アベシンゾー」というピンポイントと違って攻撃対象に広がりがあるので、多角的な攻撃を考えなければならないところに難しさがある。先月、当ブログには検索エンジン経由だけで2万5千件以上のアクセスがあったが、当然ながらその多くが安倍にかかわりのある検索語によるものだったから、今月は検索エンジン経由のアクセスは激減している。国民の政治への関心も低下するこの時期(選挙後しばらく経つと、自民党の支持率が上がるのは毎度のことである)は、地道にいろんな方面に網を掛けていくしかない。

そんなわけで、土日の記事はいつもにも増して書きたいことを書き散らすことにしようと思う。

今日はまず、思想右翼、思想左翼と経済右翼(新自由主義の信奉者)をまとめてからかってみたい。

この三者の共通点は、思考が一次元的であるということだ。思想右翼の場合、左に「売国」、右に「愛国」をとった軸に沿って人物や業績が評価される。どういうわけか、私から見たら最悪の売国奴としか思えない安倍晋三が、彼らにとっては「愛国者」ということになっているらしい(笑)。

これが、思想左翼だと、右に「改憲、軍拡」、左に「9条護憲」をとった軸にとって評価が行われる。左翼だから、左の方が価値が高い。また、経済右翼の場合、左に「抵抗勢力」、右に「カイカク」をとった軸に沿って測られ、「カイカクを止めるな」というシングル・メッセージを発し続けることになる。

こういう単眼的な思考はよろしくない。たとえば、憲法といっても9条だけではなく25条も重要なわけで、生活問題への言及が少なくて、9条護憲ばかり叫んでいても、国民の支持は得られない。私は特に社民党に言いたいのだが、民主党が「9条改憲」に走るのを阻止する意味からも、「9条護憲」ばかりを叫ぶのではなく、逆に従来よりも生活問題を重視する路線をとることによって、民主党から支持者を奪い、民主党への牽制力を強めるべきだと思う。なぜなら、自民党政治に不満を持つ有権者の多くは、生活問題を重視してくれそうなイメージを振りまいている民主党を支持しているのだが、その中には民主党の政治思想が右寄りなのではないかとか、民主党内の新自由主義者が、政権をとったら本性をむき出しにしてくるのではないか、などと危惧している人たちも大勢いるはずだからだ。彼らは、社民党が生活問題そっちのけで9条護憲のことばかり言うので、仕方なく民主党に投票しているのだ。この意見に対して、「9条をないがしろにしても良いのか」という人間は馬鹿である。私は、憲法9条も25条も大事にしろと言っている。社民勢力が弱すぎるのは、日本の政治の大きな欠陥である。

とにかく、物事を考える時は、常に複数の視点を同時に持つことが大事だ。当ブログでよく紹介する「ポリティカルコンパス」(「政治軸」を縦軸、「経済軸」を横軸とする2次元チャート)や、この間のエントリでご紹介した、縦軸に「日米同盟重視?自主独立」、横軸に「軽軍備?重軍備」をとる2次元チャートなどがその例だ。昔の自民党の政治家では、鳩山一郎と岸信介はいずれも重軍備、憲法改定志向だったが、鳩山が自主独立路線をとったのに対し、岸はCIAから金をもらっていたこともあって対米隷従の売国路線をとった。この差はきわめて大きい。

現在、ともに「憲法違反」として同列に論じられがちな民主党・小沢一郎の「ISAFへの自衛隊参加」と自民党の「給油新法」にも同じことがいえる。「世界」11月号に掲載された小沢の論文を読めば一目瞭然であるように、小沢は対米隷従路線を厳しく批判しており、アメリカに言わせれば「オザワはゴーリスト(ド・ゴール主義者)」ということになるらしい。これに対し、自民党の「給油新法」は、飼い主・アメリカに恭順の意を示す、「スネ夫」の思想に基づくものだ。

ところで、ゴーリズムに関していろいろネット検索をしていたら、面白いサイトを見つけた。それは、「All About」というサイト中のカテゴリ「よくわかる政治」の中にある、辻雅之氏のフランス政治に関する解説記事である。

「悩める大国・フランス政治と国民」
http://allabout.co.jp/career/politicsabc/closeup/CU20060327A/

「フランス政治の基礎知識2007」
http://allabout.co.jp/career/politicsabc/closeup/CU20070111A/

記事の内容もさることながら、面白いと思ったのは横軸に「左派?右派」をとり、縦軸に「議会制重視?大衆迎合型」をとった2次元チャートである。チャートは転載しないので、下記リンク先をご参照いただきたい。
http://allabout.co.jp/career/politicsabc/closeup/CU20070111A/index2.htm

