きまぐれな日々

9月28日のエントリ「新自由主義が生み出した「負のスパイラル」」で、手嶋龍一が小沢一郎を「隠れゴーリスト」と論評したことを紹介したが、これに関連して、たんぽぽさんから「外交と安全保障の争点は、2次元のチャートがわかりやすいと思います」とのコメントをいただいた。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-459.html#comment2108

これは、縦軸に上を日米同盟重視、下を自主独立とした外交政策、横軸に右を重武装、左を軽武装とした2次元ダイアグラムで外交政策と安全保障政策の立ち位置を表わすもので、永井陽之助が『現代と戦略』(文藝春秋、1985年)という本で示したという。

下記に、そのダイアグラムを示す。但し、象限を示す番号その他を勝手に書き換えた。
071001_2d-diagram5.jpg

このダイアグラムは、各象限に位置するカテゴリの命名に若干抵抗があるが(果たして「日米同盟重視」をリアリズムと言って良いのだろうか?)、このように分類すると、モノサシが一本だと見えにくいところが見えてくるのは確かだ。

調べてみると、永井氏は80年代まで活躍した保守系の政治学者とのことで、氏自身は上図の第2象限に位置する吉田茂の政策の支持者のようだ。

これで思い出したのが、吉田茂、鳩山一郎、岸信介それぞれの政策の違いで、かつて自民党の二大勢力だった吉田茂は、前述のように第2象限の「日米同盟重視、軽軍備」、鳩山一郎は第4象限の「自主独立、再軍備(憲法改定)」の立場だった(小沢一郎は、第1象限にいると見せかけて実は鳩山と同じ第4象限にいるというのが、手嶋龍一の指摘ということになる)。要は、戦争に敗れた日本が再起するに当たって、吉田茂は安全保障をアメリカに頼って、経済成長に力を入れようとしたのに対し、鳩山一郎は自主独立を目指し、そのために自前の軍事力を持とうとしたのである。実際、日ソ国交回復は鳩山政権時代に行われた。ところが、アメリカはそのどちらも気に入らなかった。アメリカは、当時台頭してきた共産主義と対抗するために、日本を反共の砦にしようとして、軍事力の強化を求めていた。だから軍備拡大に不熱心な吉田の政策も、日ソの国交を回復し、日中関係も改善しようといていた鳩山の政策も好まなかったのである。そこで、日米同盟重視かつ軍備拡大を政策としていた岸信介を応援し、日本を属国化しようとした。現に、近年アメリカで公開された情報により、CIAが幹事長時代の岸に資金を提供するなど、岸政権成立に大いに協力したことが明らかにされている。岸のスタンスが、上図でいうと第1象限に位置することはいうまでもない。

現在の政治情勢で、大きな問題だと思うのは、2000年以降、岸派の流れを汲む森派(現町村派)の政権が続いていることである。この派閥は、ずっと日米同盟重視、軍事力強化の自民党タカ派集団だった。それは、アジア外交重視の「ハト派」といわれる福田康夫首相でも変わらない。福田は、あくまで「派内ハト派」に過ぎないのである。上記ダイアグラムでいうと、原点に近いながらも第1象限(日米同盟重視、重武装)にいるというのが福田康夫の政治的スタンスであろうと思う。

だから、所信表明演説で憲法改定や集団的自衛権の問題に触れず、前首相安倍晋三のカラーを一掃したように見えても、インド洋における自衛隊の給油活動が「国益に資する」として新法を制定し、アメリカへの上納金献上を継続するつもりなのだ。そのために、防衛大臣を高村正彦から石破茂に変えるなど、態勢は万全だ。福田康夫は、安倍晋三のような馬鹿ではない。

給油活動が本当に日本の国益に「資する」のか、これはイデオロギーを抜きにして徹底的に議論されなければならない。アメリカの国力は、右派の多くの人が考えているよりずっと低下しており、あまりにアメリカ一辺倒の政策はリスクが大きく、国益を損ねると私は考えている。

