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きまぐれな日々

先週末のテレビの政治番組で、与党は失地を回復することができなかった。窮地に追い詰められた自民党の作戦は、「安倍自民党=改革者、民主党などの野党=抵抗勢力」という、一昨年の「郵政総選挙」の際にコイズミが利用した図式らしい。

当ブログにTBいただいたわこさんのブログ 「Dendrodium」 の記事 『国民が NO と言っても安倍氏続投の心算とは???』 で知ったのだが、塩崎官房長官が松山で行った参院選の応援演説の内容を東京新聞が伝えている。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2007072302034914.html


どんな結果でも安倍首相は続投 塩崎氏

 塩崎恭久官房長官は二十二日、松山市で街頭演説し、参院選で与党が苦戦を強いられていることをめぐり「どういう結果が出ようともこの安倍改革の流れを止めてはならない。その意気込みでわれわれは進んでいく」と述べ、与党が大きく後退した場合も、安倍首相は続投する構えであることを示唆した。塩崎長官は「改革の流れを止めて喜ぶのは第一は民主党。恐らく二番目は北朝鮮ではないか」と強調した。

(東京新聞 2007年7月23日)


与党に反対する者は北朝鮮を利するも同じことだといわんばかりのバカバカしい恫喝はとりあえず措くとして、この記事からは、どうやら安倍晋三は「コイズミカイカク」の後継者というイメージづくりに活路を見出そうとしているらしいことがうかがわれる。

だが、「安倍改革」とは耳慣れない言葉だ。何度も指摘するように、安倍は、「経済右派」(新自由主義者)のコイズミとは違って、「政治思想上の右派」であって、国家主義的、復古主義的な思想の持ち主だ。その思想を支えているのは、母方の祖父・岸信介に対する一種の信仰心だろうと思う。「美しい国」というスローガンのもと、「戦後レジームからの脱却」(=戦前レジームへの回帰)を訴え、憲法改定を参院選の争点にするのが安倍の構想だったはずだ。経済政策には、安倍ははなから関心を持っていない。

それが、年金問題や「政治とカネ」の問題で信用を失うや、「改革を止めるな」と言ったコイズミに立ち返るような主張を始めた。これにはいかにも唐突な印象を受けたし、「政治右派」と「経済右派」はしばしば相容れず、衝突を生じることは、当ブログでもこれまでにも何度か指摘してきた。

そこを鋭く突いたのが、7月23日付の毎日新聞社説「経済の姿 どう活力を保っていくのか」である。
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20070723k0000m070118000c.html
(リンクが切れている場合はこちらまで)

毎日の社説は、下記のように主張している。


 美しい国という言葉に示される、古き良き時代への情緒的な憧憬(しょうけい)は、当然のことながら、経済政策の柱である成長主義と衝突する場面が出てくる。

 経済分野における戦後レジームからの脱却は、行政による経済への介入の最小化が狙いである。具体的政策としては、公務員改革や規制改革の推進、市場主義の徹底ということである。これまた、美しい国とぶつかる。古き良き地域社会は小さな政府では維持できないからである。

 このことに示されているように、安倍自民党が政権公約に盛り込んでいる経済の姿は矛盾に満ちている。

 小泉純一郎前政権は、過去の創造的破壊を目指した。構造改革という名の新自由主義的政策である。努力したものが報われる社会では、一定の格差は是認した。

 安倍政権はどうか。改革路線を引き継いでいることは公言している。成長戦略も供給サイドを強化すれば、おのずと需要も出てくるという小泉前政権以来の新古典派流政策である。需要不足へのとりたてての施策は打たないということだ。地方分権もこれまでの施策に示されているように、抜本的な財源移譲は行われていない。

 その一方で、美しい郷土を作るという。地域経済再生も公約している。いずれも、地域社会での公共サービス維持なしには実現不可能である。民間や市場に任せていればうまくいくとも思えない。やっぱり、公共投資はばらまくのかということになる。

 つまるところ、安倍自民党が提示しているのは、美しい国という古い日本とグローバル化に対応した市場主義が混在している矛盾を内包した経済像である。

 そうみてくると、民主党が描く経済の姿を大きな政府と批判しても、説得力に乏しい。

(毎日新聞 2007年7月23日付社説より)


毎日新聞は、従来朝日新聞や日経新聞などとともに、「コイズミカイカク」を積極的に支持してきた新聞だった。朝日新聞が、しばしば「改革への覚悟はあるか」(2007年1月26日付社説)などと言って、安倍より(経済思想面で)「右」の立場から批判をしてきたことは、当ブログも 2月14日付のエントリ などで指摘してきたが、前記エントリにも書いたように、毎日新聞の姿勢も朝日と似たり寄ったりだった。

上記の社説も、その立場に沿っているとも読めなくもないが、コイズミの経済政策を「構造改革という名の新自由主義的政策」と表現しているところが、従来と大きく異なる。そもそも、「新自由主義」という用語自体、批判的なニュアンスをもった言葉だ。そして、安倍政権の経済政策の矛盾を突き、安倍らが「大きな政府」だと決めつける民主党の経済政策への批判には説得力がないと逆批判したあと、次のように続けている。


