きまぐれな日々

28日、宮沢喜一元首相が老衰で死去した。87歳だった。

2000年以降、森喜朗、小泉純一郎、安倍晋三と続く、知性のかけらもない総理大臣たちとは対照的に、高い知性を持った政治家だった。

外交政策は自民党の政治家の中でももっとも「ハト派」色の強い人で、憲法改定には慎重だった。共同通信の榊原元広記者が書いた評伝記事(地方紙各紙に掲載)によると、記者たちにも「戦争をしちゃいけません」と口癖のように言い、記者が「なぜですか」と聞くと、難しいことは言わず、「負けることがあるでしょう。負ける戦争をしてはいけません」と答えたそうだ。

しかし、首相在任中に国連平和維持活動(PKO)協力法を成立させた。大平正芳内閣(1978?80年)にもいえることだが、現実の政治では、外圧や党内タカ派との妥協を重ねて、力強さに欠けた面があったかもしれない。大平正芳氏とはそりが合わなかったとされる宮沢氏だが、政治理念が高く評価される割には、政権担当時の成果に乏しいといわざるを得ないところは共通している。得意だったはずの経済政策でも、これといった成果があったかどうかは疑問で、宮沢内閣(1991?93年)のバブル終息時の政策が「失われた10年」につながったと評する人もいる(その当否は、浅学の私には判断できない)。

1988年のリクルート事件にも絡んだ。宮沢といい大平直系の加藤紘一といい、宏池会の政治家がしばしば金銭スキャンダルに絡むのは、もったいない話だと思う。朝日新聞編集委員だった故石川真澄氏は、リクルート事件に宮沢氏が関与しているのが明らかになった時、「ここでつまずいたのは惜しいという気持ちを抑えきれない」と書き、そういう新聞記者のスタンスが、ジェラルド・カーティス氏に『日本の新聞は「保守本流」に対して、ひとつの安心感に似た意識があるんじゃない?』とからかわれた原因かもしれない、としている。

石川氏は、加藤紘一氏が金銭スキャンダルに見舞われたとき、以下のように書いた。


 保守本流の「宏池会」は、ある時期まで、鉄鋼、電力、銀行、商社など「筋のいい」財界から直接の見返りを求めない資金を供給され、1950年代はじめの造船疑獄以後はスキャンダルでつまずくことはあるまいといわれた。その意味でも「エリート」派閥であった。ところが宮沢氏のリクルート以来、カネでつまずいてばかりである。加藤氏はそのことに気づかなかったのだろうか。
 そもそも派閥の親分がカネを集めるなどして「百年兵を養い」、首相への階段をよじ登るなどという自民党戦国史の古典を、氏素性の良かった人々がなぞっていったこと自体がひどいアナクロで、理解を絶している。小泉氏の朋友である加藤氏にそれがどうして見えなかったのか。時代は加藤流から小泉流へと大きく動いていたのである。

(「世界」 2002年6月号、「戦争体験は無力なのか」=岩波書店、2005年=に収録)


とはいえ、「クリーンなタカ」よりは「ダーティーなハト」の方がよっぽどましだろう。コイズミが「クリーン」といえるかどうかにも強い疑問があるが、安倍晋三に至っては、明らかに「ダーティーなタカ」であり、「火炎瓶事件」が裁判で争われていることから明らかなように、安倍は、暴力団とのかかわりも問われている人物だ。防衛政策では憲法九条改定志向の超タカ派、外交政策では国辱的な対米隷属路線、経済政策では格差を拡大し、国民を困窮させる新自由主義という最低最悪の政策を推進している上に、スキャンダルまみれでもある戦後最悪の政治家に対する審判選挙を1か月後に控えたこの時期に、「保守本流」の大物政治家が亡くなったことに、ある種の感慨を禁じ得ない。来月の参院選は、「戦後民主主義」の「弔い合戦」でもあると思う。

ともあれ、宮沢喜一元首相のご冥福をお祈りしたい。


↓ランキング参戦中です。クリックお願いします。
FC2ブログランキング

関連記事
スポンサーサイト

はじめまして。 宮沢氏と違って、私は自主防衛のためには改憲して自衛隊を認めるべきという考えですが、アメリカの戦争に加担するために自衛隊を使ってやろうという魂胆がミエミエの安倍よりは宮沢氏の方がはるかに信用できます。
まずは氏の御冥福を祈るとともに、戦後最年少にして最悪の総理大臣、安倍晋三に戦後最大級の惨敗を浴びせるべく、来月の参院選では反自公の一票を投じる所存です。

2007.06.29 10:41 URL | 安倍嫌いの改憲派 #- [ 編集 ]

>安倍嫌いの改憲派さんへ
 私は護憲派ですが、おっしゃるとおりかと思います。安倍の目指す改憲は、基本的人権も制限しようと言う面もあり、戦争についても、国防ではなく、アメリカと合同しての対中国、アジア戦略の片棒担ぎと、集団的自衛権の行使で、アメリカの尖兵となって、日本と全く無関係の国で日本兵が死ぬ道を目指しています。許しがたい愚挙です。
 反米右派もリベラルも、国を愛する気持ちは同じです。その点で一致して、反国民的な、安倍内閣を倒しましょう。

2007.06.29 11:17 URL | 眠り猫 #2eH89A.o [ 編集 ]

はじめまして。あちこちのリベラル系ブログにお邪魔している組合員Aというものです。
宮沢政権がバブル期に遭遇したのは偶然の要素もあります。バブルの根幹は中曽根政権時代の民活であり、その後始末は本来中曽根氏がするべきものだったのです。

それと安倍は「クリーンなタカ」でしょうか?
○○団やカルト宗教との癒着が語られている安倍はダークそのものに見えます。見た目が爽やかというだけですね。
「軍人」と呼ばれコワモテだった梶山静六氏や、ヤクザの親分顔負けの野中広務氏など、ハト派にはなぜかイメージの怖い印象の政治家が多いです(^^;

2007.06.29 17:27 URL | 組合員A #mQop/nM. [ 編集 ]

松岡の死に対して「死人に口なし」発言の伊吹文明文科相の評
「旧大蔵省の大先輩。知識人すぎて政界の知識レベルとうまくかみあわなかった面もあるのかなと思う。」(from 日経夕刊)

2007.06.29 22:32 URL | ゴンベイ #eBcs6aYE [ 編集 ]

はじめまして。いつも拝読しています。
元首相の通夜、葬儀などの報道で違和感を感じていたのですが、歴々の首相経験者や、他党の代表などがかけつける中、現首相であり自民党の総裁である安倍氏の列席という話は聞きませんでした。総理動静などを見ると、どうやら週末は「自民党参院選立候補予定者の集会」などでお忙しかったようです。
農水省の際には党首討論予定がありながらも地方の葬儀に固執した記憶は新しいですが、宮沢元総理の死であれば、直近の選挙が大事だということになるのでしょうか。あるいは、護憲派、ハト派の死に裂く時間などないということなのでしょうか。
なんて美しい心をもった首相なのでしょう。

2007.07.02 07:32 URL | 良太郎 #- [ 編集 ]













管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://caprice.blog63.fc2.com/tb.php/384-bbf1e9d9