「ベルサイユ化」抜け出せ
基本的に言えば、安倍内閣は能力不足であり、同時に時代感覚が乏しい。安倍内閣の一番の体質的な欠点は「ベルサイユ化」なんです。
ベルサイユ化とは、フランスのルイ14世がパリを離れてベルサイユ宮殿を建てた。それから100年くらいたったルイ16世のころになるとベルサイユ宮殿には王様と取り巻きの貴族や官僚が集まり、全国で暮らす庶民のことは全く知らなくなった。自分たちの贅(ぜい)を極めた生活がすべてだと思い込んでしまった。
安倍内閣は2世、3世議員ばかりで、そのほとんどが地方に住んだ経験のない東京生まれ、東京育ち。今世界で最も変わっていない時代遅れの場所は東京です。東京にいる限り、規格大量生産時代からずっと変わっていないビルはどんどん建つし、土地の値段もそこそこ高いし、消費は盛んだし、若い人は集まっている。だから地方都市のシャッター通りや高齢化なんかの話の実感がないんですね。
安倍内閣が再生するにはまずベルサイユから出ることです。今度の内閣改造でベルサイユ型から抜け出せなければ国民はがっかりするでしょう。
地方はものすごく変わりました。衰退するという意味でも、高齢化するという意味でも、国際化という意味でも、変化をひしひしと感じる。ニューヨークやパリ、フランクフルトなら先端的な変化を感じる。人種が混合し、(知恵を生かして価値を生み出す)知価産業が起こり、大企業がファンドに買収されている。だが東京は官僚規制に守られて移民も企業買収も少ない。そこだけで暮らす安倍内閣は世界の文明の変化からも地方の衰退からも孤立している。そのことをご本人も取り巻きも霞が関の官僚も分からない。
東京しか知らないから地域格差は自然に生じていると思っている。でも世界の中で1980年以降、首都圏の経済、文化の国全体に占める割合が高まっているのは日本だけなんです。自然に任せていたら地方分散になる。逆に言うと、日本は大変なお金と権力で東京に集中させている。これをやめなければいけない。それが東京にいる人たちには分からないんですよ。自分たちが地方分散を出来なくしているという意識がないから、役所の権限を強化してお金をばらまいてやろうという発想になる。こういう矛盾した事態になっていることが実感として首相に入っていない。
小渕内閣、森内閣まではそんなことはなかった。地方に根を生やした政治家、その周辺には地方の実業家も政治家も農協さんも建設業者もお医者さんもいて、国会へ持ち寄って「うちのところはこういうことになっている」と言い合って、悪い言葉で言えば「族議員」がそれぞれの官庁を監視していた。だから官僚の自由にならなかった。ところが小泉前首相の時代になって、各省の状況に詳しい族議員を辞めさせてしまった。
安倍さんは首相官邸主導といって有識者会議をたくさん作っているが、会議の意見はまとまらず官僚主導の答申になる。大勢の委員に思いつきを言わせておいて、結局は事務担当の官僚がまとめる。有識者会議は官僚主導のための隠れ蓑(みの)になりやすいんです。それを安倍さんがわからないのは、官僚が自分の味方だと思っているからでしょう。官僚は敵ではないが味方でもない。官僚機構のための官僚であって首相のための官僚機構ではない。
まず官僚依存をやめないといけない。そのためにはこの人が医療に詳しいとか、この人は財政に詳しい、この人は税制に詳しいという有能な政治家を育てていかなければいけません。
(読売新聞 2007年8月17日付 堺屋太一氏インタビュー)
これは非常によく書けた読みやすいインタビュー記事で、割愛できる箇所がなかった。聞き手は、読売新聞政治部の高木雅信記者である。
堺屋氏は、同様の主張を7月22日のTBSテレビ「時事放談」で述べており、それを同日付エントリ 「地方は年金問題に怒っているのではない、地方切り捨て政策に怒っているのだ」 で紹介したことがある。今回の読売新聞のインタビュー記事によって、堺屋氏の主張を詳しく知ることができるので、たいへんありがたい。
私は地方在住だが、しばしば上京することがあり、そのたび東京人の感覚の鈍さにあきれることが多い。だから、堺屋氏の主張は実感にとても合致しており、うなずきながら一気に記事を読んだ。溜飲が下がる思いだった。
堺屋氏の主張に私などが付け加えることは何もないのだが、都知事選で石原慎太郎に圧倒的な得票をもたらし、全面的に石原を信任した東京都民、参院選で、他の道府県だったら間違っても当選などあり得なかったであろう丸川珠代を当選させた東京都民のことを思うにつけ、東京というのは本当に別世界なんだなあ、と感じる。東京という街は、一度堕ちるところまで堕ちるしかないのだろうか。