 民主党は基礎年金全額を国費で賄うことや、教育への財政支出の5割増、中小企業対策の充実などを掲げている。いずれも財源が必要だ。社会サービスの充実には人的手当ても欠かせない。財源対策として、行政のムダをなくすことや国家公務員の総人件費20%削減を提案している。

 くらしを各論の冒頭に置いていることは、自民・公明連立下での負担の増加や社会保障政策へのアンチテーゼであろう。財源手当てがどれだけ現実的か、額として十分なのかは検証が必要だ。

 これを大きな政府と呼ぶのか、社会サービスを過不足なく供給する政府とみるのかは、一方的に判断はできない。国民がどうみるかが第一だ。少子高齢化が進む中、経済の姿は大きな焦点だ。

(毎日新聞 2007年7月23日付社説より)


これは、留保をつけながらも民主党の経済政策を評価するニュアンスをもった文章だ。「社会サービスを過不足なく供給する政府」(ともとれる)というのは、相当に肯定的な表現といえる。つまり、毎日新聞は従来の「コイズミカイカク」支持というスタンスを見直そうとしているようにも読めるのである。

2001年のコイズミ内閣発足以来、一種の「カイカクファシズム」と称するべき言論の流れがあった。政治思想的には、極右に近い産経から、リベラルのイメージが強い朝日まで分布しているのに、こと経済政策に関しては、全紙がコイズミの「構造改革」を支持し、しかも政治思想的にはもっともリベラルな朝日がもっとも熱心で、リベラル寄り中道の毎日がそれに続いていた。本音では必ずしも「コイズミカイカク」に賛成には見えなかった読売や産経も、表立って反「カイカク」を唱えることはなかった。こうして、「コイズミカイカク」批判は一種のタブーとなり、これへの批判を許さないような空気ができあがった。そして、「郵政解散」のあと、コイズミが「刺客作戦」を打ち出した時は、朝日新聞などは率先してにこれを強く支持したのだった。

それが、ここにきて毎日新聞が、新自由主義支持に含みを持たせた表現ながら、そして、コイズミよりはるかに批判しやすい安倍政権批判の形を借りてとはいえ、ようやく「カイカク」への懐疑や、そのカウンターとなる福祉国家的政策の再評価を始めた。これは、結構画期的なことだと私は思う。

コイズミの後継者である安倍晋三内閣が崩壊寸前になって、ようやく6年来続いた「コイズミカイカク」の呪縛も解け始めたように見える。これが、日本のジャーナリズムが甦るきっかけになることを期待したいものだ。

この流れを本物にするためにも、皆さまには是非とも投票所に足を運んでいただきたいと思う。

なお、眠り猫さんのブログ 「平和のために小さな声を集めよう」 の下記記事が、コイズミ政権および安倍政権の経済政策の矛盾を、さらに具体的に指摘しているので、是非ご参照いただきたい。

「平和のために小さな声を集めよう」より
『安倍政権の経済政策が内包する矛盾』
http://heiwawomamorou.seesaa.net/article/48990210.html


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最近、北朝鮮を取材してきたジャーナリストの話を聞いてきました。アベ政権の北朝鮮に対する強行姿勢は、まさに選挙向けだと。経済制裁をしても、食糧援助をやめても、他の国の商品が、北朝鮮に入っているということです。たとえば、以前は、日本製のお菓子が並んでいたところに、今はドイツ製のお菓子が並んでいるとか。また、希少鉱物のタングステンやモリブデンの採掘権は中国と韓国、インターネットはドイツ、といった具合に、経済交流がさかんなようで、コイズミ、アベのせいで、本心は日本の企業家は、怒っているのではないでしょうか。それとも、改憲の方が、大事だからと、政府の強行姿勢を支持しているのか。
いずれにしても、政府の外交べたが、国益を損なっているのは確かです。

2007.07.24 10:52 URL | 非戦 #tRWV4pAU [ 編集 ]

稚拙な私の記事を、ご紹介いただいて光栄です。情報提供担ったとの事も、嬉しいです。

少しずつでも、マスコミがまともになってくれているとの事、ちょっと安堵しても良いのでしょうか?
でも、政治は本当に複雑怪奇ですね。
私のように直感勝負の者には、こちらのブログは勉強になります。

2007.07.24 15:01 URL | わこ #dN1wHbUA [ 編集 ]

 記事紹介ありがとうございます。こちらからのアクセスが増えています(いつも多いのですが、特に)。
 自民党は、ついに、反自民勢力は北朝鮮と同じだと言う、わけのわからん理屈を展開し始めました。こんな話で自民に投票するのは、元々自民支持の頑迷固陋な層だけでしょう。全く国民をバカにしています。
 では。

2007.07.25 03:22 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

お久しぶりです。

安倍の低脳ぶりはだいぶ浸透しましたが、小泉信者がまだまだたくさん居ます。安倍内閣と小泉内閣はセットみたいなもんですからね。

昨日立ち読みした雑誌に、30代から50代の女性と思しき人に取った該当アンケートでも、郵政民営化で日本がよくなると信じた自分が馬鹿だった見たいな意見がかなりあったようで(そんなことすぐ気づけよって思いますが)、小泉の力もだいぶ落ちているようですよ。

2007.07.25 23:32 URL | 風に吹かれて #qbIq4rIg [ 編集 ]













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