きまぐれな日々

参院選で負けた安倍晋三首相が、開票がほとんど進まないうちから早々と「続投」を宣言し、大多数の国民を呆れさせてから、10日あまりが経った。

「週刊朝日」 8月17日号は、「いつまで続く、ピンずれ内閣」と題した特集を組み、細川護熙元首相へのインタビューで細川氏に「安倍さん、お辞めなさい」と語らせているのをはじめ、自民党、公明党および民主党の政治家たちに、安倍の「続投」について聞いた記事を掲載している。そのうちからいくつかを抜粋する。


谷垣禎一 「『理解された』は正しくない」
 大敗北。安倍さんは「基本路線については理解していただいている」と言ったけれど、それはあまり正しくない。続投するならば、まず、安倍政権としてなぜ負けたかをしっかり分析し、今後のことをしっかり打ち出していかないといけないと思う。

菅直人 「民主主義とかけ離れている」
 少なくともこの10カ月の安倍総理の政権運営に対して国民がノーであることは、今回の選挙ではっきりした。その国民の判断を平気で無視できるところに、安倍さんの本質が表れているのではないか。
 自民党そのものも相当に劣化している。「お友達内閣」ではお友達にならないと重要なポストに就けないから、国民の声はわかっていても、総理・総裁の権力におびえて声を上げられない。一種の恐怖政治になっている。

高木陽介 「自民にモノ言う公明になる」
 安倍さんが「基本政策は否定されていない」と言ったの強弁だ。今回の選挙の争点は「安倍晋三」で、結果的に国民からレッドカードを突きつけられた。「美しい国」や「戦後レジーム」(からの脱却)は有権者に受け入れられなかった。
 安倍さんは「私の内閣」とよく言うが、そうではなくて、大切なのは国民。今の自民党には、耳の痛いことを言ってくれる人がいない。だから公明党が、太田昭宏代表がご意見番にならなくてはいけない。

後藤田正純 「美しい責任の取り方を」
 安倍さんは、もちろん退陣すべきだ。人に推されて続投するならともかく、自分でまだ結果も出ていないうちに、続投表明した。これは、「専制君主」以外の何ものでもない。「美しい国」というなら、「美しい」責任のとり方があってしかるべきだ。自分の言葉と自己矛盾している。
 今回の選挙では、小泉・安倍政権の構造改革路線も否定されたと思う。彼らは改革(リフォーム)と言いながら、家の柱まで壊してしまった。早急に、規制緩和の再検証や、地方再生への取り組みなど政策の転換をすべきだ。

石破茂 「首相は王権神授説ではない」
 総理は、自分から辞めると言わない限り辞めさせられない。まして圧倒的多数が総裁選で安倍さんを支持した。「辞めろ」の声があがるはずがない。だからこそ、自分で辞めると言うしかなかった。なのに辞めないと言うのは信じられない。
 私の内閣。私の使命。安倍さんは常に「私」だ。これは私物化か。そして、まさしく安倍さん自身が言うように、今回はその「私」が問われた。民意は、安倍さんにはっきりノーと出たのに、なお総理を続けると言う。
 不祥事を起こした会社や業績不振の会社の社長が、「行政を立て直すことが私の使命です」と言って辞めないのと一緒だ。そんな会社は社会で受け入れられない。内閣は国民から与えられるもの。王権神授説ではない。

山本一太 「一回野に下って奪い返せばいい」
 今回、確かに国民は安倍さんを選ばなかったのかもしれない。しかし、参院選は政権選択の選挙ではないから、安倍さんに突きつけられたのはレッドカードではなくイエローカードだ。
 安倍さんが続投を選んだ以上、私は支持するし、ほかに選択肢はない。
 ただ私は天邪鬼(あまのじゃく)なので、安倍さんにどうしても続けてもらいたい一方で、この砂上の楼閣が一回崩れたらいいなとも思う。長老議員や生意気な衆院議員が、自民党は「万年与党」だという幻想をもとに行動しているのがムカムカする。一回野に下って、奪い返せばいいじゃないか。

