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きまぐれな日々

福田内閣が発足して国会でも論戦が始まった今日この頃だが、昨日(10月10日)、読売新聞を見て唖然とした。福田康夫内閣の支持率が実に59%に達していたのである。自民党の支持率も大幅に回復し、民主党に大差をつけていた。

だが、ここしばらくのマスコミ報道を見ていると、その理由もわかるような気がする。もちろん、マスメディアが自民党総裁選に大騒ぎをしたせいもあるのだが、福田首相は確かにコイズミ、安倍晋三と続いた異常な総理大臣ではなく、少なくとも常識の通じる政治家である。国民に安定感を感じさせるという読売新聞の指摘は、必ずしも的外れではないと思った。私は、コイズミ内閣で官房長官を務めていた頃の福田康夫が大嫌いで、福田が憎まれ口を叩くたびに頭に血が昇っていた人間なのだが、そんな私が見てさえ、福田康夫は、安倍晋三というこの世のものとも思えない狂った宰相と比較したら、少なくとも議論のできるマトモな政治家に見える。

こんなことを書くと、気を悪くされるブロガーの方も多いと思うが、私はこのところのブログ言論の方がよほど異常に思える。たとえば、安倍内閣がマスコミに指弾されたのは、安倍がネオリベ路線を放棄しつつあったことに対するネオリベ勢力及び米資の報復だ、などとする「陰謀論」は笑止千万というほかない。安倍内閣の支持率は、内閣発足以来、4月から5月前半にかけての時期を除いてほぼ一本調子で下がって行った。その過程には、安倍が「ホワイトカラー・エグゼンプション」を推進しようとしていた時期もあり、こうした時期には支持率はきわだって下がったものだ。もし、本当にマスコミが新自由主義者や米資に完全に乗っ取られているなら、こういう時にこそマスコミが大々的に安倍内閣を応援して、内閣支持率も高めの数字を弾き出させるはずだ。しかし、実際にはそうはならなかった。安倍内閣は、ネオリベ路線に走ろうとした時に、特に支持率を下げたことは覚えておいた方が良い。そして、参議院選挙で劣勢と見た自民党執行部は、突如として「安倍改革」を唱え、野党第一党の民主党を「抵抗勢力」に見立てて選挙戦を戦おうとした。つまり、コイズミのネオリベ路線への回帰を強めた。これを見た時、私は自民党の自滅を確信し、内心ほくそ笑んだものだった。最後までネオリベ路線を突っ走ろうとした安倍自民党は、選挙に惨敗した。

要するに、安倍政権はそのネオコン路線とネオリベ路線の両方を強く批判されたのである。そもそも、ネオコン(新保守主義)とネオリベ(新自由主義)は、互いに独立した思想ではない。ネオリベが生み出す「格差」からく政府や政治秩序への民衆の反感から目をそらさせるため、権力側は外国を敵視して(安倍政権の場合は特に北朝鮮)民族主義や国家主義を煽ったり、「教育カイカク」と称して共同体主義政策、言いかえればネオコン政策をとるものなのだ。ネオリベとネオコンは、互いに緊張関係にあるのも確かだが、切っても切れない相互依存関係にあることもまた一面の真実である。サッチャーもレーガンも、ネオコンであると同時にネオリベだった。

ところが、コイズミの場合はネオコン政策をとらずに強烈なネオリベ政策だけをとった。従来の自民党の政策が、農村から働き手を都会に送り出して高度成長を遂げたあと、企業が共同体を形成してきたのだが、コイズミの構造カイカクがそれをもぶっ壊してしまったので、ネオコン政策の基盤となる、人々が拠って立つところの共同体がなくなってしまい、そのせいでコイズミのあとを継いだ安倍晋三のネオコン政策がうまくいかなかった。これは、9月26日のエントリ「渡辺治氏「新政権、本当の課題」(日経BP)より」でご紹介した渡辺治氏の指摘だが、実にうまく安倍政権の失敗を説明しているなあと感心したものだ。

私がどうにも居心地悪く感じるのは、ネオリベに「だけ」反対する一部民族主義者たちが、「反ネオリベ」を共通項としてリベラルや左派に連携を呼びかけていることだ。だが、彼らの支持する極右、といって悪ければ温和なmewさん(「日本がアブナイ!」)あたりの表現だと「超保守派」ということになるのだろうが、そういう政治家やそれを支持する人たちの意見が内包する自己矛盾を、私はどうしても見過ごすことができない。例を挙げると、一昨日のエントリでも指摘したように、平沼赳夫はサッチャーの教育改革の礼賛者であるが、サッチャリズムはネオコンとネオリベの融合体であり、サッチャーの教育改革にはネオリベ的要素が相当に強いのである。つまり、「反ネオリベ」のはずの超保守派が「ネオリベ」を肯定しているという自己矛盾が生じている。安倍晋三が「ネオコン」と「ネオリベ」を両立させようとして矛盾が生じた、とは当ブログは再三指摘しているが、「ネオコン」と「反ネオリベ」を両立させようとした場合にも自己矛盾は生じるのだ。このことは、私にとってきわめて興味深く感じられる。

ところで、以前「広島瀬戸内新聞ニュース」が「ブログ版」の頃に指摘していたように、「戦後の日本の右派と左派は、実は近似的な共同体主義であり、新自由主義の隆盛で右翼も左翼も流動化したのち、現在昔の右派と左派は更に近似性を強めている」(注:元記事にたどり着けなくてキャッシュから拾いました。さとうしゅういちさんすみません)ので、超保守派の主張が左翼に受け入れられやすい傾向にあるように思う。私は中道に位置するつもりの人間なので、この傾向にはきわめて強い違和感を持つ。誤解を恐れずに言うと、私は右翼とも左翼とも「共闘」などしたくはない。「共闘」はどうにも私の性には合わず、好き勝手な意見を主張し続けたいと思う人間なのである。

最後に、本エントリを読んで、当ブログが福田内閣に対して融和的だと思われるとしたら、それは大変な誤解であると申し上げておく。自民党は歴史的役割を終えた政党であり、福田内閣には「最後の自民党内閣」になってもらわなければ困ると思っている。特に、福田首相が「構造カイカク」の継続を明言したことは重要であって、これへの徹底的な批判が必要であると考えている。

[参考記事]

「日本がアブナイ!」より
"福田自民の小泉・安倍カラー消しに、麻生&保守系が立ち上がるか?+奨学金制度充実が急務"
http://mewrun7.exblog.jp/6602644

「広島瀬戸内新聞ニュース」より
"構造「改革」継続こそ重大な罪"
http://hiroseto.exblog.jp/6597024


PS
「世界」11月号を買い、民主党・小沢代表の論文を読みました。なんか頭がスッキリしなかったのですが、いずれ当ブログでも取り上げてみたいと思います。


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