そして、その東京で終焉寸前の栄華に浸っているのが、安倍晋三や麻生太郎などの世襲議員たちなのだろう。「ベルサイユ化」とは言い得て妙で、「岸信介の孫」を売りものにしている安倍晋三は、確かにルイ14世が残した最後の栄華をむさぼっていたルイ16世を思わせるキャラクターだ(但し、ルイ16世はルイ14世の二代あとの国王ではあるが、ルイ14世の孫ではない)。
この安倍を形容するのに、「ベルサイユのばら」をもじった「ベルサイユのバカ」というフレーズを思いついたのだが、誰か使っていないかと思ってGoogle検索をかけてみたら、「きっこのブログ」が昨年10月6日に使っていた。これは、パチンコの「ベルサイユのばら」に引っ掛けたものなのだが、きっこさんが「アベシンゾー」というカタカナ表記を初めて用いたのは、この日の日記だった。
ともあれ、ルイ16世が処刑されてブルボン王朝が終焉したように、安倍晋三内閣が退陣して長年の自民党政治に幕が引かれることになりそうだ。安倍にとって幸運なのは、現代日本にあっては、失政の咎によって死刑に処せられる心配はないことだろうか。
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ベルサイユ化ですか。
なるほど。
私の場合は「北条高時化」と言う喩えを良く使います。
でも同じですよね。
北条高時もちなみに切腹しましたが、安倍総理にはその心配はないですから幸せですね。
ちなみに、北条は新田義貞挙兵からわずか2週間で滅びました。
なお、今、株とドルが急落していますが、安倍政治が前提としてきたものが崩れています。
新しいブログのほうにきじをアップしましたのでTBさせていただきます。
平成版北条高時=日本版ベルサイユ安倍総理には期待できないのは当然ですが。
2007.08.18 23:51 URL | さとうしゅういち #EGTCt1XI [ 編集 ]
毎回、楽しみに読んでます m(_ _)m
政治に疎い私としては、ココの評論はホント解り易く
かつ、面白いです。
さて、私は長崎出身ではありますが
東京側(埼玉の川越→杉並区)へ出てきて10年以上経っており、
>しばしば上京することがあり、
>そのたび東京人の感覚の鈍さにあきれることが多い。
の件を読んで
“アレ?もしかしたら俺も東京に毒されてる?”
と心配になってきました(^^;
で、“東京人の感覚の鈍さ”について
そこんトコ“もうチョッと詳しく”説明していただけないでしょうか m(_ _)m
謝々。
2007.08.19 01:36 URL | 玄海。 #K1aWH6Ik [ 編集 ]
「首都機能移転の掲示板」で議論が盛り上がってた頃から堺屋氏の言動を生暖かく見守ってますけど、相変わらずピンボケしまくりですなぁ・・・・・
>地方はものすごく変わりました。衰退するという意味でも、高齢化するという意味でも、国際化という意味でも、変化をひしひしと感じる。
はぁ!?どの口が言っているのでしょうか??その地方で企業買収している外資が中枢機能を置いているのって他ならぬ東京なんだし、それこそ偽装請負や不法労働で地域のコミュニティーからも僻目に見られている地方と比べても、首都圏の方が「国際化という意味でも、変化をひしひしと感じる」のですが。石原都知事の排外主義を差し引いても、地方での外国人の扱いって左程褒められたもんじゃありませんよ。
>ニューヨークやパリ、フランクフルトなら先端的な変化を感じる。人種が混合し、(知恵を生かして価値を生み出す)知価産業が起こり、大企業がファンドに買収されている。だが東京は官僚規制に守られて移民も企業買収も少ない。そこだけで暮らす安倍内閣は世界の文明の変化からも地方の衰退からも孤立している。そのことをご本人も取り巻きも霞が関の官僚も分からない。
東京の「企業買収も少ない」のは、止の詰まり経団連に名を連ねている既存の大企業が経営に口出されたくないなんて言うのはスルーですか~??官僚規制にばかり言及していて、その庇護を受けたり逆に便宜を与えたりしてる財界には言及無しじゃずるいですよ~
大体、「官僚規制」に逆らって伸びてきたのは大概が東京にある企業だったり、地方で起業しても東京圏での競争で勝ったりしてるてのが多いんでしょ?「官僚規制」によって庇護されてるのが地方経済の実質だったから、イキナシ"構造改革"されて地方が衰退したんじゃないの??