長妻昭 「一秒でも早く衆院解散を」

 もし自民党が選挙に勝っていたら、私は責任追及の検証委員会に呼ばれて、5千万件の問題を暴露しいた責任を問われたかもしれない。そう思うと、半分怖い感じがする。
 選挙後半の街頭演説で、消えた年金問題は安倍内閣への「自爆テロ」だという言葉が自民党から盛んに出た。社保庁改革を阻止したい組合や職員が、情報を民主党にリークしているという。ならば、私もテロリストということになる。全くの事実誤認だ。
 5千万件の問題は国会での予備的調査でわかったもので、そこには柳沢(伯夫)大臣もハンコを押してあるから、その論理でいくと、自爆テロの主犯は柳沢大臣になってしまう。
 「私をとるか、小沢さんをとるか」と迫った安倍さんは辞めるべきだ。われわれは一秒でも早く衆院の解散に持ち込みたい。ただ今回の年金問題も、政局にしようという発想ではなく、被害者の弁償を進めようとやってきた結果、期せずして争点になった。自民党は国民への対策に目が向かず、民主党対策、民主党攻撃に走った。そこに国民は違和感を感じたんだと思う。

舛添要一 「王様、裸ですよ」
私なら安倍さんのような決断はしない。内閣総辞職するのが当然だろう。しかしフライングして走り始めてしまった以上、権力闘争や足の引っ張り合いをしている余裕はない。とにかく自民党は数が少ないんだから。
 「王様は裸だよ」と言ってくれる子供の役割をする人物が必要だ。そうすれば、裸の王様が着物を着ることになる。今の内閣は、みんな王様の着物は素晴らしいと言う人ばかりだ。
 それにしても体制が判明する前に負けるのを前提に続投を表明したのはけしからんことだ。これほど大事な総理の決断を、ぶら下がりの記者に言ってしまうというのはいけない。こちらはまだ試合が終わってなかったんだから。

城内実 「改革のカラクリばれた」
 私の地盤の静岡はもともと自民党が強いところだが、今回はお灸を据えないといかんという声が強かった。改革で生活が良くなると思っていたら、格差は広がり、中小企業や個人商店はつぶれる。地方の自民党支持者の中には、「期待を裏切られた」という気持ちが強かったのではないか。
 ただ安倍さん個人に対するノーかと言うと、必ずしもそうではないだろう。「戦後レジームからの脱却」を掲げる安倍さんが、教育基本法改正などの業績をあげていたことは評価すべきだ。
 本当にやらなきゃいけないのは「小泉・竹中構造改革路線からの脱却」だ。選挙結果は、小泉政権の負の遺産がどどっときた形。「改革」のカラクリがバレてしまったわけだ。
 「美しい国」には賛成だけど、弱肉強食の競争路線だけだと「醜い国」になってしまう。安倍さんは小泉さんと異なる価値観を持っているけど、後継者として指名された事実があるから、まだ脱却できていない。

(週刊朝日 2007年8月17日号より)


なお、「週刊朝日」による各政治家へのインタビュー記事は、ここに抜粋したものよりはるかに長いこと、鳩山邦夫、平沢勝栄、深谷隆司、それに経済アナリストの森永卓郎の各氏へのインタビューも掲載されていること、および雑誌に掲載されている「ですます調」を「である調」に書き改めたことをおことわしておく。また、最近の朝日新聞社の傾向であるが、社民党や共産党の政治家の意見は雑誌には掲載されていない。

これを読んで、意外な人が意外なコメントをしているのに驚かれる方もおられるだろう。私は、特に山本一太の本音が、彼の日頃の言動とはかけ離れていることに驚いた。

最後に掲載した城内実については、以前のエントリでも「安倍に立場の近い政治右派」として厳しく批判したことがあるが(昨年11月16日付 「安倍晋三につながる極右人脈」)、案の定、週刊朝日のインタビューに応じた与野党の政治家の中ではもっとも安倍寄りの意見を述べていた。

今後ますます反安倍・反小泉の議論は活発化するだろうが、「城内実は 『AbEnd』 の敵である」 と、改めて強く主張しておきたいと思う。この男は政治思想上の「極右」であり、ある意味コイズミ・竹中ら「経済右派」よりはるかに危険である。