それにしても、福田康夫の政策に関する報道を見ていてつくづく思うのは、福田という男もまた、母方の祖父・岸信介に徹底的にこだわった安倍晋三とよく似て、父・福田赳夫への思い入れがきわめて強いということだ。

福田はどうやら、緊縮財政路線を進もうとしていて、テロ特措法もさることながら、私はこれが大きな問題だと思う。で、思い出されるのが福田赳夫が大蔵官僚出身らしく、財政均衡・安定成長論者で、池田勇人の高度成長政策に反対していたことだ。しかし、現実には日本が赤字国債を初めて発行した時(1965年)の大蔵大臣は福田赳夫だったし、1976?78年の首相在任当時には積極財政政策をとり、福田政権の後半では景気が回復した。78年のサミットで福田赳夫が7%成長を公約し、実際には5%ほどの成長しか見込めなさそうな状況になった時、福田赳夫が新聞に叩かれていたのを覚えている。また、政府の財政赤字は、当時から議論の対象になっていた。福田康夫に、父・福田赳夫のような柔軟な対応能力があるかどうかは、今後を見てみなければわからない。「緊縮財政・消費税増税」の財務省路線に強くこだわるようなら、徹底的に批判していかなければならない。

なお、繰り返しになるが、福田政権に対しては、安倍政権に対すると同じ攻撃の仕方は通用しないと思う。スキャンダルをあげつらっていい気になっているうちに、マスコミの情報操作などによって、給油活動継続支持が世論の主流となり、対米隷従が延々と続き、カイカクの継続を明言した福田政権の新自由主義政策によって、格差はどんどん拡大し、日本がますます住みにくい国になる、そういう展開を私はもっとも恐れる。政局よりも政策を語れ。この一言に尽きると思う。


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興味を持ってくださって、まことにありがとうございます。
2次元チャートも書き直してくださって、これもどうもありがとうです。
(スペースを全角にして、ずれないようにしたつもりだったのに、
やっぱりテキストだけでは、だめでしたね。(苦笑))

アメリカにとって都合がいいのは、まさにI、II、III、IVの順ですね。
「日本型ド・ゴール主義」がいちばん困りもので、
それよりは「非武装中立」のほうが、まだましと考えていると思います。
(だから小沢一郎氏のように、隠れド・ゴール主義とおぼしき人物には、
神経をとがらせることになるんでしょうけど...)

永井氏が本を書いた80年代は、政治的リアリズムから、
軍事的リアリズムへのシフトが、顕著になってきたころでした。
ところが、軍事的リアリズムに見せかけて、じつはド・ゴール主義、
という人は、このころからすでに、結構いたみたいです。
「アメリカは、最近の日本の状況を歓迎しているようだか、
隠れド・ゴール主義が、たくさん混じっているので気をつけろ」
永井氏は警告していたそうですが。


それと、「政治的リアリズム」「軍事的リアリズム」という用語は、
マイク・モチヅキ氏が使っていたようです。
わたしも、よくわからないけど、理想主義に対して現実主義と、
言われていたものを、ふたつにわけたのかもしれないです。
(あるいは、アメリカ人だから、自国寄りが「リアリズム」なんだったり。(笑))

この2次元チャートは、永井氏が、アメリカ人相手に
日本の事情を説明するときに、使っていたみたいです。
モチヅキ氏と永井氏は、同じ研究会に出たりと、交流はさかんだったようです。

2007.10.03 01:54 URL | たんぽぽ #ZiqE0vWU [ 編集 ]

政局よりも政策を語れ。この一言に尽きると思う。
此れが輿論として今一番必要な事なのではないかと思います。私は能力不足なので、皆様に期待するしかないのですが・・・・

2007.10.03 14:29 URL | わこ #dN1wHbUA [ 編集 ]













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テロ特措法延長・新法制定反対!大阪から政治の流れを変えよう!10・3緊急府民大集会に参加しました
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2007.10.04 02:01 | 嶋ともうみ☆たしかな野党を応援し続ける勇気を!