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きまぐれな日々

参議院選挙で自民党が負けること自体はわかりきっていたが、私は、2004年の参院選同様に、自民党が最終盤に盛り返して、「思ったほど負けない」という結果になるのではないかと恐れていた。その程度の負け方では、安倍晋三内閣を退陣させることはできない。

だから、各局の出口調査で、自民党が30議席台の大敗をしそうだと知った時は、喜ぶというよりほっとした。しかし、それでも安倍が退陣する可能性は五分五分だろうと思った。そして、安倍は開票がろくすっぽ進まないうちから早々と「続投宣言」をしたのである。

私が見る限りにおいて、安倍晋三は、めったに見られないほど自己愛の強い人間であって、権力に固執することは目に見えていたが、ここまで恥知らずな言動をとるとは思わなかった。安倍はこれまで、一度も国政選挙の審判を経ずして、衆参両院でコイズミが獲得した圧倒的な議席数にものをいわせて、好き勝手な政治をやってきた。よく安倍のことを「優柔不断」と批判する向きがあるが、私はこれは当たっていないと思う。優柔不断な人間が、あそこまで強行採決を連発するはずはない。単に頭の悪いわがままなお坊ちゃん、というのが私の安倍晋三観である。

そもそも、自民党の総裁が代わった時、民意を問うのが筋というものだ。
自民党総裁選を直後に控えた昨年9月18日の朝日新聞に、前宮城県知事で、のちに東京都知事選の候補となった浅野史郎氏が、「新首相は即座に衆院解散を」という文章を寄稿している。
新聞の読者投稿欄に、「大事な自民党総厳選に、我々一般国民が全くかかわれないのは不満である」というのがあって驚いた
と浅野氏は書く。そして、
自民党員でもない国民が関与できるのは、自民党総裁も「候補者」の一人となる、国会での首相指名選挙に「先立つ」衆院選の場面である。だから、前出の読者の声として怒りが向けられるべきは、自民党総裁選にかかわれないことではなくて、「先立つ」衆院選が実施されないことに対してのものであるべきである」
と指摘している。

総選挙の洗礼を受けていない政権は、国民にその正統性がまだ認められていない状態だから、憲法改定や消費税率引き上げなどの(安倍がやりたいと思っている)政策については、議論さえ持ち出せないだろう、というのが浅野氏の見立てだった。

普通の感覚なら誰しもそう思うだろう。だが、安倍には常識は通用しない。一度も国政選挙の洗礼を受けていないにもかかわらず、安倍は、教育基本法の改定など、「戦後レジームからの脱却」にかかわる重要な法案を、数の力で次々と強行採決によって成立させていった。

自民党総裁選で選出されたら、新首相は直ちに衆議院を解散し、総選挙で民意を問え、というのが浅野氏の主張だった。仮に、昨年秋の時点で解散総選挙が行われていたら、「コイズミチルドレン」たちが相当数落選して、自民党は議席をある程度減らしただろうが、それでも民主党以下をはるかに引き離して、与党は安定多数を引き続き確保しただろう。そして、その上で安倍のやりたいことをやれば、今よりずっと安倍の思うがままの政権運営ができたに違いない。つまり、浅野氏の主張は正論であり、一見、当時の次期総理総裁候補(事実上安倍晋三を指す)に厳しい意見のようだが、その通りに安倍がやれば、安倍は政権の基盤を確固としたものにできたかもしれない。つまり、「急がば回れ」的な考え方だったといえる。

しかし、安倍は「郵政総選挙」の議席数を減らすのがいやで、解散など全く考えなかった。目先の欲に目がくらみ、コイズミが確保した圧倒的な議席数があるうちに、自らの野望に沿った軍国主義的な法律の整備を一刻も早く進めようとしたのである。

今回の参院選も、衆院を解散して衆参同日選挙にする手があり、もしそれをやっていれば、衆議院の議席数を大幅に減らす代償とひきかえに、参院選の与党敗北の程度を相当程度抑えることができただろう。おそらく、選挙後の数合わせで、参議院の与野党逆転を阻止できたのではないかと思う。だが当然ながら、安倍にそんなことをする度胸はなかった。安倍が暗愚の帝王であったことは、安倍の悪政に反対する側のわれらにとっては、本当に幸運だった。