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 毎度、どうも。眠り猫です。
 雑誌を買わずに済みました。ありがとうございます。
 基本的には、ほとんどの方が、与野党を問わず、参院選の敗因は「安倍晋三」であると、「戦後レジームの脱却」や「美しい国」が理解・支持されているという安倍の言葉は虚妄であると言っているのですね。
 国民感覚からすれば、その通りだと思います。だから、選挙後も安倍の支持率は大幅に下げ続けているのだと思います。
 特に世論調査で、安倍内閣の特徴は、いちぢるしく「不支持」率が高いことです。
 コイズミを勝たせたB層を含む無党派層が、ほとんど安倍不支持を表明しているわけです。
 今回の民主党は、政策面でリベラリズムを打ち出し、新自由主義を正面から否定しました。そして、勝利後参院での法案提出作戦では、そのマニフェストを守る行動に出ています(法案の内容の吟味は私もこれからですが)。
 これはポピュリズムではなく、政策論争で、安倍に勝ったと言えます。
 テロ特措法反対は、小沢氏の国連重視主義の表明で、その是非はともかく、媚米外交からの脱却を国民に印象付けるもので、これもポピュリズムとは違うものでしょう。

 あと、引用された多くの方の意見のうち、自民党の石破元防衛庁長官の発言が一番鋭いですね。
 では。

2007.08.10 10:10 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

こんにちは。
kojitakenの日記で記事を紹介していただきまして、ありがとうございます。
今回の「週刊ポスト」の記事は一人でも多くの方に読んで欲しいと考えて記事にしました。おかげさまで通常の倍近いアクセスがありました。
光市母子殺人事件は、テレビでは少年法や死刑制度、弁護団の問題などの点だけが取り上げられますが、それ以外にも考えるべき問題があることを初めて知りました。この精神科の医師は7月26日に公判で証言しているのですから、他のマスコミは知りながら積極的には報道しないのでしょう。却って、そこに何らかの意図を感じてしまいます。
とにかく、マスコミには今後もこのような記事を期待したいものです。

2007.08.10 23:53 URL | もそもそ #7iSbDyII [ 編集 ]

現場主義で事実に向き合う記者の生活の糧を得る大事なメディアの雑誌は野垂れ死に寸前

主要50雑誌の「部数激減(秘)データ」:FACTA online
元気なのは経済誌だけ。業界トップとなった小学館でさえエビちゃんに頼る「総負け」の惨状だ。
2007年8月号
http://facta.co.jp/article/200708012.html

2007.08.12 04:50 URL | ゴンベイ@AbEndフォーラム #eBcs6aYE [ 編集 ]

お久しぶりです。この週刊朝日の長妻議員のコメントをネタに一本エントリを書いたのですが、文字起こしはめんどくさかったので、kojitakenさんのエントリからコピペさせてもらいました。事後連絡になってすいません。
あと山本一太議員の言動がぶっきらぼうに見えるのは、実は衆議院自民党と参議院自民党が仲が悪いからなのです。「参議院なんかいらない(村上 正邦)」を読めば理由がわかります。選挙では参議院自民党は衆議院自民党の後援会組織におんぶで抱っこでお世話になっているので、選挙中は頭が上がらないのです。この時点では選挙も終わったので、言いたい事を言えたのでしょう。

2007.08.16 22:25 URL | hagakurekakugo #- [ 編集 ]

私も、コメントの中で、城内さんのが一番びっくりしました。河村たかしが、あんなウヨクなのかとびっくりしたくらいにね。
『週刊朝日』は、田原総一朗や林真理子を連載記事に登用するなど、完全に2大政党支持、権力迎合ではないですか。
『週刊朝日』は、医院などで拾い読みをするだけですが、ちょっとも面白くない(反骨精神なし)です。
社民党や共産党にも、アベを大いに批判さえればいいのにね。

2007.08.17 22:16 URL | 非戦 #tRWV4pAU [ 編集 ]













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