>それが東京にいる人たちには分からないんですよ。自分たちが地方分散を出来なくしているという意識がないから、役所の権限を強化してお金をばらまいてやろうという発想になる。こういう矛盾した事態になっていることが実感として首相に入っていない。
で、役所の権限を弱めて東京のビッグビジネスの発想で日本全体を運営しようと言う訳?日本の経済格差がアメリカ以上にすらなっているて統計が出てるんですが??
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20070817
堺屋氏は「ベルサイユ化」ばかり問題にして、日本全体を「マンハッタン化」しようとでもお考えなのですかね?だとしたら堺屋氏が批判としている対象の小泉"構造計画"も目標は同じなんですけど、「東京を中心とした経済効率を向上させて、建前としては地方に自立を求める」→「結果として東京だけ繁栄すれば良く→地方は東京の繁栄に依存しても構わない」という線では全く同じなんだし。唯一違うのは堺屋が経済的繁栄のために首都を移転すべきと咋に主張している一点だけ。これでよくもいけしゃぁしゃぁと・・・・・と思いますな。
最後に一点、
>小渕内閣、森内閣まではそんなことはなかった。地方に根を生やした政治家、その周辺には地方の実業家も政治家も農協さんも建設業者もお医者さんもいて、国会へ持ち寄って「うちのところはこういうことになっている」と言い合って、悪い言葉で言えば「族議員」がそれぞれの官庁を監視していた。だから官僚の自由にならなかった。ところが小泉前首相の時代になって、各省の状況に詳しい族議員を辞めさせてしまった。
えぇ~!!堺屋氏って族議員と官庁の癒着を批判してたんじゃないのか!?
#ちなみに「首都機能移転の」掲示板は↓。一度ご覧になってみて下さいませ
# http://6400.teacup.com/0120320354/bbs
2007.08.19 02:01 URL | 杉山真大 #5oClqcV. [ 編集 ]
管理人様、大変失礼ながらこの場をお借りしてさとうしゅういちさんへのお話をさせてください。(yahoo ID 昔適当に入れたらわからなくなって、広島瀬戸内新聞にコメントできない。)
安倍晋三=現代の北条高時(それ以下ですが)という例えは絶妙と思います。
ただ、前原前民主党代表を青年将校に例えるのは別の効果が懸念されるかと。
確かに視野が狭く独「善」的な青年将校は私は嫌いですが「青年将校」という響き自体に「格好良さと好感」を無条件で感じてしまう人が多いのです。
特措法関連での前原氏は「現代の小早川秀秋」に例えるべきかと。
2007.08.19 11:00 URL | 焚火派GALゲー戦線 #tmqJlh8o [ 編集 ]
ちなみに,ベルサイユ宮殿にはトイレがなかったのです.
つまり,傘のようなスカートを穿いたお姫さまたちはパンティなど穿いておらず,立ちション・立ちウンコだったわけですな(笑) 当然,王子さまとの……も,汚穢なお尻との対決(まるでどっかのマニアックなビデオや)(笑)
安倍ちゃんも似たような環境で育ったんでしょうな(笑)
2007.08.22 21:18 URL | kaetzchen #HfMzn2gY [ 編集 ]
>立ちション・立ちウンコ
いえ、さすがに、その場でしゃがんでやりました。(笑)
張りスカート&下着なしのおかげで、
女の人のほうが、男の人より、「野」でやりやすかったというのが、
なんとも皮肉だったりするんだよね。(笑)
2007.08.23 01:54 URL | たんぽぽ #ZiqE0vWU [ 編集 ]
神田の(水道)水で産湯を浸かったものの、生まれ育ちが三代続くという江戸っ子の認定基準を満たしていない私ですが、戦前からの東京人の名誉のために一言。
二・二六事件の主力となった東京本籍の出身者で構成された第一師団は満州・北支へ配点された後、戦況悪化に伴い更に南方へ派遣され、フィリピン防衛の主力の一部となり膨大な戦死傷者を出しています。私の伯父も一人は戦死、一人は栄養失調でやせ細りましたが何とか生き残り帰還。別の伯父は更に南方に送られ米軍の攻撃で一生片足が不自由となる傷を負いましたが、同じく栄養失調になるも何とか生き残り帰還。東京に残った家族は、十万人を超えるといわれる死亡者を出した東京大空襲を、伯母の一人が火傷で耳たぶを溶けて失くした程度で何とか生き延びることができました。
戦前から東京に住む根っからの東京人というのは、戦後の地方からの転入者よりは、よほど戦争嫌いだと思います。
2007.08.25 16:41 URL | ゴンベイ #eBcs6aYE [ 編集 ]
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