現在、衆議院の解散・総選挙が近いという観測もあるが、これまでの安倍の行動パターンから考えて、安倍は解散・総選挙など全く考えていないのではないかと思う。法案が参議院で否決されても、衆議院で再議決して3分の2以上の賛成があれば、法案は成立する。実際には過去半世紀以上もこのようなケースは生じていないが、そんなことを意に介する安倍ではない。解散・総選挙なんかをしたら、自公与党は過半数割れはともかく、3分の2の議席を得ることはありえないから、この奥の手は使えなくなる。そんなことを安倍が選択するとは思えない。

だが、どうやら安倍の思惑通りにはなりそうにもない。多くの方が指摘するように、今回の参議院選挙では、自民党のうち旧経世会の津島派が特に激しく凋落した一方、町村派(旧森派)の議席減の程度はまだしも軽く、安倍が熱心に口説いて擁立した丸川珠代だの義家弘介だのはちゃっかり当選した。だから、反主流派の力が落ちてしまって、安倍に反旗を翻すこともままならない状態だ。

しかし、政権成立前および内閣発足直後に安倍が頼みとしていたカンジンの支持率が暴落している。昨日(8月2日)の報道によると、フジ産経グループの調査で、安倍内閣の支持率はついに22%にまで低下した。こんな状態で、参議院で否決された法案を、衆議院の再議決(おそらく強行採決になる)で通すというのは、現実には不可能である。弱体化した反主流派や公明党といえど、安倍から離反していくだろう。

今、一番起きそうな事態は、自民党の誰かが安倍の首に鈴をつけ、安倍内閣を退陣させることである。どんなことになっても政権にしがみつこうとする安倍を、むりやり引きずり下ろす。これは普通の内閣退陣ではない。安倍晋三内閣は、まもなく異常な終了、つまり文字通りの 「AbEnd」 (= Abnormal End) を迎えることになるだろう。


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 「暗愚の帝王」に笑いました。
 私達が、揶揄して批判してきた安倍の姿が、実は真実の安倍の姿だったことが明らかになりましたね。
 コイズミは、経世会の土建利権の破壊を指して、「自民党をぶっ壊す」と言いましたが、ついでにその他のものも国民生活もぶっ壊してしまったので、その後を受けた、勘違い首相、安倍は、「日本をぶっ壊し」かねないので、国民の支持が離れています。
 3K新聞でも22%。今のところ最低は北海道新聞の21%と言う数字ですが、もはや橋本内閣敗北時の34%と言う支持率など参考にもならないほどの安倍政治のの凋落振り。しかもその原因から眼を背け、権力の座に執着する、近視眼的で恥知らずな安倍。
 私達にとって、本当の意味で自民党をぶっ壊すために、必要不可欠な人材になってくれています。支持率10%台も間近です。
 安倍さまさまですな。

2007.08.03 10:34 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

 緊急なので、2コメです。
 今まで、私のブログから、こちらへTBが通らなかったのですが、今日から通りました。
 今までの原因は何だったのでしょう?
 まさか、私とkojitaken氏の連携を阻むための政府の陰謀??(考えすぎです。)

2007.08.03 13:56 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

,,,そして小泉、安倍共にベテランと言われるような議員を党から出し、政治の意味もわからなそうな新人をどんどん入れくれてるので、党の将来も素晴らしいものとなりますね。
 これからも更新どうぞ頑張って下さい、毎回記事を楽しみにしています。

2007.08.03 14:00 URL | mina #- [ 編集 ]

安倍は本当にAbEndするのか?面白くなってきましたね。

2007.08.03 23:34 URL | 美爾依 #HfMzn2gY [ 編集 ]

おそらく、アメリカにもみ捨てられると思いますね。

いや、「こりゃもうだめだ」とアメリカも見捨てる。

ちなみに、アメリカや官僚とわれわれの利害が全部一致しないかといえばそれは違う。共産党でも法案の7割には賛成している。

「右でも左でも、『はずしてはいけない最低ライン』」というのをぶっ壊しているのが安倍総理ですからねえ。

北条高時になりそうですね。

2007.08.04 13:21 URL | さとうしゅういち #- [ 編集 ]

新聞の読者投稿欄に、「数多ある私的団体の一つに過ぎない自民党の総裁選に、この国の主権を握る権力者である我々一般国民が、自分の権力を全く介入させられないのは不満である」というのがあって驚いた

その私的団体の構成員でもない国家権力が介入できるのは、その団体の代表者も「候補者」の一人となる、国会での首相指名選挙に「先立つ」衆院選の場面である。だから、前出の主権を持つ権力者の声として怒りが向けられるべきは、自分の属していない私的団体の意思決定にかかわれないことではなくて、「先立つ」衆院選が実施されないことに対してのものであるべきである

2008.01.11 15:58 URL | A-11 #- [ 編集 ]













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