これによると、シラク前大統領らが属したゴーリズム政党・共和国連合は「右派・大衆迎合型」、故ミッテラン元大統領らが属した社会党は「左派・議会制重視」に位置づけられるが、前者が左に、後者が右に寄って政策の違いが小さくなってきたところに、ともに極端な大衆迎合型勢力である極右(ルペン党首のFN)と極左(ラギエ党首のトロツキスト政党)が台頭してきたという図式になっている。なお、この記事が書かれたあと、ネオリベ・ネオコン系の親米派とされるサルコジがフランス大統領に就任したが、サルコジ当選後は、フランス政治についての記事はまだリリースされていないようだ。

他のソースにも当たっていろいろ調べてみると、ゴーリズムは、ド・ゴール大統領のカリスマによって自主独立を志向した面が強いので、ボナパルティズムやポピュリズムと関連づけて語られることが多いようだ。ボナパルティズム、ポピュリズムというとコイズミを思い出すのだが、そういえばコイズミと小沢には手法的な共通点がかなりあるかもしれない。自自公連立政権から離脱するかどうかをめぐって、小沢の率いる自由党が分裂した時の2000年総選挙で、自由党は苦戦を伝えられながら小沢個人の人気がものをいって議席増を果たしたのに対し、小沢と対立して自民・公明との連立政権に残った保守党は同じ総選挙で惨敗し、その後自民党に吸収された。2007年の参院選での民主党の大勝も、安倍自民党の自滅もあったが、民主党の代表が小沢だったからという側面が大きかったかもしれない。一方、2005年の総選挙で自民党が歴史的大勝を果たしたのは、コイズミの「カイカクを止めるな」というスローガンが、遺憾ながら有権者の心をつかんだためだった。2人の一番大きな違いは、アメリカかぶれのコイズミが日米同盟重視、というか対米隷従路線をとるのに対し、小沢はド・ゴール流の自主独立路線を目指しているように見えることだろう。

私は、小沢の強権的な政治手法や、軍縮どころか軍備増強に向かいかねない方向性には危惧を持っているが、同じ強権的政治手法をとるだけではなく、むき出しの軍拡志向をとり、その上に「対米隷従」までもプラスされたコイズミや安倍よりはよほどマシだと思っている。

それに何より、ゴーリズムは経済政策では「大きな政府」志向であるのに対し、コイズミや安倍は「小さな政府」志向の新自由主義者である。小沢は、かつて「小さな政府」を志向していたのだが、自由党が民主党に合流すると同時に、政策を社会民主主義志向へと転換した。私は当時、民主党の政策がどう変化するか注目していたのだが、小沢は最初から民主党内の旧社会党の勢力と連携を密にしながら社会民主主義的政策志向のスタンスをとったので、あれっと思ったものだ。おそらく小沢は、そのうちに時代の潮流が、当時全盛だった新自由主義志向から再び社民主義志向に回帰するだろうと、その独特の嗅覚でかぎとって、転向したのではないかと想像している。経済政策を軸にとった時、小沢とコイズミ・安倍の開きは、現在非常に大きい。

だから、暴走しようとしがちな小沢に、民主党内の穏健派や社民党・共産党など他の野党が歯止めをかける必要はあると思うが、真の敵はコイズミによって体質が硬直化した自民党の「ネオコン・ネオリベ」政治であることを忘れてはならないと思う。

それから、話を「よくわかる政治」の分析に戻すと、フランスの政党政治が中道の方に収斂してきていることに対し、極右と極左が台頭していることについて、極右と極左をともに超大衆迎合型とした分析が面白く思えた。そういえばネット右翼も超大衆迎合型だな、と思い出したからだ。極右というとナチスや戦時中の日本の全体主義、極左というとスターリン・毛沢東・ポルポト・金日成などの独裁政権を連想するが、大衆迎合(ポピュリズム)は、大衆というマスの内部にもともとあったはずの個人の差異の切り捨てへと進んで、極右や極左の全体主義へと変化していくのだろう。

なお、「All About」の「よくわかる政治」には、他にもたくさんの記事が収録されている。この記事を書きながら、「よくわかる政治」のいくつかの記事にざっと目を通したが、私が知らないことがたくさん書かれているし、知っていることでも頭の整理にはなるので、それなりに勉強になる。但し、筆者・辻雅之氏の政治的立場は、良く言えば中立的、悪く言えば現状追認的で、特に国内政治に関する解説記事のスタンスには不満を感じるところが多いことを付け加えておく。


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